保管庫内検索
作品メニュー
作者別

スレ別

画像保管庫

キャラ別

編集練習用ページ

まだ必要なものあったら編集頼む
最近更新したページ
最新コメント
キャラ別 by 名無し(ID:5Lz/iDFVzA)
キャラ別 by 名無し(ID:cOMWEX4wOg)
キャラ別 by 物好きな狩人
キャラ別 by  
降りてこないリオレイア後編 by 名無し(ID:UKypyuipiw)
25-692 by 名無し(ID:PnVrvhiVSQ)
一角獣 by ケモナーかもしれない
誇り高き雌火竜 三 by ルフスキー
暴君と暴姫 by 名無し(ID:vg8DvEc9mg)
タグ
Wiki内検索
カテゴリー

猛き獣・浮岳龍ヤマネ 前編

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
20猛き獣・浮岳龍ヤマネ 前編擬人化古龍太刀厨 315〜318

猛き獣・浮岳龍ヤマネ 前編


「……トレジャーに行きたい、か」
今日のクエストで携えた太刀、鬼哭斬破刀・真打の手入れもそこそこに、『殲滅皇帝』レンは呟いた。
「そう。貴方と一緒に」
視線の先には、翡翠の髪をショートカットにした少女が一人。
名はヤマネ。
またの名を、『浮岳龍』ヤマツカミ。
レンの番いとなった猛き獣達の一人である。
彼女は頷いたきり、無表情にレンをじっと見つめている。返答を待っているのだろう。
対する彼は視線を鬼哭斬破刀・真打に戻し、ため息をついた。
「断る」
「どうして」
「後で他の連中がうるさい」
「……」
黙り込むヤマネ。
「そうおっしゃらず、どうか付き合っていただけないでしょうか、レン様」
すると彼女の後ろで、『風翔龍』クシャルダオラことシャーリーが丁寧に頭を下げてきた。
手はヤマネの肩に置かれている。髪色の違いこそあれど、その様子はどことなく親子を連想させた。
もっとも、そう見えるのはシャーリーが普段から番いの古龍達のまとめ役を買って出ているからに外ならないのだが。
「……何かあるのか」
「ヤマネの、たっての願いなんです」
懇願するシャーリー。対するレンは手を止めぬまま、面倒臭そうに言葉を漏らす。
「知るか。行きたいならお前達だけで行けばいいだろう」
だが、「それでは駄目ですわ」と返された途端、急に興味をそそられた。
てっきり、トレジャーに行く事だけが目的だと思っていたからだ。
行くだけなら、それこそ勝手に行けばいい。しかしヤマネの『たっての願い』とやらは、どうもただ行くだけでは叶えられないらしい。
レンと一緒に行きたい、というだけかもしれない可能性はなきにしもあらずだが、そうなれば一応聞いてみたくなる。
鬼哭斬破刀・真打を鞘に収め、彼は二人に向き直った。
「なら、言ってみろ」
胡座をかいて頬杖をつくのは、彼なりの聞く姿勢。
そして相手を見つめれば、少なくとも彼女達は話し出す。

「トレジャーで出るという珍味が食べたいんです、この子」

のっけから顔がずり落ちた。
姿勢を戻すレンの表情は間の抜けたものに一変。
「……なんだそりゃ」
ほとんど何も考えず、ただ率直な感想が飛び出していた。
対するシャーリーは苦笑。自分もそうだと言わんばかりの顔だが、言葉は続ける。
「信じられないでしょうが、ヤマネは本気ですわ」
「……本気、か。どのくらいだ」
それを受けて、レンが問いかけた。

「他の古龍達が黙っていないだろうという事と、レン様が疲れているだろうという事を懇切丁寧に説明しました」
対するシャーリーの答えは、ともすれば答えとは思えない。
「一時間かけて三回程説明しましたが、『それでも行く』の一点張り。充分に覚悟はおありのようですわ」
だが続けられた言葉によって、それは回りくどくも立派な答えとなる。
なお、彼女の『説明』は自他共に認められている大変な苦行である。生半可な気持ちでは一度聞いただけでも耐えられない。
それを三度聞いて、なおも同じ事を言えるというのだから、これは少し考えを改める必要がある。
覚悟には真摯を以て接するのが、彼女達の好みだからだ。
「……充分、か」
レンは思案を始める。
実は他の古龍達の事とは別に、適当な連続狩猟を口実に番いから少し離れようかと思っていたのだ。
心身共に盛んな番い一同の相手は、ある意味同時討伐よりも体力と神経を使う。
流石に休まなければ厳しいという事を、最近になってようやく自覚してきた所である。
故に、できれば休みたい。
だが、ヤマネは真摯に接するに値するだけの覚悟で同行を持ちかけてきた。これには答えなければならない。
さて、どうするか。
眉間に皺を寄せ、低い唸りをこぼしながら、レンはしばし間を置こうとした。
と、その時。

「意地悪だねぇ。変に勿体ぶるだなんてさ」

唐突に聞こえる第三の声。
シャーリーはぎょっとして、キョロキョロと辺りを見回す。
対照的にレンは面倒そうに鼻を鳴らしながら、視線を一点へ。
「おとなしくしてろと言っただろう」
「じっとするのは性に合わないんだよ……ぁふ」
妙に膨らんだ布団の中から欠伸まじりの台詞と共に突き出たのは、黒メッシュ入りの金色の髪。
『激昂するラージャン』ことラウナである。
彼女はレンに向かって不敵な笑みを投げかけながら、その体に寄り添う。
それを見てシャーリーが眉をひくつかせたが、全くもってお構いなしだ。
「ま、それはとにかくとしてだ。アタシの記憶が正しけりゃ、レンはこういう場合だともう答えを決めていると思うんだけど……どうだい?」
上目遣いに、しかし媚びた様子を見せないラウナの言葉に、レンが顔を僅かにしかめる。
「……よくわかったな」
「当然さね。アタシは雄の事も理解できないような番いを目指した覚えはないからねぇ」
皮肉まじりの呟き。だが彼女は誇らしげに胸を張り、心なしか喜んでいるような笑み。

どうやら人間的な意味での『番い』を目指す彼女は、日々努力を積み重ねているらしい。
なんとなくこそばゆさを感じながら、レンは両手をひらひらさせた。
「敵わんな、全く。……あぁ、思えば最初から決まっているようなもんだった」
「ふん、最初からそう言えばいいのさね」
皮肉を口にするラウナの事はひとまず放っておき、視線をヤマネとシャーリーの方へと向け直す。
何か言いたげな様子のシャーリーだったが、はっとなるとヤマネと共に居住まいを正す。
そして見つめ返し、促すように揃って頷いてきた。
対するレンは、今度は勿体ぶらずに口を開く。

「付き合ってやる。ただし、他の連中を宥めてくれるのが条件だ」

告げた答えに、ヤマネは顔色一つ変えなかった。無表情に「わかった」とだけ呟く。
対照的だったのはシャーリーだ。
「ありがとうございます。他の者達の事は任せてくださいませ」
喜びに顔をほころばせ、満面の笑顔。まるでヤマネの分も喜んでいるかのようである。
「なら、アタシも協力しようかね。話も覚悟も知っちまったわけだし」
そして、ラウナがやれやれといった具合に言えば、シャーリーは「そう?ふふ、嬉しいですわ」と喜びを口にする。
だが、それは一瞬の事。
「……ところでラウナ?」
「ん、なんだい?」
「どうしてレン様のベッドから出てきたのですか?」
笑みのまま、顔が引き攣った。
さりげなくヤマネがシャーリーと距離を置く。
しかしラウナは特に怖れるわけでもなく、さらりと答える。
「そりゃ、ここの布団が暖かい上に、レンの匂いが染み付いてるからねぇ。家じゃ一番落ち着ける所さね」
それが、引き金となった。
「あぁもう!配慮を微塵も感じない行為ですわね!」
ギン、とシャーリーの眉がつり上がる。
「そのような自分本位の態度が他の者達の反感を買っているのだという事がわからないのですか!」
「別にいいじゃないかい……ぁふ」
対するラウナは、欠伸を噛み殺しながら呆れたように言った。
「抜け駆けしてしっぽりやってるわけじゃないんだし、これくらい許せなくてどうするのさね」
「そういう問題ではありませんわ!」
怒号一喝。呑気なラウナに向かってシャーリーは激しく言葉を叩きつける。
「わかりました!貴女には一度、自分がいかに微妙な立場にあるかを嫌という程理解させなければいけないようですわね!」
そして靴音高く歩み寄ると、彼女にずいと顔を迫らせた。

するとラウナは、再びため息をつきながら一言。
「それよりも先にレンの留守をどう守るか話し合った方がいいんじゃないかい?」
「駄目ですわ!」
次の瞬間、シャーリーが彼女の肩を掴んだ。威圧的な雰囲気を漂わせ、彼女は唸るように言葉を積み上げる。
「物事には須らく適切な『時』というものがあります。身に滲みる最も効果的なタイミングですわ。
それが貴女の事については今なのです。いつものらりくらりとはぐらかす貴女が決して言い逃れでき
ない現場を押さえているのですから、これを逃さない手はありません。ですから今夜はまず貴女の配
慮のない行動について納得して頂けるまでみっちりとお教えしてその上でレン様の留守をいかにして
守るかを考えます。なお文句は一切受け付けませんわ。これは既に決定事項なのです。それに貴女の
事なのですから、真摯に聞いていただかなければ話になりません。よって少しでも聞いていないそぶ
りを見せた時には仕切り直させていただきます。一応聞いておきますがよろしいですか、ラウナ?」
「……はぁ」
ため息、三度目。するとシャーリーは冷ややかな目で、咳ばらいを一つ。
「理解できませんでしたか?それでしたら早速始めから説明し直させていただきますわ」
そして先程と寸分違わぬ台詞を、ほぼ同じ速さで並べ始めた。
古龍達が怖れるシャーリーの『説明』の始まりである。
「……」
レンは額を押さえる。
こうなるとシャーリーは周りの事など気にならない。いくら声をかけても一蹴されるのがオチだ。
ただ、ここは自分の部屋。このまま放っておくわけには行かない。
ではどうするかだが、答えは一つしかない。
「ったく、結局これか」
思わず悪態をこぼす。
すると、様子を窺っていたヤマネが首を傾げる。だがレンはそれに構う事なく――


ラウナとシャーリーを押し倒した。


その夜もまた、レンの家から嬌声が響く。獣のような、しかし心底嬉しそうな響きは、いつものように遅くまで鳴り止まなかったのであった。
2010年09月10日(金) 20:36:06 Modified by gubaguba




スマートフォン版で見る