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クック先生 中編

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
クック先生 中編男ハンター×擬人化イャンクック・男ハンター×女ハンタークック先生の人擬人化(怪鳥)280〜289

クック先生 中編


 森のなかをふたりで歩いていると、マルコが思いついたように言った。
「俺、あんたのこと、先生って呼ぶよ。じゃなくて、呼びます」
 言葉と態度を直そうとしているのは、彼なりに、師弟の礼について思うところがあるからだ。ものを教わるなら、それなりの礼儀を尽くさなければならない。その程度の常識は持ち合わせていた。
「せんせい、ですか?」
「ああ! 師匠ってこと、です!」
 女は困ったようにほほ笑む。マルコはそれに気付かないのか、異様に気をよくしていた。
「先生の名前、なんて呼べばいいのかな」
「あなたたちが、私たちの一族をイャンクックと呼んでいるのは知っています。それでいいでしょう」
「いや、先生はただのイャンクックなんかじゃないし、それってつまり、俺のことを人間って呼ぶようなものだろ。やっぱり名前には個性があったほうがいいよ」
 そう言って考えたすえに、マルコの頭がひねり出したのは、
「クック……そうだ、クック先生っていうのは、どう、ですか!?」
「ええ。いい名前をありがとう」
 安直な――と思わないでもないクックだったが、輝くような目で言われると、そんなことを言う気は起こらなかった。
 ……それにしても、澄んだ瞳をしている少年なのだ。
「あ、あのさ、それでさあ、クック先生」
「はい?」
「そのままだとやばいから、その、服を着てほしいんだけど……」
 クックはまだ裸のままだった。当然、豊かな乳房も丸い尻も、赤い陰毛が生えた秘部も丸見えとなっているわけだ。
 最初の驚愕から立ち直って、そういうことに気を回す余裕が出てくると、マルコのような初心な少年には刺激が強すぎる格好だった。しかもマルコは童貞なのだ。ズボンの奥のペニスは硬くなっていた。
 みなまで言われずともそのことを悟ったクックは、うなずくと、森の奥のほうに歩き出す。
「どこに行くんですか、先生」
「メラルーたちの住家に」
「メラルーの?」
 メラルーとは、ハンターたちから親の仇のように憎まれている、二足歩行の黒猫のようなモンスターだ。アイルーと同じような姿の種族だが、人里できちんと働いて収入を得ている彼らとは違い、人間の持ち物を盗んでは売りさばいている。
「あそこには、人間の品が集まっています。きっと人間の衣服もあるでしょうから」
「そうか。やっぱり頭がいいなあ、先生は」
 メラルーたちが集まる小さな集落は、森のもっとも奥深いところにひっそりと佇んでいた。
 クックは一匹のメラルーの前にしゃがみこむ。
「メラルーよ。私のこの姿に合う衣服はありませんか? それと、そこの彼に武器を」
 にゃあ、と返事をして、メラルーはどこかへ走っていった。しばらくすると戻ってきて、衣服と武器だと分かるものをクックに手渡す。
 クックは柔らかくほほ笑んで、そのメラルーの頭を撫でてやった。
「いつもありがとう。お礼はきちんとしますからね」
 メラルーはまた、にゃあ、と鳴いた。
 用を済ませて、里を出ると、クックはすぐに手に入れたものに袖を通した。初めての経験なので少しとまどったが、意外と簡単に着ることができた。
 そうやって身なりを整えると、クックはまるで学者のようだ。紫色の、簡素な造りだが美しい衣服。よくもまあこんな上等なものを盗んできたものだと、マルコは感心してしまった。
 マルコに渡された新たな武器は、片手剣のアサシンカリンガだった。バスターソードに比べれば攻撃力は格段に落ちるものの、鋭い切れ味を誇り、軽くて扱いやすい。
「片手剣かあ……うまく使えるかなあ」
「きっとできると思いますよ」
「そっ、そうかなあ?」
 照れながら、さっそく剣を振り回している。それにしても純粋で単純な少年だった。
「それにしても、なんか複雑だなあ。あいつらにはいつも盗まれてばかりだから……感謝するのもなんだかなあ」
 集団で襲いかかられ、回復薬や閃光玉などを根こそぎ盗まれて、泣く思いをしたことは何度もある。マルコにとっては憎んでも憎みきれないやつらなのだ。
「今度からはマタタビを持っておきなさい。そうすれば、彼らはそれだけを盗みますから」
「そうなんですか?」
「ええ。彼らは猫です。猫はマタタビに目がありませんからね」
「へえ! 知らなかった」
 感心して、クックへの尊敬をますます高めるマルコだった。

 

 弟子入りしたといっても、クックはイャンクック――つまり飛竜なので、マルコの剣の扱い方や体さばきに口を出すことはあまりできない。だがその代わり、モンスターの生態やこのあたりの地理についてとても詳しい。
 ランポスがどのようにして狩りを行うのかということや、ランゴスタが集まる場所、特産キノコがよく採れる場所、飛竜が寝床としている洞窟など、クックは自分の知識をマルコにすべて伝えていった。
 特に、今はリオレウスとリオレイアが巣にしているという場所についての情報は有益だった。つがいの火竜は恐ろしい強敵だ。知っていれば、間違って近づくことはない。
 マルコが今まで無能だった理由は、戦闘の拙さよりも、無知によるところが大きい。ひたすらモンスターを倒すことばかりを考え、勉強は英雄には不要だと信じていたのだ。
 だが、膂力さえあればそれでいいと考えることをやめたマルコは、クックの話を素直に聞いた。そして綿が水を吸うように、その知識を吸収していった。
 木漏れ日が降り注ぐ森の水のみ場で、クックの授業が行われている。
 ――マルコはファンゴに対して真正面から斬りかかり、いつも返り討ちにされていた。
「ファンゴの突進はとても強力ですが、その勢いゆえに軌道が単調になりがちです。動きをよく見極めたなら、たやすく避け、足を止めたところに攻撃することができます」
 ランゴスタの羽や甲殻を集めようと思って倒しても、バラバラに破壊して素材を駄目にしてしまう。
「彼らは強い衝撃に脆いのです。毒を使って仕留めれば、問題ないでしょう」
 よく傷つくので、回復薬がすぐなくなってしまう。
「アオキノコと薬草を調合なさい。薬草もアオキノコも地面に生えています。アオキノコは、モスの背中に生えていることもありますね。そうやって作った薬にハチミツを加えれば、さらによく効く薬になるでしょう。ハチミツは、もちろん、蜂の巣から採れますよ」
「なっ、なるほど」
 マルコはひたすら感心して、一所懸命にクックの授業を受けつづけた。
「でも、なんで先生が、回復薬の作り方なんて知ってるんですか?」
「それは、私が先生だからです」
 すました顔で言われて、マルコは「はあ」と応えるしかなかった。
「――というのは、冗談ですが。むかし、こうして人間の姿をしているときに、たまたま出会った親切なハンターから教わったのですよ」
 そう言って、むかしのことを思い出すように遠い目をしたとき、その表情がなぜか寂しげに陰ったが、マルコはわけを訊こうとは思わなかった。人の大事な部分を無遠慮に探るような行為は、恥ずべきことだと思ったからだ。
「さあ、今日の授業はこれぐらいでいいでしょう」
 いつのまにか、あたりは暗くなり始めていた。夜になれば、狩り場にはいろいろと危険が増える。夜行性のモンスターの行動が活発になり、昼にも増して狂暴化するし、足元も定かではなくなるからだ。
「私は巣に戻ろうと思いますが……」
「えっ」
「……どうしました?」
 マルコが残念そうな声を上げたので、怪訝そうにクックは言った。
「いや、先生、もう行っちまうのかなって、思ったんです」
「まあ」
 恥ずかしそうにうつむいたマルコを見て、クックは好ましい感情を覚えた。
 まるで、親鳥を慕う小鳥のようだ。
「明日もちゃんと会えますよ」
「そうだけど……先生、ベースキャンプで俺といっしょに寝てくれないかな?」
 マルコにとっては、一世一代の告白のような、思いきった発言だった。女性を、それもこんなとびきりの美人を自分の寝床に誘うなど、人生で初めてのことだったのだ。
「かまいませんよ」
 クックはほほ笑み、あっさりと了承してしまった。そのことを後悔したのは、マルコのほうだった。

 ――眠れない。
 鎧を脱ぎ捨てインナーのみになり、地面に布を敷いて眠るマルコは、背後のベッドですやすやと寝ているはずのクックの存在を感じていた。
 昼間、始めて人間の姿を見せたときの、あの素晴らしい裸体が脳裏に焼きついて離れない。目を閉じれば、目蓋の裏にあの妖艶な肢体が鮮明に浮かぶ。
 異性の裸に免疫などあるはずもないマルコの股間は大きくテントを張り、とても眠れるような状態ではなくなってしまっていた。
 こんなことなら欲を出さずに巣に帰ってもらっていればよかった、と後悔してももう遅い。どうしても間近にいるクックのことを意識してしまい、若い性器に血が集まってしまうのだ。すでにそこはパンツの上からでも分かるほど大きく硬くなっている。
 ――仕方がない。と、決心して、マルコは静かに音を立てないよう立ち上がると、天幕の裏手に広がる池に向かった。
 ここではよく魚が釣れる。黄金魚は驚くほどの値段で売れたものだ。
 そんなことを思い出しながら、橋に腰掛けると、パンツのジッパーを下ろし、ペニスを取り出した。窮屈なところから解き放たれて嬉しいのか、勃起した肉棒はぶるりと震える。
 赤黒く充血したグロテスクなペニスを握り、擦った。とりあえず、こうして一回は射精しておかないと、眠れる気がしなかったからだ。
「苦しいのですか?」
 背後から問われて、マルコは心臓が飛び出そうな驚きを味わった。
「せっ、先生!?」
 振り向けば、息が届きそうなほどの間近に、いつのまにかクックが立っている。
「お手伝いしましょう」
 そう言ってしゃがむと、後ろから抱くように手を伸ばし、マルコのペニスを握った。
「ちょっ、先生、なにをっ」
 あまりのことに、マルコは悲鳴を上げる。自慰行為を見られたことと、さらに初めて他人にペニスを触られるという羞恥心によって、顔が真っ赤に染まっていた。
 いきり立ったペニスを上下に優しく擦られてしまうと、マルコの我慢など薄氷のようなものだ。歯を食いしばって尻の穴に力を入れても、どうしようもない。
「先生、俺、もうっ……」
「我慢しなくてもいいのですよ」
 耳元で優しくそう言われたとき、ついにマルコは射精した。
 ペニスが熱く脈打ち、精液が尿道の出口から勢いよく噴出していく。その最中にもクックは肉棒を、そして縮んだ袋の裏側を愛撫しつづけ、精液が残らず吐き出されるようにと手助けしていた。
 池には、大量の白濁の汁が浮いている。
「楽になりましたか?」
「……は、はい……」
 クックの顔をまともに見れず、うつむいたままマルコは答えた。あれほど盛っていた股間のものは、とりあえず欲望を吐き出したので落ちついている。これで今夜は眠れそうだ。
 背後で、クックは立ちあがったようだ。
「では、おやすみなさい」
 ひとり残されたマルコは、しばし呆然としていた。
 そのうち、のろのろとペニスをしまいこむと、夢遊病者のように寝床に帰っていった。

 

 いったい、昨夜のアレはなんだったのだろう。
 ぼんやりと思いながら、マルコは剣を振る。
 一匹のランポスが首を横から切り裂かれて悲鳴を上げ、倒れた。
 片手剣は、マルコが扱うには最適の武器だった。武器の軽さと小柄な体を活かして自由に動き回り、敵の急所に最適の一撃を繰り出すことができる。
 振り向きざまの一閃で、背後から襲いかかってきたランポスの首を斬り飛ばすと、マルコはようやく安堵して、ふう、と息を漏らした。
 その周囲には、三匹のランポスが屍となって転がっている。みな、首を斬られ、一撃で葬られていた。
 マルコは、近くから一部始終を見届けていたクックのほうに向き直る。
「どうですか、先生?」
「ええ、たいしたものです。見違えましたね」
「凄いよ! 武器を変えるだけで、こんなに強くなれるなんて」
 今までさんざんてこずり、昨日などはあやうく殺されかけていたランポスたちを、さほどの苦もなく倒せるようになっていた。確実に実力が上がっているのだ。
「これなら、ドスランポスだって楽勝かも」
「――マルコ、後ろです」
「えっ?」
 突如として、背後の茂みからランポスが飛び出した。
 押し倒される瞬間、咄嗟にアサシンカリンガを抜き放ち、腹部に突き刺していなかったら、死んでいたのはマルコのほうだっただろう。
「びっ、びっくりしたあ」
 立ち上がったマルコの体には、たっぷりと返り血がかかっていた。
 クックの目つきが厳しくなる。
「敵の姿が見えなくなっても、油断してはいけません。一瞬の気持ちのゆるみが死を招くのですよ」
 マルコはうなずき、アサシンカリンガを腰にさした。
 沈んだため息が漏れる。
「やっぱり、俺にはまだドスランポスは早いかなあ。前に倒したのだって、まぐれかも」
「そうかもしれません」
 クックの言葉には容赦がなかった。が、情けがないわけでもなかった。
「そうでないかもしれません。……どちらにしても、つねに努力しなさい、マルコ。強くなりたいのでしょう」
 クックは薄い笑みを浮かべて、手を伸ばすと、マルコの頬を撫でた。
 白く、芸術品のように繊細な指を自分の肌に感じると、それだけで、マルコは夢見心地になってしまう。これが昨夜、本当におのれの醜悪なペニスを握ってくれたのかと疑ってしまう。
「先生、あのさ……昨日の夜のことなんだけど」
「どうかしましたか?」
「いや、その、あれはどうして」
 どうして、あんなことをしてくれたのか。ただの小僧の滑稽な自慰を、どうして手伝ってくれたりなどしたのか。
「溜まったままでは、辛いでしょう?」
「それは、そうですけど」
「また辛くなったら、私に言いなさい。いつでも手伝ってさしあげますから」
 また、あんなことを? いつでも? ――そう思うだけで、マルコは頭から湯気が出そうになり、そして、股間は痛いほど膨張した。
「だっ、だったら、そのっ」
「はい?」
「いっ……今、ここで……」
 恥知らずな願いを口にするのに、マルコは一生分の勇気を必要とした。が、なんとか言葉にすることができた。

 クックが、そんな初心な少年の熱い欲望をあざ笑うようなことは、もちろんなかった。
「ふふっ……。いいですよ。さあ、そこに腰掛けて、楽にして」
 言われるがままに岩の上に座るマルコ。クックはその前にひざまずくと、マルコの股を開かせ、防具やベルトなどを取り外しにかかる。
 ジッパーを下ろしてやると、すでに硬くなっていたペニスが元気よく飛び出た。
 マルコの胸は、淫らな期待に高鳴っている。この極上の美女が、いったいこれからどんなことをしてくれるのだろう? 昨夜のように手で射精に導いてくれるのだろうか。
 そうではなかった。クックはペニスを手で握ると、汗や尿や精液で汚れているペニスを、なんのためらいもなく口に含んだのだ。
 柔らかい唇と、温かな口内の感触が、敏感な性器を丸ごと包む。
「うっ、うあ、先生っ」
 クックの性技は巧みだった。カリ首や裏筋を舌でなぞったり、亀頭を歯で刺激したりもした。そんなことをされるたび、マルコはいちいち悲鳴を上げる。
「せっ、先生、先生……っ!」
「どうしました?」
 ペニスから口を離して、クックは上目使いでマルコを見上げた。口調とには、からかうような響きがある。
「やめたほうがいいのですか?」
「そっ、そんな」
「続けてほしい?」
「……は、はい」
「聞こえませんよ。男の子でしょう。はっきり言いなさい」
「つっ、続けてください! もっとして!」
 からかわれていると知ってはいても、快楽への誘いに抗えるはずもなかった。
 クックは、くすりと笑った。
「よく言えましたね。――では」
 なんと、着ていた服をはだけさせると、その胸を露出させたのだ。なにをするつもりなのかと、つばを飲み込むマルコ。
 クックはその豊満な胸で、マルコのペニスを両側から挟み込んでしまった。
 柔軟な肉の塊に押しつぶされる感触――そして、わずかに突き出た亀頭を、クックの舌に責められるという、二重の衝撃が、マルコの思考をたやすく快感で埋め尽くす。
 そのとき、ペニスの先端を未知の衝撃が襲った。
「くうっ!?」
 鈴口から無理やりに進入した舌の先端が、尿道に押し入ったのだ。
「あっ、先生、そこはっ――っ、はぐぅっ!」
「まあ。まるで女の子のようですよ」
 意地悪く笑われて、マルコは顔から火が出そうな思いをした。
「ここを責められるのは嫌ですか?」
「嫌、っていうか……変な感じです」
「そうですか。では、こちらはどうでしょう」
 返事をする暇もなかった。クックの手がマルコの尻のほうに伸びて、人差し指と中指がアナルに突き刺さったのだ。
「んぐふううっ!?」
 敏感な部分を乱暴に犯され、マルコは目を見開いて本物の悲鳴を上げた。
 細い指先が、アナルの奥で妖しく蠢いている。それは苦痛をもたらしていたが、同時に少しの甘美な悦楽をも生み出していた。が、おぞましいことに変わりはない。
「やっ、やめっ! やめろっ……」
「やめろ? やめてください、でしょう?」
 冷ややかに言って、クックは作業を開始した。拷問という名の作業を。
 尿道を舌で責め、アナルの奥を指で責める。
 マルコは堪えようとした。さすがに、ここまでされて素直に従うというのは、男としてのプライドが許さなかった。
 なんだ、こんなもの。今までこれよりも痛いことなんていくらでもあったはずだ。
 堪えられるはずだ。
 堪えられる。
 堪えられ……
「はひっ! はひいっ! やめっ、やめてください! やめてください先生ぇっ!」
 堪えようのない苦痛が、マルコのプライドをたやすくズタズタにしてしまった。もはや少年の心は完全に屈服してしまったのだ。

 クックは満足げにうなずくと、
「では、そろそろ終わらせてさしあげます」
「えっ」
 今までよりもさらに深く、ペニスの内部に舌が突き刺さった。
 アナルの奥で指が曲がり、ペニスの裏側の前立腺を押しつぶした。
「んくあああっ!?」
 精を放ったという実感さえもない、突然の射精。
 精液はすべてクックに飲み込まれていく。その間ずっと、マルコは射精の余韻を感じながら、涙で滲んだ目を空に向けていた。
 ずぽん、と、はしたない音を立てて、アナルから指が引きぬかれる。
 全身から力が抜けていくような気持ちを味わいながら、マルコはどさりと倒れた。
 虚ろな目をして、息を荒げている少年の頭を、クックは優しく撫でてやる。
「ごめんなさい。あなたがあまりにもかわいらしかったものだから、少し意地悪をしてしまいました。……それにしても、恥ずかしい果て方でしたね」
 マルコは、クックの顔をまともに見ることができなかった。今の行為で彼女のことを嫌うようなことは絶対にないが、恥ずかしさだけはどうしようもなかった。今だけは、その美しい顔を見ることができなかった。
 ――と、ふたりの周囲が暗くかげった。頭上から、巨大な影が落ちたのだ。
 マルコが空を見上げると、天空を飛翔する生物がいた。逆行のせいでシルエットのみしか見えないが、その特徴的なフォルムには見覚えがある。
 今までに、何度か他のハンターと組んで卵の運搬をしたとき、運悪く出くわしたことがあったのだ。
 あれはおそらく火竜リオレウス――いや、
「……リオレイア?」
 と言ったとき、視界が赤く染まった。
「うわっ!?」
 なにごとかと思い、目をこする。異常を感じたのは右目だけだ。
 ぬぐった右の手の甲についていたのは、血だった。落ちてきた血が目を潰したのだ。
 あたりをよく観察してみれば、点々と血の跡がある。
 どうして落ちてきたのかなど、考えるまでもない。
「あのレイア、怪我してるのか」
 水筒の水で血を洗い落とすと、マルコはリオレイアが飛び去っていく方角を見ながら、衣服を正して防具をつけた。
「先生、あの方向って……」
「ええ。彼女は傷ついています。巣に戻り、体力を回復するつもりなのでしょう」
 クックの表情には、真剣味がある。
 あのリオレイアの巣とは、地図のほぼ中心に位置する洞穴だ。飛竜はよくあそこに巣を作る。広くて住みやすいうえに、風雨をしのげて、天井に空いた穴から出入りすることも簡単だからだ。
 そして、生態系の頂点に君臨しているはずの飛竜が、なぜ巣に逃げ戻らなければならないほど消耗しているのかといえば、その答えは限られてくる。
 鼻をつくペイントボールのにおい。
「俺以外のハンターが、狩りにやってきたっていうのか?」
 リオレイアを――それだけでなく、おそらくはリオレウスまで。つがいの飛竜を狩るとなれば、そうとうな実力を持つハンターたちのパーティだろう。
「また、ハンターが……」
 深く沈んだようなクックの声。
 マルコは胸が痛んだ。どうしてなのかは分からなかったが。ただ、この美人の悲しむ顔は見たくないと、そう思った。
「先生……俺、どうしたらいいだろう」
「分かりません。それは私にも分かりません。……どうしようもないことなのです、きっと」
 クックは、リオレイアの巣がある方向に目をやった。悲痛な感情が表情に表れていた。
「あの夫婦は、最近になって卵を産みました。ですが、もう」
「卵、って……そんな」
 マルコは愕然とした。卵だと。飛竜の卵。成長して飛竜となる卵。だが、今、親であるリオレイアは狩られようとしている。おそらくはリオレウスも。そうすれば卵はどうなる。育ててくれる両親を失った卵は。
「俺、助けてくる」
 決意を秘めてマルコは言った。
「ハンターに事情を話して、レウスもレイアも助けてくるよ。待ってて、先生」
「マルコ? やめなさい、危険――」
 その言葉を最後まで聞かずに、マルコは駆け出した。
「あの卵は、俺なんだっ」
 叫ぶ。そして、走る。
 クックは、小さくなっていく少年の背を見守ることしかできなかった。

  

 洞穴の中央に、桜色のリオレイアが冷たくなって転がっていた。
 無残にも切り刻まれ、全身からおびただしい量の血を流して、倒れていた。
 険しい崖をなんとか登り、息を切らしてたどり着いたときには、もうすでに、そうなっていた。
 絶望するマルコの視線の先で、リオレイアの死体に腰掛ける者がいた。
 まだ十五歳ほどの少女だ。顔立ちからして、東の国の人間だろうか。整った幼い相貌に、なにかを面白がるような笑みを浮かべている。とても美しい。黒髪は、自分で切ったのか、適当な長さで揺れていた。
 ハンターだ。それも、尋常の者ではないことを、マルコは一目で理解した。華奢に見える体つきから判断してはいけない。
 身にまとう漆黒の鎧と、彼女自身から立ち上るようなドス黒い鬼気は、遠く離れたここからでも肌寒さを覚える。
「ねえ、レティシア。この仕事って、もう終わりだったっけ」
 少女は、目の前に立っている女ハンターに声をかけた。甘ったるい、妖しい響きの声。
「まだだ。獲物はつがいだからな。リオレウスが残っている」
 答えたのは、女の硬質な声だった。レティシアと呼ばれたこちらは、兜を着けているために素顔は分からないが、仕草や声質から几帳面な性格をうかがわせる。おそらく、黒髪の少女よりも一回りは年上だろう。
 装備は、グラビドSシリーズの防具と、竜騎槍ゲイボルグ……重装甲のランサーだ。
「リオレイアを倒したからには、それを感じてここにやってくるだろう。そこを叩く」
「ふうん。めんどくさ」
 どうやら、彼女らはふたりだけのようだった。ほかに仲間がいるのかもしれないが、少なくともこのあたりにはいないようだ。ということは、たったふたりでリオレイアを――それも、より強いとされる桜色の亜種を倒したということか。かなりの実力者だ。
 進み出ようとしたマルコは、しかし立ち止まって、岩陰に隠れた。なぜそうしてしまったのかは分からない。ただ、とてつもなく危険な予感がしていた。
 そのとき、雄々しい咆哮が洞穴中に響き渡り、天井からリオレウスが降下してきたが、マルコの直感が危惧したものとは果たしてそれだったのだろうか?
 ドス黒い鎧の少女が、ゆっくりと立ち上がった。どう猛で強力な飛竜、火竜リオレウスをこれから相手にしようというのに、その表情や仕草には少しの不安も見られない。
 少女は、背負った獲物を鞘から抜き放った。太刀だ。長大な刀身は、黒と緑に彩られている。その名も黒刀【参ノ型】。巨大昆虫の貴重な素材から作られていて、羽のような軽さと想像を絶する切れ味を誇る逸品だ。
 レティシアも盾と槍を構え、戦闘体勢に入る。
 地に降り立ったリオレウスの、怒りに満ちて輝く双眸が、屍となったリオレイアに向けられる。
 轟く雄叫びを聞き、マルコは我が耳と感覚を疑った。
 これは……感情だ。とてつもなく深い感情が、リオレウスの口から咆哮となってほとばしっている。なんという、悲しみと、怒りと、憎しみ。それは物理的な圧迫感と化して、対峙してすらいないマルコの心身を打ちのめす。
 まさか飛竜が、連れ合いの死を嘆いているとでもいうのか。……いや、マルコには、もう、そうとしか考えられなかった。
「うっさいなあ」
 そう言いながら、うっとうしそうに顔をしかめると、耳を叩いて、黒い少女が走った。そして、太刀を振った。
 リオレウスの鼻先をかすめた剣先が、ぱっと赤い華を咲かせる。
 痛みと憤怒による怒号が上がった。
 次の瞬間、リオレウスが叫んだ隙にその首の下に潜り込んだ少女は、下から上に剣を一閃。残像が見えるほどの速度での切り上げが、リオレウスの太い首を両断した。
 まず、怒りの形相の顔が首ごと落ち、その後、遅れて胴体がくずおれる。血が噴き出たのは、さらにその後だ。
 ――えっ、とマルコが思ったときには、すでに終わってしまっていた。ランサーの出番は皆無の早業。
 黒刀の凄まじい切れ味もさることながら、少女の腕前も圧倒的だ。硬い鱗や強靭な筋肉などで守られた飛竜の首を、まさか一撃で断ち切るとは。たとえ同じ武器を使ったとしても、マルコなどでは絶対に不可能な芸当だった。

 少女は、自分が落とした首をしばらく見下ろしていたが、不思議そうに首をかしげて、黒刀を振り上げた。
 そしてそのまま、突き刺す。右の目から進入した刃が左目から突き抜けても、もはやリオレウスはなにも語らない。怒ることも、無念の涙を流すことも、ない。
「あれっ。もう壊れちゃったよ。さっきまで動いてたのに。……ねえ、どこに命が入ってたのかなあ、これ」
 勝利を誇ることも、飛竜の死をあざ笑うようなこともない。
 ただ不思議そうに死体を眺め、言った。
 それが、彼女が命というものをどう思っているのか、なによりも雄弁に物語っていた。
「くだらん」
 レティシアが吐き捨てる。その声には、黒い少女に対する嫌悪感が滲んでいる。
 少女は聞いていないようだった。
「ま、どうでもいいか。終わった終わった。……それにしても暑いねえ、ここ。汗かいちゃったよ」
 そう言うと、なんと、おもむろに鎧を脱ぎ始めた。同姓の視線しかないと思っているとはいえ、大胆なことだ。
 胴、腕、腰の防具や、インナーを乱暴に放り投げ、大きく伸びをする。
「あー、すっきりした」
 マルコは驚いた。上半身だけ裸となって、病的に白い肌をさらした少女の胸には、少しの膨らみもない。成長が乏しいとかいう問題ではないようだった。
 そう、少女は、じつは少年だった。遠目だとはいえ、まったくそうは見えなかったが。
「ねえ、レティシアも脱ぎなよ。気持ちいいよ」
「……断る。ランポスが集まってくるかもしれないし、装備を外すのは危険だ」
「いいから、脱ぎなって」
 レティシアは、なにか反論しようと口を開いた。が、その前に、
「脱ぎなよ」
 すすめているのではなく、命令だった。
 びくっ……と、レティシアは体を震わせる。それからためらいがちに、のろのろと鎧を脱ぎ去っていく。
 インナーのみの姿となったレティシアは、褐色の肌と長い銀髪が特徴的な、肉感的な体つきの美女だった。クックよりも胸がやや小さいが、その代わりに全体が引き締まっていて無駄がない。切れ長の瞳に灯った光と、引き結ばれた唇が、性格を現している。
「よしよし。そこに手をついて、尻をこっちに突き出して」
 少年は無邪気に言ったが、それの意味するところは明らかだ。
 が、レティシアは素直に従った。ただ、その唇は噛み締められ、悔しさを堪えているようだ。
 美麗のランサーがリオレウスの頭に両手をつき、尻を高々と掲げると、少年は自分の股間に手をやって、すでに勃起しているペニスを取り出す。年齢と、愛らしい外見には似つかわしくないほど、凶悪な容貌の性器だった。
 そして、下着を下ろして秘部を露出させると、まだ濡れてもいないそこへ、愛撫もなしに侵入した。
「……っぁ、かっ……ふ……!」
 押し殺した悲鳴。
 無理な挿入が膣に苦痛をもたらす。快感などあるはずがない。
 それでも少年は、自分勝手に動き続けた。少年にしても、たいした快楽は得られていないはずだ。動きも自在というわけにはいかない。だから彼は言った。
「もうちょっと濡らしてよ。気持ちよくないじゃん」
 無理な注文だった。女が濡れるのは、気分がよくなるからだ。野外――それも飛竜の死体の上で年下の少年に犯されているという、こんな最悪の状況で、どうやって濡れろというのか。
 レティシアは、痛みを堪えながら振り向いて、背後の少年を睨みつける。彼女の精一杯の憎悪で射抜かれても、少年はまったく動じた様子を見せなかった。
「ほら、さっさとしてよね」
 ぱあん、と、軽い音。まるで革と革を打ち合せたようだった。
 少年が、レティシアの尻を平手で打ったのだ。
「――っ!」
 目を剥くレティシア。その尻に、次々と容赦のない平手打ちが飛ぶ。
「っあ、あ、ぐっ! ふぐっ!」
 食いしばった歯の奥から、悲鳴が漏れる。

 手加減のない暴力を受けて、レティシアの尻は真っ赤に染まりつつあった。
 そして同時に、膣の内部が湿り気を帯びつつある。
「やあ、濡れてきた、濡れてきた。やっぱりレティシアにはこうするのが一番だね」
「……くぅっ……」
 レティシアの瞳に涙が浮かぶ。尻の痛みよりも、屈辱が彼女の心を傷つけていた。
 ぱあんっ! と、ひときわ大きく尻が打たれる。
「んぐふぅっ!」
 少年は知っていた。こうして屈辱を与えれば与えるほど、レティシアの肉体は喜び、背徳的な快楽を求めて燃え上がるのだということを。そのあたりを心得たうえでの仕打ちだった。
「ところでさあ」
 にやりと、少年は笑う。
 その瞳を向けられて、マルコは跳び上がりそうなほど驚いた。
「そこのキミ。いつまでもそんなところにいないでさ、こっちにおいでよ」
 まさか、自分のことを言っているのか。気付いていたのか。いったい、いつから?
 疑問に思いながら、マルコは彼らに姿を見せた。情事の最中に呼ばれるとは予想外だったし、気まずいので出て行きたくはなかったのだが、少年の声には有無を言わさぬものがあったのだ。
「なっ……」
 マルコよりもよほど驚いたのは、レティシアだ。目を丸くして、口をぽかんと開けている。
 少年は、彼女の耳元で優しく告げてやった。
「ほら。彼にも見てもらいなよ。レティシアの、すっごくいやらしいところをさ」
「いっ――」
 褐色の体が、恐怖によってガタガタと震えた。歯がカチカチと鳴った。
「いやだああああっ! 見ないでくれっ、やめっ、やめてえええっ!」
「あははははは!」
 子供のようのに泣きじゃくるレティシアの頭を、伸ばした手で押さえつけると、少年は楽しげに哄笑しつつ、今まで以上に激しく腰を振った。
 隠しようのない淫らな水音が、ふたりの結合部から聞こえている。レティシアは、もうはっきりと悦楽を感じていた。淫らな姿を他人に見られることに興奮していたのだ。
「見ないで! 見ないでよおっ! ゆるっ、許してえっ! ぅぐあああっ!」
「あはっ、あははっ! あははは! うはっ、たのしーっ!」
 狂乱する少年と美女の痴態を、マルコは呆然としながら見ていた。
 ずっと、終わるまで。止めるという選択肢すら思い浮かばないほど、呆けたように。
「ひっ、ぎっ……い、いくっ、イぐぅうッ! いやああだああああ――ッ!」
 レティシアの絶叫。
 跳ね回っていた体が弓なりに仰け反って、力を失い、突っ伏した。
 射精した少年が腰を引いてペニスを抜くと、レティシアの秘部からは白濁とした液が、だらりと糸を引いて垂れ落ちる。
 突き出した尻も、ぴんと伸ばした長い脚も、大切な秘所も、ピクピクと情けなく痙攣していた。美貌はだらしなく崩れ、大きく開けた口から犬のように舌を突き出している。蕩けた瞳からは涙が零れていた。
「……うっ、あうっ……」
「はいはい、休憩は後にしてね。先にボクのを綺麗にしてよ」
「はぅ……ごっ、ごしゅ……さまぁ……」
 髪を掴まれて股間の前に立たされて、少年の精液と自分の愛液が絡みついたペニスを舐めさせられているレティシアの瞳は、明らかに恍惚としていた。
「で、キミは誰なわけ? ハンター?」
 そう尋ねられてから答えるまでに、マルコはしばらくの時間を必要とした。
 異様な雰囲気の持ち主だった。近づいてみると、嫌でも分かる。なんとも禍禍しく毒々しい、人とは思えないほどの邪悪な鬼気をまとっているのだ。
 身につけた防具が、暗黒の呪物とされるブラックシリーズだからだろうか?
 強さもそうだが、それ以外のところも人間離れしている。
 怖気もふるうような美しさが、余計にそう思わせるのかもしれない。
「あっ、ああ、そうだ」
「ふうん。どうしてここに?」
「き、傷ついたレイアを見たからさ」
 少年は、きょとんとした。
「だから?」
「……この夫婦は、卵を産んでたんだ」
「へえ」
「だからさ、このレウスとレイアは、その卵の両親なんだよ」
「ふんふん。だから?」
 少年は、レティシアの髪を掴むと股間から引き剥がして、ゴミのように放った。全力を使い果たしていた彼女は、受け身もとれずにその場に転がる。
 マルコはそのことについても文句を言いたくなったが、とりあえず後回しにした。
「だから! 親がいなくなったら、あの卵は誰が育てるんだよ!」
「誰も育てないんじゃないの」
 ペニスをしまいこみながら、答えた。そっけない言葉だった。平然としていた。

「死んじまうんだぞ!?」
「死ねばいいじゃん」
「なっ――」
 絶句するマルコ。
 そして、少年の瞳の暗さに、底知れない闇のような暗さに、ようやく気付く。
 皮肉で言っているのだとか、あざ笑っているのだとか、そういう低い次元での台詞ではなかった。本当にそうだとしか思えていないのだ、この少年は。
「生きれば生きる。死ねば死ぬ。それでいいじゃん。死ぬなら死ねばいいんだよ」
「ふっ、ふざけるなあ!」
 マルコは、勢いよく地を蹴って、少年に殴りかかった。両者が武器を手にとっていない、素手での殴り合いならば、自分にも勝機はある。彼はそう考えていた。
 ――そんな甘い考えなど、瞬時にして破壊されたが。
 少年の顔面をとらえるはずだった拳が空を切った次の瞬間、マルコは仰向けに倒れて天井を見ていた。
「あれ?」
 間抜けな声が漏れる。
 どこからか、声がした。
「べつに、キミがどう思ったって、ボクにはどうでもいいんだけどね」
「ぐふうっ!?」
 腹を足蹴にされて、肺の中の空気が押し出される。
 その足をどけようと思って掴んでも、ビクともしない。
 踏む力が強くなる。
「……っ、ぐうっ!」
 じたばたと暴れるマルコを見下ろす少年の目の色は、どこまでも冷ややかだった。
「あっ、そうだ。いいこと思いついた」
 楽しげに笑って、今までとは比べ物にならない力を足に加える。
「あげえっ」
 潰れたカエルのような悲鳴を上げ、のたうち回るマルコ。
 少年は、岩肌の壁の一角に目をつけた。棚のようになっていて、飛竜が卵を産み落とす場所だ。そこに歩いていって、登ってみれば、何個もの白くて丸い、大きなものが見つかった。
 もう、彼がなにをしようとしているのか、マルコには分かっていた。呼吸さえもままならない状態で、叫ぼうとした。
「とりゃ」
 気の抜けるような掛け声と共に、黒刀が振られた。
 殻が砕け、中身が飛び散る。一個も残さず卵は割られた。
「やめろおおおっ!」
 遅かった。マルコの声は、あまりにも遅かった。しかしたとえもっと早くに叫べていたとしても、少年が止まることは、きっとなかった。だから、マルコの行為はあまりにも無駄でしかなかったのだろう。
2010年07月20日(火) 22:17:18 Modified by gubaguba




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