俗名：不明
武功：恒山派剣法
家族：父・不戒和尚、母・聾唖婆婆
登場作品：『笑傲江湖』 （邦題：『秘曲笑傲江湖』）

　僧侶の父の娘として生まれた儀琳は、生母とすぐ生き別れとなり、尼僧だけの剣派・恒山派に預けられることとなった。

　成長するにつれて可憐な美貌を持った彼女は、ある時とんでもない災難に出くわすこととなる。江湖で悪名高き色魔・田伯光に手籠めにされかけてしまうのだ。絶体絶命の危機を救ったのは、颯爽とした好漢・令狐冲であった。令狐冲は腕の上回る田伯光と対決し、知勇と諧謔を発揮して見事に彼女を守り抜いた。怪我をしつつも自分を懸命に救う彼に彼女は尼僧として許されぬ思いを抱いてしまうのであった。

　己の恋情に戸惑う彼女に、父・不戒和尚は不審を抱いた。世間のおきても目も一向に解さない彼は愛娘のために一肌脱ぐ決意を固める。
「おまえはそいつに惚れたな！　恥ずかしがるな、尼さんだからって結婚できねえこたねえんだ」
「やめて、お父さん！」
　娘を無視して彼はずんずんと華山へと向かっていった。無論、無理にでも令狐冲に自分の娘を娶せるためである。

　不戒和尚は令狐冲に娘を嫁にせんかと迫るが、令狐冲の胸には岳霊珊への思いがあった。それでも迫る父に儀琳は怒りの言葉を投げつけてようやく止めた。しかし既に令狐冲は、不戒和尚と桃谷六仙の無理な内功治療で致命傷を負っていたのであった。

　恒山に戻った儀琳は、五岳剣派統合を目指す崇山派の野望に翻弄されつつも成長していくこととなる。彼女は胸に令狐冲への愛を秘めながらも、それを抑えて彼の幸せを祈り続けるのであった。