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盾と武士

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
13盾と武士男ハンター×擬人化ダイミョウザザミ蟹の人擬人化(盾蟹)・微エロ5〜12

盾と武士


「そなたに 惚 れ 申 し た ッ !」
大名ザザミの私に向かって言い放たれた言葉です。声の主は“ハンター”。老山龍の防具を被り、角を使った龍殺しの太刀を背負っていました。“惚れた”と言う言葉がどういう意味かは分かりませんが、なんというか、奇妙な感覚です。
だって大名ザザミを狩るならまでしも、話しかける人間なんて滅多に、いえ、初めて聞きます。
小さな人間が地面に頭を擦りつけ(アイルーさんが敵を見つけた時のような体勢)になり、戦う素振りを全く見せないのですから。そうしていると、また叫ぶように話を続けました。
「この世に生を受け早くも20と3年、東方での元服を境に竜を葬っていた拙者だが、そなた程立派な“大名”と合い見える事がごさらんかった」
「鎌蟹には無い堂々とした鋏、赤銅のごとき堅牢な体、大地を踏む巨大な足、天を正に突き刺さんとす一角竜の角!まさに戦国大名ッ」

「惚れ申したラばッ!?」

その立派な鋏で海に向かって殴り飛ばしました、正直言って煩いです。私たち盾蟹一族は煩い――特に高い音が大嫌いなのです。
キーンとした音はクラクラしちゃいますから。あれさえ無ければ私達は鉄壁で名を馳せていたのに。まぁ、別段気にしてませんけど。

「なんたる豪力、拙者を地平の彼方まで吹き飛ばす程とはッ」
あ、もう戻ってきました。ガノトトスさんに食べられてしまえば良かったのに。人間って案外丈夫なんですね。それともこの人間だけなんでしょうか?
「これは迂濶だったッ!拙者とした事が“武器”と“防具”を持ち謁見していたッ!!」
「なんたる不覚に無礼千万、腹切りものだッ。侍、いや、漢たるもの重要な要件を伝える時は“裸”と決まっていたものを、拙者が忘れていたことが弛んでいたッッ気遣いを感謝いたす!」

あ、甲冑を脱ぎ始めましたよ。馬鹿なんでしょうか、この人間は。ここに“大名ザザミ”がいるのに防御を捨て、何をやらかすのでしょう。それよりインナーまで脱がないでください。鋏で目を覆いたくなります、まあ蟹なんですけどね。人間の裸体なんてどうでもいいですけど。
「拙者は折り入って重大な話をしたく、ここへ参った次第にござる。そなたに敵意はござらん」
武器である太刀まで置いてどっかりと座りしたよ、馬鹿じゃないですね。完璧な大馬鹿でした。
そのブラブラした物をカミザミが挟みに来たりするかも知れないのに、そうなったら丸腰で殴り、撃退する気なのでしょうか?彼らの甲殻は硬いですよー、な んせ私と同種ですから。

「一目惚れ。鬼人となりて火竜や轟竜、はたまた老山竜を狩り得られたのは武具と一時の満足感のみ」
「蟹なんぞ下等な生物。仙高人を見ても知性や、働くべき理性もなくただ縄張りを徘徊し、破壊するのみの畜生だと拙者は考えていた。無駄に早いだけの鎌蟹もしかり」
言っておきますが、人間の言葉なんて断片的にしか分かりません。今私に向かって放たれている言葉は半分も分かりませんよ。
だって蟹ですし。アイルーさん達なら分かりそうですが、翻訳の代償として殻の角を要求されそうですね。殻は私の住処であり武器でもありますから、「はいあげる」なんて訳にはいきません。だから渡しませんよ絶対に。
「ただ、それは違った。鎌蟹には無い威風堂々とした姿、仙高人には無い知性。現に拙者が丸裸になった今でさえ、攻撃してくる素振りさえもない。弱き者に手を出さんとす姿に感銘を受けた次第にござる!」

「そなたを“殿”と呼びいただく事を許し候えばッア!?」
えーい、ごちゃごちゃと。フーフー吹くなら敵をおびき寄せる角笛くらいにしてほしいです。
言ってる意味がぜんぜん分かりません。裸になったり刀を置いたり座り込んだりして正気の沙汰とは思えない人間の男を殺したところで、鋏が汚れるだけ。
ご飯を食べられなくなっちゃいます。
なので殴る程度にしました

“渾身の力”を込めて遺跡の島に吹っ飛ぶように。

当分は戻って来ないでしょうし、私は退散することにします。
ええ、いろんな意味であの人は怖いですから。


「惚れ申した!」

「……」

また来ましたよ、ええ。懲りずに。だってあれですよ、普通は蟹に殴られ離れ島まで飛ばされたりなんかしたら「憎憎しさ100%絶対に殺してやる!」じゃあないですか。
もっと考えられないのは最初から“インナー”で来ましたよ。まぁ全裸よりはましですが、ありえませんよね。密林は温暖な気候故に多くのモンスターが生息しています。
例をあげるなら雌火竜こと“リオレイア”桃毛獣“ババコンガ”、そして私“大名ザザミ”。どれも強力で防具無しでは太刀打ちできないようなのばかりです。

命知らずの馬鹿です。もう一度言います、命知らずの馬鹿です。

そこまでしてなぜ来るのでしょうか?
「拙者は殿の臣下になると誓った身、死せても尚三途の川を渡る際もご一緒させていただきたく候。
殿の死=拙者の死にござる。殿と一心同体でなければ勤まらねばならぬ役目、故に殿の身をばッ!?」
黙れ人間、ごちゃごちゃうるさいです。そろそろ鋏じゃあなくて殻で潰しますよ、殻で。
でも正直言って気持ち悪いし……悩みますね。
いかに触れないでこの人間を殺すか。ブレスは却下します、「裸相手にブレス使わないと勝てないのか」とか言われそうで負けた気がしますから。

えーい、このムラムラした気をどう発散したら良いのでしょう。

「ぬぬぬ……拙者とした事が迂闊であった。殿に差し上げようとして持ってきていた献上品を忘れていたとは……切腹してもおかしくない程の段取りの悪さッ!申し訳ございませぬ殿」
あ、大きいマグロ。滅多に取れないドス大食いマグロじゃあないですか、この人間はいい物を持っていますね。でもどうするつもりでしょうか。まさかガツガツといく気ですか、私の目の前で。
「殿!お召し上がりください」

殿、いい食いっぷりでおられますな!ささ、まだ沢山有りますのでごゆるりとお食べください」

誘惑に負けました悔しい、でもおいしいッ。これでも年頃(?)の乙女蟹なんです、いずれ来る繁殖期のためにいっぱい食べたいんです。
でも良かったです、毒とか入ってなくて。そこそこ信用できますね、人間のくせに。でもこんな事をして何の得があるのでしょうか、マグロを取るのも簡単では無いでしょうに、本当に理解不能ですよ。
「まさに豪傑のごとき食いっぷり、将来大物になられる証。これから毎日持参し参じます故、楽しみにしていてくだされ」


毎日来るということですか。いつまで続きますかね。逃げますよ、もちろん。



いや、本当に毎日来ちゃってます。逃げてる私を捕捉し、かつ私が出てくる場所を予測してお肉を焼いて待ってます。来るたびにお土産(?)はポポのタンだったり、すごい時は火竜の肉だったりとお目にかからないような物まで持ってきます。
ただ、私は流石に『これは無い』と思い始めましたよ。なぜかって?人間の施しを受けたくないのもそうですが、なんというか依存のような関係になりたくないのです。
私は誇り高き盾蟹、人間はそんな私達を狩るハンター。ポポとティガレックスのように相反する存在なのですから。

考えた末に私は砂漠へ移住しました。新天地とは新たな天と地と書きます、つまり心機一転がんばろうという決意なんです。殻の心配をしなくて良いし、何より砂漠なのでインナー姿の奴は暑さで参ってしまうはずです。だから来れないはず!
「殿おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおどこにおわすうううううううううッ」


……ミョウナ コエガ ヒビイテ キマス スナノナカハ オトガ ヨクヒビキマス
私の考えに抜かりはありましたか?いいえ、無かったはずです。考えに考えた最良の方法でした。あっつい日差しは体力を奪い、洞窟の寒気は気力を飛ばします。化け物ですか?化け物なんでしょうね。
今回は鎧を着込んでいるようですけど……。この人間を繋いでいるのは何でしょうか。まさかとは思いますが、食べ物を与え肥え太らせ、肥大した真珠を回収しようとかとんでもなくヤバイ事でしょうか?

何にせよこのまま地中にいたほうが良さそうです。
「ぬぬぬ、密林から殿が消え早1週間、砂漠で巨大なザザミを見かけたという情報が入った故に飛んできたものの
  ……ガセでござったのか?何にせよ殿の場所を把握できない拙者の失態は大きい、この上は腹を斬り果てるか……」
なんかまた鎧を脱ぎだしましたよ、太刀まで抜いてお腹に突き立てええぇぇ!?
自害する気でしょうか、まずいですよ。こんなところでぶちまけられたりしたら困りますよ、ゲネポスがうじゃうじゃだと面倒で(餌場的な意味で)困ります。

何とかしてでも止めないと……。

「浮世も楽しゅうござった……せめて30の年を越しとうございましたがこれもまた宿。殿、あの世でお待ちしておりまッブシャ!?」

その時でした、砂が盛り上がったと思うと爆音が辺りに響き渡ります。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
「ううおお、耳がッ」

角竜ディアブロス。まさかですよ、この人間(と地中の私)はディアブロスの縄張りに入っていたというのですか?
私は地中にいるので当分は大丈夫ですが、人間はいま裸(正確にはインナー姿)で当然ながらあの二本の角に貫かれ死ぬことは目に見えてます。
逃げるにしても角竜はプライドが高く、縄張りを侵した者は例え異種であろうと双方どちらかが死ぬまで攻撃をやめようとしません。
到底逃げ切れるようなものではないのです。
だから砂漠に住む者はディアブロスの縄張りだけは入ろうとしないのに

……やっぱり人間は馬鹿なのですね。

「ぬぬぬ、後ろを取られるとは不覚也」
「丁度いい、拙者の死出の旅へ共せよ。遠からん者は音に聴け、近くば寄って目にも見よ。我こそは東方で生まれしハンター大……べッ!?」

あー、尻尾に跳ね飛ばされてますよ。当然ですよね、あんな細身の刀で防御できるのなら苦労はしないでしょうし、いちいち名乗りをする必要性が見受けられません。
散々言いましたが、馬鹿ですね。
それともあれが礼儀とかでしょうか、滑稽です。とても滑稽です。

「名乗りの途中で手を上げるとは礼儀を知らぬ暴君、ならばこちらとて義と礼を持って当たる必要は無い。我が龍刀【朧火】の錆となれ」


あ、やっぱり礼儀みたいでしたね。私の予測は当たるのです。


地中から見ていましたが、人間の戦いはすごいです。いまさらですが言いますが防具は何も着ていなくディアブロスの突進を喰らったら即死でしょう。普通にぶつかるだけて痛い筈です。
なのに、なのに人間は互角、それ以上の戦いを繰り広げています。
ディアブロスの尻尾を斬り落とし、自慢の角片方はどこへ行ったのやら。どこにそんな強さがあるのでしょうか。私には散々殴られたくせに。

「どうした暴君、丸裸の拙者を殺せぬとあらば砂漠にいる獅子やら砂竜やらに顔向けできんぞ。それとも角片方を失った時点で既に権威失墜したか?愉快愉快」
「ググ・・・・・…オオオオオオオオオオオオオオオオオ」

ディアブロスの口から黒煙が吐き出されています。モンスターには怒る時に独特な動作をする事で有名です。
私が見た中ではリオレイアが口から火の吐息を吐いたりします。私たち盾蟹は泡を吹きますね。どうしてかと言われても夢中で覚えてません。それくらい怒り心頭なのです。

「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「また強烈に耳がッ!?」


バインドボイス、所謂咆哮。私も苦手です。爆弾のように耳を劈き、動けなくなってしまいます。当然人間はそれに対する備えは全くしていない訳で……

「不覚ッ!耳が聞こえないッ早くやめろおおおおおおおおおお」

やっぱり耳を押さえしゃがみこむわけです。隙だらけ=死に直結。蟹である私でさえも分かりますよ、いま人間は本当に絶体絶命だという事が。
怒ったディアブロスの突進は岩盤なんて余裕で突き抜けます、片角だろうと無かろうと。人間のような体なんて紙屑……

『ただの角竜にやられるとは不覚也……せめてせめてもう一太刀浴びせて相打ちとしたかったが、どうやら天命らしい。殿、お待ちしております』

ガキィン


「殿…?」


確かに人間なんて紙屑ですが、盾蟹の甲殻はそうもいきませんよ?
毎日誰か分からない人間が魚やら肉をくれて成長した私の甲殻はその程度の柔な突進じゃあ突き抜けどころか刺さりもしません。
もうあれですね、なんて私は馬鹿なんでしょうか。このまま見過ごせばいいのに、砂漠の暴君にあの人間を庇って立っているのです。
伊達や酔狂じゃあ済まされないです。命を賭けなければいけないですね。最悪、死ぬ覚悟……も。でもそんなのまっぴらです。

「殿!そこにござったか。拙者が懸命に探し申したが見つからず諦めていた次第。このような姿を見せ恥ずかしい限り……腹斬りものにベケッ!?」

邪魔です。せっかく助けたんだから逃げててください、人間にはそれがお似合いです。せっかく私が時間を稼いであげてるんですから、それくらいはできますよね。
なんたってあのディアブロスと互角以上の戦いを繰り広げたんですから、逃げることぐらいは……

「武士に逃げ傷はあらず、しては戦場の恥を晒すもの。さらには殿を見捨てたとあっては末代までの恥。微力ではござるが助太刀いたす」

馬鹿!?やばいって、逃げてくださいよ。ディアブロスは最初キョトンとしてますけど、いま怒りがやばいですよ。口からの煙が半端なく吐き出されてもう辺りがモヤモヤしてきてます。
だいたい普通逃げるでしょ、やっぱり馬鹿ですか、散々言いましたが馬鹿なんですね、そうなんですね。もうやだなんで助けたの私。この上なく後悔してきましたよ。
この戦いが終わったら人間を八つ裂きにしましょうか。

「殿、下です!!下からの突き上げ!!」
「!?」

ドギュウッ

「ギイイイイッ」
「殿おおおおおおッ!?」

ヤド(目のあたり)を壊しやがりましたよ、このクソ角竜。人間の掛け声が無かったら直撃じゃないですか。このヤド探すのどれだけ苦労したか知ってるのでしょうか、あの能無し突進野郎。
紫のと違って、私たちは一角竜のしか使わないのに。くそッ、むかっ腹が収まりません。
でももっと癪なのは人間に助けられたという事ですね、恥です恥。私が人間ごときに……ですよ。悔しいッ!でも助かりました。複雑ですね。

「グアオオオオオオオオオオオオオオオアオオオオオオオオオオオオッッッ」
「殿、また向かって来ますぞ!」

あー、もう、角竜も人間もやかましいですね。こちらが必死に思案(?)を巡らせているのにギャーギャー騒いで罪悪感とか無いのでしょうか。
騒ぐのはゲネポスとランポスぐらいで十分です、あーんもう。これでいいや。

キンッ

キンッ

「ディアブロスの攻撃を寄せ付けないとはすごい型ですな……殿はやっぱりすごい」

盾蟹一族だけができるまさに鉄壁!と言っては言いすぎですが、全方位ガード。鋏で丸くなるだけで死角は無くなるのです。鉄壁よって無敵、盾蟹が狙われないのはこれがあるからなのです。
その間に人間が逃げてくれれば良いのですが……そうもいきませんよね、どうせ。強情馬鹿なんですから。ばーかばーか

「くらえ暴君よ、東方の剣技『気』による連撃をばッ!?」


グオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


「またも轟音、いいかげんに……とおおおのおおおおおおおおおおお!?」


ばい んど…ボイス。ひびきます…いまのわたしには……調子に のりました。この状態だ とひびくんです。
内部  に じーんと。意識とおの きます。逃げて 人…。
でいあぶろ す は咆哮のあと   とっしんしてき



鈍い音、私は貫かれました。急所には当たってませんけど大きい傷ができ、とても痛んで意識が消えます。これが死なんですね。
心残りと言えば、ご飯をくれた人間を逃がせなかったことと、“惚れた”がどういう意味か結局分からなかった事です。きっと熱い言葉なのでしょう。
あの人間のことですから、きっと……熱くて 正直で 馬鹿らしい 言葉で



「暴君ディアブロスよ、今や主は死出のお供では無くなった」
「我が主君の敵として、そし拙者個人の意思で主を甲殻の破片から牙の一本全てまで」

砂漠へと葬る 


「 遠からん者は音に聴け 近くば寄って目にも見よ」
「 我こそは東の国よりい出し祖を持ち、龍を屠る事を生業とした一族十七代目」


『源ノ龍衛門なり!』(やっと言えたぞ)


「ぬおおおおおおおおッ」
通じない、やつの甲殻に刃が通らない。なぜだ、龍殺しの太刀は竜に対し壮絶な威力を発揮するはずなのに。それがなぜ

何かを忘れている、大切な何かを


…………
武士道とは斬る道にあらず、護りの道なり。いかなる時においても自身のためのみに抜く事無かれ。
不殺を誇りに自身への慎みを持ち、なをかつ主を護らんとせば自ずと真の道、すなわち武士道を見つけたり。
真の道を見つけた時、龍殺しの太刀は戦わんと燃え上がる。その火は幾千の龍を包み込んだ“朧火”也。と
刻め、心に。それが東国武士よ

「忘れていた、拙者は。まさしく腹切りもの。大陸に渡る際、父上何と言われてこの太刀を託されたか……とんだひよっこはんたあだ」
「憎しみに囚われ、滑稽な護りを謳っていた拙者には剣の力なぞ引き出せていなかった、当然のこと」

ただ今は護るべき者がいる、拙者にはいる。姿に惚れ、通い、共闘した……いまや瀕死の殿を護らなければいけない。
護り護られそれが正しく武士の道、拙者は見つけた。


「壱、気とは放出せず内気として溜めるものなり。気は刃に宿り堅殻をも通す寸となる」

まるで別物のようだ。例えるなら“ばたあ”を小刀(ナイフ)でスパッと斬るかのように角竜の甲殻が斬れていく。
護りし者ができるだけで、これほどまで違うものになるとは。

「弐、砕き破断された部位へと連続で剣を入れ竜の力を殺し」

立っていられないだろう。朧火から出る火は竜の体表を焼き焦がし、動きを封ずる。それが龍殺しと言われる由縁と聞いた。
そして暴君よ、最後だ。

「参、溜めていた気を一気に放出する。人呼び、気刃斬りと」
「グワオオオオオンンンンンンンンンン………」

暴君が崩れ落ちた――山が崩れるかのように地響きを立て、砂の中に沈む。


「って殿おおおおおおおおおおおお!?」
「ギィー……」
まずい、瀕死にござる。拙者は手持ち無沙汰で来た故、治療用道具は何一つ…ある。父上が持たせてくれた一族に伝わる怪しい秘薬。
「本当のピンチ以外飲むな」と言われたが、正しくこの状況であろう。もしかしたらこれは殿に対して冒涜になるのかもしれん、だがッ だがッ 拙者は
殿に生きていてもらいたい!
「殿、拙者の秘薬を飲んでくだされッ」

拙者は夢を見ているのか、殿が……とのが
「わたしはなんでこんなかっこうで人間にだきかかえられているのですかせつめいしてください」
「でぃあぶろすはどこですか」「あっついです」

姫 になってしもうた。つまりザザミの殿は姫であり姫は殿であり拙者は拙者であの日の視線が眩しくて…
一族の秘薬はとんでもないものだったのか?それともあれでござろうか、分からない。状況が分からないでござる。
いま言えることはここにおる裸の大和撫子=殿だった と言うべきか?か?
「にんげん」
「はははははいい!?」
「いいたいことがありますがいいですか?」
「なんんんんありとおおおおおおお」

とりあえず拙者の鎧兜を貸すわけにいかず、インナーの比較的綺麗な部分を繋ぎ合わせて作ったのを着てもらってはいるが…
目のやり場に本当に困る、武士たるもの常に清廉潔白であらねばならぬが、これはまずい。
はたから見れば拙者は砂漠の民を強姦してるようしか見えない、しかも鎧の下は生まれる前の姿……恥ずかしいやら恥辱やらであわわわ

「ありがとう というのですか、人間のことばで」
「へ?」
「まあこっちがいって欲しいくらいですけど、いちおうおれいをいいました」
「う、はあ」
「で、わたしはなぜこんな姿に?」
「それは……その緊急時というかなんというか、申し訳ござらんかった!」
「またその体勢ですか、私にあったときもそれでしたね」
「あ…」
“ 惚 れ 申 し た” もうした もうしたぁ もうしたぁ
拙者あああああああああああああああああああああ!?というか言葉が伝わってたあああああああああああ!?

「で、惚れ申したとはどういう意味なんですか?」
「え、あの、その」
「遠慮はいりませんよ、おしえてください」
「拙者は覚悟を決め申した。殿……いや、姫は覚悟を決めましたか?」
「? にんげんをたすけた時から覚悟はきまってますよ」

やけくそだ!龍衛門よ、男になれ!もう20と3年がすぎただろ!
覚悟はいいかと聞いたじゃあないか。すわぬ膳を食わねば……ということわざがある!学は無いがそれは分かるぞ!48手も無駄に覚えたではないか。

「こ、こ、こういう事をいうのです」
「あーうー、抱きしめないでくださいいいいいいきっついですいったいですにんげん」
「し、失礼つかまつったあああああああああああああ!!!!!」

拙者はヘタレにござる、嘆かわしい。これを天国におわす叔父上が見たらなんと文句をたれることか……
ああ、とりあえず“ぎるど”にどう報告しようか。迷子の民を保護した、砂から生まれたええいダメだ。

「なるほど、惚れたのいみがわかりました」

「あいてをこうやっておもいやることなんですね、わかりました」
「え、ちょまっ、鎧をいつの間に剥ぎに!?」
「違うんですか、馬鹿人間」
「違うというかなんと言えばいいでござるか」

分からない、女子の言うことはさっぱり分からない。いえるのは拙者との考えが違うという事。
どうしようどうしよう。というか拙者の暁丸の胴はいつのまに足元へ転がっているのだ。教えてくれ朧火よ。
「“惚れた”なんですよね。なんですか、じゃあ。説明をようきゅうします」

なんと説明したらよいか、拙者には今微妙な気持ちの変化がありまする。特に護ると思ったときから……なにかこう
始めは戦人として、なんだが今は違う気がする。こう、青臭い……ほろ苦いような。
そうだ、これだ、この言葉!いまの心境を的確に汲み取り、思いを伝える言葉。
「姫、“惚れた”と連呼なさるが今回は違う表現を使いまする。それよりもっと気持ちの篭った人間の使う言葉」
「なんでしょうか、私がわかるのでお願いしますよ」
「“一目惚れ”にござります。つまり拙者は姫の事が好き……という事にござる」
「……へ、すき ですか?」
「左様にて」

なんですか、それ。わかりません。でもなんとなく気持ちは伝わります」

ぎゅっ と、また姫がだきついてえええええええええええええええええええええええええええ!?口付けだとおおおおおおおおおお
磯の香りと女子の香りが混じって拙者には未知の領域……いぜんに拙者の初めてが奪われた!?
「ならこういうことですね、私はこれ以外表現の方法をしりません。ケルビ夫婦がこんなことをしていたので。それが好きということですか」
「姫……段階が違いまする。そして痛い痛い痛い拙者が痛い痛いそのまま抱きしめるなんておかしい!盾蟹の力は健在とな!?理不尽、なんという理不尽」
「違うのですか、わかりませんよ」

でも、この痛さは戦う痛さではなく、別の痛さと感じる…ような気がしまする。
「で、私がこんな姿になっても、まだ人間は惚れていてくれますか?よく分かりませんけど」
「むしろ惚れ直しました、姫。いえ、もとからずっと惚れておりました」
「そうですか、それは良かったです」

盾と武士 fin
2010年08月21日(土) 11:57:29 Modified by gubaguba




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