保管庫内検索
作品メニュー
作者別

スレ別

画像保管庫

キャラ別

編集練習用ページ

まだ必要なものあったら編集頼む
最近更新したページ
最新コメント
キャラ別 by 名無し(ID:5Lz/iDFVzA)
キャラ別 by 名無し(ID:cOMWEX4wOg)
キャラ別 by 物好きな狩人
キャラ別 by  
降りてこないリオレイア後編 by 名無し(ID:UKypyuipiw)
25-692 by 名無し(ID:PnVrvhiVSQ)
一角獣 by ケモナーかもしれない
誇り高き雌火竜 三 by ルフスキー
暴君と暴姫 by 名無し(ID:vg8DvEc9mg)
タグ
Wiki内検索
カテゴリー

こころと盾と

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
13こころと盾と男ハンター×擬人化ダイミョウザザミ蟹の人擬人化(盾蟹)46〜47、50、123〜128

こころと盾と


「それでは姫、行ってまいります。帰りは遅くなりますが、心配は要りませぬ故、安心してくだされ。何かあったらアイルー5人衆へ」
人間(名前が複雑すぎて覚えれない)は今日もハンター家業らしいです。結構忙しいのですね。
私がまだ蟹だったころはあんなに通いつめる暇があったのに。どうでも良いですが。

申し遅れました、私は元大名ザザミです。謎の劇薬を飲まされ、人間の姿になりました。人間からは姫とよく分からない名前で呼ばれています。
“惚れた”とかいうのが理由らしいです、迷惑千万ですね。だから人間は馬鹿なのです。
そして奇妙でしょ、奇妙ですよね。モンスターが人間になるなんて。私だって急にこんな姿になって戸惑いを隠せないのですから。
体が軽いのは良いのですが頭にわっさわっさした毛が生え、自慢の鋏が無くなりヤドも背負えなくなってしまいました。 なんという悲運ッ、でも気にしません。
だって私はもと蟹さん。細かい事を引きずるような種族ではないのです、盾蟹一族は。そして今私がやるべき事は……

  • 睡眠
  • おさんぽ
  • 食事

掃除とか人間が全部やったんですよね、当然ですけど。
『姫様は家事をやる必要などござらん。拙者がやります故、身繕いしていてくだされ』だそうです。
ちなみに私は人間の言葉が良く分かりません。さっき言われた言葉の半分以下しか意味を理解してないので、本能に忠実になろうと思います。

「……まずは何か食べましょう、生物の基本は食にありです」

でも私は料理の作り方なんてこれっぽっちも知りません。当然ですよ、元は蟹ですし。
だいたいなんか落ちている物を鋏で引き千切り、口に運んでモグモグですから。人間は不便ですよね、そんな事するとお腹を壊しちゃうらしいですし。

っとここで私の頭の上に『!』マーク

「そうだ、人間は肉を焼いていましたね」 またまた私が蟹だった頃、人間はストーカー紛いの行動を繰り返し、私の食事中など時間を持て余した時に近くで肉を焼いていたのです。懐かしいですね、思えばムカッ腹立ってきましたよ。
でもそんな事より食事です、食欲は全てにおいて優先すべし!それが生命の基本であり生きる道。

「たしか肉を中央に置いて……おお!次に火をつけぐーるぐるー」

たん♪ たたん たたた たーらんらんらん♪ たららん たららん♪ たららん たららん たたたん♪

ぶわぁ……

「生焼け肉でしたー?」

むう、タイミングが少し早かったようです。まあでもミディアムですよミディアム。食べれるだけ有難いです、恵みに感謝感謝。

「……旦那さんの姫さんは家の中で何をしているにゃ?」
「んぐ、たしかマサムネくんでしたね。見れば分かる通りお肉を焼いてました。半分生でしたけど」
「言ってくれれば料理くらい作るのにニャ」
「自分で作るのに意義があるんですよ、私はまだ生活し初めて日が浅いです。覚えなければいけない事も沢山、肉焼きもその1つ。そして出来

たのを人間に食べさせたいんです(大嘘)」

あれ、マサムネさんが泣いてますよ。
「な…なんという旦那さん思いの立派な人間、料理長マサムネは非常に感動しているニャ…」
「ムサシ、コジロウ、ヨシツネ、ベンケイ!」
「はいニャ!」
「旦那さんの姫さんに料理を髄まで叩きこませるニャ!旦那さんが帰ってきた時にビックリさせてやるんだニャー!」
「ニャー!」「ニャー!」「ニャー!」「ニャー!」
「「「「「えいえいニャー!!」」」」」
なんか凄い事になってますニャー(移った)。因みに私は料理するなんてこれっぽっちも思っていませんでした。口が滑った……と言えばいいですかね。
「さあ先ずは黄金米研ぎからニャ」
「あのー」
「無駄口たたくにゃ!研ぎは指が大事ニャ、優しくかつ大胆にニャ!」
「……はい」

何気にこのアイルーたち、厳しいんですね

※※※
蒼き龍刀【朧火】、我が家に伝わりし秘伝の刀。刃は肉を斬り骨を断ち、猛る蒼き火は龍をも焼き滅ぼす。
「朧火よ、なんと答う。いつぞや角竜を退治せし時の呼応を成してでも拙者は眼先にいる邪龍を退く力無しか」
古のシュレイド城、一緒に来た3人のハンターの内1人は既に瀕死、残るは拙者を含め3人也。
風前の灯火な仲間は龍殺しの蒼き片手剣【蒼鬼】を持つ狩人なり。されど憎黒なる火炎を防がば身全て粉塵と化し、鎧甲冑痕すら残さず消えうせる。龍殺しのみそこにあり
。兼ねて4人は龍殺しの剣を持ち負けんと思い出陣したものの、こうあらば退く気すら感じる。
「どうする、斬るか退くか。こいつは軽症じゃあないぜ」
大剣使い問う。かの奴、龍を封ぜし“滅”の銘を持つ大剣を使い、古龍すら恐る益荒男(ますらお)也。仲間を気遣い即席のクーラードリンクと秘薬を投与し看病す。
「どうする、私はそれが得策だと思うけどね」
双の剣を持つ者“絶”の銘を持つ。双振りの剣は互いに共鳴しかの老山龍の体さえ裂きにける。兼ねて大剣使いと恋仲なれど、微塵にも出さず。
豪鬼な気質故、恐れ知らずながら流石に現状判断はできる。不利と分かり意見に同調する。
浮き足だった我ら邪龍の退く力など持たずベースキャンプにて額を寄せ合うも、なにも浮かばず。

「武士は相手に背中を向けることは許されざる事では無き」

拙者は太刀を背負う者也。東方で龍殺しを生業とし初代から数えて十七代の跡取りではあるが、父上に無理言い大陸に渡った次第。
そのとき継いだ太刀【朧火】と共に角竜を薙ぎ、ギルドに頼まれシュレイドで邪龍――『黒龍ミラボレアス』を討伐しに参ったもののこのざま。
しかし武士道に退くという文字あらず、逃げ傷は生涯の恥なり。この上は戦って果てるべき。

「2人がギルドへ救援依頼に走る事を提案する」
「何を言っている、頭は大丈夫か?俺達はバディを組んでいるんだぞ」
「無論承知、このまま4人果てるか。それとも拙者のみ死せるか。どちらが今後大きい。これ以上龍殺しのハンターが死せるとあらば、余計に被害が増える一方」

「賭ける必要などござらん、逃げッたびゃ!?」
拳――いや、双剣の柄で頭をしこたま殴られた。いつから殴られキャラが定着したのであろうか。始めは姫に殴られ、次は絶に殴られ目を回す。
拙者はそこまで女運が悪かったのでござろうか、無論暴力的な意味で。序盤のシリアスな展開はどこへ行ったのにござろうか。

にしても痛い、今のは痛かったぞー!

「なぁにが“逃げ傷は恥じ”よ、だから東国のハンターは嫌いなのよ。目の前の事しか考えず、振り返ろうともしない」
「こら絶、何て事を言うらバッ!?」
恋人である大剣使いまで殴っている――気性の荒き事まさに鬼人のことし、拙者よりよっぽど漢らしい。本当は猛々しい一物がついているのでは……
しかし、このままではいかん。東国武士の名折れ也。
「何がいけないのか、某に納得のいく説明を求もう」
「あー、まったく男は馬鹿の集まりなんだから。あんたが昔、武道は護りの道とか言ってたけどさ」
「いまあんたが死んで、残した人をあんたはどうやって護るのよ」
「ぬッ」

突然姫の顔が浮かんだ。

「それにさ、例えば私の恋人、だらしなくコブを作って伸びてるやつ」
「アイツが例え背中にデッかい傷をつくって、命からがら逃げ帰ってきたとする」
「私は泣くよ、そして喜ぶよ。“生きていてくれて良かった”って……ね。どんなに恥だろうと情けなくても、私はアイツが生きていてくれれば幸せだから」

違う。逃げ傷は武士の恥なのだ。恥をかくくらいなら戦い果てる、それが幸せ也と言いたいのだ。恥を知らしめるくらいなら死を選ぶ。
武士道とはそうであり未来永劫変わらない不変の掟、それを背負うのが武士であり侍なのだ。
「そんな詰まらない、ちっぽけな心で何が武士道よ。ばっかみたい」
「……」
「まあ私なりの解釈だけどさ、護りっていうのは他人だけじゃあなく“自分を護る”っていう意味も有るんじゃないの。護身っていったっけ」
「護身?」
「あんたが自分を護ること=あんたを待つ人を『悲しみから護る』ことに通じてるわけでしょ」

――武士道とは死せるだけに道あらず、時には退き再起を図るのもまた道。悪戯に命捨てること、生ある者への冒涜極み也。

「それは…考えてござらんかった」
「そりゃあそうよ、ブルファンゴのように突進するだけの脳で何を考えれるって言うの。たまにはケルビみたいにみたいに回避し、左右事も考えな」
「貴方の帰りを待つ人、いるんでしょ」

東国での女子は家事をし、男を影から支えるのみでごさった。しかしこの大陸ではどうでこざろう。時とし男より強く、突飛かつ的確な考えも出し状況を打破せんとす。
国が違えば考えがこうも違うのかと脅かざんばかりなり。このような考えが発展の鍵となるのでござろうか。
「さすればどうする?」
「ここまで来てまだ分からないの?」

『みんなで“逃げる”のよ』

……その時遥か異国の地、とある一族を思い浮かぶ。拙者は書で知った事柄であるが『最後の切札、それは逃げる!』という物。
理には敵ってはいるが、問題点あり。そこら辺は考えておらなかったのか。

「拙者の知る限り、シュレイドの地から外へと通じる出口は一ヵ所のみ。そこへ辿るには、かの邪龍を退かせなければならん。拙者が足止めする」

滅は倒れた仲間を運ばねばならない。絶はそれを護らなければならない。故、拙者が獅子奮迅にして退路を開こう。
あらかた時間を稼ぎ、拙者も逃げる。したば全員助かる。まさに神の考える退却案!
自分は軍師にござらんがまさしく奇計!策略!三国の世なら用いられることこの上なし。

「その申し出は大変有難いんだけどねぇ、あんた私の言った事を理解してる?というか馬鹿でしょ」

拙者は馬鹿と言われる事が多いようだ。かねて勉学は得意でなく、講義を居眠りしていた事はあるがキノコを追いかけるモスのように単調ではないと思う。
しかし馬鹿馬鹿言うのも決まって女子、拙者は生来より罵倒される運命なのだろうか。

「無論。何れ追いつく、死ぬ訳にはいかぬ故。心配せずともこの龍衛門、殿(しんがり)は心得たり」
「……分かった。滅、起きて片手を運んで」
「ん、ああ」

あとは……これを
「絶」
「あん?」
「拙者の家に居る者にこれを渡してはくれぬか?」
「これって……あのときの老山龍のお守りじゃん。あんた、あれ程言ったのにこれを手放すなんて死ぬ気なの?というか同居してたなんて聞いてないわよ」
「いいや――只の贈り物にて。根掘り葉掘り探るのは野暮にござる。どうか言う通りにしてくだされ」
「……分かった」

あの爪は拙者達が老山龍を討伐した時に全員で作ったもの。滅は苦労していたが……拙者はなぜかスンナリと作れ、何か運命を感じさせる爪。
拙者が死しても、姫はあの爪が護ってくれる筈。
これで思い残す事はござらん。

「じゃあ行くよ、死なないで」
「生きてろ、龍衞門。必ず助けに来るからな」

さっさと行くが良い、意地でもそなたらには向かわせない。大切な大切な仲間の命、消させるわけにはいかなく候。

「聞け!黒龍ミラボレアスよ」」


――天下無双の刃持ち

――突き進むは修羅の道

――鬼と会わば鬼を斬り

――神と会わば神をも斬る


『悪鬼羅刹の“龍衞門”ここにあり!』

※※※
「上手にできました!」
アイルーさん達に教えられてとうとうできましたよ。黄金米のオニギリ(梅干し入り)これを作るのにどれだけの米が暗黒空間に消えたことか。
一番苦労したのは海苔の形!それにオニギリをいかに三角に、かつ崩さずに握るか!微妙な力加減がすごかったですよ。
……人間は食べてくれるでしょうか?


コンコン


噂をすればなんとやら、極上☆オニギリを食べさせてやりましょう。腰を抜かしますよ、きっと。なんたって私の手作りですからね。
そんじそこらのアイルーや酒屋のとは訳が、いえ、角が違います。

「はいはい〜」

確かにそこにいたのは人間でした。
でも人間は人間でも傷だらけの体をした女性でした。目はギラギラに輝き、所々から血がしたたり落ちており私は思わず目を背けました。
当然ですよ、あんな姿を見たら普通倒れて卒倒しちゃいます、私は良く耐えたと思いませんか。

「龍衞門の家……だね」

そこまで言うと、崩れ落ちるように膝を地面につけゴホゴホと血を吐きました。これはただ事ではありません、ゲキレツ毒テングでも食べたのでしょうか。
急いで私はタオルと薬を渡し、どうにか女性が話をできる状態まで回復した時です。信じられない話を聞きました。

「龍衛門は……あのミラボレアスと戦っている。私も早く行かなければいけない……」

ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。確かに遅くなる〜みたいな事は言っていましたが、ミラボレアスと戦っているですって。冗談きついですよ。
だって装備はいつも通り老山龍の武具に太刀の朧火。口調も態度も普通でした。食欲旺盛で私に抱きつきもしましたし。
いたって普通でしたよ、それがミラボレアスに行っただなんて。

「人間は……」
「ごめんなさい、私は彼がいまどうなっているか分からないの…」

私に一言も言いませんでしたよね、そんな事。なんで私に言いもせず、死と隣合わせになるような狩りを引き受けるんですか、馬鹿です。大馬鹿です、あの人間は!
普通それぐらい言うでしょ、もう戻って来れないのかもしれないのに一言も無しですか、ムカっ腹立ちますよ。
もし私が蟹のままだったら白い泡をブワワ〜って吐いてますよ。ああムカツキます、馬鹿人間。

「でも、多分アイツは死なないよ、みんなで約束した」
「当然ですよ、彼は私に惚れていますから!」
「!?」
「でも私には“惚れる”という感情がいまいちよく分かりません。でも人間は帰ってきます」

ある時は角竜ディアブロスに裸で挑み、ある時はザザミをこんな姿にしたストーカー人間なら死にません、確信があります。
きっと『ひめー』と言って戻って来るに決まっています。それはどこへ行っても共通の掛け声なのですから。

「あいつが……あんたにって。これ」
「おっきい爪ですね、しかも綺麗な装飾までされて」
「お守りだよ、あいつだと思って大切に取っておきな。そしていつか――返してやればいいよ」
「? はい」

そして女性は帰っていきました。大丈夫でしょうか。人間の方じゃないですよ、女性の方です。かなり落ち込んでました。

そして2週間が過ぎました。依然として人間は帰ってきません。伝書クックからの手紙も来ないです。どこでモタモタしているのでしょう。
もしかしたらギルドでなんか引き止められているのかもしれません。そうです、そうに決まっています。
なんせあの人間は不死身ですから、ミラボレアスの1匹や2匹はお茶の子さいさい……だと思います。

「今日も来ませんでしたか」

長期間の放置プレイはいけないと思います。帰ってきたらどういった罰を与えてやりましょうか。
全身もふもふの刑とか……ああ、考えるだけで恐ろしい。もふもふされるんですよ、全身を、こちょぐったいったらありゃしない。それをインナー姿にしてやりましょう。
それとも思いっきり背中をガリガリしてやりましょうか、いえ、首筋にガブリなんてのも。なんだか血が騒いできましたよ、私は元蟹ですし。
早く帰ってきませんかね、オニギリがどんどん増えていきますよ。


こんこん


ドアをノックする音です!またあの女性でしょうか、それともまさか人間――

「龍衞門さんのお宅かね」
「村…長?」

ババアでした。くそッ、人間はまた私の期待を裏切りましたね。重罪です、罪を加算してやりましょう。
なんせまた私の期待を裏切ったのですからね、ガブリとか単発の刑だと気が済みません。ストレスも溜まってますし。
というかこのババア、タイミング良過ぎですよ。なんかこう、『探知』みたいなスキルを発動させているのではないでしょうか。
でも何をしに来たんでしょうか、私には特段用事無いはず……です

「これがシュレイド城に落ちていたそうじゃ」
「人間の……愛刀?」

刃の半分から尖端が無い【朧火】とかいう人間の刀です。元々澄みいるように蒼かった刃は赤く、ドス黒く変色して見るも無惨な姿となって村長に握られています。
なんでこうなってしまったのでしょうか、黒いのは黒龍の血だとしても赤いのは……まさかですよ、まさか。
人間の?違います、思い過ごしです。きっと何かの筋かなんかです。血なはずないです。

「形見として持っておきなさい。黒龍と戦い生きて帰って来た者は――」
「ふざけないでください!人間は生きています!帰ってきます!必ず、絶対に!」
「……」

人間、貴方の帰るべき場所は気味の悪いあんな場所では無いはずです。早く帰ってきてください、オニギリ作ってますから。
私は待ちますよ、いつまでも待ちますから。早く速く走って帰って来てください―――

そして、とうとう1シーズンが過ぎました。人間は帰ってきません。私はずっとオニギリを握っていました、それ以外の事は覚えていません。
加工屋に出した刀は元の輝きを取り戻し、居間に飾っています(刃先は戻らないと言われました)。受け取りには来ないのですか?
だって仮にも先祖代々が云々とかほざいてましたし、無きゃやばいんじゃあないですか、この刀。でも私をほおっておくのはもっとやばいですよ。
すごい罰を考えてしまいましたからね、背筋ゾクゾクな罰を。まあ、オニギリは作り続けますけど。

「いったい、私に何個オニギリを作らせるつもりなんでしょう。手がカサカサです」

私は元大名ザザミ、いろいろ待つ事には慣れています。昨日は徹夜で待ってました。
けど、けど限界はあります。なんか塩辛い……海水のようなのが流れてきました。ここ毎日です。自分の意思では止められないのです。
オニギリが塩辛くなってきました、理由は分かりません。私はお塩なんていれないのに。

「痛ッ……お守りが」
――人間が私に預けたお守りが弾けました。昨日までヒビ1つ無かったのに。不吉です。

「人…間?もしかして貴方はもう――」
「姫!会いとうございました!」

へ、帰ってきたのですか。本当なんですモゴッ!?く……唇をッ

「姫…」
「いいい、いきなり何をするのですか!私はそんなことを望んでなんかいないでヒャッ!?」

ちょ人間、どこを舐めているのです!鎖骨なんてへんな所を舐めないでください、そんな所を舐めたって美味しくないですよ、ううう。
それにいやらしい手付きはなんですか、私のインナーを脱がせて……全裸にして……押し倒されて

「とても、とても心苦しく思っておりました。拙者の前で珠のような素肌を見せつけて以来、ずっと」
「ちょっと離してください……いきなり交尾なんていやですよ……」
「愛しております、姫」

くうッ、人間め。私が人間と人間の交尾の仕方を知らないことを良い事に好き勝手やらかしやがります。癪です、非常に癪です。
何より大名ザザミとして生まれ人間になって以来、純潔を守り続けたこの体。人間に好きなようにされるのが癪です。
体を目で犯し、手は胸を蹂躙され、唇は唾液で汚され、言葉巧みに耳を刺激しているこの状況。体はあっついし頭は真っ白け。人間は何を……

「んんんッ」

手が……性器まで。触らないでくださいぃ…

「思えば拙者の初めて(の口付け)を奪ったのは姫でござった。今度、拙者が姫の初めてを貰い受ける」
「だめぇ、人間。ダメですよ許さない……」
「姫、拙者は姫の事を愛してござります。ひと時でさえその気持ちを忘れたことなどござらん」
「……人間」
いやです、こんなの人間じゃないです。無理やり事に運ぶような奴じゃあないんです!

「人…間、事に運ぶ前にこれだけは答えてください。そしたら私の体を好きにするといいです」

――貴方はもう死んでしまったのですか?

「……」

黙ってしまいました。手も耳も口を動きをやめ、覆いかぶさった状態からじいっと私を見ています。
その目は限りなく悲しそうで、私を捉えて離そうとせず、じいっと見ています。そんな目をしないでください、答えが分かりそうでもっと悲しくなります。

「もう少し――時間をくだされ。拙者にはやるべき事がまだ残っているにて候、分かってくだされ。姫」

分かりません!それが答えですか。いえ違います、答えになっていません。私の問いに答えてください!
人間は重罪です、私を放っておいて死地へ赴き夢で私を犯し、だんまりして結局答えを出さないのですか?あきれます、本当に馬鹿です。
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿人間です。早く言ってください「拙者は生きている」って

「姫、また会う日が来る事を楽しみにしております」
「人間、待ってください、話はまだ終わってませんよ、人間ーーーー」

――私は転た寝していたようです。しかも、枕を水で濡らしながら。
しょっぱいです……というかもう朝ですか。時が経つのは人間が居なくなってから遅いと思っていたのに……。 にしても変な夢見ましたね。
あれが予知夢というものでしょうか、それとも正夢?もうどっちだっていいです。結果は分かりました。

「オニギリ、作らなければいけません……ね」
意味無いのに、人間はもう食べてくれないのに。癖ってやつですよ。抜け出せない物ですね、そう簡単には。
近くに転がる割れた爪が全てを教えてくれたようです、人間は死んでしまいました。

「そういえば……米を研ぐのを忘れました。なんという不覚(真似しました)」
それはそうですよね、寝ちゃいましたから。これから研いで炊くのも億劫ですけど……前に握ったオニギリを解体しましょう。

「ってあれ、ない?」
握ったオニギリが無くなっています、おのれどこの食い逃げでしょうか。
この大名ザザミから食べ物をくすねるなんて半端な度胸じゃあないですね。まるであの人間みたいです。もう居ないんですけど、けじめはつけなければいけません。
死者を汚すのは許される行為でなく、あれは私が人間のために作ったオニギリ。これからもこの先ずっと人間だけの物なのです。
「さあ食い逃げめ出てくるのですぅッ!?」


目が真っ暗ぁ!?塞がれちゃいました。まだ家に食い逃げがいた事自体が驚きです。つい走った言葉だったのですが。
人間がいない今、私がおっぱらわないといけません。クソッ、離してくださいッこのこの……私がまだ蟹だったらこんなやつ一撃だったのですが!離せ暴漢!

「姫、オニギリ美味しゅうございました。立派になられましたなぁ」
「……へ?」

あれ、聞き覚えのある声が背後から……いやに記憶にある暴漢です。私はストーカーと呼んでいたような気も。

「鳩が豆鉄砲を撃たれたような顔して、どうなされました?」

手を離し、目で見た先には本当に見覚えのあるむさい顔。懐かしいどころかずっと覚えていようと誓ったその顔は……
「本物ですよね、夢じゃないですか?」
人間のほっぺむにむに〜つむじぐりぐり〜私のあたますりすり〜。うん、痛がってる。人間です、本物です。夢じゃなく!

「人間…人間ン!」
「心配をおかけしました、姫さま」

いつまで私を放置したら気が済むのですかッ。貴方は…貴方は……大馬鹿者のストーカー失格です!馬鹿ぁ!

「すぐには帰れなくござった……かの黒龍と戦いで確かに拙者は囮として戦いぬいた、なんせ3人を逃がした後にて」
「拙者は疲労頂点となり堪らず逃げようとした時、怒った黒龍が這いながら迫ってきたのですからな」

その時、オニギリを握って拙者を待つ姫の顔が思い浮かんだのでこざる。『死にたくない』と恥ずかしながら思った時にござります。

「しかば黒龍の攻撃を受けた朧火の刃先が折れ黒龍の頭に深々と刺ささり、弱点を突かれ弱った黒龍は何処へと去って行き難を逃れた次第にござります」
「その後拙者はギルドの病院に直行、入院という屈辱的経験を……その後、拙者を含めた隊で黒龍を討伐し帰って来た所美味しそうなオニギリが……」
確かに折れた朧火の尖端を持っていますね。でもその前に言いたい事が多々ありますがやっぱりお仕置きが先ですね

「そんな事、どうでも良いです んー!」
「ムグッ、ぷはっ。姫!?」

これがお仕置きです、重い重い罰。この後まだ続きますから覚悟してください。言うべき事もあります。
「今なら分かる気がします、人間のいなかった時の気持が“寂しさ”“悲しさ”。そして今ここで感じている温かい気持、これが“惚れている”という事ですね、人間」
「姫…そこまで。ご心配かけ申した。真に申し訳ない。拙者は腹斬りものにござる……」
「そんなことより人間、私の言った事、どこか違うのですか?」
「いえいえ、正しいことこの上無しと拙者は存じます。少々照れますが……」
なら良いんです、人間。かえって来てくれたことで帳消しにしてあげましょう。私は優しい元大名ザザミなんですから。

「拙者は」「私は」「そなたに」「あなたに」


惚れ申したッ  こころと盾とfin
2010年08月21日(土) 11:55:08 Modified by gubaguba




スマートフォン版で見る