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孤独を知らない男・第十四話

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
12『孤独を知らない男』:第十四話男ハンター×擬人化ドスゲネポス・擬人化ディアブロス亜種孤独の人擬人化(ドスゲネポス、黒角竜)365〜371

『孤独を知らない男』:第十四話


宿命がある。
 
戦い続ける宿命。
訣別する宿命。
殺し続ける宿命。
惨死する宿命。
諦めねばならぬ宿命。
 
精神がある。
 
屈服しない精神。
敬う精神。
気高く誇りある精神。
掟を遷守する精神。
絶対に倒れぬ精神。
 
ゴズ家のこころは素晴らしい。
己が狩人なるを示す。
自然を敬い、慎むこころ。
時と名のつく砥石に磨かれ、遂には得難き宝となった。
ゴズ家のこころは太古のこころ。
狩人の全てが、そこにある。
 
故に掟は呪縛となり、教えは時には呪詛となった。
得難きもので、素晴らしきもの。
なればこそ捨て難く、また逃れ難い。
宿命は鎖となりてこころを縛り、精神は杭となりて体を打つ。
 
我が愛よ永久に、と願えども叶わぬ宿願。
惨死の宿命、掟のこころがそれを許さぬ。
愛しき者の暖かみ、流れる髪の心地よさ、体を寄せれば伝わる鼓動。
全ては一炊の夢。実像はなく、空虚のみがそこに在る。
無という孤独がそこにある。
 
いつしか残滓も零れ落ち、真の孤独が待っている。
悲しみだけが人生だ。
こころは凍てつき、体は毀れ、一片の炉も潰れ果つる。
なればいっそと思い立ち、愛など要らぬと開き直る。
そもそも知らねば、感じる事も永久に無い。
腕はのこぎり、足は車輪。
臓腑は歯車、頭は木っ端。
何も感じる事なくば、何も悲しむこともなし。
 
 
 
この歌を誰が作ったのかは分からない。
一説によれば、『当主が子を成した際、子が齢五を数える頃には、配偶者は当家より絶縁すべし。』
この掟を書き加えた御先祖様の一人の作らしい。
歴代の中で、詩を好んだのは彼一人だけだったというから。
 
そして一族の史書によれば、彼は暗殺者との戦いに巻き込んで、妻を死なせてしまったという。
どの情報も断片的であるため、この歌と、この掟の作者が彼であるという証拠はどこにもないが。
 
もし、そうだとしたら──


「………ん」
 
暗闇の中から目を開けると、そこはもう少しましな暗闇だった。
時刻は夜であるようだが、眠りながら何日も経っていたような感覚だ。
天井は見慣れた我が家、寝床も慣れたベッドの上。
左隣の燭台で蝋燭が燃えているのも、いつもの配置、いつもの状況。
朝には…まだ早い。もう少しだけ寝ていようか。
 
「…?」
 
が、胸に微かな違和感がある。
そこを見ると、トネスの横顔が覆い被さっていた。
そこでようやく右隣の方を見てみると、ベッドの傍に寄せてある背の低い椅子と、そこに座すトネスの下半身。
だが、彼女は座ったまま俺の胸の上に倒れ込んで、そのまま眠ってしまったようだ。
安らかそうに眠る顔を見下ろし、頭にそっと右手を添える。
 
「…思い出した。」
 
そう、思い出した。
俺はドンに辛くも勝利した後、家まで帰って来たはいいが、門前で気を失ってしまったのだ。
右手を頭から顔の横へと移動させ、顔にかかった砂漠色の髪をどけてやる。
すると、目の下にある縦線状の赤い筋が見えた。明らかに涙の痕だ。
 
「心配かけたな…」
 
俺が涙の痕を親指で少しなぞってやると、
トネスは喉から「キュゥゥ…」と高く細い音を出しながら、もぞもぞと動いた。
下唇を軽く噛むように引っ込めつつ、寝相を変える様が愛くるしい。
本当に、俺は何日も眠っていたようだな。
再び彼女の頭に右手を移し、後頭部にある一対のトサカを軽く指で挟んでやる。
 
「ん…んぁっ」
 
トネスは、今度は明確な人間の声で反応を示した。
まるで喘ぐようなその反応に、思わず軽く頬が弛んでしまう。
 
「ん…んんっ…クー……」
 
だが、その刺激は同時に覚醒も促してしまったようだ。
喉を鳴らしながら、トネスは顔と上半身を持ち上げていく。
俺はするりと彼女の動きに任せるままに右手を抜いたので、頭とトサカを触られた事には気付いていないようだ。
両目を瞑ったまま、ごしごしと片目だけをこすっているその仕草はまるで猫のようだ。
トサカもへたりと力なく倒れている。
 
「トネス。」
 
不意にその名を呼んでやると、まだ眠たそうに薄く目を開けた。
どうやらまだ頭がぼんやりとしているようで、俺が目を醒ましていることには気付いていない。
しょうがないので、手を後ろにつき、俺も上体を少しだけ起き上がらせる。
少しけだるいような感覚が、長い間眠っていたことの物理的な証明となった。
 
「……… !」
 
トネスはそんな俺の姿を見つけると、みるみる目が醒めていくようだった。
目を見開き、驚いて息を呑む表情への変化が、少し面白い。
そして同時に、微かな光の奥で揺れるその表情は、なんとも儚げであった。

「ッ…!」
 
トネスは再び俺の胸に顔を押し付けた。
ただし今度は全身で飛び込んできたため、せっかく起こした俺の上体は、再び押し倒されてしまう。
砂漠の砂のように流れる髪が胸板にあたって心地よかったが、彼女の肩は小刻みに震えていた。
本当に、こいつは泣き虫だな。
こいつに触れていると、柄にもなく微笑んでしまう。
 
「大丈夫だ…もう心配ない…
 言ったろ、俺は負けないんだ…」
 
ゆっくりと、彼女の体を抱き返してやる。
本当に、俺は長いとこ眠ったままだったようだ。
あまり力は込められないが、愛でるように背中をさする。
 
「ッ────」
 
と、トネスが顔を上げたかと思った瞬間、飛び込むようにして、唇を合わせられた。
いきなり強引に唇を押し付けられて多少驚いたが、悪い気はしない。
目尻にためた涙を親指の腹で拭いながら、こちらからも応じてやる。
互いに舌を入れるようなことはしなかったが、唇の最も深い所で繋がった。
 
「んっ…」
 
俺と彼女は暫くの間そうしていたが、後頭部にあるトサカをちょいと摘んだ所で、トネスの方から顔を離した。
そのまま俺の顔の両横に手をついて上体を起こし、腰の辺りで馬乗りのような態勢になる。
 
「…おかえり…」
 
思わず、息を呑んだ。
泣いてるとも笑ってるともつかない表情は、実に健気で、
精一杯に搾り出した掠れた声からは、押し殺し難い感情が滲み出ていた。
 
俺は上体を起こし、トネスを抱き締めた。
それによって彼女の座る位置が、俺の腰から足の上へと変わる。
今度は彼女も驚く事はなく、首に鼻先を寄せてきた。
 
「…今、帰った。」
 
素直に「ただいま」と言うのはなんとなく気恥ずかしかったので、少しお茶を濁したような返事をする。
それでも、トネスはこくりと小さく頷いたようだった。
この状況でそれはもう、互いに了解済みの合図に等しかった。
 
「ん…ぁっ」
 
トネスのうなじに口付け、舌を這わせると、潤いのある唇から艶かしい声が漏れる。
少しだけ顔を上向きにして濡れた睫毛をゆっくりと閉じていくのが、見なくとも感覚で判った。
そして彼女の火照りが高まっていく事に気を良くした俺は、今度は少し強めに吸い付いた。
 
「ひぁっ!?」
 
トネスは驚いたような甘い声と共に、体をびくんと跳ねさせた。
実は、トネスの首やうなじを強く責めるのは初めてだ。
ドスゲネポスだった時代に撫でてやった事は何度もあったが、舌と唇で変幻自在の接触を行った事はない。
彼女はそんな未知なる快感に驚きながらも、悦楽を感じているようだ。
俺は何度も吸い付き、舐り、口付けしながら、狙いをだんだんと下へと移していく。

「んッ…やぁぁ…」
 
そして俺の唇が胸元までいくと、極まったような細く甘い声をあげた。
彼女の秘裂からはじわりとした湿気が感じられ、少し俯いた顔には朱が差し始めている。
呼吸には艶めいた色が混じっており、前髪が汗で額に張り付きつつあった。
ここから本番に行くのは、いつもよりも少し早いが…
 
「ジェ、ロス…あたってる、よぅ…」
 
…正直言って、俺の方もそろそろ限界だ。
なんとも恥ずかしそうな、それでいて切なそうな声を聞いて、遠慮が吹っ飛んだ。
体を少し離して服の裾を掴むと、一気に持ち上げて脱がし、Yシャツの前を開かせて、下着を外す。
大きく開いたシャツの前からはみ出るように突き出た双丘を、今直ぐに揉みくちゃにしたい衝動に駆られたが、
ここはそれをグッと堪え、小さく呟くようにトネスの名を呼んだ。
 
「………」
 
それ以上の言葉は喋らなかったが、俺の意図は伝わったようだ。
伏し目がちに視線を落とし、羞恥と期待に顔を赤らめながら、彼女は自らスカートをたくし上げた。
白いタイツの根元に張ったガーターリングと下着が露になり、その下着には早くも染みが広がりつつあった。
その湿り気は、もう十分であるように思われた。
縮こまらせるように足を曲げさせ、下着も脱がせると、やはり準備は万端。
あれだけの事でこれほどまでに感じているのは、異例のことだ。
 
「言葉が、見つからん。」
 
何か──俺は事前に何か言わなければならないような気がした。
だが、何を言えばいいのか…
今この場で言わねばならぬ事が多過ぎて、混乱してしまう。
こいつに心配をかけたこと。再び抱き合える歓び。感じる肌の暖かさ。結果的に蚊屋の外にしてしまった罪悪感。
全てぶちまけたかったが、それは興ざめだ。だから分からなくなった。
それに対し、トネスは薄く目を開きながらにへら、と力なく笑んでみせ、
俺の股間に手をやり、すっかり怒張したものを引き出した。
 
「不粋だよ……気持ちさえあれば、じゅうぶん…」
 
……こいつめ。随分と言うようになった。
この短期間で大きく変化している。俺も、こいつも。
そして俺は、俺自身の変化を喜ぶのと同時に、少し滑稽であるようにも思えてきた。
今までは迷い無き人生を送ってきたはずだったのだがな…
 
「そうだな。お前がいればそれでいい……」
 
ふっと笑みを零しながら、俺はトネスの腰を抱き寄せて一気に貫いた。
瞬間、くぐもったような喘ぎ声をあげて彼女が俺にしがみつく。
重力と俺自身の力に従って侵入した分身は奥深くを叩き付け、それに驚いたように肉襞が締まった。
そこは何よりも熱く、激しく俺を求めていた。
自然と腰を掴む力が強くなり、俺は初めから激しくトネスを突き上げ始めた。
 
「はっ、かはっ、んっ…すご、い…くふぅっ…!」
 
腰を浮かせ、リズムよく腰を深く叩き付ける度に、トネスの体が大きく跳ねる。
砂漠色のショートヘアを振り乱し、手を背中に回し、足はしっかりと腰を抱き締めてきている。
ベッドが大きな軋みをあげ、彼女と俺はあられも無く乱れ、交わる。

「あっ、あはぁんっ!んんっ…あっ、ひ、んくっ…あぁぁっ!」
 
顔の直ぐ傍で発せられる嬌声が徐々に昂り、否応なく行為を激しくさせられていく。
互いに、最早貪るだけ。腰を叩き付ける勢いで、ふわりと浮き上がったトネスの腰が落ちるのに合わせて中を力強く突く。
重力、落ちる勢い、俺自身の力強さから来る凄まじい衝撃と刺激は、
とことんまで彼女を甘く蕩けさせていくようだった。
そして蕩けた彼女が俺を求める行為が、更にその運動を激しいものとしていく。
 
「もっと、ついてっ…んぅっ!ふ、かく…はげしっ、くぅぅぅぅ!」
 
互いに体を密着させ、互いに絶頂へ向かって乱れる。
前を開いただけで着たままのシャツが、眼前で乳房や髪と共に揺れる。
怒張は彼女の中で更に大きくなり、彼女の中を抉り、穿ち、蹂躙し、犯していく。
甘く、切ない声でトネスは何度も俺の名を呼んだ。
そして懇願する。もっと強く、もっと深くと。
シャツの衣擦れの音、汗ばんだ肉同士のぶつかる音、淫靡な水音に、彼女の喘ぎ声。
しっかりと俺を抱き締める両手と両足の感触も心地よい。
だが、それらに気を向ける余裕すらだんだんと失われていく…
 
「んっ、あっ、あっ!あぃ!ひっ…いっ、いくっ!いくぅぅっ!」
 
そしてとうとう絶頂を迎えようという時には、俺は快楽を生み出しつつも貪る機械、
トネスはそれを締め上げ、喘ぎ続ける楽器へと変貌を遂げていた。
怒張で突き上げる度に奔った、電撃のような快楽に、俺も彼女も完全に屈服していた。
 
「いひッ…きゃひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「…ッ!」
 
最後の瞬間。トネスの膣を貫くように最大限まで犯し、その最奥で全てをぶちまけた。
達した彼女の中に、強く締め付けられたためである。
トネスの内部と全身は歓びに打ち震えつつ、嬌声と共に体を弓なりにピンと伸ばした。
ごぼり、と大量の白濁液が子宮から溢れ出るも、それを気にせず絶頂の快楽に浸っていた。
 
そして彼女は頭に霞がかかったような状態で、未だ対面座で繋がっている姿勢のまま失神した。



──朝、目が醒めると、私はベッドの中で一人だった。
 
昨夜、あまりの激しさにたった一度で失神してしまった私だったけど、
ジェロスがそっと寝かせてくれたのだろう。毛布がかけられていた。
だけど、寝室に彼の姿はどこにもない。
 
それをすこし、寂しく感じた。
体を起こした時の肌寒さが、いっそうそれを強調する。
 
その状況には、憶えがあった。
初めて彼と繋がった夜の、翌日の朝。
あの時も彼は傍らになく、私はああやっぱり、と絶望に暮れたものだ。
その時の絶望はもう忘れたけれど、やっぱり不安はあった。
いつか──いつかあの人を失ってしまうんじゃないか。
ある朝目が醒めれば、全ては夢のように消え去っているんじゃないか。
手にいれてしまった幸福を失う事が、こわくなった。
 
でも、まだ先だ…
ちゃんと彼は帰ってきてくれたのだから。
水を叩き付けるような、ざばぁっという音を外から聞きながら、私はそう思った。
汗の染み込んだタイツとガーターリングを外し、下着を着け直す。
シャツを取り替え、投げてあった上着に袖を通し、スカートを履き替えると、私は裏口に向かった。
 
あの人は、命を狙われている。
最初にそう聞いた時は驚いた。そして悲しかった。
すばらしい人なのに、理解されずに命まで狙われている。
そんな彼の宿命が、悲しかった。
 
ゴズの者が平穏の内に死ぬ事はあり得ない、という事実も私は聞いている。
ハンターはいつ死んでもおかしくない仕事だけど、立派に務め上げて引退する者もいる。
でも一族の人間は、必ず規格外のモンスターか、ギルドの暗殺者に殺されてしまうと言うのだ。
実際、ジェロスのお父さんはキングサイズのラージャンという最強の牙獣種を相手にして…
この先は言いたくない。
宿命とは言え、彼もそんな死に方をしてしまうのかと思うと…やりきれなくなる。
それを埋めるためにも、私は必死に彼を求め続けたのかもしれない。
答えは出したけれど、それでもなるべくなら考えたくはなかった。
 
裏口から外へ出ると、最近ディアと彼とが戦った訓練用の裏庭に入った。
それを突っ切って茂みを超えると、そこには川が流れている。
上半身裸のジェロスはその川のほとりで、水を浴びていた。
桶で川の水を掬い上げ、それを頭から被る。
水浴びというより、水ごりだ。

「………」
 
私は両膝を抱えるようにしてその場に座り、彼が水を被る様を見る。
彼のことだから、きっと私の存在には気付いているだろう。
でも、彼は親の仇と言わんばかりに水を浴び続けている。
叩き付けるように、振り払うように。
もしかして、それは本当に水浴びではなく水ごりだったのかもしれない。
 
しかし、やがて彼は桶を投げ捨てると、私の方を振り向いた。
と言っても、完全に向き直ったのではなく、横側を向けるようなかんじだ。
そうして、片目だけで私を見つめている。
 
「──覚悟は、していた筈だった。」
 
静かな。まるで囁くような声だった。
ともすれば、彼の体から落ちる水滴の音にすら掻き消されてしまいそうなほどの…
 
「やはり、俺は身も心も超人にはなれないな。」
 
全身から水を滴らせる彼の体は、いつもより白く、細く見える。
その姿と、力のない目と声はまるで少年のようだった。
 
でも──
 
「ジェロスは、ジェロスだよ…私は…それでいいと思う。」
 
私が惚れたのは、ゴズの当主でも、ギルドに逆らい暗殺者と戦うアウトローでも、
あらゆる武芸に精通した最強のヒーローでも、どんなモンスターも狩り殺せる凄腕ハンターでもない。
ジェロス。またの名をゼロス。ジェロス・ゴズ。
私が恋をしたのは、ジェロスという唯一つの存在だけだ。
どれにも分類しない、人間ジェロスに私は惹かれたんだ。
 
「また、泣きそう…」
「俺もだ。」
 
これからも、不安は尽きないと思う。私達は互いを心配し合うのだと思う。
でも、この歩みの先に待ち構えているのは不幸な結果だけだとしても、歩みは止めない。
たとえ結末が深い死の闇と孤独だとしても、できるだけ彼と一緒にいたい。
いまこの時があれば、それで十分に幸せだと感じられる。
限りのある現在を、未来への絶望で使い潰したくはない。
恐れと不安と心配の中で、私は彼と共に闇へ向かって歩んでいこう。
 
覚悟とも言えないような、脆く弱々しい決心。
現実はそう甘くないことを知りながらも、私は心に決めている。
頬を膝に押し付け、潤んだ瞳でジェロスの横顔を見つめる。
思わず、熱っぽいため息が漏れた。
 
ジェロスは、眉間に皺を寄せ、下唇を軽く噛みながらやや上を向いていた。
それは、奥底から込み上げてくる何かを堪えているかのようだった。

<続く>
2010年08月21日(土) 10:47:37 Modified by gubaguba




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