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22-19

スレ番号 タイトル カップリング 作者名 備考 レス
22リンゴ 前編 ミラルーツ♂×人間♂ 19〜22

リンゴ 前編


ある朝方の日。
荒廃しきった街に容赦なく雨が降り続ける。霧も立ち込め、十メートル先も見渡すこともままならない。
あたりのほとんどが瓦礫の山。崩れた家々が立ち並ぶ。
朝であるのにもかかわらず、雷雲が出ているせいか夜とほとんど変わらない暗さだった。
暗さの中でかつて人間に飼われていた雷光虫の光が、ほわほわと寂しげに浮かんでいる。
その光に、街の大広場に一人、座っていた少年が映し出された。
年は十二、三才ぐらいだろうか。薄汚れた普段着を着てひざを抱えたまま座っている。
その少年の周りには、散らばったリンゴがゴロゴロと転がっている。
もちろんその少年にもリンゴにも情け容赦なく雨が降りかかる。瓦礫の下で雨をしのぐことはできるのだが、彼は屍のように何一つ動きをみせない。
彼はこの大量に自分に降り注ぐ雨が自分の生きている虚しさを洗い流してくれるのではないかと、希望を持っているのだろうか。
それとももう生きる希望もすべて失ってしまい、憂鬱と絶望に浸っているのだろうか・・・。
少年の目には生気も何も感じられない。そんな少年の心を映すかの様に黒い体を持ったガブラスが数匹、少年の周りを飛び回っている。
彼は、そのガブラス達が自分の無意味な人生を終わらせてくれるのではと期待したのか、少し動きを見せた。
だがそのガブラス達は少年を無視し、もともとこの街の人間が商売用にしていたであろう少年の周りに転がっているリンゴをむしゃむしゃと食べ始めた。
ガブラス達も生きている者を食うより、動かない物を食うほうが労力を使わないと知っているようだ。
その蛇竜たちは腹いっぱいにリンゴを食べて、満足げに少年の周りから飛び立っていった。
リンゴが二個、寂しげに転がっている。
少年はさらに絶望を深めたように顔を俯かせる。それに伴い、前にも増して激しく雨が少年にふりそそいだ・・・。

少年がこの広場に座り続けてもう三日が過ぎようとしていた。
三日前はこの少年の誕生日でもあり、この街が破壊しつくされた日でもあった。
その間、食物をひとつも口にしようとはせず、ただただ人形のように広場の真ん中で座り続けているだけ。
誕生日を祝うため、両親と兄が準備してくれたネックレスを首に掛けながら。
そのネックレスが雷光虫の発している明るい光で、暗く蒼い光を反射している。
何もしようとは思わない。いや、思えないのであろう。
近所の親しい人間、友、そしていつも一緒でいてくれた両親と兄を失った現実が、少年を束縛しているのであろう。
突然平和な街に現れた黒龍・ミラボレアス。モンスターが現れたことなどこの街には一回もなかった。
なので当然ハンターもいなければギルドナイトもいない。街の人々は黒龍にことごとく殺されていった。
この少年は運がいいのか悪いのか、この街で生き残った唯一の人間となった。
なぜ自分を殺してくれなかったのか。なぜ自分だけを生かしたのか。
今となっては少年にとってどうでもいいこととなっていた。
この街が荒廃してからは、人間がいなくなったのをよいことにし、アプトノス等の草食獣、イャンクックやリオレウス等の肉食獣。
そしてついにはクシャルダオラ等の古龍も姿を現すようになっていた。
荒廃してからは三日とあまり時間も経っていないのだが、さすがは獣といったところか。
瞬く間に街は獣たちの天国と化していった。
人間が所有していた食料は豊富で、異種同士で争う意味もなくなったためか、アプトノスとリオレウスが共に並んで食事をするといった奇妙な場面も見受けられる。
誰でもいいから早く殺して欲しい。早くお父さん、お母さん、兄さんのもとへと逝かして欲しい。
そう少年は願っていたが、獣達は少年を無視し、街に転がっている肉や野菜などを食べるばかり。何者も少年に興味を示すことはなかった。

      • ・・・いや、一匹いたようだ。
無表情で俯いている少年の耳に、なにやら喉を鳴らした鳴き声のようなものがとびこんだ。
その声はかなり少年に近いことがわかる。ようやく誰か自分を殺してくれる気になったのか。
そう期待し少年がゆっくり顔をあげると、なにやら龍が顔を覗き込んでいるのが少年の目に入った。
この街を壊した張本人、ミラボレアスに似ている。だが、ミラボレアスではない事はすぐにわかった。
姿かたちは黒龍と似ているが、この龍は黒龍とは対照的に真っ白な体を持ち、優しい目つきで少年を見つめ、喉を鳴らしている。
そう、この龍はミラルーツ。伝説の龍、ミラボレアスの亜種で、祖龍とも呼ばれている。
雷雲のせいで暗くなっている中のミラルーツの真っ白い体は、まるで光っているように目立っている。
食料に困ることのない、獣の天国と知ってこの雄のミラルーツも街に来たのはだいたい予想がつく。
この祖龍は少年の足元に転がっていたリンゴの一つを口にくわえると、食うかと言いたげに少年に差し出した。
少年が生気のない目でミラルーツの顔を見ながら力なく首を横に振ると、祖龍はグシャッと音をたててリンゴを噛み砕いた。
残るリンゴはただ一つ。赤い果実が雨にぬれて光っている。少年はその残ったリンゴを見てなにやら呟くと、またひざの間に顔をうずめた。
びしょびしょにぬれている少年のそばに祖龍はゆっくり座ると、その大きな翼を広げ、少年の上へと翳した。
少年を雨から守るためだろう。普通の人間ならなぜこんなことをするのか気に掛けるところだが、少年は祖龍の行動にはまったく興味を見せず、ずっとひざを抱えて座っている。
雨は翼によって少年には降りかかっていないが、逆に翼によってできた影によって少年の心はさらに暗くなったようにみえる。
祖龍が鼻先で少年をつついてみても、息を吹きかけてみても一向に反応をしめさない。
ミラルーツは呆れたように一声鳴くと、少年の薄汚れた服の背中の部分をつかみ、持ち上げた。
人形のようにぶらんぶらんと手足がぶら下がる。表情もずっと絶望に浸っているまま変わっていなかった。
祖龍は雨がしのげる大きな街の樹木の下に入ると、少年を横に寝かせ再び不思議そうに少年をみつめ始めた。
しばらく祖龍はそのまま少年を見つめていたが、変化のない少年に退屈したのか、おおきなあくびをした。
残ったリンゴを少年の足元においてみても、もちろん少年が反応することなどない。
祖龍が寂しげに鳴く。おそらくこの少年にかまって欲しいのだろう。
今までこの祖龍は古龍という存在であるためか、他の動物とも接触してみようとしても、どの動物も怯えて逃げてしまうのだ。
この祖龍は今も一人。事実だけ取り出すと少年と共にいるが、それだけでは一人ではないとはいえない。
つまり今までと何も変わってはいない。そばに生き物がいるのに、触れ合うことも、遊ぶこともできない。
少年の心の闇が、ミラルーツにも影響しつつあった。その時、そばにあった瓦礫のひとつが音を立て、崩れ落ちた。

相変わらず雨が獣の天国に降り注ぐ。雲によって日が見えないため理解するのには困難を極めるが、夜。
他の動物の目を忍ばず、雨のあたらない場所であればモンスター達はどこでも眠っている。
クシャルダオラとリオレイアが寄り添って眠っていたり、アプトノスの子供をランポスがあやしていたりと自然界では絶対に見られない光景が広がっている。
ここの動物達は全員共存して生きることを学んでいっているのだ。弱肉強食という概念はもうここに住んでいる動物達には存在しない。
全員平等で生きている。誰一人として苦しむこともない。事実この街は天国だった。
だが、少年にとっては地獄に等しい場所だった。
殺して欲しいといくら思っても、腹をすかすことのないモンスター達は少年を殺すどころか興味すらしめすことはない。
死にたいのに死ねない。皆が死んでしまったのが夢であるなら覚めて欲しい。だが覚めない。これは現実。
鬱。絶望。自殺。しない。できない。望み。ない。消えたい。消滅したい。ナンデ、ボク、イキテル・・・?
思考が働くとき、それは自分の存在意味を知ろうとするとき。だが、その存在意味は少年には見つけることができない。
何事にもきっかけが必要だ。だが精神が崩壊しているこの少年にはそのきっかけすら見つけることはできないだろう。
だが望みが一つだけある。この祖龍だ。唯一少年に興味を抱いているこの祖龍ならば少年に正気を取り戻させる望みがある。
しかしこの祖龍も少年と同じく暗闇の中に入ろうとしている。孤独でいる寂しさ。少年の影響を確実に受けてしまっている。
あれだけ暗闇の中で目立っていた祖龍の白い体が、今は思いなし、か黒い雷雲の影の色にに染まっているように見える。
ミラルーツまでもが絶望に浸ってしまったら、もう少年を救う者はいなくなってしまうであろう・・・。
その時だった。
突如まぶしい光が暗い闇を切り裂き、大きな雷鳴が街に響いた。街にいたすべての動物がその光と音に反応し、驚いた様子を見せた。
ミラルーツもその突然の出来事に驚いた様子だったが、"なんだただの雷か"と、ため息をつくように息をはいた。
      • どこからか、泣き声が聞こえるような気がする。静かだが、誰かに助けを求めるような。
ミラルーツは首を伸ばし、あたりをキョロキョロと見渡し始めた。だが、目に映るものは雨と霧、そして瓦礫の下に眠っているケルビやイーオス等の動物だけ。
人間らしきものは何一つ発見できなかった。気のせいだったのだろうか。そう思いミラルーツは横になった。
      • ・・・?
少年の様子がなにやらおかしい。なにをしても反応を示さず、ずっと人形のように動かなかった少年が、目を瞑り、涙を流してびくびくしている。
心配し、少年のそばに近づくと、少年は突然ミラルーツの体にしがみ付き、腕に力をいれて、離れようとしなくなってしまった。
この行動を不思議に思っている内に、再度大きな轟音と共に雷がぴしゃあんと地上に落ちる。
その瞬間びくっと少年は体を反応させ、祖龍にしがみつく力を強くした。小刻みに震えているのが感じられる。
そして祖龍は悟った。

あぁ、この子はあの雷を恐れ、怯え、涙しているのか。家族がいたときには今と同じように親にしがみ付き、雷の恐ろしさを忘れていたのだろう。
だがこの街にミラボレアスが出現し人間を皆殺しにしたと聞いたことから、恐らくこの街で生き残った唯一の人間。
ここ数日は雷雲が出て、雷も雨に伴い落ちていたのは知っている。その度にこの子は一人で怯え、苦しんでいたのだろう。
ならば、私にできることはただ一つ。この子の家族になることだけだ・・・。

ミラルーツは翼でそっと少年を抱き寄せた・・・。
2010年08月15日(日) 03:17:39 Modified by kichigaida




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