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うたかたと消える

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
13うたかたと消える男ハンター×擬人化ロイヤルビードロー 擬人化(ロイヤルビードロー)・グロ注意653〜657、670〜675

うたかたと消える


ぷわ〜ん ぷわ〜ん ぷわ〜ん 【♪ ♪ ♪】

「黄色が3つで高周波……ってね。さあいい加減、地中から出てないか暴君よ。俺も早く終わらせて帰りたいんだ、これが」
『グオオオオオオォォ!?』

野郎、逃げようとしてたな。時間稼ぎも良いとこだよ、チキンブロス。両角の折ってやったから当然だろーが、それじゃあ暴君の名折れだぞ。
せめてこう、なんだ、命尽きるまで戦おうっては思わねーの。ひょっとしたら、俺が“あと一撃”で死ぬかもしれねーのによ。諦めるのは良くない事だぜ、うん。
この世にゃあ諦めた奴が損するようにできてんだよ、俺が聞いた話じゃあな黒龍から諦めず逃げ帰り、その帰りを諦めず待ってたら結婚できた女を知ってる。
まあ要するに、あれだ。しぶとい根性持てや。耳がやられようとかかって来いコノヤロー。

とにかくこの哀れな暴君を見て話さずはいられねーわ、本当。

「デッかい音で耳、痛てぇだろ。そりゃあそうだ。柔らかいセクメアの砂は、響く音を何倍にも伝えるらしいからよ、びっくらこいて飛び出すのも訳ねーか」
 それも特注品の笛だからできる芸当な訳だ、分かる?分かるよな。理解を求めようたあ思わないけど。せめてこう、なんだ。頑張れ。
 互いに頑張るからハントが成立すんだ。俺相手じゃあ仕方ないけどよ。お前に致命傷を与えたのはこの俺、笛使い様の持つ『ロイヤルビードロー』、高かったんだぜ」

昆虫笛シリーズ最新作の使い心地は上々、ディアブロスに有効な氷属性まで有る。虫素材でできてるのにおかしいという突っ込みは厳禁だ。俺に聞かれても知らない。
武器事体の性能はなかなかなんだが、へんてこりんな音色なんだよ……ぷわ〜んって。
噂ではどっかの国にある歌を封じ込めたとか、それを盗み聞いた姫さんが虫になっちまったとかいろいろ聞くけど、んなこたぁ有る筈ねーよ。
これは絶対に盗み聞くような音色じゃあ無いだろ、どう考えても。屁の音みてーだしよ。なんでこんなん作ったんだろ。

まあ一人演戯もこれぐらいにして、ヴァルハラへの引導を渡してやろうか。

「じゃあ、達者でな。今は達者でいられたら困るけど、まあ来世では狩られないよう頑張りな」

****

「ギルドの奴ら、おせーな畜生」

いくら俺が不良なかりぴー使いだとしても、この扱いはひどいんじゃあないか。いつまでディアブロスの死体と仲良くランデブーしてなきゃなんねえの。
かと言ってた死体から離れれば、糞忌々しいトカゲに食われちまう。それだけは避けたい、獲物を横取りされてたまるかよ。
言っておくが俺は食わないぞ、どっかの戦人じゃああるまいしよ。
強い物を食べると強くなるなんて、ならルーツ食った奴1人いれば世界は平和になっちまう。

考えを巡らせるとこの世は理不尽だな、モンスターは日に日に増えていくし斡旋するだけ斡旋してギルドは事後放置かコノヤロー。俺が死んだらどうするつもりだ阿呆め。
――まさか、俺は見捨てられた?

「んな事ねぇ、ある筈ねぇ、俺に限ってそんなことぁねぇ!」

『おらこんなギルド嫌だーっ』て言いたもくなる。寝たりして休みながら待てば良いが、わざわざベースキャンプまで戻るのも面倒だ。
ここで寝たらトカゲや虫の餌食だし、メラルーに身包み剥がされるかもしんねー。
そもそも、クーラードリンクがもう無ぇから戻れないって言った方が正しいな、うん。砂漠をクーラー無しで横断するくらいなら俺はリタイアするぞ。
モドリ玉?そんな便利なの、はなっから持ってきてねーよ。そこまでマメな人間に見えるか、俺が。見えるならそれは誤りだ。
あれは良い噂聞かないからよ、モンスターが人間になったとか……考えるだけでおっそろしー。今回も何かの拍子でディアブロス亜種が人間にでもなったら……

『黒ディア子、貴方の変な玉のせいで人間になっちゃいました☆』
『私を人間にした責任をしっかりとって結婚してください☆』
『さあ交尾をしましょう☆』

 絶 対 に 嫌 だ ね 
断固拒否。非人道的、いや非竜道的と言われようがギルドから刺客が送られようがその場で撲殺するか、閃光玉投げて逃げる。絶対にお持ち帰りはしない。
考えてみろ、人間の姿になったからと言っても竜だぞ。何をされるか分かったもんじゃあないッ!『ドラゴンファッカー』の烙印も御免だ。
むしろ、モンスターには拒絶反応。のーせんきゅー。あれと肌を合わせるなんて鳥肌ブツブツチキンダックだ。
中でも「あいつ、嫁欲しいから擬人にしたいんじゃね?」といわれるのが一番嫌だ。そこまで飢えてねえ。
という訳でモドリ玉を忘れたんじゃあ無いんだぞ。ドキドキノコだけ持ってきて素材玉忘れたわけじゃあ決してないぞ!うん否定した。

「しかしこう、なんだな。人間は手持ち無沙汰になって初めて“人間になる”ってぇ言うが、別にんな事ねぇぞ。凄まじく暇じゃ」

とりあえずポーチの中には何が入ってたかな。ひょっとしたら食い物とか何か暇つぶしになるような物、有るかもしんね。自分のポーチを信じろ、俺。
きっと期待に答えてくれるッ。

「食い物は携帯食料のみ、後はハチミツと薬草、回復薬が少々。つまり腹を満たすのは期待できねぇな、うん」
「ディアの剥ぎ取り素材、砥石。ドキドキノコに音爆弾。遊べそうなのは無いな」

要するに何も無い。自分を信じて裏切られるなんて奇妙な話だなクソッ。
ならば起こす行動は決まってる、ずばり“旋律”の練習!虫シリーズの狩猟笛は奏でる音色が複雑過ぎてまだ旋律を全部覚えちゃねー。
その割りに出来る旋律効果も、はっきり言うと使えね。『精霊王の加護』『高周波』ぐれぇしか目立った奴無いよな……でもまあ、ブロス系には有効だと思うし。
それにうん十万Zもしたんだ、そう簡単に放り投げてたまるか。俺の装備は笛吹き名人だ、ギルドが来るまで砂漠でソロコンサートしてやらあ!
人間の観客は未だにいない!ファン一号は高い所ででうっおとしそうに飛んでやがるランゴスタ!笑えねえ……

『ぷっぷかぷ〜 ぷぴゃあ〜 ぷわわ〜ん ぷぴゃあ〜 ぷっぷかぷ〜 ぷわわ〜 ぷわわ〜ん ぷわわ〜』


「旋律効果が発動しない……だと?馬鹿なッ
 KOOLになるんだ俺、うん。旋律二つの同じ音で移動速度が速くなって、旋律四つで精霊王が加護してくれる。間違えるんじゃあないぞ」

『ぺぷわ〜 ぴぴぷ〜 ぺぺぺ〜 ぷぴゃああ ぴー』

「悪化している……だと?」

出来損ないの音しか出ねえ。なんでだよ、さっきは高周波出たのにそれすら出ないってどういう事だ。あれか、ピンチな時しか出ないっていう変な設定か!?
俺は悪く無い筈だ。金色一式には笛吹き名人ついてるし、笛でディアどころか古龍も討伐できた。その時はこんな出来損ないな音なんか出てない。
澄んだ――力を与える音色を出せた筈なのに。なんだよこの屁みたいな音、つっぱりはいらないってか。洒落にならねえ……
とにかくあれだ、せめて旋律二つのやつぐらいは出せるようにならなきゃこの先やばい。俺の笛で俺の将来がやばい。

――もしかして、これがスランプってやつか?

「スランプは思い切って違う方法で練習したりすると良いと聞く。
 ……いっちょ力任せに吹いたらどうなるかねえ、やったこと無いからな。新人の頃はやってたが、あの時は肺活量が低い時だ。今はどうなるか想像つかん」

ここでシッキングタイム、ハンサムな俺が力任せに笛を吹いたらどうなるか?

1、ナイスに笛が壊れる
2、俺が壊れる
3、何も起こらない、現実は非情である。

「1は有り得ないな、2も有り得ない。ならば答え3か……。しゃっ、景気よく吹いちゃあらあ。せーの」


――キィイイイイイイイイイイイイイイイインイイイイイイイイイイイイィィィィィィィン

例えるなら“人工的なバインドボイス”とでも例えようか、いや俺のブレスか。耳を塞ごうにも笛を吹いてるから手を離せない。
むしろ聴いた瞬間、音で脳が揺さぶられた。それくらい凄い事が起こった。ビートとかそんなんざあなく。


「あ…りえね。いきな…り“凄い高周波”がおこ……るなんて…よぉ覚悟なかった…よ
 あったまと耳、いてえ……」

答え2 答え2! 答え2ぃぃ!!


(意識が)き……切れた、俺の体の中でなにかが切れた…決定的な何かが……


****

って俺りゃあ、いつ気を失ってんだ。あれだな、きっと大音量を間近で聞いたからだなうん。そうに決まっている。そうとしか考えられない考えたくない。
――にしてもここは砂漠じゃあないな。辺りは真っ暗で照りつける日差しは無いし、星も出てない。暑くもなければ寒くも無い。なんだろうな。秘境な筈ねえし。
何より砂でザラザラしてねえ。むしろ後頭部が柔らけえ、あったかい。

……待てよ、あったけえならまだしも、“柔らかい”ってどーいった事だ。砂漠には無い感触だぞ。なんというか、肉の感触というかなぁ。
ディアブロスなわけねーし、アイルーはここまで“でかく”ねえ。というか顔が横向いてるから見れねえ、というか頭が抑えつけられてら。

「気が付きましたか?」
「おう」

わーお、可愛いお声。どうやら笛で耳を壊されたらしいな、幻聴が聴こえるなんてよー。
ざまあねえ、耳が聴こえないとなりゃあとうとう俺もハンター引退か、長いようで短い生活だった。人間50年と考えりゃあ、折り返し地点だったけどな。
とりあえず田舎に帰って畑を耕そう。平凡な生活が俺を待っている、とんだ腐れ人生だ。悪くは無いが良くも無し。

でも……待てよ、全てが幻覚であるなら……今俺の頭が触れている物は何だ。それに幻聴が聴こえた時、耳に“振動”があった。
つまり空気を揺さぶる行為――すなわち発言があった。それを感じ取った(声を聴いた)俺の耳は壊れちゃあいない、正常だ。
もう決まってるよな、多分これは殺したディアブロスの呪いか。擬人化が嫌いな俺に人型になって現れるなんてとんだ野郎だぜ。
死して殺した奴の元に現れるのは昔話とかで聞いたことはあるが、いざわが身となればかなりの覚悟が必要。剥ぎ取りナイフは有るな、喉を掻っ切って逃げてやる。とにかく体位を変えなければ。

「どこのどなたかあ知らんが、介抱してくれたことに対し礼を言いたい。できれば俺の頭を離してくりゃあしないか」
「お断り申します、こうすれば耳に声が良く入る故」

やっぱりあれだ、きっと呪いなんだ。じゃあなければこんな馬鹿力が出せる筈無い。俺が懸命に頭を上げようとしているのに手のひららしきもので押さえつけられてるんだからな。
よくよく考えたら、これは“膝枕”という体制か。呪いにそんな事をされても嬉しくもなんとも無いぞ。

「もしこれが夢や呪いの類でなければ、俺の耳を強く引っ張ってみてくれ」
「こうですか?分かりません」

いてて……呪いでも無い訳だ。畜生、なら俺は女に頭を押さえつけられ身動ぎどころか指一本動かせない程非力なのか。

そんな事よりもだな、確認しよう。俺は砂漠にいた、ギルドの使いが来ないで笛の練習をしていた。そこまでは良い、俺の記憶にある。
そこからが問題だ、俺の記憶が吹き飛んでいつの間にか暗黒空間で女に膝枕されかつ……拘束されているってどういう状況に陥ったんだ。
いくら油断していたと言え、女の接近にすら気が付かない程笛の練習を熱心にやっていたか?とにかく状況分析を再開しよう、何事もKOOLになれば解決できる。

頭が触れる生地感じからして、これはかなり高級な素材を使ってる。それに頭が置かれている膝の固さが良い具合に気持ちが良いし、落陽草の良い匂いがする。
丁寧な言葉遣いだが声質が若干高くて、幼さが残っている。凄く良い具合だ。
――つまりボンボン妙齢のお嬢様ってわけだ。殺したらまずいな。
そんなお嬢様をギルドがホイホイとこんなところにお供も連れず1人で行くことを許可するだろうか。

「助けて(?)もらった身で、つかぬ事を聞くが、アンタはどちら様だ?」
「ずっと貴方の傍におりましたのに」
「……まさかだろ」

やっぱり俺の予感は的中、こいつはディアブロスに違いない。俺に殺されたから人間になったわけだ。
昔話じゃあ釣りカエルがキスされて王子様になったて奴も有るぐらいだしよ、ディアブロスがそうなったって不思議じゃあない。
この馬鹿力もディアブロスのなら納得できる、草食だから落陽草だって食うだろうし、若い個体だったとなれば肉質が柔らかくなったと言えば説明が付く。
なんという貧乏くじ、類稀なる不運。おれは七難八苦を求めた覚えなんてこれっぽちも無いぞ。むしろ七優八楽を存分にくれと叫びたい。
まあなんだ、もうこれはハンターに狙いをつけられたポポだ。人間様也に覚悟を決めようじゃあないか。いまさら足掻いても仕方が無い。

「俺を殺すか暴君よ、今ならそのバインドボイスで鼓膜を破ったり自慢の角で頭突きするなり好きにできるぜ」

頭を動かせないから面を拝めないからどんな奴か想像するしかねーが、さぞ猛々しい顔しとるんだろうな。
しかし、やっぱり俺のハンター生活はここで潰えるんじゃあないか、希望を捨てた俺が馬鹿だったよ本当に。

「何を馬鹿なことをおっしゃるんですか?」
「言っておくが番になるのはお断りだ。飛竜に犯されるくらいなら死を選ぶぜ、うん」
「私はディアブロスじゃあないです」

な、なんだってー!?落ち着け、クールになるんだ。素数を数えれば落ち着くらしいが、そんな場合じゃあない。じゃあこいつは何者だ?
まさか本当にお嬢様な筈は無いし、なら噂に聞く砂漠の民か。うん、今までの会話や雰囲気からそれは無いな。
どちらにせよ、この馬鹿力は絶対に人外だ。人間じゃあない、絶対に。

「……アプケロス?」
「NO」

なんだ、いったい何なんだ。疑問は体に悪い、知ることは義務なんだ。絶対に当ててやる。

「ヒント1 私は貴方に殺されました」
「やっぱりディアブロ……あだだだだだだだだだだだだだ」

救命阿!?上から力をかけてやがる、頭蓋骨が粉砕しちまう。つまりあれだ、このことから分かるのはいつでも俺を“殺せる”って事だな。
ふざけは身を滅ぼす事になる、いくら命を1度捨てる覚悟をしたからといってやっぱち惜しい。

「よぉく聞いてください、ヒント2 私は貴方のファン一号です」
「ランゴスタ」
「違います、それよりもっと前です。口付けも交わしました」
「……!?」

俺は今まで貞操を守ってきた、上の口も下の息子も。それに後ろも守ってきた。誰にも触れられていない。無論、将来のため。
その三口のうち、一番上を既に奪われていただと?馬鹿な、有る筈がない。酒に酔っても心は酔わないを徹底してきた俺が、だれかに口付けしていただとッ!?
OK、詳しく聞こう。誘導尋問は俺の得意分野だ、うん。

「俺が口付けするなんて、よっぽどの女なんだな。忘れるなんて恥ずかしい」
「貴方が知るはず無いですよ。向き合った時は敵同士、今は味方同士なんですから」
「 」
「絶句しました?」

分からない、本当に分からない。例えるならリオレウスを討伐しに行ってペイントボールが消え、どこにいるか分からなくなって絶望する時のような気持ちだ。
なんだこの言いようの無い気持ち。気持ち悪い、吐き気のするほどの気持ち悪さはこの時のような時を言うんだ。嘔吐したらやばいよな、飲んだけど。
本当にあれだ、俺には覚えが無い。いちいちメモをつけるような神経質な性格じゃあ無いが、こいつと戦い殺した覚えなんて何1つ無い。俺は殺人犯じゃあない、れっきとしたハンターだ。
だからこいつの言うことは間違えている、俺は正しい。

「思い出せないようですので、正解を言います。私は元『クィーンランゴスタ』そして今は貴方の使う笛」

 “ロイヤルビードロー”」

つまり俺は自我を持つクィーンランゴスタを殺し、その素材を使った笛をピ〜ヒャララしていたか。
この場で本当に破棄ださなかった俺を褒めてくれ、本当に俺は偉いと思う。この状況でナイフに手をかけなかったんだからな。
何故ならこいつはまだ話したがっている、なら話し終えてから殺さなければいけない。


「最初は人間だったんです」


――興味本位から笛の音を盗み聴き、その場に居た侍女はランゴスタに。私はクィーンにされてしまいました。
――密林で自分の姿を嘆き、それを見た数多の者を殺してきました。そんな中、逆に私は貴方に殺された。後悔は無かったです、なぜなら私もそれを望みましたから。
――その後私は素材として武器屋に出され、貴方に私が盗み聴いた笛にされてしまった。何の因果でしょうね。

「でもこうして、盗み聴いた笛の音を今なら堂々と聴くことができます。貴方には感謝しているんですよ」
「ならそれでいいじゃあないか、早く解放しれくれ」
「それでは気持ちが治まりませんね。それに貴方の体はもうキチンと動かない筈です」
「ッ!?」

おかしい、ナイフに手を当てていた筈なのに今はダランと力が入らない。
それどころ視線も固定されて、この状態から一切動かすことができない。なんだ、なんなんだ。痺れないから毒じゃあない、意識もはっきりしている。

「禊(みそぎ)は御済ですか?まだですよねまだなんでしょう?私が済ませてあげますよ。意識はキチンとありますよね、怖いくらい澄んでいるはずです。
 今の貴方はただの意識が有るだけの塊、人形さんです」
「ッッッンンン!!」
「ゾクゾクしますよね、絶望と敵意の有る目をされると。貴方が殺したディアブロスもそうでした。
 高周波で地面から這い出て来た時の目、息遣い、汗。全て私は分かります。貴方の今の状態はそれとそっくり、いえ、同じです」

「ほら、どうして萎えるんですか?一国の王女が貴方の一物を掴んでいるんですよ、光栄ですよね?」

殺したい殺したい殺したい、殺せばこんな事にはならなかったのに。俺はなぜ情をかけた、武器だったから?それとも境遇を哀れんだからか?


地面に仰向けに寝かされ、俺は王女様に乗られている。身動きは一切許されない、手がどんどん早くなっていき、俺の息子を刺激する。
気持ちいい、なにせ初めての経験だ。ただ死んでしまえばいい、俺を含めて死んでしまえばいい。この世から消えたい。
今の自分は自分じゃあない、手で犯されて呻いているのは俺じゃあない。屈辱をかみ締めているのが折れであり、俺じゃあない。

「は……なせ、俺は帰る……。だから」
「却下します、禊はまだ済んでいないのですから。これは命令です、貴方は逆らえません」

頼んだ覚えは全く無いし求めてもいない、砂漠に求めて来たのは体ではなく、ディアブロスの素材。
その素材を得て、後はネコタクを待つだけだったのに、今俺を掴んで離さないのは絶望と悪寒。そしてクィーンランゴスタ。
どうなるのだろう?俺はもう嫌だ。殺してくれれば良かったのに。

「私はね、思いました。いつか貴方を屈服させようと。さっきだって貴方がディアブロスにしていた事を間近で見て、ゾクゾクしましたよ
 ほらほらほら、いま私は貴方を“ハント”していますよ。普段とは考えられない、逃げ纏うケルビを笑顔で追い詰めるかのように。
 喚いてください、叫んでください、逃げようとしてください。そして私を楽しませてください、禊をさせてください」
「ッアア……嫌だッ」

やはり体が動かない、なぜだ。脳が懸命に指令を送っているのにことごとく無視してやがる。これは持ち主である俺に対しての反逆か。
そりゃああまり大事には使っていないが、ストライキは時と場合と場所を考えてしろ。今は究極にやばい状態なのに。

「生理的欲求は避けられないですよね、なぜならそれは人間の性だから私が笛の音を求めて盗み聞いたように、貴方も私を今“求める”、とても美しい形。私は今とっても幸せです」
「俺は今、人生で一番ふこ……んんッ」

舌が無理矢理ッ、くそくるな。唾液を流し込むな汚い。俺は貴様と睦み会おうなんてこれっぽちも思っていない。

「ん……っはぁっ、口づけはとても良いですね。笛を吹いている時とは大違い、なぜなら私が舌を絡めれるんですから貴方は何も言わなくても良いですよ」
「わたしはすべてわかりますから」
嘘だ、次は声が出なくなった。喉を鳴らそうと歯ぎしりをしようと、俺は何も音を発てる事ができない。
これじゃあ本当に“お人形”じゃあないか。悪夢なら早く醒めてくれ、そうじゃないなら誰でも良い、俺を殺してくれ。
もう駄目なのか、ティガレックスに押さえつけられたポポのように諦めるしかないのか、希望は無いのか。

「硬さはもう十分、ご立派ご立派。私は男を経験する前に虫にされましたが――凄い。こんなのが入ってくるんですね、虫のとは大違い、いただきます」
「ッグア……」

奴の口の中、コロコロと舌で弄ばれ、唇が音を立てて吸い付いてくる。蹂躙され、俺はうめき声すらあげれなくなった。
気持ちいいと言ったら本音だ、体が凄く反応する。気持ち悪くて気持ちがいい。
快感と嫌悪感の波状攻撃、俺はどうしたらいい。身を任せるか、抵抗するか

――どちらにしろ同じ結果になってしまう

「んぱっ、おいひい。殿方のはなんて良い味でしょう。我慢の汁だけでこんなに良いのに、精液なら……んふ、楽しみ。
いつまで耐えれますかー?もっといけます?」
「……ッ」
「体が動かない、声が出せないって辛いですか?辛いですよね、ランゴスタの麻痺液が注入された女ハンターもそんな感じのリアクションをしますよ。
 滑稽で――とても楽しい。そこをコンガやらに犯されるのを見てると、とても幸せでいられるんです。私は。」

俺が言えた義理じゃあないが、狂っている。コイツは姿を変えたとは言え、一国の姫だったんだぞ。
それがここまで狂っていれなんて、もう全てが終わりじゃあないか。
それとも何かがこいつを変えたのか、長い間虫と交わり続けて脳もスモールサイズ、性欲増大になっちまったのか?
とにかくこいつの常識は通じない、目の前に有る哀れな獲物、すなわち俺にしか興味が無いのか。

「虫になって、初めて交尾した時に思いました。私はこんな辛い目にあっている、なら次は私が幸せになる番だ。
 いつか人間に戻れた時に、思う存分“犯してやろう”と、今はそうは思いません。貴方を想うが故の行動です。
 貴方の汚れを祓ってあげますよ、私は姫、女王でありながら今は貴方の武器。だから主人のッ、汚れをッ、私の中にッ」

「受け入れてあげましょう」

やめろ、再び口をつけるな。俺は嫌だ、汚れているのはお前だ。虫と交わった体で俺に手をつけるな、お前になんか受け入れられたくない。
人間であるための最後の尊厳を失墜させるな、俺は人間でありお前は武器で虫けらだ。使われる身だ。手をかけるな触るな。

「……ッァァァ」
「んふぅ、あはっ、私の口の中で、すっごい濃いのがドクドクいってますよ?溜めてたんですか?
 当然でしょうね、発散させる場所なんて無いですし。それなら私でゆっくりねっとりと発散してください」

汚された、俺は奴の口に全てを汚された。舌を絡められ、身体中を舐めまわされ、挙げ句の果てには俺のを――
毛根から爪先まで針に突かれているように痛い。本当に痛い?心地よい?分からない。感覚が麻痺しているからか、相応の快感しかない。
快感が痛みで痛みが快感?そんな矛盾した事があるのか。少なくともおれはこの状態はそうだ。
本当に気持ちい、中で弾けたとき快感で頭が真っ白になった。直後に胸の中がまるで貫かれ、焼かれたような熱さに苦しめられる。
嫌だ、これ以上何もされたくない。離せ離せ離せ離せ離せ離せ。

「私にもっとください。貴方の汚れた物を、全てください。私を満たしてください」
「れ……ね。てめ……はな……や」
「あら、会話できるくらいになりましたか。なら、ゆっくりしていられないですね、残念。さあ、私と一つになりましょう」

それだけはッ、それだけは嫌だ。間違えてもモンスターや武器となんか交わりたくない。俺は人間でいたい。
真っ当な人間でいたい、犯されるなんて嫌だ、嫌だッ。

「快楽に身をあずけなさい、貴方は求めているです。私を、私のを。心はそうでなくても、貴方は求めているんです」

再び問う、これは悪夢か。そうだろう違いない。上で腰を振り、俺の全てを吸収しようとするコイツがいる夢から醒めさせてくれ。
これは、呪いよりたちが悪いじゃあないか。誰か、誰か俺を助けてくれ。お願いだから助けてくれ。
快感が下半身を中心に体中を駆け巡り、そのまま爆発しそうなんだ。嫌だ、その快感が一番嫌なんだ。出してしまうと俺はもう人間に戻れなくなる気がする。

「ハッ……ハッ……ハッ……」
「んふぅ、凄いですよ。下からズンズンと突き上げてきて、私の身体中を揺らします。こんなの初めてですよ、はぁっ。
 本当にッ……すごいいいいいいいいいいまっしろになるうううううううううう」



駄目だ、俺はもう駄目だ。“廃人”だ。

「精液あっついいい汚れが私の中に入ってくるううぅあああああッもっとおぉぉぉ、わたしぃの中にいいいいいい」


――廃人だから何をしても良い、自由だ。
――声が出せたんだから時期に体も動かせるようになるはず。
――ならばどうするかは決まっている。


「もっとおぉ……貴方のをもっとちょうだぁい」
「く……た、れ」

脳が腕に力を入れろと命令してる。当然、拒否などしない。快感で力が篭らないが、じきに戻るだろう。その時だ、その時に決めてやる。

「次は貴方が動いてぇ、私は少し疲れてしまいましたぁ。でも満足してなぁいです
 さあ、そろそろ力が入るでしょ、私のために貴方のため」

今しか無い。俺の胸に倒れこんでいる今しか、こいつを殺す機会は無い。ナイフに手が届く今しか、喉を掻き斬るには。
もう俺は何をしたっていい、良くこの地獄のような拷問に耐えた。なら俺には何をしてもいい権利が有るはずだ。
イ、マ、シ、カ、ナ、イ

「に――――」

掻き斬るを超え、それを“半分くらい切り落とした”。皮一枚で繋がるというやつだ。それでも足りない、肩口からナイフを突き刺し、中心に向かって剥いでいく。
仰向けだからやりにくいが、気にしない。
穴を開けた中に手を入れ、ズルズルと内蔵やら骨やらを引きずり出し、辺りに放り投げる。グチュリグチュリと心地の良い音が響く、もちろん俺はまだやめない。
刃が欠けようと手が汚れようと気にしない、元々は剥ぎ取りナイフ。何を剥ぐかによるが、剥ぎ取るためにあるんだから。それに俺はもう汚れている。
ゴロンと転がり落ちたあれから、生暖かい何かが流れ出している。恍惚な笑みをしたそれが、死体を腹の上に乗せて解体ショー真っ最中の俺の顔脇に落ちた。

気味が悪いとは思わない、俺は腹這いの体制になり、体から引き抜いたナイフをあれの眉間へと思いっきり“突き刺す”何度も何度も何度も。
そうしたらやっと立てるようになった。今まで立てなかったのが不思議なくらい、地面に足をつけて立ち上がって見下ろしてやった。

「貴様の血やら液やらで俺はもう日常へ戻れない。俺は人殺し、いや武器殺しのレッテルを貼られるんだからなあ。
 けど無理矢理でも戻らなければなぁ、分かるか。うん。俺はハンターだからよ」

しかし無惨ちゃあ無惨、骨やら何やらが露出した首から下。臓物が辺りに散乱して、眉間にはナイフが深く突き刺さって、半分味噌を出しながら転がってる。
それは見るからにとっても気持ちがいい光景。血がまだドロドロと流れ出して、ピクピクと四肢が痙攣している。まだ生きてるのか?そうでもいい。
ざまあ

「帰る、帰るんだよ。てめぇは持って帰らねえ、ガレオスにでも吹いてもらうんだな」

首でサッカーや缶蹴りやろうたあ思わない、が、やっぱり見られているようで邪魔だ、見苦しい。踏んでやる、踏み潰してやる。
原型も残らないくらい、潰れたトマトみたいになるまで。踏んで踏んで地面に埋め込んでやる。
脳味噌を辺りにぶちまけろ、目を潰せ、鼻をもぎ取れ。そうでもしなきゃあ俺の気がすまない。

「ふふふ」

いざ踏もうとした瞬間やつが口を開いた、信じられるか?目玉の無い目を見開き、血だらけで歯の抜けた口で笑いながら……だ。
この時点で既に有り得ない、そしてもっと有り得ない事が起こる。

「私はずっと貴方のを側にいます、虐げられても何をされても貴方の武器
 壊されようと放置されようと燃やされようと売られようともずっとずうっとぉ」

イツマデモアナタノソバニイマス

おかしい、奴は死んだ筈なのに。なぜ喋れる、なぜ俺はその言葉を聞いた。なぜ耳を傾けた?
人いや、モンスター以外を殺したのは初めてだが、これが“異常”だとは分かる。むしろ今までの全てが異常だったんだ。

真の恐怖とはこの事か、逃げなければ。こいつのいない場所まで早く。出口はどこだ扉はどこだ?

「うあああああッッ……――」

****

「……さま、だんな様。起きるニャ」
気持良い感触だ、肉球に顔を圧迫される、とても良い。背中が砂でザラザラする感じがなんとも言えない安心感。冷たい地面ではない。
解放されたんだ、俺は地獄から。いや違う。夢だったんだ、最初から。全部が気絶した俺の見た夢、それが真相でいい。
全てが納得できる、そうなんだよ。やはり世の中は上手くできているんだな、うん。

「ネコタクだニャ。旦那さん、狩が終わったと言え、寝るなんて良い度胸しているニャ」
「ああ、お褒めにあずかり光栄だよ。うん」

「それに、武器が壊れているニャ。角竜にでもやられたかニャ?」

「――ッ!?」
ロイヤルビードローが“真っ二つ”になってる、それも、斬られたようにスッパリと。
周りには部品が散らばって、あたかも俺が夢で奴を殺したのと同じような感じで砂に転がって……夢だったんだよな、そうだったんだよな。
あれは夢だと自分に言い聞かせ、納得もした筈だ。

「笛は運んで――」
「いいから帰るぞ。ディアブロスにやられて節々が痛いんだ、笛なんていい。早く、いいから早く俺を運んでくれはやくッ」
「ニャ、ニャ、分かったニャ!」
この場から離れたい、笛から離れたい。いっそ死んでしまいたい。とにかく逃げなければ、早く。

****

奇妙に日数だけが過ぎる養生の日々。確かに数ヵ所の打撲や捻挫は有った。
しかしそんなのより無理矢理犯されて、その相手を殺した(壊した)事、正気じゃないような目で見据えられた事、全部が俺の心に残っている、残されているのかもしれない。

とにかくそれが俺を再び狩場へと赴かせるのを拒ませている。纏わり付くようにして俺から離れようとしない。
だから毎日、淫夢を見る。俺が奴に毎晩毎晩犯され、最後はきまって俺が殺す。そして目が覚める。眠れた気が全くしない。だからヤツレも酷くなってきた。

『笛が壊れたからと言って、塞ぎこむ事も無いだろうに』

仲間ハンターに言われる、笛使いの俺がこんな調子だから、原因をそう取られても仕方ないだろう。
今日も仲間の一人が励ましに来てくれた。何時ものようにベッドの上で応対する。
しかし、何か違う。何時もならさも哀れそうに語りかけるが、今日は喜々としながら砂漠で討ち取った獲物の事を誇張を交えて談遊する。正直、うるさい。

「いやぁ、鋼龍は強かった。なんせ翼の羽ばたきで砂地が全て削れちまうんだからな。お前が旋律吹いてくれりゃあ皆が楽だったのに」
「そうか、申し訳ないな。うん」

申し訳ないとは思っていないが。とにかく早く帰れ、頭が痛くなる。

「そんなテメエのために朗報だ、武器屋のおっちゃんに行ってみ。いや行け。いい物が見られるぜ」
「断る」
「立てよ、首に縄つけても連れて行くぜ。倒した後に良い物見つけたんだからよ、テメエにやるよ」

乱暴な奴だ、俺は今行きたく無いのに。しかし逆に考えよう、行けばもう来なくなるかもしれない。なら行こう、行ってやるさ。見るだけで良いんだろ?
それだけで俺が一人になれるなら大歓迎だ。さあ早く用件を済ませろ。

「おっちゃーん、連れて来たぜ。復元できたか?」
「丁度良いタイミングだな。完璧に復元できたから持ち主に見せてやれ」

今、何と言った?復元だと、何をだ。何を復元した。錆びた物は風化した物は砂漠に出ないのに。
俺に見せたいのはそれなのか、復元したものを見せて何になる、そしてその復元したのは何なんだ。

「鋼龍の風で地面が削れた後から出てきたんだ。ほら、お前だろ。

これ “ロイヤルビードロー”」

俺がその後とった行動は間違いじゃないと確信できる、なぜならば俺が『心から思った行動』だからだ。未練も何にも無い。
それは何かって?俺をこの場に連れてきた奴の剥ぎ取りナイフで自分の首をこうやって

“掻き斬った”のさ。な、当然な行動だろ?解放されたいんだよ、そろそろ。希望を捨てて闇に堕ちたいんだ。分かってくれるだろ?

****

…眩しい、とても。天国の光?違うな、見慣れた雷光虫の灯かり。そしてこの部屋は俺の部屋。
なぜだ、俺は喉を掻ききって死んだ筈なのに。なぜ俺は生きてベットに横たわっている?

「おい、大丈夫か!? 何を馬鹿な事してるんだよ、精霊王の加護が無ければ死んでいたぞッ」
「ああ……ああああ」
「にしてもよー、不思議なこともあるもんだなあ
 お前がナイフを突き刺す瞬間、笛が勝手に鳴り出したんだぜ。風のせいだと思うけどよ」

理解した、俺は逃げられない。自殺しようと殺されようと、何をしようと、この笛“ロイヤルビードロー”の持つ力から。
正確にと言うとそれに宿る者の執念から逃げる事は叶わない。これから俺はどうすれば良いのだろう?
こいつに犯されて暮らすのか、それともこいつを担いで狩場に復帰すればいいのか。今の俺には分からない。言える事はこの先『絶望』しか無いという事だ。

「お前、なんか変だぞ。とりあえず体を大事にしろよ」


イツマデモ
アナタノ
ソバニイマス

うたかたと消える fin
2010年08月21日(土) 12:14:00 Modified by gubaguba




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