多桑さん

映画『多桑/父さん』


概要

台湾ニューウェイブの一人に数えられる脚本家、呉念眞の第1回監督作品。「金馬奨(台湾のアカデミー賞)」の観客投票最優秀作品賞を受賞。

設定


時代:1950年代末期

舞台:台湾北部の山間部にある金鉱で栄えた村、大山里

登場人物
  • セガ(父)…1929年生まれ。日本の統治下で教育を受け、日本の敗戦後も日本に憧れを持つ。金鉱で働き、家族に日本語で“父さん”と呼ばせるほど日本をひいきしていた。

  • 文建(息子)…身勝手な父親に振り回され、どんな目に合わされようと、憎もうと、一瞬の父の哀れさを垣間見て全てを許してしまう。粗暴な父を同情するでもなく、かといって突き放すわけでもなく父の一生を見守っている。

内容

この映画は、父親の生き様を息子の目で追う自伝的な物語になっている。父親は、日本の統治下で教育を受けた世代で、日本の敗戦後も日本に憧れを持っていた。家族には自分のことを日本語で“父さん”と呼ばせ、年齢を聞かれれば、「昭和四年生まれ」と答える。日本のラジオを聴き、何かにつけて日本びいきだった。
父親はいつも長男の文建を映画に連れて行くという口実で、妻に隠れて仲間と遊んでいる。妻が文建にどんな映画だったのか尋ねても、キスして、泣いて、キスして…と教えられたようなことしか答えない。村では駆け落ちに失敗し、失恋した青年が炭鉱で自殺する事件も起きた。やがて鉱山も閉山し始め、生活は苦しくなるが、父親麻雀賭博に明け暮れるようになった。呆れた妻は家出を決意するが、山寺の和尚に止められて帰って来る。5年後、セガは炭鉱の責任者を務めていたが、肺を患い始め、闘病生活を送るようになる。
今は結婚し、孫も出来た文健の家に、セガは時々やって来たが、医者のいうことを聞かず、食事療法も守らなければ、薬もいい加減にしか飲まないという有り様、病状は刻々悪化していっていた。そんなある日、いつものように文健の家を訪れたセガは、今こそ憧れの日本に行って、皇居や富士山を観て来ると言い出すのだった。しかし、出発の四日前に病気が再発し、父親は自殺してしまう。時代は1990年を迎えていた。91年の1月12日、文建は父親の遺骨を抱いて日本に赴き、富士山と皇居を訪れるのだった。
2007年06月12日(火) 03:08:34 Modified by rudoman2005




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