『クイーンに首ったけ』完結編2
スレ番号 | タイトル | カップリング | 作者名 | 備考 | レス |
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10 | 『クイーンに首ったけ』完結編その2 | 男ハンター×擬人化ランゴスタ | クイーンの人 | 擬人化(ランゴスタ、カンタロス)・否エロ | 209〜215 |
『クイーンに首ったけ』完結編その2
<ヒルダ視点>
お兄様とカンティ、それにカシムさん&キダフさんに見送られて、わたくしたちは、冒険ゾーンのフィールドに足を踏み入れました。
「ところでヒルダ、その軽弩の使い方はわかりますかえ?」
「ご心配には及びませんわ、お姉様。あれからわたくしも色々と勉強しましたの」
「あれ」というのは、もちろんお姉様と"対決"した砂漠での一件を指します。
不思議ですわね……あの時は、あれほど「憎い」と思っていた女性をこれほど好きに――へ、変ヘンな意味じゃありませんわよ?――なるなんて。
いえ、あの時、すでに"憎い"とは思っていなかったのかもしれません。ただ、大好きなお兄様を"取られた"ことに対する子供っぽい嫉妬を自分でももてあましていただけなのかも。
だからこそ、あんな風にわたくしを優しく受け止めてくださったお姉様のことを、あのあと素直に受け入れられたのでしょう。
「それは重畳。ただ、弓と違って弾数に限りがあることは、ゆめゆめ忘れるでないぞえ」
「ええ、とくに今回は少ないようですし……」
今回携行しているのは、麻痺弾のレベル1と2、睡眠弾のレベル1と2がそれぞれ10発ずつです。リチャードの話によれば、これだけでフィールド内にいるモンスターのおよそ半数を行動不能にできると言うことですけど……本当かしら?
「そうさな、妾がこの巫山戯たハンマーをまず一発当てよう。そこに、睡眠弾を撃ち込めば消耗を最小限に抑えることができるじゃろう。麻痺弾を使うのはそのあとじゃな」
さすがわずか半年でハンターランク3にまで上りつめたお姉様。ガンナーが本職だけあって頼りになりますわ。でも……。
「その……失礼ながら、お姉様の方は大丈夫ですの?」
たしか近接武器を扱った経験はあまりおありではなかったのでは?
「ん? ああ、妾の方は気にせずともよいぞえ。これでもハンマーと取り回しの近い狩猟笛は何度となく扱っておるでな。先日も青怪鳥をほぼ単独で狩ったばかりじゃて」
(もっとも、このハンマーと言うヤツは間合いが狭いのが難じゃがのぅ)
何やら小声で呟いておられるのが気にかかるのですが……。
とはいえ、ここでこうしていてもラチはあきません。思い切って出発することにしました。
ガスッ!
「ヒルダ、いまじゃ!」「はいっ!」
お姉様が"おやすみベア"を横薙ぎにしてランポスをひるませたのに合せて、わたくしも手にした"アイルーラグドール"の銃爪を引きます。
ズォゥン……。
弓とは異なる重い手ごたえと反動とともに弾が発射され、ランポスのこめかみにつきささりました。
Kyuuu……。
催眠成分が体にまわったのか、すぐにランポスは崩れ落ちました。
「ヒルダ、残りの弾数は、どれくらいかの?」
「睡眠弾は今ので打ち止めです。麻痺弾はレベル2が全部、レベル1が3発残っていますわ」
事前の懸念に反して、わたくしたちは順調にモンスターを倒していました。
倒した(と言っても寝ているか意識を失っているだけですが)モンスターたちの体から、竜石や竜茸といったトレジャーが取れましたが、お兄様たちのときに比べて少々量的に劣る気がします。
「ふむ……戦略を間違えたやもしれぬのぅ」
「どういうことですか?」
「妾はモンスターを倒した方が実入りが大きいと踏んだのじゃが、むしろ採集に徹したほうが効率はよかったのかもしれぬ」
そう言えば、お兄様たちは1度も戦わずに1等になったのでしたわね。
もっとも、わたくしとしては、たとえザコ相手とは言え、お姉様と共闘できるのは少なからず嬉しい気がするのですが……。
「そう、なのかえ? では、このままお主の弾が尽きるまで続けるとしようぞ」
「よろしいのですか?」
「なに、ここは"りぞーと"施設なのであろ? なれば、賞品を気にするより、楽しんだ者の勝ち、と言うことじゃ」
ニヤッと人の悪い笑みを浮かべて、お姉様は私を先導されます。
「ホレ、こちらじゃ、ヒルダ。ここが密林を模しておるなら、この洞窟内にはランポスどもが群れておるじゃろうからの! 頼りにしておりまするぞ、相棒?」
「ハイッ、お任せくださいっ!!」
わたくしの胸も、まるで子供のころお兄様方に連れられてこっそり下町に"冒険"に出かけたときのように高鳴っていました。
* * *
「我が君、ただ今戻りました」
「お待たせしましたわ、お兄様」
素人同然のヒルダとハンマーをほとんど使ったことのないランの組み合わせに、内心ヤキモキしていたんだが、ふたりとも無事な姿を見せてくれたので、まずはひと安心だ。
「心外ですニャ〜。ここは楽しいレジャー施設ですから、命の危険ニャんてあるわけニャいです!」
リチャードが憤慨しているが、まぁ、気持ちの問題だ、許せ。
「えーと、おふたりの合計ポイントは……9800ポイント。惜しいですニャ〜。あとちょっとで1等を狙えましたのに」
ってことは、どうやら10000ポイント以上が1等か。
「中級コース2等の賞品は"こんがり肉食べ放題チケット"です。このセンターのグルメゾーンで使用できますニャ」
初級コースとエラく賞品のグレードが違わねえか、おい?
「ちなみに、3等は"こんがり肉グレート1人前"。1等は水光原珠を使ったペアのネックレスですニャ」
「な、なんですってーーーーー!!」
! な、何をそんなに興奮してるんだ、ヒルダ。お前さんなら、水光原珠どころか瑠璃原珠を使ったアクセサリーだって簡単に買えるだろうに。
「そう言う問題じゃありませんわ! 初めてのお姉様とのお揃いの記念品を手に入れる絶好のチャンスでしたのに……」
――ああ、なるほど。
「ふーむ、そんなに悔しがるとは申し訳ないことをしたのぅ。やはり、あそこで粘ってネコ王冠を完成させればよかったか」
「い、いえ、お気になさらないでください。わたくしが、鯛公望を釣り逃さなければ問題なかったのですから……」
とか何とかひと騒動があった結果。
俺が、センターのロビーで売ってる土産物の黒真珠のプローチを3人分買う、ということでケリがついた。
「……なんだか、微妙に納得がいかねぇ」
「あ、あのぅ、兄君様、私の分まで買っていただかなくとも……」
いや、そういうワケにもいかんだろ。こういう時、女の子をひとりだけハブにするのは後味が悪いし……って、お前さん、本当は男の子だっけか。まぁ、いいや。
いささか投げ遣り気味に3つのブローチを購入して、ウチの女性陣3人(?)に手渡す。
しかし、よく考えてみると、ヒルダやカンティはまだしも、俺が嫁さんに実用品以外のアクセサリー買ってやるのって、結婚指輪を除くとこれが初めてじゃねえか、オイ。
……ヤバい。自分が途轍もない甲斐性なしに思えてきた。
赤貧洗うがごとしの喰うや食わずの生活ならまだしも、家を即金で買えるほどの貯えを持つ旦那としては、いささか情けないかも。
そう考えると、もうちっとイイもん買ってやるべきだったかなぁ。
「いやいや、我が君、お気になさる必要はありませぬ。妾はこれで十分満足しておりまする。それに、初めて"家族"で遊びに来たよい記念になるではありませぬか」
そう言ってもらえると助かるが、逆にランがよくできた嫁だけに心苦しい気もするな。
「その通りだぜ、マック」
「糟糠の妻。偕老同穴。内助の功。マックには過ぎた女性」
「うぅ、やっぱりそう思うか? ……って、お前ら、上級コースに行ったんじゃあ?」
合いの手を入れて来たのは当然ながらカシムとキダフだった。
「もうとっくに終わったよ」
「ぶい!」
いや、キダフさん、無表情なままVサインされても対応に困りますって。
「こちらのお客様方のポイントは素晴らしいです! 20000ポイントを越えてますニャ!!」
リチャードがエラく興奮してるが、そんなに凄かったのか?
「ま、運もあるがね。ブルファンゴを倒したら、連続して竜岩が出てな」
「運も実力」
キダフの言う通り、ハンターにとっては剥ぎ取りや報酬の当たり外れも重要な要素だしな。ここは素直に脱帽しとくか。
……と、思ったのだが。
「20000ポイントを越えたお二方には、特賞としてポッケ村温泉2泊3日の招待券を差し上げますニャ!」
何だか、とっても、チックショウ!
* * *
ともあれ、6人揃っていい汗?かいたので、とりあえずひとっ風呂浴びようと言う話になって、前回の冒頭のような騒ぎになったわけだ。
「それにしても、お姉様、相変わらず抜群のプロポーションですわね。とくに、この胸!」
ムニッ!
「こ、これ、よさぬか、ヒルダ」
HAHAHA、そりゃ俺が、毎晩丹精込めて揉みしだいているからなぁ。
「いいなぁ、姉君様……」
「――貧乳はステータス。希少価値がある。問題ない」
なんとなくキダフの言葉に隠しきれない悔しさが滲んでいるように感じられるのだが、その辺り、どーよ、旦那さん?
「……ノーコメントだ」
ビクッ!
「あら、どうかしまして、キダフさん?」
「……何となくバカにされたよーな気がした」
!
(すげぇ勘だな、おい)
(バカヤロー、あとでお仕置きされんのオレなんだぞ?)
「うぅ、でも、やっぱりオッパイおっきくなりたいですよ〜」
「心配ありませんわ、カンティ。女の子は年ごろになれば相応に……」
あ、言葉に詰まったな、ヒルダ。あいつも思春期のころは、ペチャパイに悩んで、涙ぐましい努力を続けてたからなぁ。
あの頃の辛く哀しい思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡っているのだろう。いと哀れ。
……と言うか、ここらへんで誰か根本的な問題に突っ込めよ女風呂。
カンティは、一応、男の子だろーが! ――俺も時々忘れてるけど。
「本当ですか、ママ?」
しかしながら、あくまで素直なカンティは、敬愛する養母(ママ)の激励に、目を輝かせている……みたいだ。たぶん、想像だけど。
「え、ええ……」
「姉君様は?」
「ん? 妾は成人した姿で人化したからのぅ。しかし、近所の奥様方の話を聞く限りでは、バランスのとれた食事と適度な運動が、ないすばでぃには肝要とのことじゃぞ?」
「そうなんだー」
「乳製品がいいと言うのは迷信ですわ。むしろザクロや大豆などのほうが効果はありますわね。……い、いえ、あくまで人から聞いた話ですけど」
ププッ! そ、それであの頃、伯爵家(ウチ)の食卓にはやたらとザクロのデザートだの大豆食品だのが並んだワケか。
「わかりました! 私、がんばります!!」
まぁ、無駄な努力だとは思うが、乙女(精神的には)の夢を壊すのもナンなので、あえて追求するのは避けよう。盗み聞きしてたのがバレるのも恐いし。
……と、その時は思ったワケだが。
(後年、お年頃になったカンティの胸が明らかに膨らみ始めて、最終的にBカップぐらいにまで成長したのには驚いた。思い込みの力ってスゲ〜!)
「ぅおーーーい、そろそろ茹だってきたんだが、上がらねーか?」
女湯の会話が一段落したのを見計らって、壁越しに声をかけてみる。
「ああ、申し訳ありませぬ、我が君。ですが……」
「お兄様、レディのお風呂は、時間がかかるものですのよ?」
「すみません、まだ髪の毛を洗っていないので……」
ちっ、まぁ予測の範囲内の反応だが。
しゃあねぇ、先に上がって待ってるか……ん? 何やってんだ、カシム?
「シッ! バカ野郎。大きな声出すんじゃねえ」
女湯との境の壁をよじ登って……って、まさか覗く気か!?
「男と生まれたからには、イイ女が女風呂に入ってるのを覗かないわけにはいかんだろう、同士マクドゥガル?」
あー、その意見には同調してやってもいいがな。生憎隣りにいるのは、嫁さん含む俺の身内ばっかなんだわ。ドゥー、ユー、アンダースタン?
「え、えーと……わ、わかった。共に行こう。キダフの裸見るのも許すから」
それはそれで魅力的な提案だが、多分本人は納得しないと思うぞー。
「え?」
チョイチョイとカシムの背後の方を指差す。
恐る恐る奴が振り向いたその先には……。
「――憎悪の空より来たりて、正しき怒りを胸に、我は邪(よこしま)を絶つ盥(たらい)を執る!」
今にも鬼神を召喚せぬばかりに憤られた、女夜叉が壁の向こうから顔を出されていました。
「無限の投げ桶(アンリローデッド・ペイル)!」
「いたいイタイ痛い……や、やめてくれ、キダフ。オレが悪かったから!」
俺はさっさと逃げたからよく知らんが、カシムが次から次へ投げつけられる桶から逃げ惑う様は、女湯側の湯桶が無くなるまで続いたらしい。合掌。
〜その3につづく〜
<オマケ>
「しかし……改めて考えてみると、ポッケ村温泉旅行って微妙だな」
「オレたちハンターにとってはポッケ村って言うと、雪山の麓にある仕事場ってイメージが強いからなぁ」
「――問題ない。センターにかけあって、別の場所へのツアーと換えてもらった」
「へぇ、そんなこともできるのか」
「で、どこに行くんだ、キダフ?」
「―ジャンボ村食い倒れツアー」
「そ、それも微妙……」
「―ココット村英雄記念館見物と言うのもあった」
「……素直に換金してこようゼ、キダフ」
2010年08月17日(火) 09:08:46 Modified by gubaguba