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桃色したひらひらの… ver.A 3

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
17桃色したひらひらの… ver.A 3擬人化ドスガレオス×女ハンター珍味の人擬人化(ドスガレオス)753〜762

桃色したひらひらの… ver.A 3


「妙な光沢があるから硬いのかとばかり。言われてみれば柔らかそうな線だったような気もしないでもない」
 ふー、と安堵の息を吐いたハンターさんに向け、言葉はさらに続けられました。
「見るのに許可を得ろ、か。脚の間という場所は、あまり他の者の目に晒す場所ではないらしいな」
 反射的に「アタリマエじゃない」と返しかけたハンターさんは、なんとか思い留まります。
 短く呻いて黙りこくったハンターさんですが、その沈黙に今更大した効果もありません。
「身体の奥まった位置で、おまえのような粗忽者でも守らなければならない場所。つまりは、その薄く柔らかだというものの付近がおまえの生殖孔か」
 モノのついでに「そそっかしい」と評されたなんて、ハンターさんは気付けませんでした。
 
 上体を起こしたおにっさんは早速とばかり、黒革手袋に包まれた大きな手でハンターさんの内股に触ります。
「尾のないおまえらなら、大方両脚の付け根辺りが生殖孔の在り処だろうと思ったものだが。外れてもいないものだな」
 弾力を試すように、ちょっと強めに肌を押しながら、おにっさんの指はハンターさんの中心へと向かいます。
 始めの内こそくすぐったがっていたハンターさんですが、突然、その喉が小さく笛のように鳴りました。
 つやのある革の感触を持った硬い指先が、特に薄く柔らかい肉をつまんだのです。
「確かに、柔い……が」
 つまむのをすぐ止めた指は、ハンターさんのその花弁みたいな肉をなぞり上げました。
 おにっさんの指先が立ち上がった粒状のものに引っかかり、少し弾いてしまいます。
「ひっ」
 腰をびくりと跳ねさせ、ハンターさんは悲鳴を上げました。
「硬い位置もある」
 手探りでさっき弾いたものを見付けだし、その根元をぐりぐり押しながら、おにっさんは呟きます。
「芯のある、骨の硬さではないな。こう凸状なのだから、女の生殖器でもなさそうだが。何だ」
 何なのかに答える余裕もなく、ハンターさんは指の動きに合わせ、小さく声をもらしてしまうのでした。
 敏感な部分をほんの少しの遠慮もなくいじくり回されているのに、勝手に濡れてくれているおかげで、気持ちよさが勝っているのです。
 革のつやつやと自前のぬるぬるのコラボレーションは、ハンターさんに麻痺にも似た効果をもたらしていました。
 時折ビクッとします。
 
 おにっさんが当初の目的を思い出したのは、案外遅くでした。
 ハンターさんが下唇を噛み締めてすっかり涙目になった頃、おにっさんの指先はやっとハンターさんの柔らかい入口を探りあてたのです。
 初めて気付いたみたいな口調で、おにっさんが言いました。
「いつの間にやら、妙にぬめり潤っているわけだが」
「……黙んなさいよ、このエロ砂ムシ」
 ハンターさんにしては静かな声での返事です。お顔は真っ赤で息も荒く、大声を出す元気もないだけなのですが。
 ごつい指に自分の内側をさすられながら、ゆっくりと深く挿されていく感触は、痛みはないけれどもどちらかといえば不快なんです。
「黙ってやる義理もないな」
 ハンターさんはその異物感に、おにっさんの言い草に、不満の唸りを上げるのでした。
 
 入るところまで入れて、中のつくりを確かめたらしいおにっさんは、何か納得いかない様子でハンターさんから指を抜きました。
 節のある指が出ていく感触にハンターさんの表情と吐いた息がちょっと切ないものになります。
 黒革手袋の指をまじまじと眺め、おにっさんは言いました。
「つまるところ、生殖行為の助けとなる潤滑液というものか、これは」
「答えてやるギリもないわ、変態」
 ディアブロスとか相手にヤリ方訊きまくったワケでもないでしょうにと、思いながら。
 ハンターさんはいつもと違っての下ネタのさばけ無さに、自分でびっくりしています。
 何か言ってやろうと考え考え、ちょっと思いついた事を口に出してみました。
「にしても、あんた砂ムシのクセに前戯入れるとか、良い心がけじゃないの。褒めたげてもいいわ」
 なにせ、『穴があったら入りたい』という理由で、こんな事態にハンターさんを引きずり込んだおにっさんですから。
 お股ぱかーんの後に速射デザートテンペスト的なイチモツがずぶーっと、とかも無くは無いわねと考えていたんです。
 
 うむとおにっさんは唸りました。
「存分に褒めるがいい」
 だがな、と言葉が続きます。
「前戯が何の事だかすら解らない。おまえに訊くのは無駄そうだ。『答えてやるギリもない』らしいからな」
 ほんのちょっぴり根に持たれたっぽい事に、ハンターさんは笑いました。
 入れる準備、具体的には指での慣らしだとハンターさんは説明しましたが、おにっさんの答えはそう好意的なものでもありませんでした。
「俺は異種族と交わろうなどと無茶はする。だが得体の知れん孔にいきなり交尾器を差し入れるほど無謀ではないぞ」
 心外だという表情のおにっさん、意外に慎重らしいです。
「なにより、人の交尾器は思ったよりも軟いからな。脆そうだ」
 ハンターさんは、知らずに自分の弱点を暴露したおにっさんに、心の中で「フニャチン乙」を呟きます。
 とりあえず、指の時点では痛くなかった事と弱点発見で、心に余裕が生まれるのをハンターさんは感じました。
 やる事をさっさと済ませてしまった方が、自分の身体も変に傷付かず済んで早く放してもらえるかもしれません。
 やっちゃえやっちゃえとハンターさんは腹を決めます。
 
「そんなやーらかいモノならちゃんと入るのか、怪しいもんじゃないの? ま、はいんなくてもあたしは困んないけど」
 ついつい要らない一言二言を口にしながら、ハンターさんは挑発的な目付きでおにっさんを見上げました。
 このハンターさん、人を貶す時や何かを傷め付ける時ほど表情が輝くという、アレでソレな面があります。
「硬度は重要か。軟いと言ったところで、おまえの内部以上ではないぞ。何にせよ、入るに問題ない程度だろう。安心しろ」
 ちょっと会話内容が噛み合いません。
「安心しろって何をコンキョによ?」
 疑惑の念たっぷりの視線の先、おにっさんは得意気に鼻を鳴らしました。
「俺の確信を根拠に」
 つまりは勘でしかないんだそうです。
 さすがにハンターさんは「えー」と抗議と不満の声を上げたのでした。
「善し悪しなぞ試せば解る事。成るように為そうではないか」
 ぬちと音を立て、ハンターさんの秘密の花園に自己申告の割に硬いモノが押しつけられました。
 が、そのままぬるんと上に滑って硬いもの同士で擦れ合ってしまいます。
「……っ!」
 ハンターさんが息を短く吸い、おにっさんは小さく唸りました。
 無言のまま、おにっさんは手で位置を直してはぬちぬるんと滑らせてしまうのを繰り返します。
 そのたびにハンターさんの内股は震え、おにっさんは熱い吐息を漏らすのでした。
 
 遊んでいるのかとハンターさんが思い始めるくらい何度も滑らせた後、深刻そうな声でおにっさんは呟きました。
「拙いな。入らない。本当に硬度不足が原因か」
 拙(まず)いのではなく、ただ拙(つたな)いのです。
 肉芽を亀頭で突かれ擦られして、とてももどかしい状態にさせられていたハンターさんは、おにっさんの思い違いを訂正してあげます。
「硬さじゃなくって、進入角度っ!」
 ほうと先を促すおにっさんの声に、ハンターさんは人差し指をおにっさんの鼻先へと突き付けます。
 ふん、と何故か鼻息で温かく迎えられた指で、おにっさんの鼻の穴の間の柔らかい壁を押しました。
「例えばよ。その、鼻の穴と指の関係みたいなもんなの。下向きの穴を横から指で押したって、指は入んないじゃない?」
 ぴしぴしとおにっさんの鼻の穴の縁を弾いてみながら、ハンターさんは説明しました。
「指が太くなくたって、先っぽがちょっと入りかけてたって、力の入り方がヘンだとそれちゃって入らないわ」
 おにっさんはかなり嫌なのか、眉間に浅いシワが寄っています。
 ぎるぎるとおかしな音も聞こえて来たところで、おにっさんは言いました。
「口や鼻付近に触れられると、反射的に噛みかねん。今すぐその手を止めた方が良いと忠告してやろう」
 噛むぞと脅された気分で、ハンターさんは下唇を突き出しながら指を引っ込めます。
 でも、いつもは物覚えの悪いハンターさんが、奇跡的に思い出せました。
 まだ意識のなかったドスガレちゃんに、毒仕込みのサシミウオを飲ませるのにどうしたか。
 鼻っ面に物が当たれば噛み付く習性を利用しようと引っ叩いた途端、せり出した歯茎と並んだギザギザ牙。
 本当に悪気なく自動的にそうなるのなら、警告してくれただけ親切なのかもしれません。
 
 おにっさんはさっきハンターさんの中を探っていた自分の人差し指をじっと見つめます。
 それをぎぎ、と曲げて伸ばして言いました。
「それはそうと、進入角度だな。なんとなしにはわかった」
 白く滑らかなハンターさんのふとももの裏に手がかけられます。
 ハンターさんが小さく声を漏らす間に、膝を胸にくっつけるみたいに、脚が持ち上がりました。
 おにっさんの視線がハンターさんのてっぺんから股間までを舐めるように進みます。
 ひっくり返ったカエルみたいな窮屈な恰好を、無言でじろじろ見られるのなんかハンターさんは嫌でした。
 でもあれこれも言われたくないし、何より放置状態っていうのがもっと嫌でした。
 入口でモタついてたクセに、なに悠長におあずけ食らわしてんのよと思った瞬間。
 肉の割れ目は、こぷと蜜のような液を吐きました。
「見ないでっ」
 恥ずかしさのあまり、ちょっと泣きそうな声でハンターさんは叫びます。
「無理を言うな」
 一段と掠れ気味の錆びた声が即答しました。
 ハンターさんは言い返そうと背を起こしかけますが、おにっさんの視線が突き刺さっていた位置に熱を感じて動きを止めました。
 熱の塊、おにっさんに押し付けられた硬いモノをハンターさんはそっと窺います。
 赤黒く厳つくなんだか禍々しさすら漂う、みなぎる力を吐かせなさいと言わんばかりのそれは脈打つグロテスク。なんという呪魂。
 そんなにフニャってない上に怖そうで泣きたくなったハンターさんですが、それどころでもなさそうです。
 つるりとした感触の先っぽがしっかりと押し込まれ、ハンターさんはまた小さな声を上げました。
 
 開いてるのか瞑っているのか解りにくい糸目のおにっさんは眉を寄せ、呟きます。
「俺の確信に間違いは無かったようだが、思ったより狭苦しいのだな」
 ハンターさんは初めてだと言いましたし、無理もない事でしょう。
 おにっさんは、おろおろと目を泳がせているハンターさんの頬に触れて訊きました。
「おまえは、苦しくはないか」
「くるしい。限界。なんか裂けそう」
 ハンターさんはか細い声で答えて、目蓋を伏せました。その拍子に涙が一筋零れます。
 そうかとおにっさんは囁き、ハンターさんへ顔を寄せました。
 そしてハンターさんの目の縁や涙の筋に唇を付け、柔らかく舌で拭うのでした。
 温かいその感触に、ハンターさんは少し慰められた気がしました。
「ならば、さらに苦しむがいい」
 これまでにない優しい口調で言われた内容は、ハンターさんをとても驚かせました。
 見開いた目に映ったのは、間近過ぎて焦点の合わないおにっさんの顔です。
 その目の色が砂色なんだと初めて気付いた時にはキスされていました。
 おにっさんの今度のキスは、ちゃんと顔を傾けてのものだったのですが、そんな事にハンターさんは気が回る状態ではありません。
 と、同時、ハンターさんのなかに食い込んだ熱いモノは、ゆっくりと押し進められます。
 引き攣れたような鈍い痛みと酷い圧迫感、異物に内側へ侵入される恐怖に上げた悲鳴すら飲まれてしまいました。
 
 声にならない呻きがハンターさんの鼻を抜けていきました。
 口の中で好き勝手暴れる舌と、身体の内の道をゆっくり押し広げて沈み込む男性器。
 それぞれの様子は違うけれど、これは有無を言わせない侵略でした。
 おにっさんの髪を引っ張り、胸を叩き、踵で蹴り、ハンターさんは激しく抵抗を示します。
 暴れた分、身体の内側は余計に痛み、それから逃れようとハンターさんはおにっさんの肌に爪を立てました。
 ただ、恐ろしかったのです。
 熱くハンターさんを包み込み溶け合うようだった肌と、傷付けるなという頼みを聞き入れてくれた大きな手。
 表情に乏しいけれどその分威圧感を持たない顔、その調子の平坦さが尊大さを匂わせない妙に硬い言葉選び。
 ハンターさんはこのおにっさんを半ば信用しきっていました。
 なのに美しいと言ってくれた同じ口が、苦しめと言い、言葉通りにハンターさんは苦しめられています。
 苦しめと言われる程、憎まれていたのかと思うと悲しくて仕方ありませんでした。
 口を塞がれ、ロクに息も吸えないハンターさんは暴れたせいもあって、早くも酸欠気味になってきました。
 涙が溢れ、ますます息苦しくて何も考えられません。
 投げ遣りな気持ちになって、ハンターさんは抵抗を止めました。
 
 くたりと身体の力を抜いたハンターさんの口から、名残り惜しげにおにっさんの舌が去りました。
 ハンターさんの顔は、涙と汗とよだれと鼻水で、前回のキスの後よりももう二段くらい酷い有り様です。
 弱弱しく呼吸を始めたハンターさんの上、おにっさんはハンターさんの顔にせっせと唇を付け始めました。
 熱い舌が汗も涙も鼻水さえも、舐めとっていきます。
 その間にも、まだじわじわとハンターさんの内への侵攻は続いていました。
 鈍い痛みはただの熱のようだと、ハンターさんはぼんやりと感じるのでした。
 
 ハンターさんが顔中唾付きになった頃、おにっさんは言いました。
「匂いは甘いがおまえは辛い。口からのはそうでもないが塩味の強い液ばかりだ」
 汗と涙と鼻水の味の感想などそう聞けるものではありませんが、ハンターさんは無反応でした。
 涙が止まらないハンターさんは開いたままの薄茶色の目で、うつろに宙を見詰めるばかりです。
 声も上げずに泣くハンターさんの目を覗きこみ、おにっさんは糸目を瞬きました。
 少し呆れたように、囁きます。
「言ったはずだ。また泣かされると」
 ひ、とハンターさんは小さくしゃくり上げました。
 絶対泣かすとか思われていたのかと、ますます悲しくなったのです。
 他人への悪意を隠そうともしないくせ、ハンターさんは他人から嫌われるのが平気な質でもないのです。
 
 おにっさんは勢いを増したハンターさんの涙を見、眉を寄せました。
「痛むのか」
 気遣うような声に警戒したハンターさんは鼻をすすり上げ、そっと首を振ります。
 痛いというより、ただ苦しく熱いという感覚になってきていたのです。
 そうか、とおにっさんは熱のこもった溜め息を吐きました。
「早々と押し込んでしまえば、長く苦しめる事もなく済むかと思ったのだが、そうでもないらしい。すまんな」
 掠れ具合の増した声は、また優しそうでハンターさんはどう反応していいのか困ります。
 もしかして何か自分が思い違いをしたのかと、ハンターさんは悩みました。
 そんなハンターさんの内心にお構いなしに、おにっさんは言いました。
 
「俺の方は本懐も遂げられずに果てる寸前だ」
 なんだかおかしな事を言われた気がして、ハンターさんは涙目を瞬かせ、おにっさんの顔を見返します。
 つまりはイキそうと言われているっぽいのですが、本懐とは何の事か。
 ただただゆっくりとモノを押し込めているだけでイキそうってまさかの早漏乙?
 ていうか、初めてなのにしっかり入ってあんまり痛くないってもしかして粗チン乙?
 などとハンターさんの思考は少し調子を取り戻しつつあります。
 一方、おにっさんは眉間にくっきりシワを深めて余裕が無さそうに見えました。
「指でも今進めている交尾器でも、おまえの中に分岐は見当たらなかったのだが、どういうわけだ。
 子宮に固定するはずの交尾器は動かん上に、今入っている場所はそもそも子宮に通じているのか。
 そればかりか果てそうだというのに、おまえの中から抜き去りたくて堪らない気持ちになるのが解せん。
 そもそも何故交尾器が一本きりしかないのだ、おまえらは。おかしいだろう」
 切羽詰まった早口でまくし立てられた言葉は支離滅裂に聞こえ、ハンターさんは無言を返す事しかできません。
 考え始めたおかげで涙が止まりました。
 少し考えて、ハンターさんは解る事だけ答える事にします。
「とりあえず、そこ、子宮に通じてるのは確かなんだけど。分岐なんてないわよ?」
 物知りな同僚を先生に習った【稼げるハンターへの第一歩〜解剖学〜】の内容をもやっと思い出しながら、ハンターさんは答えました。
 解体するのに、いろんな生き物の身体の仕組みを知った方がいいと言われて得た知識ですが、思わぬところで生きたものです。
 
 安心したような息を吐き、おにっさんはハンターさんの髪を撫でました。
 いつくしむようなその動きに、ハンターさんはちょっと気を許しそうになって、慌てて身を固くします。
「ああ、ここが子宮に至ると言うならそれでいい。排泄器官のどこぞで果ててしまうのかと、気が気でなかった。
 後はどう果てたものかだ。なにせ動かないからな」
 イキそうとか言うわりに、おにっさんはハンターさんの額に頬にキスし始めました。
 妙に優しいその振る舞いの後、また何か酷い事を言われたりされたりするんじゃないかと、ハンターさんは恐れています。
 
 ただ、ハンターさんには一つ解った事がありました。
 ガレオスちゃん達は総排泄孔持ちだと、さっきおにっさんが言っていた事を思い出したのです。
 鳥なんかにありがちな、排泄物は一つの穴から出す、生殖もそこでするという孔だけど、中ではそれなりの分岐があるはずのものです。
 人の女性は排泄器官と生殖器ははっきり別だと、おにっさんは完璧には理解していなかったみたいです。
「いろいろ一緒とは限んないわよね……」
 おにっさんが「そうだな」と返事をくれました。
 
 寸止め好きなのかなんなのか、おにっさんはハンターさんの奥まで届きながら、そこから動こうとしませんでした。
 ただ、今更ハンターさんの胸に興味を持ったようで、抜けるように白い乳房を慎重な手付きで触れ始めました。
「おかしな所におかしな具合に肉が付いていると思ったものだが、特に柔い……」
 たふたふと下乳部分を掬いあげながら、とっても楽しそうです。
 それは緩やかな心地よさをハンターさんにも伝えてきたのですが、何分食い込まれているところが気になって仕方ありません。
 繋がりっぱなしで楽しむというプレイも聞いた事がないでもないだけに、ハンターさんはおずおずとおにっさんに尋ねました。
「……ね、あのね。その、そろそろ動かないの?」
 うむ、とおにっさんは唸ります。ハンターさんのおっぱいに手をかけたまんま。
「動かないとも。軟骨すらない軟い交尾器なら仕方ないのかとは思うが、どうやって生殖行動の終わりになるのかすらわからん」
 なんだか食い違いを感じたハンターさんは、小さく首を傾げます。
 交尾器に骨、とおにっさんがイクために動くかどうかは別問題のはずなのですが。
 ハンターさんが疑問を持っている様子を、おにっさんも怪訝な顔で見詰めます。おっぱいを揉んだまんま。
「腰、動かさないのって、きいてるのよ」
 ハンターさんはゾクゾクしてきながら、吐く息で囁きました。
「腰か。何故に腰を」
 本当に不思議そうに尋ね返すおにっさんの様子に、ハンターさんはまた一つ理解しました。
 
 お腹に力をこめてみると、おにっさんが小さく呻くのが聞こえます。
 たぶん、悪くない感触があったのでしょう。
 ハンターさんはガレオスちゃんと人間の違いに思いをはせながら、おにっさんに答えてあげました。
「腰動かしてみなさいよ。なんていうかね、人のはこーじゃなくて……」
 ハンターさんは指をくるくると動かし、おにっさんとの間の宙に文字を書いてみました。
 続いて、指はまっすぐ伸ばしたままに、肘から動かす感じで宙に同じ文字を書きます。
「こーなのよ」
「何がだ」
「男性器の動きっぷり」
 おにっさんは細い目を瞬き、ハンターさんは気まずげに目をそらしました。
 つまるところ、ガレオスちゃん達の交尾器は総排泄孔に挿入された後にも割合細かい動きが必要なので、任意で動かせるけれど。
 人の男性器は一本道の膣の中、比較的大雑把な動きしかしないんだよとそんな話です。
 
 納得したように、おにっさんは頷きました。
「だいたいわかった。おまえが意外に聡い事もわかった」
 褒めてるのか貶しているのか、怪しい言葉の後、おにっさんは腰を引きました。
 ずるりとハンターさんの中から赤黒い肉が引き出されるのが、二人の目に映ります。
「……っは」
 圧迫感はマシになったものの、急に動かれた不快感にハンターさんは呻きました。
 じゅぶ。と粘質の音と共にまた圧迫感が増し、ハンターさんはおにっさんを見上げます。
「動けばおまえは苦しいのだろう」
 苦しげにも見える表情で、おにっさんが訊きました。
「あんたの、長くて強すぎで窒息しちゃうキスに比べりゃ、マシよ。あれこそ次やったら死んじゃうわ」
 ハンターさんは首を振り、真顔で言いました。キスがド下手とストレートに言わない分、ハンターさん的に大人の対応です。
 それを面喰った顔で聞いたおにっさんは、手を伸ばしてハンターさんの鼻をつまんでみます。
 ハンターさんは「んぅ」と呻いて抗議の意思を示しました。
「鼻でも息はできるだろう。死にかける前に気付け。俺の息も当たっていたろうに、おまえというヤツは……」
 呆れたと言わんばかりの言葉で、ハンターさんの中の反抗心に火が点きました。
 
 鼻をつまむおにっさんの手を払いのけ、ハンターさんは鼻から深く息を吸います。
「うっさいわね! 苦しめとか言って散々苦しめてくれちゃって、なにその言い草! この白髪色黒変態サドの粗チン!!」
 ハンターさんがお腹から声を出した分、なんだか妙なところが動いたらしく、おにっさんはちょっとよさそうに呻きました。
 
 毒気を抜かれた気分のハンターさんに、おにっさんが声をかけました。
「苦しさを強いている事に関しては、すまなく思う。だが他はともかく『そちん』とはなんだ。大方侮辱だろうが意味が解らない」
 とりあえず、おにっさんは自分を不必要に苦しめたいワケじゃなかったんだと、ハンターさんは少し安心します。
 怒りが完璧にしぼんでしまったハンターさんは、一つ、溜め息を吐きました。
「お粗末なチン……生殖器だって言ってんの。入ってて痛いは痛いけど、あんまり痛くないもん。小さいんじゃないの?」
 そんな一言でおにっさんが逆上するとか、ちっとも考えずにハンターさんは言いました。
 何気なく他人の地雷を踏みがちなハンターさんですが、おにっさんは気にした風もなく鼻を鳴らします。
「事の要因を外にばかり求めるのはどうかと思うぞ。おまえが受け入れやすいだけという可能性もなくはない。
 仮に交尾器が小さく粗末だろうと、入れるに不都合はない。おまえに痛みが少ないならそれで悪くもない。おまえは不満か」
 言ってる内容は下手すれば「おまえがユルいんじゃね?」なのですが、幸いにしてハンターさんは気付きません。
 むしろなんだか後半部にときめいてます。ハンターさんは浅慮をこじらせているタイプです。
 問いかけられた事に、ハンターさんは否定を示しておきました。
「確かに身体が裂けるほど痛いって言うより、マシよね。うん。そんで、あんたはちゃんと気持ちいいの?」
「そら恐ろしい程に善いとも」
 間髪入れずの返答に、ハンターさんはちょっと笑いました。
 笑うとやっぱりお腹に力がこもるので、おにっさんはまたよさそうに息を吐きます。
 
 笑いが収まった頃にハンターさんは言いました。
「じゃ、動きなさいよ。あんたが選んだあたしが、イイ女だって思い知りなさい」
「……おまえ」
 おにっさんはそれ以上の言葉は続けず、熱のこもった目でハンターさんを見詰めました。
「おまえじゃない。アファユっていうの。呼びなさい」
 ハンターさんは言ってから、人じゃないものに名前を知られるのは不吉だとかいう故郷の迷信をちょっと思い出しました。
 けれど、おにっさんが口の中で名前を転がす様子が悪くなかったので、後悔はありません。
 少し遠慮がちに、徐々に余裕もなさそうに、おにっさんがハンターさんを揺さぶって果てるまで、ハンターさんは異物感を我慢しました。
 絶え間ない鈍い痛みと苦しさの中、ハンターさんは自分の名前を繰り返し囁くおにっさんに、大きな満足を得ました。
 
 
「酷いくらいに善いな。年甲斐もなく我を忘れた」
 ハンターさんの中から、硬さを失ったモノを抜きながらおにっさんは言いました。
 それでも消えない異物感に、ハンターさんはよく解らない喪失感を抱きます。
 おにっさんは身体を起こし、ハンターさんの脚の間に座ってハンターさんの顔を見下ろしていました。
「痛むか」
 熱の消え残った声は、また優しそうでハンターさんはどう反応していいのか困ります。
 とりあえず否定してみたハンターさんの額や頬を、おにっさんは労わるよう撫でました。
 ハンターさんはだんだんとその手付きに安心してしまうのを感じました。
 
 けれども、手の温かさにまどろむ間に寄せられていたおにっさんの顔に気付くと、慌ててその顔を両手で押し止めます。
「なんだ」
「なんだじゃないわよ。あんたのキスは息できないから、やなの」
 ぐいぐいと押してくるハンターさんの手に従うように顔を引き、おにっさんは言いました。
「鼻の存在を忘れてやるな」
 小さく「あ」と漏らしたハンターさんに、おにっさんは眉根を寄せます。
 再度身を起こし、座り直したおにっさんは小さく呟きました。
「まずいな」
 
 目の前にて微妙に沈んだ顔になったおにっさんの様子を、ハンターさんは不思議そうに見上げました。
 キスを嫌がられたのがそんなにショックだったのかなと、思ったのです。
 ハンターさんの視線に気付かず、眉間のシワを深めゆくおにっさんの顔に、ハンターさんはちょっぴり反省しました。
 背を起こし、無駄にしなやかな身のこなしでおにっさんの視界の中に割り込みます。
 急に視界に入ってきたハンターさんの顔に驚いたらしいおにっさんの前、ハンターさんは言いました。
「キスなんかこっちからだってしたげるから、そんな顔しないの」
 ほれほれなどと、酒に酔ったおっさんよろしく唇を近付けるハンターさんを、おにっさんは呆気にとられた顔で見詰めます。
 おにっさんの表情が落ち、その眉間のシワも無くなったところで、ハンターさんはおにっさんの鼻の頭をかぷと噛みました。
「鼻付近は止せと言ったろうに」
 おにっさんは動じる事もなく淡々とハンターさんに再度の忠告を出します。
 ハンターさんは慌てて口を離しました。ちょっと自分からのキスに照れただけだったのに、噛まれては堪りません。
 おにっさんの深い溜め息と共に、白い身体を黒い腕が抱き寄せました。
 
「面倒な事に情が移った」
 平淡な調子の錆びた声でおにっさんが言います。
 熱い肌に包まれる感触が気に入りつつあったハンターさんは、ご満悦で笑いました。
「なになに。あたしに惚れた? っていうかもう惚れてるわよね」
 くたくたにシワの寄った外套の上、無防備な笑顔を見せるハンターさんへ、おにっさんは複雑な視線を送ります。
 ハンターさんは勿論、丸っきりの本気で訊いているワケではありません。
「ああ。アファユは可愛いな」
 ですから、そう返ってきた時には薄茶色の目をまん丸にして、瞬くだけだったのです。
 投げ遣りというワケでもないけれど、表情のないおにっさんの顔と声にハンターさんはまだ気付けません。
「『可愛い』は、どうとでもできる存在に対しての形容だと、おまえは知らないのか」
 淡々と言いながら、おにっさんはハンターさんの目を、その奥を覗き込むようでした。
「情が移ったついでに教えてやろう。おまえが繁殖行動に応じたからと言って、おまえを無事に帰すなどという約束はない。
 約束していたとしても、俺がそれを守る保証もない。繁殖行為を一度きりで済ますとも言っていない。
 なにより、俺がおまえに真実ばかり告げているという根拠もない。おまえは何事に対してもより多くの危機感を持つべきだ」
 やる事やってからお説教タイムとは、おにっさんはやはり微妙におっさんでした。
 
 おにっさんに言われた事を理解するうちに、ハンターさんの表情が険しいものになっていきます。
 その目に怒りが燃えるのも、おにっさんは静かに見詰めていました。
「物覚えは悪い、考えなしで過ちを繰り返し、臆病なくせすぐに相手を侮る。
 そんなおまえに俺が殺される寸前まで追い込まれた理由が解らない」
 ハンターさんの口がへの字にひん曲がりました。鼻から深く息を吸い、今にも怒鳴りそうです。
「俺を殺せるおまえが、何故逃げもせず俺と交わった。憐れんだか」
「逃げようとしてたのに、全部全部邪魔したのはあんたじゃないの!」
 小さく爆発したハンターさんの怒りにも、今のおにっさんの表情は欠片も揺るぎません。
 おにっさんの腕を逃れようとハンターさんは身を捩りましたが、あまり効果はなさそうです。
 無駄と見るや、ハンターさんは暴れるのを止めました。
 おにっさんの厚い胸に掌をあて、ハンターさんはおにっさんの糸目を見詰め返します。
「あんたの言った事、何が嘘だったの」
 らしくもない静かな声での問いに、低い声は返しました。
「答えてやる義理もない」
 ハンターさんは唇を尖らせ、何か言いかけて止めます。
 一度鼻を鳴らして、ハンターさんは口を開きました。
「じゃ、質問変えたげる。あたしを抱いてあんたはちょっとでも楽しかった?」
 おにっさんの無表情が、一瞬にして怪訝なものに変わりました。
 
 にやりと唇を歪ませたハンターさんは、少し挑発的な口調で言い足します。
「ああ、答えてやるギリもないのよね。でもいいわ。とても言葉では言い表せない、とか勝手に思っとくから」
 今度は何故か得意気に、ハンターさんは鼻を鳴らしました。
 自分を抱き締めるおにっさんに身を寄せ、ハンターさんは言うのです。
「あんたのホントがなんだってどーでもいいの。ヤりたい一心でも、あたしを褒めたのはあんたくらいだもの」
 別にスピリチュアルなものを感じたワケでもないけれど、ハンターさんは熱い身体を抱き締め返しました。
 無言で戸惑うおにっさんの気配に、ハンターさんは可笑しくなってきました。
「ね、あのね。これからあたしにどんな酷い事するの? 爪剥ぐ? 指もぐ? 食べちゃう?」
 うきうきとした声でハンターさんは予想を並べました。
 一思いにガブリと食い殺されるだけなら、どんなにいいかとも少し泣きそうです。
 ハンターさんと抱き合う熱い身体の持ち主さんは、聞えよがしな溜め息を吐きました。
「自惚れるな。おまえらなぞ食らっても旨くもない上、大した腹の足しにならん。誰がわざわざ食うか」
「食べた事あるのね……」
 おにっさんはうむと唸りました。
 
「食べないなら、どうするのよ。半殺しにして捨てて、生きながらになにかに食べられるのでも見たい?」
 ドスガレちゃんをどう苦しめようか考えていた時の記憶を引っ張り出して、ハンターさんは言ってみました。
 色々思い付いておいてなんだけれど、痛そうな事を自分にされるのは真っ平御免です。
「俺はそういう無為な趣味は無い。殺さず、肢の一本も損なう事無く放してやる。
 ……つもりだが、どうにも放し難い気分になっているのが拙い」
 言って、おにっさんはハンターさんを抱く腕に力を込めました。
 ハンターさんは近所の同僚がケルビを飼い始めた事を、なんとなしに思い出します。
 怪我してた仔ケルビを連れ帰り可愛がってる同僚と、情が移ったというおにっさんを重ねて、ハンターさんは訊きました。
「もしかしてあたしを飼いたいの?」
 少しのだんまりの後、否と返ってきました。
「おまえはここでは生きられないだろう。物珍しさだけで引き留めて死なせるのも、面白いものではない。
 我らはここから出る事も叶わず死にゆく。だが、おまえを道連れにせねばならん道理もない」
 また溜め息を吐いたおにっさんは、自分の身体からハンターさんを離しました。
 出られないとかいう話をすっかり忘れていたハンターさんは、何の話だっけと視線を泳がせます。
 どうにも思い出せなかったハンターさんは、素直に尋ねてみる事にしました。
「ね、なんで出られないんだっけ?」
 おにっさんの、「可哀想」と「信じられない」の入り混じった視線を受けて、ハンターさんはちょっとムッとしました。
 
 手短におにっさんの語ったところによれば、この一帯に棲むガレオスちゃん達を目の敵にしている別の群れがいて。
 この一帯を取り囲むように回遊しているからだ、と。そんな話でした。
「あと、『お外怖いよう』って妄想にとりつかれてるんだっけ?」
 聞いた話を思い出してきたハンターさんは、おにっさんの言葉に付け足しました。
 どこの引き籠りだと思ったわけでもないでしょうが、複雑な表情でおにっさんも頷きます。
 首を傾げて、少し考えた後にハンターさんは言いました。そういえば全裸で。
「お外は怖くないよ? 外まで連れ出してあげようか?」
 ハンターさんは、自分を見詰め返すおにっさんの目に、よく解らない表情が浮かんだのを見ました。
 苛立ちかもしれないし、憐れみかもしれないし、別の何かかもしれないのです。
 よく解らないながらに、ハンターさんは自分の言い出した案をいいモノだと思ったのです。
「どうやって」
「人になれるんだから、人の姿で出てけばいいのよ。そのまんま人に紛れて生きればいいでしょ」
 元よりハンターさんは、ドスガレちゃんをえんやこらと引っ張り出す事なんてできっこないと思っています。
 そしてふと、捕獲したドスガレちゃんを回収してねってサインを出すのを忘れていた事に気付きました。
 道理で誰も来てくれないはずだと納得すると同時、誰も来なくて良かったとも安心しました。
 
 納得しない様子のおにっさんに、ハンターさんは言葉を足します。
「時々なら砂食べに戻ってくるとかできると思うし、あんたが食べてけるようになるまで傍にいたげる。
 今すぐにってワケには行かないけど、帰ったら準備して迎えに来たげるわよ」
 ハンターさんに大した考えがあるわけでなく、ハンター業に引き摺り込めばいいやと思っている程度です。
 けれども素性も怪しい同僚だってそれなりにいるからには、なんとかなるだろうという根拠らしきものもありました。
 おにっさんは黒革手袋を外し始めました。付けた時と同じく、非常に苦戦しているようです。
 手元から目も上げず、おにっさんは訊きました。

「おまえが俺を連れ出そうとする理由はなんだ。俺に惚れたとかぬかすわけではあるまいに」
 うんざりした様子で指先をぐいぐい引っ張っているおにっさんを見、ハンターさんは革手袋終了のお知らせを確信します。
 革手袋はともかく、ハンターさんは言いました。
「あたしね……」
 ちょっぴり浮かれた声で、ハンターさんは続けます。
「下僕が欲しいの」
 上がったおにっさんの顔は、それは呆気にとられた表情をしています。
 むにゃむにゃくしゃりと表情が動いた後、おにっさんは爆笑しました。
 
 目の前の人が腹を抱えて笑う事なんて想像もしていなかったハンターさんは、ビックリしながらおにっさんを見詰めました。
 目の端に涙を浮かべ、苦しそうな息の間から、おにっさんは言葉を絞り出します。
「シモベと来たか。おまえは」
 大きな手で顔を覆い、笑いを堪えようとしているっぽいおにっさんが怒ったわけではなさそうなので、ハンターさんも笑います。
 
 おにっさんはひとしきり笑った後に、溜め息を吐いて、ハンターさんに答えました。
「また生きて逢えたら、それもいい」
「あたしの魅力に屈服するのね?」
 ふふんと得意気なハンターさんの高い鼻を、おにっさんの黒い革手袋の指がつまみます。
「ぬかせ。子を生した事のない女など、魅力は砂粒程も感じぬわ」
 手を掴んで「はなひなはいよ」と抗議するハンターさんの様子を見詰めながら、おにっさんは言いました。
「おまえが憶えていられるのか、怪しいものだな。仮にまた逢ったとして、砂食みの俺を俺と解るのか」
 鼻をつままれたまま、ハンターさんはむぅと唸りました。
 この辺りにはもう一匹、大きな黒いガレオスちゃんがいるとかなんとか、おにっさんが言ってたような気もしたのです。
 黒々としたガレオスちゃんと、ドスガレちゃんが見分けつくかどうか、ハンターさんには怪しいものでした。
「それっぽいの見かけたら、名前呼んだげるわ。だから、あんたの名前教えなさいよ」
 おにっさんの垂れた眉の端っこが、少し上がりました。
 
 ハンターさんの鼻から革の質感が離れました。
「個体の名などない。強いて表せば……」
 ぎる、もしくはぐぉ、みたいな音と共に、おにっさんは手を動かしかけて止めました。
「そういえばヒレがないな、おまえには」
 音と仕草で一セット、思わぬ難易度の高さにハンターさんは渋い顔になります。
 うんうんと唸った後、ハンターさんが言いました。
「じゃ、あたしが言える名前考えたげる。それを呼ぶわよ」
 こちらもうん、と唸った後、おにっさんは答えました。
「おまえの感性に期待はしないが、やるだけやってみるがいい」
 
 ハンターさんがドスガレオスの音をもじって名前をひねり出しては、おにっさんに一蹴されるのが暫く繰り返されました。
 目の前のおにっさんにではなく、恐ろしく人相の悪い同僚に似合いそうな名前なんて思いつきながら。
 ハンターさんは一際おにっさんに似合わない名前を一つ、口に出しました。
 間の抜けた音だ、なんて文句を言いつつも、おにっさんの名前はそうと決まりました。
 
 綺麗な紫色の魚竜の背が砂に沈んでいくのを見送って、きっちりガブラスーツ一式を着込んだハンターさんは荷物を背負います。
 高かった陽は傾き、そろそろこのお仕事の締め切り時間が来るはずです。
 ハイガノボマーDEウマー計画の進行は上手く行きませんでしたが、ハンターさんはまあいいやと思いました。
 桃色ヒレが手に入っていたとしても、ヒレはハンターさんの事を褒めてはくれないし、名前も呼んでくれませんから。
 そのうちおにっさんを迎えに来るというのは本気でしたが、おにっさんの方が本気かどうかはハンターさんには解りません。
 どんな風におにっさんと再会できるか、もしくは出来ないかを想像しながらハンターさんはベースキャンプへ歩き出します。
 朝焼けの中でかもしれません。夕焼けの中でかもしれません。
 炎天下、違うガレオスちゃんに声をかけてしまって、あっさりと食い殺されるのかもしれません。
 知らんふりをしたおにっさんに、酷く傷め付けられるのかもしれません。
 いずれの想像の中にも、鮮やかな赤い色を思い浮かべ、ハンターさんは笑いました。
 おにっさんに付けた名前は、そういう赤い色の名前なのです。
 疲れで身体は重く、内側から軋むように痛みながら、ハンターさんの気分は晴れやかでした。
「信じてないから、何があっても騙された事にはならないわよね」
 相棒の(通称)肉棒は答えてくれませんでしたが、ハンターさんは一人納得して頷きます。
 わりとハンターさんに優しい世の中を甘く見つつ、ハンターさんはそれなりに逞しく生きていこうとしています。
 
―ver.A 終―


―追記―
 結局、桃色のヒレがメスのガレオスにしか生えないのが本当かどうか、ハンターさんはおにっさんに聞きそびれました。
 たぶんきっと、嘘でしょう。
2010年08月31日(火) 12:16:47 Modified by gubaguba




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