『クイーンに首ったけ 〜比翼編〜』
スレ番号 | タイトル | カップリング | 作者名 | 備考 | レス |
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8 | 『クイーンに首ったけ 〜比翼編〜』 | 男ハンター×擬人化ランゴスタ | クイーンの人 | 擬人化(ランゴスタ)・否エロ | 8〜13 |
『クイーンに首ったけ 〜比翼編〜』
さて、早いもので、俺とラン(蘭)が夫婦となってすでに一月ほどが過ぎた。
「これ、もう少し落ち着いて食べなされ」
「いやぁ、相変わらずランの飯は美味いからなぁ。これこそ愛情がスパイスっヤツかね」
「なっ……もぅっ、意地悪じゃぞ、我が君」
炊事洗濯掃除裁縫……その他諸々の家事技能を習得し、近所の主婦連をして「もう貴女に教えることは何もない」と言わしめた我が妻は、今日も絶好調のようだ。無論、萌え的にも。
危惧していた"夜の性活"の方も、最近ではようやく落ち着きつつある。まぁ、それでも一晩に4、5回と言うのはザラだが、それくらいなら俺も強走薬のお世話にならずに済むしな。
あ、別に愛情が冷めたわけじゃないぞ。なんてーか、こう二人の関係がしっくりくるようになったと言うか。
思えば、あの性急な情交の求めは、こいつが必死に俺達ふたりの隙間を埋めようとしていたからではないか、と思う。
出会ったその日にセックス、さらに翌日結婚にまで雪崩れ込んだ俺達には、圧倒的に"絆"が足りてなかった。いくら互いに好意を抱くようになったとはいえ、そんなふたりが結びついても当然どこか隙間は出来る。
だからこそ、ランは繋がることで少しでもふたりの距離を縮めたかったのだろう。
もっとも、危惧するまでもなく、俺達はたったひと月で、長年つきあった末に結婚に踏み切ったカップルなみの絆を手に入れたのだ……と思う。無論、他人との比較は無意味なのだろうけど。
結局、俺達ふたりの相性は極めて良好だったと言うことなのだろう。まぁ、これ以上は惚気になるから言わないが……。
ちなみに、朝っぱらからなぜ俺がこんな呑気にバカバカ飯を喰っていたかと言えば、今日は仕事が完全オフの休養日だからだ。昨日は、近くの砦でのラオシャンロン戦に参加して、見事撃退することができた。
実を言うと、この村のハンターの質や量はさほど高くない。なにせ、先日ようやく上位認定されたばかりの俺が、上から数えて5指に入るくらいのレベルなのだ。
それだけに、無事に古龍を撃退したとはいえ、かなりの激戦となった。そこで、狩り仲間たちと相談して、今日は休養日として一日ノンビリすることに決めたのだ。
――と言うわけで、我が輩は現在、思う存分グータラして英気を養っておるわけである、ウン。
「あの……我が君、その…ぐ、具合は如何かえ?」
「はっはっはっ、可愛い妻の膝枕なんだぞ。ゴキゲンでなくてどーする?」
……妙なテンションになっているのは自覚してるので、ご容赦いただきたい。
飯のあと、ゴロリと居間で横になった俺は、「食べてすぐ寝ると、ポポになりますぞえ?」と言うランの忠言をスルーして逆に呼び止め、ポンポンと傍らに正座することを要請したのだ。
もちろん、「彼女ができたらやって欲しい101の事柄」のトップ10に入るであろう行為のひとつ、"ひざまくら"をしてもらうために!!
照れて真っ赤になりながら(相変わらず初々しいヤツよ。そこがイイ!)も、彼女自身も、興味があったのか、ランはおずおずとその太腿を俺に貸してくれたのだ。
人類の英知にして全男性の夢、遥か遠き桃源郷たるHIZAMAKURAを、ついに手に入れたぞ〜! (チャララーン♪)
……重ね重ね、自分がハイになっていると言う認識はあるので、ご寛恕願いたい。
まぁ、そんなわけで、俺とランは、スケッチして絵画に起こしたら、展覧会で金賞が狙えそうなほどリッパな"新婚バカップル"ぷりを発揮していたわけだが。 ←開き直った
* * *
「のぅ、我が君?」
それまでとは微妙に異なる調子でランが話しかけてきたため、俺は膝枕の感触を思う存分堪能するのを一時中止して、片目を開いて彼女の顔を見た。
「うん、何だ?」
「その……狩人のお仕事は、楽しいものかえ?」
ついに来たか……と言うのが、この時の俺の偽らざる気持ちだった。
かつて、情報屋のヤツと酒場で交わした会話を思い出す。
――しかし、そういう元モンスターの連れ合いを娶ったヤツらって、そのままハンターを続けていけるものなんかね?
――んー、人それぞれみたいだけど、引退するヤツも結構いるな。
元モンスターの身であれば、かつての同族が狩られる―殺されることに胸を痛めても不思議ではない。
たとえば、それが古龍や強力な飛竜であるなら、そういう仕事だけは選ばず、受けないようにする、という方法もとれる。
だが、狩り場でごくあり触れた生き物だったとしたら?
それも、ハンターに自分からケンカを売ってくるような、好戦的なモンスターだったら……?
やはり、ランの奴も、俺にランゴスタを殺して欲しくはないのだろう。
もちろん、蜂50匹狩りといったピンポイントな依頼を受ける気はないが、なにせ相手はハンター稼業最悪の敵とも言われる糞羽虫だ。正直、絶対殺さないという自信はない。
「あー、そのな、ラン。俺もできるだけ、オマエの元同族は殺さないように努力するから……」
ランは、きょとんとした顔で俺を見返した。
「? いえ、それが我が君の安全に関わるのであれば、遠慮なく殺して頂いても構いませぬぞ? むしろ、情け容赦なく、バサバサ殺ってたもれ」
「はぁ? オマエ、俺にハンター辞めてほしいんじゃないのか?」
「いいえ、全く。だいたい、狩人を辞めて妾を養っていく甲斐性が、我が君にあるとも思えませぬしのぅ」
グサーーーッ!
絶望した! 愛妻のあんまりな言い草に絶望した!!
……まったく反論できないのが悔しい。
「妾は、その……妾でも狩人稼業は出来るものか、と問いたかっただけですぞえ」
「ああ、成る程ね」
まったくの俺の早とちりだったわけね。反省。
しかし、ランがハンターかぁ……。ふむ。
基礎体力、とくにスタミナは俺以上にあることは十分知ってる。腕力や敏捷性についても合格点だろう。物覚えはいいし、勘もいい。
精神的にも、他の生き物を殺して必要以上に傷つくほど弱くはなさそうだし(俺的には誉め言葉だ。ランが優しい女性であることは十分理解している)、竜の威容に脅えて動けなくなることもなかろう。
「しかも、密林の地理や生態に関してはエキスパート級か」
「密林だけではありませぬぞえ。こう見えて、我が君が普段仕事場にされている砂漠、沼地、森丘、火山に関しても、それなりに心得ておるつもりじゃ」
そう言えば、確かにどこにでもいますね、ランゴスタ。
ランは放浪時代に、いま言ったような場所をひととおり巡ってみたのだと言う。
「雪山に関しては、流石に入り口のほうだけじゃが……」
ああ、確かにキャンプの出口のエリアにいたっけ。
うーーーーーーーむ。
俺としては、妻には留守宅を守っていてもらえば十分なんだが、ランの少しでも夫の役に立ちたい、愛する人の背中を自分の手で守りたい、と言う想いも理解はできる。
ふたりで話し合った結果、「とりあえず1週間ほど簡単なクエストに挑戦して、適性を見る」と言うことになった。
* * *
てなわけで、やって来ました村の鍛冶屋。
下位ハンター時代が長かった俺は、貧乏性も手伝ってかなりの素材を溜め込んでいる。大概の防具や武器はオーダーできるはずだ。
家での話し合いで、ランには、剣士の俺を援護するためのガンナーになってもらうことに決まっていた。
もっぱら片手剣を使い、ごくまれに太刀を手にすることのある俺だが、ガンナー系の遠距離武器も洒落でいくつか作ってみたことがある。
その中では、ランはカンタロスガンが気に入ったみたいなので、これを使ってもらうつもりだ。まったく改造していないので、一気に5段階まで強化しよう。
あとは防具なのだが……。
「ら、ラン! オマエ、なんて格好を……」
「おや、いけなかったのかえ? 我が君が下着をつけろとうるさいので、とっておきを着てみたのじゃが……」
そう、普段の巫女装束姿のランは「はいてない」状態らしいのだ。実際、真っ昼間に台所で押し倒そうとした時、半脱ぎにして確かめたことあるし。
何でも、キモノを着るときに、こちら風の下着はつけないものらしい。ひゃっほう、東方文化万歳!
ただし、俺以外の奴に、ランの裸を見せるのはノーセンキューだ。
だから、ここに来る前に巫女服の下に下着を付けておくよう念を押しておいたのだが……ランのヤツ、なんと初めて出会った時の黒い女王様セットを着てきやがったのだ!
鍛冶屋の親方の方は、さすがに人間が練れてるせいか、ランの下着姿にも動揺していないが、見習い小僧の方は前屈みになってやがる。くそぅ、見んな! これは俺んだ!!
「ほぅ、おもしろい下履きだな。これだけでちょっとしたレザーくらいの防御力はありそうだぞ」
「ホホホ、当然じゃ。これは、妾自身の殻じゃったからのぅ」
ああ、成る程。どっかで見たような素材だと思っていたが、ありゃランゴスタの甲殻か。まぁ、防御力が上がるに越したことはない。
騒ぎが一段落して、いよいよランのための防具を作成することになったのだが、ランの生残性を重視する俺と、見た目も考慮するランでなかなか意見が合わない。
俺としては、防御力が高く、スキルもなかなか便利なレックス系を推奨したかったのだが、ランに言わせると「あの毒々しい縞模様が気に食わぬ」らしい。
すったもんだの揚げ句、互いの主張を擦り合わせて、ランの装備は以下のようなものに決まった。
・頭:ホワイトピアス
・胴:クシャナバダル
・手:クシャナマカーン
・腰:クロムメタルコイル
・足:クロムメタルブーツ
これに、装飾品を加えて「回復速度+2」と「地形ダメージ減・小」のスキルを発動させてある。
まぁ、これなら星1クラスのクエストで倒れることはそうそうないだろう。
見かけ的にも、黒の貴婦人といった趣きで、非常に、ランには似合っている。
……まるっきり、悪の組織の女幹部風ではあるが。
「ん? 何か言ったかえ、我が君?」
「いんや、なぁんにも。じゃあ、そろそろ、集会所へ行ってみるか」
「ううぅ、ドキドキするのぅ」
初めて入る集会所に、緊張している様が微笑ましい。
大仕事でなければ、あまり他人と組まない俺だが、コイツになら背中を預けてもいいかもしれない。
「よーし、最初はキノコ狩りだぁ!」
「わ、我が君。いくら最初とは言え、もうちょっとマシな仕事を……」
わいわい言いながら、受け付けに向かう俺達。
――その後、俺とランのコンビは着実に実績を重ね、半年後くらいから夫婦ハンターとしてエラく有名になって行くのだが……まぁ、それは"別のお話"ってヤツだ。
<FIN>
2010年08月15日(日) 08:40:19 Modified by gubaguba