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著者:5-53氏





深夜、目が覚めた。
ちゃんと寝る前に行ったのに、トイレに行きたくなった。
でも、今は深夜。
電気をつけるなんてできないし、誰かを起こすのも悪い。
どうしようかと少し悩んでいると、近くでガサガサと音がした。
恐怖で全身が硬直する。
震えるのを抑えられないが、恐る恐る、音のする方を見てみる。
あ、あれ…?

「あ、梓か…?」


もしかしたら梓もトイレかな?
うっすらと期待しながら、

「うぅ…あ、梓はなんで起きてるんだ?」

それでも恥ずかしさを隠しきれずに尋ねた。

「なんか寝付けなくて。」

梓の答えは私の期待したものではなかった。

「澪先輩こそどうしたんですか?」

梓の問いかけに焦ってしまう。

「うっ。あっ…いや、あの…」

トイレに起きたって言えばいいのに。
1人じゃ怖くて行けないっていうことは先輩としてどうなんだろう?
とか、いろいろな考えが巡って混乱した私。


「先輩。」

その混乱してしまった私を救ってくれたのは、ほかでもない梓だった。


「私ちょっとトイレに行っていいですか?」

「わっ、私も行く!!」


***********


トイレはそんなに遠い所にあるわけではないが、今の私にはとても長いものに感じられた。
昼間なら余裕なのにな。
梓がいてもやっぱり怖くて、梓の後ろに隠れるようにして歩く。


トイレから出ると梓はもう手を洗い終えていた。
手を洗ってる時に思った。
もしかして、梓は私がトイレに行きたがってて、先輩だからというプライドに悶々としていることを見抜いたうえで、ああ言ってくれたんじゃないか?
ということに思い当たる。
思えば、梓はトイレに行きたい素振りなんて少しもなかった。
悪いことさせちゃったな。
手を洗い終え、梓の方を向く。
梓は一瞬少し困ったような表情を見せた。

「澪先輩。ちょっと外に行きませんか?」
「ん、どうした?」
反射的に尋ねる。
「えと…。」
梓は少し目を泳がせた。
「う、海が見たくなって。」
少し俯きながら答える梓に私は少し悩んだ。
やっぱり暗いのは怖かった。
でもさっき付き合わす形になっちゃったしな。

「うん。行ってみよっか。」

梓が安心したような暖かい笑顔を見せる。
その笑顔で私もほっとする。
歩き出そうとする梓を呼び止める。
「あー、あのさっ!」
振り返る梓に、すっと手を差し出す。



「手、繋いでくれないか?」


先輩としてのプライドは今は捨てよう。
そう思いながら。


************


海まで歩く間、肝試しをした時のような恐怖感が沸き立った。
思いっきり強く手を握ってしまったと思う。
梓はあのときの肝試しと違って、痛い、とは言わなかった。
むしろ逆。

「大丈夫ですよ。私がいますから。」

梓の言葉で私の心に安心感が生まれた。



夜の海はどこか幻想的で、明るい海にはない美しさを感じた。
砂浜に腰を下ろした梓の隣に腰を下ろす。
空を見上げるとそこには満点の星空が広がっていた。

「…星が綺麗だな。」

考えることもなく言葉が出る。
吸い込まれそうなほどの星空。

「まるで掴めそうだ。」

私はそっと手を伸ばす。
掴めないことは分かっている。
だけど、伸ばさずにはいられないような魔力がこの星空にはあった。


何を馬鹿みたいなことをやっているんだ、とはっとなる。
取り繕うように、
「なんてな。」
と言って左手をおろす。

おろした先には梓の小さな右手があった。



私は慌てて自分の手をずらそうとした。
瞬間、梓の右手に捕まえられた。
そして私の手の上に梓の手が重ねられた。

驚いて梓の名を呼ぶ。

「あ、梓?」

どうしたんだ?と続けようとした言葉は梓の言葉にのまれた。

「澪先輩って好きな人とかいないんですか?」

なんの前振りもない唐突な質問。

「い、いきなりだな。…いないよ。環境が環境だし。」

思いっきり泡を食った言葉。
梓の横顔を見つめてもその感情は読み取れない。


「律先輩のこと、どう思ってます?」

「なっ!?なんで律が出てくるんだ!?」

「律先輩のこと好きですよね?」

「そ、そりゃぁ…好きだけど…。」

梓の考えてることがわからなかった。
私の頭は真っ白になっていた。


「それは…。友達としてですか?…それとも…。」


重ねられた手に力が込められた気がした。

「友達として以外で見たことなんてないよ!」


なぜか少し言葉が強くなってしまっていた。
重ねられた手から暖かさが伝わってくる。


***********



「そういう梓はどうなんだ?好きな人とかいるのか?」


自分だけ答えるのはなんとなく悔しくて、私は梓に質問し返していた。


「いますよ。」


迷いのない肯定。
あまりにもまっすぐな梓の姿に、うまく言葉が出なかった。

「梓…?」

梓がこっちに顔を向けた。
梓のまっすぐな瞳が私を捉えて離さない。
左手が強く握られた。
反射的に左手がぴくって動く。


「叶わない恋だと思ってました。」

見とれていた。梓のまっすぐな瞳に。

「…でも、今小さいけど希望が見つかりました。」


そう言って微笑む梓。



梓に少しはトイレに付き合わせっちゃったお礼ができたかな?

「そっか。私の言葉の何が梓を勇気付けたのかわかんないけど、力になれて嬉しいよ。」

この言葉は半分ほんとで半分、うそ。
力になれたのは嬉しい。
それは本当。
だけど、なんなんだろう、この気持ちは…。
梓のまっすぐな瞳に魅せられた私には、梓の言葉に少し寂しさを覚えていた。


梓は私の言葉に少しぽかんとして、苦笑した。


「そろそろ戻りましょうか。」



もう少し一緒にいてもよかったな。



そんなことを思いながら、私は握り直された梓の手を握り返した。







星空と(梓視点)


つづき
夕焼けと(梓視点)
夕焼けと(澪視点)

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