1−1行政法序論

行政法序論

 まず行政法全体を見てみる。行政法は、多岐にわたる行政の様々な作用を扱う学問ではあるけれど、ここで学ぶ行政法は、いわば総論・モデル論的なものであって、各論(個々の法律について解析する)ではない。無数に存在する行政法規の中から共通項を探し出し、その作用を大系化・モデル化することによって、行政作用を分析しようと試みるものである。「モデルを頭のなかにどうイメージできるか」がポイントである。
 現在のいわゆる行政国家現象の伸展に伴い、そのモデルも変化してきた。そこで行政法を学ぶには、伝統的学説を学び、次いでその修正を考えるという方法を採る。なぜなら、今まで作り上げられてきたモデルをすべて壊し、白紙の状態から構築していくよりも、ある程度成立しているものを、その時代の変化に即して修正していく方が自然だからである。

行政法概観(その1)

 行政法はあくまでモデル論であるため、ある程度のイメージを頭の中につくっておく必要がある。その基本的な分類を述べておくことにする。
 まず行政法は、行政組織法・行政作用法・行政救済法の3種類に大別される。行政組織法により行政組織の存在を規定し、行政作用法により行政の活動を規定し、行政救済法によりその活動の適正化を図るのである。作用法と救済法は相互に絡み合う(作用あれば常にそれに対する救済を考えなければならない。)ため、これが学習の中心となっていく。
 次に行政の活動についてであるが、これを権力的作用と非権力的作用の二つにわけることができる。行政(国家)の活動だからといって、すべてが権力的であるわけではない。たとえば机や消しゴムを買う契約は権力的とはいえない。ただしそれならば民法で扱えばよいのであって、ここで扱う非権力的作用というのは、もう少し特殊な(民法で扱わないような)ものである。たとえば行政指導という言葉を聞いたことがあるだろう。詳細についてはあとで扱うが、行政指導は法的な効力を持たない(すなわち従わなくても罰せられない)単なる勧告のようなものである。このようなものが存在するのである。
 学習していく上で中心となるのは、権力的作用である。これが最も行政らしい(上から国民に対して権限を行使していく)特徴を持っている。権力的手法を考える上で最も基本となるモデルは伝統的3段階モデルといわれるもので、「行政立法」>「行政行為」>「行政強制」(注:「>」は矢印代わり、以下同様)というものである。まずこれを頭の中に構築し、これをベースに他の要素を加えていくことにする。

行政法概観(その2)

 その1をふまえた上で、これから学ぶ行政法を具体的に分類してみる。
 まず「権力的作用」であり、その中身は{行政立法>行政行為>行政強制}である。これに加えて別に「即時強制」という最も強力な手段が存在する。
 つぎに「非権力的作用」である。「行政計画」「行政契約」「行政指導」がその具体的内容である。
 また「権力的手法」「非権力的手法」の両者にまたがるものとして、「行政調査」が存在する。
 以上すべてにわたるものとして「行政手続」「行政救済」がある。
2005年09月26日(月) 23:47:22 Modified by kasumi1998




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