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27-552

スレ番号 タイトル カップリング 作者名 備考レス
27 はららなれ【中】ハンター×ユクモ村長 ◆287D8nmR8U 否エロ 552〜554

はららなれ【中】



結論だけ言えば、ハンターとしてのジコンは死んだ。
それまでは火竜に燃されようが雷狼竜に片目を潰されようが、大きな怪我を負うたび這ってでも立ち上がってきたが、その日はもう敵わなかった。
毒怪竜を狩るだけの簡単なクエストだった。駆け出しの頃ならば散々な目にも遭わされたが、もう何度も狩っていたのだから。
しかし、待てども待てどもキャンプへ休憩にも戻らないジコンを案じて制止も聞かず凍土に飛び出して行ったニャン次郎と彼を追ったネコタクが見つけたものは、頭蓋ごと刺し貫かれて絶命した凶暴竜と、その下敷きとなり左腕を根元から失ったジコンの姿であった。
吐き気を催すような臭気の中流れる血からは湯気が立っており、まだ然程時間が経っていないことは分かった。
ただ、凍えるような寒さのため大量の失血は免れたが体力の消耗が激しく、ネコ達のホットドリンクと秘薬がなければそのまま命を落としかねない有様だった。
否、もういつ死んでも不思議はなかったのだ。
全て、村に戻り寝かされていたジコンがようやく目を覚ましたあとで村長から聞かされたことである。
茫洋と聞くジコンに、一人にした方がよかろうと、村長は峠は越えたがもう暫く休むようにと締めて小屋を後にした。何かあればすぐ知らせるよう、治療を頼んだネコに言ってあった。
けれどその時ジコンの胸を掻き乱していたのは、己の生きる術を失ったことよりも、努めて冷静であろうとする村長の目が赤く泣き腫らしたようであったことだった。

「なあ、村長さん、どうしたんだい」
部屋の隅で小さく丸まっていたネコへジコンがぽつりと問いかければ、疲れた顔にからかうような色を浮かべて返事をした。
「もうおいらん前じゃ隠さなくてもいいんだニャァ、旦那。ニャー!まさかあの村長さんと旦那がいい人同士とかびっくりなんだニャー」
「…お前さん何言ってんだ」
「ニャ?違うのかニャ?」
だって村長さん、新しいハンターさん回してもらう手続きも忘れて旦那の側ずっと離れニャいで酷い酷いって泣いてたんだニャー。
勝手なおひとーとか逝かニャいでーとかって縋ってモニャモニャ言ってたからおいらてっきり……。
これネタにマタタビ貰おうかと思ってたのに期待はずれなんだニャー。
あれ、旦那、熱でも上がったニャ?もう寝るニャ!よくわかんニャいけど多分旦那の加減が悪くなったらおいらが村長さんに袋だたきにされるニャー!
「……マタタビなら持ってる分全部やる。今言ってた事、誰にも話すんじゃねぇぞ」
「ニャー!お易い御用ニャァ!旦那話が分かるニャー!」
それでも控えめに騒ぐネコにまだ気を遣わせているのだろうと情けなくもなったが、少々煩かったので右手で枕を投げつけてやった。
「本当に馬鹿だァ、あんた」
顔を壁に向けて唸るように洩らせば、何のことかとくぐもったネコの声が途端に被さってきたが、無視をきめこむうち眠ってしまった。

顔を撫でる風と遠いざわめきにジコンは薄く目を開けた。
首を捻り振り向くともうネコはおらず、そのかわり村長が浴場に続く段に腰掛けているのが見えた。
朝湯を終えて番を交代したか、いつもは白いばかりの頬が上気している。
目覚めたジコンに気付かず目を伏して物憂気にする様は艶めいて、乱れていない村長をゆっくりと眺めたことなぞ今までなかったことに思い当たり、若いとはいえどあまりにがっついた己に気恥ずかしくもなった。
今の清廉さがいかに乱れるのか思い出して久方ぶりに昂りの予兆を覚える。
そのとき、つと村長の面が上がった。視線が交わり、ジコンは一瞬だが言葉を失った。
いつも物言いた気な印象であったが、こうして見ると深い透明な黒は掴みどころがない。
ジコンがそのようなことを考えていると、寝具近くに寄った村長はジコンを見つめたままでその口を開いた。
「ジコンさまにお話がありますの」

※※※※※


「今はまだこんなことを申し上げますのは酷だと存じております。なれど私も長ですの。この先のこと、少しお話しなくてはなりませんわ」
そう切り出した村長の笑みは心情を見せぬものだった。ジコンは何とはなし面白くないと思う。
「ギルドに新しいハンターさんの斡旋を依頼しました」
「…わかってるさ、狩れない俺の居場所はここにゃァないってんだろ?」
「……」
目を軽く伏せた村長に、ジコンは溜息を吐いた。強がりでもなんでもなく、もうこの小屋を使い続けるわけにはいかないだろうと思っていた。
与えられた条件は村の守護で、それができないならばいつまでも居座るわけにはいかない。
「いつまでに出ればいいんだ。出来れば傷くらいは治したいんだが」
口を軽く結んだままの村長に静かに問いかければ意外な返事がよこされた。
「ジコンさまさえよろしければ、いつまででもいらっしゃっていただきたいのです」
ジコンは驚き、軽く目を見張った。
「あんた、そんなこと言ったって、俺のねぐらはどうすんだい」
ユクモの村は小さい。今ジコンの住まうこの小屋はハンターに優先的に宛てがわれるべきものだし、かといってそうそう新しく築くわけにもいくまい。
ジコンが出ていく他ないのだ。
気付かぬほどの躊躇うような空気を拭うように村長は言った。
「私の家の客間…いかがですか」
「何を言って、」
「村長としての判断です。これまで村を守ってくだすったあなたさまに、皆とても感謝していますわ。村を守るために腕を失ったあなたさまを追いやってはどうなるかなど。新しい住いを確保できないならば、仕様がありませんでしょ」
「それだけか」
静かに言った村長の言葉に間髪入れずジコンは返した。
村長の肩が小さく跳ねたが、覚えずそのようなことを発したこと自体に驚いていたジコンは気付かなかった。
「……勿論。今申し上げた通り、それだけですわ」
「なかったことにする気か」
「……」
気まずい沈黙が落ちた。底の見えぬ村長の瞳が一瞬揺らぐ。細波のようであっても、その隙をジコンは逃しはしなかった。
「そういうつもりなら、断らせてもらうぜ」
今度こそ、村長は固まった。強張った面持ちのまま小さく呟く。
「どうして」
睨むよう、村長の眼を見据えながらジコンは言った。
「俺が、もう狩りもできねぇあんたに惚れてるだけのただの男だからさ」
場違いにも部屋を細く吹き抜けた風が膚をなめていった。それに攫われるように言葉が途切れる。
ややあって村長の眼に浮かんだ涙は止めようもなくはらはらと零れ落ち、その雫にジコンは見蕩れ、気付けば残された右の手を伸ばして顎を掬い口付けていた。


「ん……」
「ッ……、おいおい、ちったぁ手加減してくれよ」
ああ、やらかした、とは思いつつも角度を変え深く探れば、はっと我に返った村長に治りきらぬ胸を押され、ジコンは呻いた。
離れたあとも柔らかな感触がまだ残っている。落ち着いて話をしたこともなかったが、口付けもはじめてであったかと頭の片隅に思った。
たとえ手前で惚れようと、好かれるつもりなどなかったのだ。それもどうやら失敗したらしい今となっては随分と酷いことをした。
「ひどい人、今更そんなこと、どうして信じられるの……」
「卑怯だぁな、わかってるさ。どうすりゃいいかな」
ジコンの右手を握りしめて額に当てたまま呻くように言う村長に何と告げればよいのか。ジコンはないと分かっている言葉を探すふりをして気まずさに押し黙った。
隔たりがあるかのように遠い外の喧噪ばかりが耳に痛い。
「……信じますわ。いいえ、嘘でもいいの」
先が千切れ、まっさらな包帯に巻かれた左肩のあたりをぼんやり眺めていた村長の唇から前触れなくぽつりと落とされた言葉はジコンには信じ難いものであった。白い面は涙に濡れながらも澄んでおり、掴みどころのなかった黒い瞳は熱い欲ではなく淡い慕情に揺れていた。
「……お慕いしております」
信じられぬままに囁かれた甘い告白は軽く空に遊ぶ。放っておけば溶けてしまいそうで、それを喰らわんとジコンは再び村長に口付けた。
片腕で抱き寄せた身体は柔らかで、どれだけ美味かということはいやというほど知っている。
病床の身とはいえど日がな一日座っている村長に力で劣るはずもない。引き寄せて半端に組んだ足の上に降ろせば大きな傷には触れぬよう、村長はジコンを押し倒した。
「本当に、酷いおひと……」
「仕方ねぇだろう、あんたが好きなんだ。順番は違えたが……嘘はねぇぞ」
「そういうこと全部、これからゆっくり教えてちょうだい」
そこから言葉は途切れ、おもむろに影が重なった。

「旦那ーマタタビの話するニャー……ニャ!?ごめんニャ!」
鼻歌を歌いながら交代にやってきたネコは睦まじい様を目にして慌てて帰っていった。村長は気付かず、それにジコンは含み笑いした。
落ち着かないネコがうっかり秘密を漏らし湯治の客もいる中で番台さんと大声で話し合っている頃、そんなことを知らないふたりは初めて優しく甘くひとつとなったのだった。
2011年06月26日(日) 04:06:52 Modified by lilima




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