2−1行政立法

行政立法

伝統的3段階モデルの最初となる「行政立法」です。

行政立法の根拠

 まず、行政立法とは、行政機関による規範制定をいう。「法律による行政の原理」を貫けば、委任立法は否定されることが望ましい。しかし、現代の行政需要の増大と行政の技術化、専門化は議会の立法能力をはるかに越えるものとなり、法律自体には大綱的に定めを置き、細部に関しては行政に定めさせることが実際的である。以上が委任立法を支える実体的根拠である。
 形式的根拠は、憲法73条6項の反対解釈に求めることができる。

行政立法の分類

 行政立法にも様々な分類のしかたがあるが(例えば省令・政令なども一つの分類である)、ここで重要となるのは、国民の権利義務にかかわるか否かという視点である。行政法においては常にこの視点が絡んでくることに留意されたい。
 まず国民の権利義務に影響を与えるものを「法規命令」、そうでないものを「行政規則」と呼ぶ。
 なぜこのように分けるのかといえば、「法律の専権的法規創造性」から考えると、法規(国民の権利義務に影響を与えるルール)は国会しかつくれないならば、法規でないならば国会でなくともよいということになる。したがってこの分類は、法律の委任が必要か否かと重なってくるのである。つまり、「法規命令」には原則法律の委任が必要で、「行政規則」にはいらないということである。
 具体的に考えるともっとよくわかる。簡単なことで、「行政規則」というのはその名の通り行政を内部的に拘束するものであって、一般の私人はこれに拘束されないのである。自立権のようなものと考えてしまってもよい。したがって行政独自で定めることができ、法律の委任は必要でないのである。
 次に、「法規命令」のなかをさらに2つに分けることができる。上記の通り、「行政規則」は内部的なもの、つまり「法規命令」は外部に出るものすべてということである。その中には、具体的に国民の権利義務を創出する規定もあれば、それを適正に執行してゆくための手続的規定にすぎないものもある。
 その基準から、国民の権利義務を創出するものを「委任命令」、そうではない権利を運ぶ手続きにすぎないものを「執行命令」と呼ぶ。「委任命令」は法律の個別的な委任が必要(作用法上の具体的根拠が必要)とされる。一方、「執行命令」には法律の一般的委任で足りる(組織法上の根拠でよい)とされる。

法規命令

 憲法の「委任立法」の項目で議論されるのはこの「法規命令」に関してがほとんどである。
 既に存在する法律に反して行われた行政立法は「法律の優位の原則」から当然無効となる。また、包括的委任は禁止され、その限界を越えた委任に関しても(いわゆる白紙委任)無効となる。これは憲法での議論と同じである。
 さらに行政側が実際に立法する段階において、法律に定められた手続きを踏んで立法しているか否か(例えば公聴会をおこなったか)にも委任立法の限界(とその統制)を見ることができる。しかし行政手続法は委任立法に関しては何も定めていないことを忘れてはならない。

行政規則

 行政行為は内部的効果しか持たず、国民の権利義務に影響を与えることがないので、法律の委任は必要がない。しかしここに一つ問題が生じる。すなわち、「行政規則でありながら国民の権利義務に直接影響を与えるもの」が存在しているのである。
 パチンコ球遊機事件という有名な判例がある。物品税の課税対象品目に「遊戯具」という規定がある。これまでパチンコに対しては「遊戯具にはあたらない」として課税がされていなかったが、東京国税局長の各税務所に対する「パチンコも遊戯具にあたる」という「通達」(行政機関内部の意思統一を図るために上から下へ発せられる行政規則の一種である。)を機に、パチンコ球遊機に課税がなされた。これは通達による課税(「通達課税」)であり違憲無効として争われた。
 しかし最高裁は、もとになる法律(「遊戯具」)となされた課税処分(パチンコへの課税)だけをみて、適合している以上、この処分は合憲であると判断した。つまり、通達は行政内部のものであり、外には影響を与えない。裁判所は外部の問題だけをチェックするという従来の姿勢を崩さなかったのである。

法規命令と行政規則の2分論

 以上のようにいわば「行政規則の外部化現象」といわれる問題も生じ、従来からの法規命令と行政規則の2分論は批判を受けつつある。しかし裁判所はその立場を崩していないが、一方で手続的統制は進みつつある。
 先の行政手続法制定により、行政内部の判断基準を公表すべきことが明定された。これは従来の判例法を越えるもので、評価すべき点である。
2005年09月27日(火) 00:00:07 Modified by kasumi1998




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