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孤独を知らない男・第十七話

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
13『孤独を知らない男』:第十七話男ハンター×擬人化ドスゲネポス・擬人化ディアブロス亜種孤独の人擬人化(ドスゲネポス、黒角竜)・否エロ59、61〜62、64〜70

『孤独を知らない男』:第十七話


太陽が中天に上り、真上から日射しを浴びせてくる。
最盛期に比べて随分とましになったとはいえ、その光線の威力は、未だ衰えを見せず、容赦なく人間の体力を奪う。
これに救いがあるとすれば、風が適度に吹いてくれる事か。
衣服の隙間に風が入る度に体を巡る寒気は、この季節にあっては寧ろ心地よいものだ。
 
今、俺とトネスは家の裏手で修練をしているところだ。
とは言え、その実はトネスの剣術の型を俺が指導しているのだが。
とにかく、俺の目の前で彼女はデスパライズを振り回している。
ちなみにディアは来客用の部屋に閉じこもったきりで、朝食も昼食もとっていない。
トネスはそれを心配していたが、俺は「疲れているんだろう」と適当に誤魔化し、そっとしておく事にした。
ディアには既に一流のハンターとしてやっていける技量があるが、人間としてはまだまだ幼い。
自分が精神的に弱っている所を、角竜としての誇りから、他人に見られたくないのだろう。
 
「やッ!」
 
短い掛け声と共に、束ねた藁葺にトネスが斬り掛かる。
だが藁葺は一撃で両断されず、刃を深く食い込ませただけだった。
 
トネスは非常に物覚えがいい。特に知識的な面ではかなりの逸材だ。
調合術、道具の扱い、動物学、植物学、医術、地理学、史学などの知識量は既に俺を凌駕しているし、
群れのリーダーをしていた過去から、柔軟な思考力と戦略眼まで磨きがかかってきた。
とにかくトネスの知識の吸収力と言ったら半端ではなかった。
が、その反面、戦闘術はディアに後れをとっていた。
それでも常人を遥かに凌ぐスピードで成長しているのだが、彼女は所謂インテリタイプのようである。
戦闘術の訓練になると、彼女はよく失敗をした。
 
「…そうじゃない。手首の余計な力を抜いて…」
 
藁葺に食い込んだ剣に悪戦苦闘しているトネスの背後に回り、後ろからそっと、握り手に手を重ねた。
掌を通じて、彼女の手の甲の暖かさが直に伝わった。
汗でしっとりと濡れた彼女の肌は、赤子のように柔らかい。
 
「こう?」
「ああ、そうだ…あとは腰を入れて、肩を突き出すように振り下ろせば…」
 
彼女の手越しに剣を柄を掴み、少しだけ助力する。
俺の言い付けに従って彼女の体が動くと、藁葺は簡単にさっくりと斬れた。
 
「おー」
 
彼女が感嘆の声をあげ、瞳を輝かせる。
最期が近付くこの時。彼女の嬉しそうな横顔がいつも以上に愛おしく、同時に切ない。
重ねた手を離したくはなかったが、不審に思われてはならないと考え、身を退いた。
 
──俺は、本当に甘くなってしまった。以前の俺なら、こんな感情を抱く事はなかったろう。
──死が着実に近付いてくるこの状況を、心の底で嘆く事もなかったろう。
 
「えらいぞ、よく出来たな…
 それじゃあ今日はここまでにするか。あまりディアを置いて先に進むのは可哀想だ。」
「うん♪」
 
機嫌良さげに藁葺を抱えながら、彼女は頷いた。
この太さの藁葺を切断するのに成功したのは、今日が初めてだった。
 
汗が止まらない。今の時期はこれほどまでに暑いものだっただろうか。
そうだとして、何故掌を冷たく感じるのだろうか。
彼女の手に触れていた部分が彼女から離れた瞬間、異様に冷たく感じたのは何故だろうか。
失うことを……未だに俺が恐れているからか。
情けないヤツめ、この期に及んでまだ受け入れ切れていないのか。これは御先祖様に申し訳が立たんぞ…

トネスには、夜に全てを打ち明けるつもりだった。それが俺の答え。
最後の最後…本当の別れのその時まで蚊屋の外ではあまりに可哀想だ。
ならばせめて、その悲しみをなるべく短いものにしたい。
死の運命が、目の前で生きている愛しの者と自分とを分かつことは、決定されている。
そんな残酷な事実を、俺の生によって突き付けられ続けるのは辛かろう。
そう配慮しての答えであり、選択であった。
 
夕食も入浴も済み、あとは眠るだけ。
結局ディアは一日中来客用の部屋に篭りっぱなしだった。
あいつも辛いのだろう。俺は最後までそっとしておく事にした。
 
いつものように、トネスは先に寝室へと向かったようだ。
明日の身支度を整えるため、まず居間で作業開始。
アイテムボックスの上げ底から水がめを取り出し、
水がめを半分ほどまで満たしている土のような固体に水を少量注いで、蓋をする。
あとはそれを神棚に供えれば、作業終了。
上げ底を元に戻す時、アイテムが何点か消えているのに気付いた。
大方メラルーか何かが盗んでったんだろうが、もうどうでもいい事だ。
 
我が家で過ごす、最後の夜。
トネスと言葉を交わす最後の夜かもしれない。
それがたまらなく寂しく感じた。
 
最後の夜。最後の月。最後の家。最後の床。最後の廊下。最後の扉。最後の寝室。
常に触れてきたそれらを、既に懐かしく感じるような気がする。
ゆっくりと噛み締めるように歩を進め、いよいよ寝室の前まで来た。
ここまで来たのだ。ここで言うしかない。
決意を胸に秘め、寝室の扉を開く。
 
トネスはベッドの上に座っていた。
肩から毛布に包まり、俺に背を向ける形で。
 
寝室に入り、扉を閉めるが彼女は振り向かない。
俺に向け続けている背からは、言い様のない物寂しさが感じられ、
その光景と雰囲気に俺は既視感を覚えた。
思い出したのは、パーシェルとの事件が起きたあの夜のこと。
あの翌日、彼女は家を出たのだが、今回はその逆だ。
明日、家を出るのは俺の方で、そして二度と帰って来れない。
 
全てを、言わなければならない。
しかしこの期に及んで、俺の胸の奥では怒濤のように感情が押し寄せていた。
トネスと過ごした日々が去来し、頭の芯が疼いた。
言わなければならない。
だが、いま口を開いたら。
いま、体の内から何かを発そうとしたら…
 
俺は、目の奥が熱くなるのを堪えるので精一杯だった。
 
「ねぇ、ジェロス。」
 
不意に、トネスの声が響いた。
静かで、まるでしなだれかかるような声だった。
俺は返事を声で返す事も出来ず、振り返らぬままの彼女の傍に腰掛けた。
彼女の傍と言っても、背中合わせになるような位置であるから、互いに顔を見えない。

「神様って、いると思う?」
 
実に単純で、答え難い疑問を彼女は投げかけた。俺はそれに答えられない。
答えを知らないからではなく、少しでも気を抜けば溢れ出しかねない感情のために。
だが、彼女は構わず続ける。今の俺にはありがたいことだ。
 
「もしいるとしたら、全力で感謝するよ。
 あなたと一緒に過ごせた事は、奇跡だったと思うから。」
 
俺は、俺自身の感情を抑えるのに必死で、この時は気付かなかった。
彼女の声が、肩が、震え始めていることに。
 
「だから…だから、後悔しない。
 あなたを好きになった事を、後悔なんて絶対にしない。」
 
強く握り締めている拳が震え始めた。
感情を抑えるために全身に力を込めてみたが、徒労に等しいことが分かった。
 
「だいすきだよ、ジェロス…この世界で、いちばんあなたを愛してる。」
 
そしてとうとう、想いが堤を破った。
勢いよく振り向き、彼女を後ろから力強く抱き締める。
 
途端に、涙が溢れ出して、止まらなかった。
 
「ト、ネス…俺は…お、れは…」
 
女々しく死にたくないなどとは、全くどの口が言ったものか。
彼女は、感付いていた。
別れが間近に迫っていること、俺がそれを今日告白するつもりだったこと。
その別れの先にあるのは…俺の死の運命であることも。
 
「うっ…く…くぅ…」
 
胸が張り裂けそうに痛い。嗚咽を噛み殺し切れない。自分の心をごまかせない。
本当は、別れたくない。本当は、ずっと一緒にいていたかった。
偽らざる気持ちが溢れ出るも、それを言葉に変換する事は出来なかった。
俺はただただ、赤子のようにすすり泣くばかりであった。
それを情けないと思う余裕すら、もう消えていた。
 
死が、恐ろしいんじゃない。
彼女と二度と会えなくなるのが、暗闇の中で置き去りにされるよりも怖かった。
彼女と出会う以前の頃を孤独だと思ったことはなかったが、
あの時と同じ、生きながらに死んでいるような世界に戻るのは真っ平だった。
 
「泣か、ないで…ジェロ、ス。これが、最後だなん、て、思いたく、ないよ。」
 
そう言う彼女からも嗚咽が漏れていた。
「これが最後だなんて思いたくない」。
噛み殺せない想いのために、途切れ途切れの言葉を紡ぐことになろうとも、彼女は確かにそう言った。
肌の温もり、鼓動、声、表情。彼女の全てが、明日になれば幻の如く俺の世界から消え去る。
そうだ。ならば今夜だけ。今夜だけは、せめて。全身全霊をかけて、こいつを愛してやりたい。

俺は彼女を振り向かせた。
その両目からは止めどなく涙が流れ出ており、早くも赤く腫れ上がり始めていた。
熱くなった頬は、嗚咽の度に胸と共に上下する。
なんて顔だ。だが彼女の顔は、まさしく鏡にうつった俺の顔だろう。
そんな彼女の顔を胸に埋めさせるようにして、力強く抱き締めると、
堤防が決壊したように、彼女は大声をあげて泣き出した。
俺はなんとか嗚咽を呑み込むと、目元を涙で濡らしながら、彼女の頭を撫で始めた。
 
2人とも、ひどい顔だった。
 
 
 
そんなつもりじゃなかったのに、私は彼の胸の中でわんわん泣いてしまった。
彼の決心が鈍るようなことはしない。そう決めていたはずなのに。
密着して彼の鼓動と暖かさを感じてしまうと、
明日からはそれを感じられなくなるという事を強く実感してしまって、とても抑え切れなかった。
いや、その前から、もう抑えられなくなっていたのかもしれない。
自分が何を口走ったのかさえ、今はもう憶えていないのだから。
 
私は、泣き続けた。
どこにそんな沢山しまってたんだと言うぐらいに涙を出したし、
群れにいた時期も含め、今まで出したこともないような声を上げ続けた。
愛しくて、切なくて、寂しくて、悲しくて、心がばらばらになってしまいそうだった。
もう、ジェロスを感じられなくなるなんて。
もう、生きてる限りは二度と会えないだなんて。
 
震えた手で、それでも優しく、彼が私の頭を撫でた。
昔から、彼に頭を撫でてもらうことが大好きだったのに、
今その行為は、喜びとは正反対のものしか与えなかった。
 
「ずっ、と…いっ、しょに…いたい…!」
 
いつかこうなる事は覚悟していた。そのはずだったのに。
彼と共に歩めるのは、暗闇の一歩手前まで。知っていたはずだったのに。
私は、やっぱりよくばりだ。泣き虫で、よくばり。
でもそうやって自分を貶めても、押し寄せる想いは消えなかった。
 
人間としての生活が始まってからもうじき三ヶ月が経つ。
私の人生の中で、最も輝いた、奇跡のような三ヶ月。
それが終わりを迎えようとしている中、もっと遊んでいたいと駄々をこねる子供のように私は泣いた。
彼を困らせてはいけないのに。彼を泣かせてはいけないのに。
 
「ごめん、な…ごめん……トネス…愛してる……世界で、いちばん……」
「………ジェロス……だきしめて……私を、つよく……」
 
離れなきゃいけないのに。諦めなきゃいけないのに。
私の運命への抵抗は無駄に終わったんだ。全部諦めなきゃならないんだ。
 
分かっているはずなのに、強く抱き上げられてキスをしてきたとき、
私は彼の背に腕を回し、ふかく、ふかく彼の求めに応えていた。
互いに舌を絡ませ、私は彼の背を抱き、彼は私の背と後頭部を抱いている。とても甘い口付け。
でも、なんて悲しい口付け。それは、いよいよ彼との最後が近付いている事への証だった。
私達はそのままベッドの上に倒れ込む。自然に彼が上、私が下になった。

「んっ……ふぁぁ…ちゅ………ぷあッ」
 
やがて唇同士が離れても、舌は名残りを惜しむかのように銀色の糸で繋がっていた。
彼からもらった唾液を口の中に少しためてから、こくりと飲む。
顔があつい。頭がぼーっとしてる。大声で泣いたからだろうか。
ぼんやりと見上げる彼の顔にも、甘い熱が灯り始めているようだ。
それを見て心の底から確信する。やっぱり自分には、ジェロスしかいないんだ、と。
彼を感じない生活なんて、耐えられない、と。
 
「きて…ジェロスぅ…」
 
なら、刻み付けてもらおう。
彼自身をこの身体に刻み込んでもらえれば、せめてもの慰みになるかもしれない。
思った以上に甘い声で、私はそう懇願した。
彼は荒く息をついたまま、小さく頷いたように見えた。
 
びりり、と布の裂ける音がした。
彼は私の上着を少し乱暴に剥ぎ取ると、シャツと下着を一緒に破り捨てたのだ。
少しもったいなくはあったけど、今の私にとっては寧ろ本望。
力強く、乱暴であればあるほど、私のなかに深く彼が刻み付けられるような気がしたから。
でも、あまりと言えばあまりな行動に、つい少しだけ目を背けてしまう。
 
「トネス…」
 
切なげに私を呼ぶ彼の声がして再び彼を見上げると、彼も上半身の衣服を全て脱ぎ捨てていた。
力強い筋肉がつきながらも、全体的に締まり、決して不自然ではない上半身には、美しさすら覚える。
いつもは冷水のように澄んだ彼の瞳が、この時ばかりは熱く濁るのが好きだった。
特に今日は……いつにも増して、彼のことが好きになっていた。
 
「んっ…」
 
再び、のしかかるようにして彼から身体を密着させてきた。
私は両腕を頭側に投げ出すようにして、足は絡ませる。
これが、最後。最後に感じる彼の鼓動。
彼の鼓動の音に私の鼓動が重なり、とても速く脈打っているように聞こえた。
 
「んぅっ……は、ぁぁ…」
 
露になった私の胸の頂点は、熱い口付けと想いによってすっかり硬くなっていた。
彼はそこに指を這わせ、柔らかい…その、房の部分を…握ったり、挟むようにしたり、
押し潰すように掌を押し付けたりして、蹂躙し始めた。
身体の熱が胸に集中し、激しくも甘い感覚が脳の中枢へ走り抜ける。
彼の大きな手が、私の果実を包むように解していった。
 
「あ、ぅ……ひぅっ」
 
やがて彼の指に力がこもり、果実のへたとでも呼べそうな、硬くなった頂点を摘んだ。
その瞬間、電撃が私の背骨を撫で上げるように奔り、頭の中で弾けた。
意識せずに甘さを含んだ声が漏れるけど、その刺激は一度では終わらない。
大きいのに、どこか細くてしなやかな指が、何度も何度も私の頂点と房に沈み込む。
甘くて、大胆で、烈しい快感に何度も身体が痺れたように跳ね、極まったような声があがるのを止められない。
気付けば、逆手でシーツをぎゅっと握り締めていた。

目を瞑って、一気に上り詰めてしまうのを堪えていると、目尻にひんやりとした感触を感じた。
彼が目尻に溜まった涙を舌先で掬ったようだ。
もちろんその間にも、私の胸は彼の指によって変形を続けている。
舌を引っ込め、彼は満足そうに息をつくと、頬をすり合わせるようにしてもっと体を密着させた。
彼の体に胸を押し潰される感触すら気持ちよかったけど、
横に少しだけはみ出した房を、更に彼の指がいじめるのだから、我慢が更に難しくなる。
一瞬、それが目的なのかと思ったけど、そうじゃなかった。
 
彼は、私の後頭部にあるとさかの名残に舌先を這わせたのだ。
 
「ひぁっ──!?」
 
あたまの奥で、なにかが破裂した。
魚のようにからだがびくりと跳ね、喉が震える。
いっしゅんだけ全身が緊張して、思わず目を見開いた。
 
「な──にぃ…い、まの…」
「……気持ち悪かったか?」
 
ドスゲネポスの頃は殆どなにも感じていない部分だったから、殊更意識もしなかった部分。
だからこそ、そこへの甘美な刺激はとても新鮮に感じられた。
 
「…うぅん…なんか、ぴりって………きもちよかった…」
 
そう答えた瞬間、彼は今度はとさかに甘噛みをした。
舌よりも強い刺激を受け、とろけそうなほどの快感が奔る。
 
「んはぁっ!あっ…ひぅっ!? や、ぁぁ…やめ、てぇぇぇ…」
 
胸を包む指の動きも速まり、とさかをはみはみされる。
シーツを握る手が震え、いれられてもいないのに腰が浮く。
 
「とろけ、ちゃッ…うぅっ!あっ…きゃんっ!だめ、だめぇぇ!」
 
がくり、と全身がはねあがりながらも、意識はうきあがるような感覚。
それにむせぶように、鳴き続けた。理性もなくけだもののように。
いまや私のからだはおし寄せる快楽のなみに負け、いっさいの制御がきかなくなっていた。
脳もはんぶんは、とろけていただろう。
 
「く、ぁぁ…!あっ、うぅ…だ、め…わたし…もう…!」
 
後頭部をはまれ、胸をもまれている。それだけの事でわたしは達しつつあった。
脳の芯がじわりとしびれ、その部分からとけていく。
そこで彼は、さらにだめ押しとして舌をくりだした。
はんでいるとさかの部分を舌先でちろりと舐めれば、わたしのいしきはからだを離れる。
 
「イッちゃ…んううぅぅぅっ!」
 
頭の中はまっしろに。
体は反射的にふるえる。
いつのまにか、彼の腰を足でホールドしていた。
そして無意識の内に、彼の熱く滾るものに、わたしの足の間を押し付けていた。
快感が全身から怒濤のように押し寄せてきたのは、それもあったのか。
頭と胸への戯れがきもちよすぎて、無意識にわたしの方からすり寄せたのだ。

「………」
 
その事実に気付いた恥ずかしさもあるのだろう。
呼吸を荒くしたまま赤面していくのが、自分でわかる。
彼はわたしのとさかをかいほうし、両手をついて頭を持ち上げ、わたしの顔を覗き込んできた。
とろりと少し溶けたような表情は、普段の厳格で冷淡な印象の彼からはかけはなれている。
 
「トネス…」
 
そして囁くような甘い声。
少し乱れた呼吸の隙間を、縫うように発せられる切ない声。
ぞくり、と鳥肌がたつほど、わたしの好きな声。
 
「俺には……お前しか、いない…」
 
奇跡のような三ヶ月──やはり、感謝すべきだ。
明日に迫る別れの悲しさなど忘れて、喜びを噛み締めたい。
彼の全てを、しっかりと記憶しておきたい。
 
「私も、だよ…ジェロス……」
 
そっと両手を彼の胸に添え、ゆっくりと下ろしていく。
その指先が硬くなった熱さに触れると、彼は僅かに顔をしかめて目を伏せた。
布越しに感じる熱と、うぶな反応が楽しくて、つい微笑んでしまう。
同時に、みるみる大きくなるその感触に淫らな期待も高まる…
 
「ね………いこ…限界まで…」
 
腰を抱えていた足は既に解いている。
彼のズボンと下着を下げながら呟くと、息を呑むように彼の喉が動いたのが分かった。
下着を下げている途中に、熱くかたいものが飛び出て私の手を打つ。
いきなり感じた熱に少しだけ驚いて手を引いてしまったけど、すぐにそれを軽く握った。
 
「っ…」
 
でも、彼としても、私にやられっぱなしなのは気に入らなかったのだろう。
私のスカートをたくし上げ、下着の裏に指をすべりこませてきた。
そこは…さきほどの愛撫ですっかり……
 
「準備万端、か。」
 
少し意地悪く、彼は私の面前で呟いた。
まだ彼に反撃らしい反撃もしてないのに、私はそれだけでまた防戦一方となってしまう。
そのまま下着をぷちりと千切り取られ、彼自身の熱さが私にあてがわれた。
脈打つ熱の感触に心臓が高鳴り、早くも呼吸が乱れはじめる。
 
そして、遂に彼が私に進入してきた。
 
「はぅぅぅぅ……!」
 
彼の大きいのが、私を掻き乱しながら入り込んでくる。
それだけで登り詰めてしまいそうにきもちよかった。
だけど先ほど達したばかりなので、流石にそれだけでは足りない。

「望み通り……限界まで」
 
彼のその言葉を最後まで聞かないうちに、腰が跳ね上がった。
奥まで到達したものが、ぎりぎりまで引き抜かれた所で、力強く再進入を果たす。
それだけなのに、どうしてこれ程までの快感が奔るんだろう。
しかもその動きは一度だけではなく、何度も何度も続くもので、
その上、その速度が最初から全速力であったなら──
 
──わたしのかんがえるちからは、かぜのまえのちりにおなじ。
 
「ひっ…いっ、あっ、あっ、はっ…げしっ…!こん、な…さいしょ、からぁぁ…」
 
最初からラストスパートであるかのように始まった、あまりにも激しい交わり。
加速度的に意識は飛び上がり、肉体は更なる快楽を求めた。
わたしの締め付けをものともしない力強さでかれは進み、
それはより強い刺激となって、快さを最大限まで引き出す。
かれが引く時ですら、なかを引っ掻かれるような強烈な力が働いた。
 
「ひぁっ!あっあっあっあっ、あぅっ!あぅぅっ!ひゅごいッ…しゅごいよぅっ」
 
ろれつの回らぬ嬌声をあげ続け、こちらからも腰を振る。
かれはしっかりとわたしを抱き締め、わたしも同様にしていた。
かれの背中から肩を掴むように腕を回し、足はふたたび彼の腰を抱えているのだ。
でも、そういったわたしの動作はほとんど無意識で行われたものだった。
自制心も理性も捨て去り、けもののようにむさぼった。
 
互いに耳元で名前をよびあう。
わたしは喘ぎ声混じりに。かれは甘く切なげな声で。
その甘美な響きが、さらにみだらな火をあつくした。
かれと交わっているという実感が、更にわたしをたかぶらせた。
 
そして、案外あっという間にその瞬間は訪れた。
もっと感じていたい。もっと鳴いていたいのに。
次々と与えられる淫らな痺れは、それを許さなかった。
さきほどとは比べ物にならないほどの閃光があたまの中で弾ける。
わたしはさけんだようだったけど、その声も聞こえないほどに、感覚が埋め尽くされていた。
 
だけど、かれはまだ止まらなかった。
わたしがイッたことには構わずに、腰をたたきつけ続けた。
まっしろだった思考が、桃色に塗り潰されていく。
つめが食い込むほどつよくかれを抱き、身をよじりながらかれを受け止める。
 
もう、自分が何を口走り、どんな声をあげているのかさえ分からなかった。

 
──あれから、何度しただろう。確実に十回は超えている。
いま、彼はわたしを横に寝かせた体位で突いている。
休みなく腰を動かし続けながらも、体を倒して左手はわたしの胸を揉み、
右手はわたしの背筋を指でなぞり、舌はうなじを這い続けていた。
 
なんて甘くて、ずるい攻撃なんだろう。
何度も何度もイッたのに、そんなことをされてしまえば感じないわけがない。
精液と愛液でぐちょぐちょになっている結合部も、そのぬめりが快感を呼び起こす。
自由自在に動く彼の棒は弱点ばかりを責め、掠れかけた声を無理矢理しぼりださせる。
 
「あっ…あんっ! ず、るぃぃ…い、ひゃっ…も…だめぇっ…!」
「次で…最後、だっ…」
 
でも、それもいよいよ終わりが近い。
横からの強い突き込みに腰がよじれ、そのよじれが更に刺激を甘いものにしていく。
そしてそれは、彼のうごきの加速に従って更に高まっていく。
 
「い、ん…あっ、あっ、あぁっ、あぅっ、やッ──はぁぁぁぁぁ!」
「ッ…」
 
きゅーっと細まるような絶頂。
奥までとどいている彼自身を更にはっきりと感じた。たぶん、締め付けたのだろう。
そのためか、彼もほぼ同時に、今日何度目かわからない精をはなった。
 
「あ…ああぁぁぁぁ……熱、いよぅ…」
 
わたしの奥の奥はもう既に一杯だ。でも、それでも無理矢理はいってくる。
熱いものが入る代わりに、もう冷め始めているものが溢れだし、
ごぽりと澱んだ音をたててシーツに大量に滴り落ちた。
シーツは汗や唾液、精液や愛液ですでにベトベトだ。たぶん、もうつかいものにならない。
 
…もう、使うひともいないだろうけど…
 
「んっ…はぁんっ」
 
彼が腰を引き抜く。もう互いに限界までいっていた。これ以上は、もうむり。
だから、もうおしまい。
ぜんぶ。
わたしの夢も、すべて。

「トネス…」
 
ふわりと浮き上がるような感覚。
彼が私を抱き起こし、後ろから優しく抱きしめてくれたのだ。
私はぼんやりとした思考のままそれをなんとか理解し、体を預ける。
背中越しに、彼の暖かな息遣いと鼓動をかんじた。
 
「人間として出会ってから、もうじき三月か。」
 
甘い、彼の囁き。
身を縮こまらせ、可能な限り彼の体に触れようとする。
あれだけ触れあい、重なりあったのに、まだ足りないような気がした。
 
「…まるで、奇跡のような日々だった。」
 
暖かくて、優しくて、甘くて、美しくて、強くて…
 
「人生の終わりにそれを体験できて、幸せだった。」
 
ねえ、お願い。
その先を言わないで。
いまはまだ繋がっていたい。
ことばが私達を隔ててしまう。
 
「…ありがとう、トネス。」
 
…切なくて、悲しい。
体が震える。胸が痛い。息が苦しい。
「いかないで。おねがい。」
そう言いたかったけど、私の喉から出るのは「クゥ…」という悲しげな響きだけ。
でも、ちゃんと言えていたとしても無駄な言葉だっただろうな。
他ならぬ彼自身が「いきたくない」と思っているのだから。
 
「キュルルル……」
「…………」
 
だからせめて「もどってきて」と言いたかったけど、やっぱり言えなかった。
涙がこぼれてくるのをどうしようもない。
やっぱり、私は泣き虫だ。
 
ねえ、お願い、ジェロス
 
わたしを、わたしを抱き締めて
 
刻みつけるように
 
痣ができるくらい
 
つよく
 
なみだが、とまらないの

<続く>
2010年08月21日(土) 11:57:02 Modified by gubaguba




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