１００式戦
１００式戦「隼」
１００式戦「隼」とは１９４１年７月から始まったシベリア戦役初期からソ連崩壊までの帝国空軍（ＩＪＡＦ）の主力戦闘機である。
大日本帝国の制式兵器は採用年次の皇紀の下２桁を名称に冠する規定があるため、採用が皇紀２６００年（昭和１５年：１９４０年）であったことから、下２桁をとり１００式戦闘機として命名された。
ちなみに、海軍航空隊では空軍との混同を避けるために下２桁が００であることから、零式艦上戦闘機として一部改修した上で採用している。
隼という愛称は正式なものではなく、戦意高揚のためのプロパガンダ映画等で１００式戦が公開された際に制式名称が報道機関に公表されなかったために映画会社等が苦肉の策として「隼型戦闘機」とつけた仮称が一般化、逆輸入されてパイロット達が隼と呼び始めたのがそのルーツとされている。
開発経緯
昭和１２年に陸軍航空隊と海軍航空隊の基地航空部隊を統合して発足した帝国空軍は当座の主力戦闘機として前年に制式採用された海軍の９６式艦上戦闘機を改良して使用することが決まっていた。しかし、それはあくまで暫定的な処置にすぎず、空軍発足当初から次期主力戦闘機の開発が進められていた。
帝国空軍は元来、陸海軍に分かれて非効率的に行われていた航空行政を統一し、効率化を図ることを最大の目的としており、次期主力戦闘機は空軍のみならず海軍でも採用されることが最初から決まっていた。
そのためにその要求仕様には艦上戦闘機として必須の離着艦能力、低速飛行性能の確保が求められていた。また、空母のエレベータに納まるサイズに機体を収めることが必須とされた。さらに海軍は長時間の艦隊上空直援を行うために過大すぎる滞空時間を要求していた。
また、第１線で戦う戦闘機パイロット達（陸海軍問わず）は９６式艦上戦闘機並の格闘戦性能を次期主力戦闘機にも具備することが求めていた。
さらに、高速化する敵戦闘機、攻撃機を捕捉するために必要な速力、加速性能、上昇性能を高い次元で一致させることが求められた。特に空軍の佐官クラスはスペイン内戦におけるＢｆ１０９やソ連製のＩ−１６の活躍から高速の重戦闘機こそが次期主力戦闘機の理想であると理論提唱し、次期主力戦闘機は重戦闘機でなければならないとしていた。
こうした相反する要求を全て詰め込んだ要求仕様は、現実問題として全く達成不可能だと考えられたが、建軍から間もない寄り合い所帯だった空軍当局は要求仕様をまとめきることができなかった。せめて要求に優先順位を付けるべきだったが、それさえも出来ていなかった。
そうした論争に終止符が打たれるのは空軍がソ連空軍と正面衝突したノモンハン事件の航空戦における９６式戦闘機（９６式艦戦の空軍版）の苦戦であり、もはや９６式艦戦のような格闘戦重視の軽戦闘機では戦えないことが明らかになったのである。
設計
１００式戦の設計は当初中島飛行機と三菱の２社で進められていたが、三菱は主任設計者が迷走する過大な要求仕様にノイローゼで倒れたことで開発を断念したために途中でリタイアした。中島飛行機は当初は要求仕様の混乱から開発を辞退していたが、三菱のリタイアとノモンハン事件の航空戦の結果から要求仕様の混乱が収まったことから開発を再開し、試作機製造にまでこぎつけた。
三菱が機体の徹底的な軽量化によって要求仕様を達成しようとしたのと同様に中島飛行機も機体の徹底的な軽量化によってこれを達成しようした。
ただし、三菱というよりはＨ設計主任が考えていた軽量化（ビスや構造材の一つ一つを肉抜きして軽量化）とは全く異なるアプローチを中島飛行機は採用していた。
それは機体の徹底した小型化だった。発動機の直後から胴体を絞り込み、主翼も摩擦抵抗の排除を狙って小型の前進角が付けられた可能な限り薄い翼型を採用した。決して大直径とは言えない自社製の栄発動機を採用したにもかかわらず１００式戦が頭でっかちに見えるのはこのためだった。
機体の小型化によって減るのは重量だけではなく、表面積も大幅に削減されている。これによって減るのは摩擦抵抗である。小型の主翼は2本桁のボックス構造で、内側を波板で補強されている。それにより急降下時の制限速度は時速８８０ｋｍ以上で、事実上の制限速度は存在しないも同然だった。最大１２Ｇの高Ｇ旋回にも耐えられる機体は小さいながらも重戦闘機にふさわしい堂々たるものである。
９６式艦戦の操縦索にはピアノ線が用いられていたが、１００式艦戦ではあらゆる速度域で同じ操縦感覚を実現するために鋼管ロッドによる操作を採用している。これまでの航空機は速度域によって操縦桿の重さが異なり、操縦を行う際に速度域によって微妙な手加減が必要になっていたが、鋼管ロッドを用いることで低速から高速域まで同一の感覚で機体制御が可能になっていた。頑丈な鋼管ロッドを用いることで各舵の効きは時速７００ｋｍを超えても良好で、時速８６０ｋｍの急降下でも機体のコントロールが可能だった。
試作機を使った飛行試験では高度５０００ｍで時速５６０ｋｍを発揮し、関係者を狂喜させたが、全く問題がないわけではなかった。
その一つは離着陸速度を速さだった。前縁スラットと蝶型ファウラーフラップを用いることで離着陸速度を最小限までに押さえ込んでいたが、９６式艦戦に慣れた現役パイロット（特に海軍航空隊）は全面改修を要求していた。空軍のパイロットからも離着陸速度について苦情はあったものの、空母の飛行甲板よりも圧倒的に広い陸上の滑走路では問題になるほどではないとされた。
同時に、改修の要求がなされたのは前方視界の悪さだった。飛行時の前方視界は胴体を絞り込んだ設計が功を奏し、理想的とさえ言われるほどの評価を獲得していたが、地上滑走時の前方視界、着陸時の前方視界は壊滅的だった。
離着陸速度については、フラップの面積を増やし、主翼の一部にしか採用されていなかった前縁スラットを主翼の全てに適用することで一応の解決の目処が立ったものの前方視界問題の根は深かった。
また、他に武装と航続能力にも問題が発生していた。
要求仕様において武装は７.７ｍｍ機銃又は１３ｍｍ機銃、２０ｍｍ機関砲各２門という強武装が要求されていた。もっとも、これは１３ｍｍ機銃で必要十分とする空軍と２０ｍｍ機関砲を必須と要求する海軍の要求をまとめ切れなかっただけである。
海軍は空軍に泣く泣く譲り渡した９６式陸上攻撃機のような高速双発中型雷撃機を米海軍が量産するのではないかという悪夢を振り払うためにも、中型爆撃機に一撃必殺をかけられる２０ｍｍ以上の大口径機関砲が絶対必要だと考えていた。艦隊防空戦闘は迎撃戦であり、早期警戒網のない当時は迎撃戦で戦闘機が独力で敵機を捜索、補足しなければならない。そのために攻撃するチャンスは多くても２回が限度だと考えられていた。そうした少ない攻撃チャンスを最大限に生かすためにも一発の威力の大きい大口径機関砲が必要だった。また、艦隊防空戦を戦うには長時間の空中警戒を行う必要があり、ＣＡＰを長時間行うには長大な航続能力（滞空時間）の確保が必須とされた。
しかし、中島飛行機の試作機は高速発揮のために小さな薄翼を採用しており、翼内には主脚格納スペースを確保するだけで精一杯だった。
そのために大型の２０ｍｍ機関砲は翼内ではなく、ガンポッド式で翼下にぶら下げることになったが、２０ｍｍ機関砲のガンポッドを吊り下げた場合、空気抵抗の増大で速力が４０ｋｍ近く低下した。
時速５６０ｋｍの高速はこのガンポッドがない場合の数値であり、ガンポッドを搭載した場合は５２０ｋｍ／ｈを超えることはできなかった。
また薄翼のために翼内燃料タンクが採用できなかったために燃料タンクは操縦席前部とエンジンの間の大型単一タンクで全てまかなうことになっていた。
胴体内の大型単一タンクは燃料配分の切り替えなど細かい修正を行わなくてよいでのパイロットにとっては負担軽減になるし、十分な防弾、防漏装備を施すことができるので防御上有利だった。しかし、機体を小型化したことが影響して要求仕様を満たすだけの燃料タンクのスペースが確保できなかった。
中島飛行機は足りない部分については落下タンクで補えると主張したが、落下タンクを使用した場合、ガンポッドと併用となり、速力はさらに低下する。
海軍は前方視界の改善と武装強化、航続能力の充実を主張して主翼と胴体の全面的な再設計を要求したが、ここで空軍が待ったをかけた。
なぜならば、空軍は海軍の指摘する問題点について、全て中島の要求を呑む用意が出来ていたからだ。前方視界の問題は長大な滑走路を用意できる空軍にとってはさして重大な問題ではなかったし、ガンポッド式の２０ｍｍ機関砲など空軍は最初から求めていなかった。航続能力についても大陸での対ソ戦を想定するならば、既に十分に確保されている。
結局、空軍と海軍が喧嘩腰の激論を経て、航続能力については中島の提案を受け入れることが決まった。しかし、武装と前方視界だけは絶対に譲らなかった。
これを受けて中島飛行機も機体改修の最終案をまとめた。
まず、前方視界については胴体設計が崩れることを承知して操縦席の大幅なかさ上げをおこなった。そして、機首の１３ｍｍ機銃を撤去して、操縦席とカウリングとの間を斜めに切り落とす形に整形して、前方視界を確保した。
撤去した１３ｍｍ機銃は主翼と胴体の間に本来なら不必要な大型のフィレットを装着し、その中に１３ｍｍ機銃を収納することでこの問題をクリアした。
２０ｍｍ機関砲の収納については、操縦席のかさ上げによって大きく空いていた操縦席下のスペースを使用することで解決された。具体的にはカヴァーをつけた機関砲の銃身を胴体下面に埋め込み、弾倉と機関部を操縦席後部下のスペースに収納するというウルトラＥだった。
この改修の結果、大型フィレットの装着と２０ｍｍ機関砲の胴体下面装備によって速力は５３２ｋｍにまで低下し、上昇力と加速も全て当初案に比べて大きく低下していた。しかし、９６式艦戦に比べて大きな性能向上が果たされたことは間違いなく、海軍は火力増強の代償として中島の最終案を受けいれた。
空軍には海軍のわがままに付き合って、せっかくの高性能が台無しにされたという反発（特に旧陸軍航空隊の出身者）があったものの、建軍から間もなく政治力のない空軍は当面は海軍の顔を立てておく必要があった。
試作機はその後順調にテストを重ね、昭和１５年７月に海軍、空軍に制式採用された。
なお、空軍に採用された１００式戦は中島の提示した当初案に近く、大型フィレット（簡単に取り外し可能）と１３ｍｍ機銃を撤去し、武装は胴体下面の２０ｍｍ機関砲２門のみとしている。完全な当初案を採用するのは海軍との関係悪化や生産の混乱が予想されたので諦めなければならなかった。それでも海軍型に比べて速力では２０ｋｍ/ｈほど向上し、加速や上昇性能も向上していた。
攻撃力（武装）
１００式戦の武装は前述の空軍型と海軍型に分かれる。
初の制式タイプである。Ｉ型（海軍型：１１型）では２０ｍｍ機関砲２門である。空軍型は以後、最終生産型の�祁燭砲い燭襪泙覗瓦藤横娃蹌躓ヾ慄ぃ果腓任△襦�
兵站や生産の効率化のため、空軍発足当初から海軍と空軍、及び陸軍は可能なかぎり弾薬の共通化を図る協定を取り交わしていたので２０ｍｍ機関砲の弾薬は空軍型と海軍型には互換性がある。
１００式戦の９９式２０ｍｍ機関砲の場合、弾薬は陸軍の９８式高射機関砲と共通だった。というよりも銃そのものが９８式高射機関砲を改造したものである。
元が高射機関砲だっただけあって、高初速９５０ｍ／ｓを誇るが発射速度は４００発／分と他の列強のそれに比べてかなり劣る。プロペラ同調発射装置を介するので実際の発射速度はそれよりもさらに遅い。
しかし、胴体中心線という最も命中精度の高まる装備位置を得ていることから命中率は非常に高く、遠距離から命中弾が得られる。また、弾丸重量も重いので貫通力も高い。初速だけなら米海軍のＭ２重機関銃よりも１００ｍ／ｓ以上も速い（しかし、発射速度はその半分程度である）。
弾倉は当初はドラム弾倉式で１００発だったが、途中からベルト式２００発に改められている。
海軍型に装備された１３ｍｍ機銃は９９式２０ｍｍ機関砲と同様に海軍が対空機銃として採用していた９３式１３ｍｍ機銃を改造したものである。しかし、改造の参考に米国のＭ２重機関銃を使用しているために外見はＭ２重機関銃に近いものとなっている。給弾はベルト式で２５０発がフェアリング内の弾薬箱に収納される。
１３ｍｍ機銃、２０ｍｍ機関砲問わず、生産合理化の一環として既存の火砲と弾薬をそのまま流用しており、生産設備や弾薬の備蓄をそのまま使用できるという利点があった。
しかし、その反面としてホチキス式の空冷ガス圧作動機構の銃は高度変化による気温変化に弱く高高度ではしばしば機関部が凍結し、低高度では過熱に悩まされることになった。また、元が対空機銃だったことから重量が諸外国の同じ口径の銃よりも重い。
それでも整備と生産が容易なホチキス式の主力としたのは工業力で劣る日本にとってはやむ得ない選択だったといえるだろう。
防御
１００式戦は採用当初からパイロット保護のために防弾鋼板を搭載している。しかしそれは破片防御の主眼としたものであり、１３ｍｍクラスの機銃には無効だったため、取り外してしまうパイロットが多かった。
また、胴体内の大型タンクは当初から自動防漏機構を採用しており、９６式艦戦に比べて非常に燃えにくい戦闘機といえた。
その後も順次防御力の改善は行われており、�況燭任亘秒胴殀弔錬隠械蹌躓―討寮儀發紡僂┐蕕譴襪發里亡港�され、３型では防漏機構を改め、２重に使い捨て式の自動消化装置を装備して、さらに燃えにくい戦闘機となっている。
こうした防御力の改善は敵味方のパイロットから高く評価されている。残っているガンカメラの映像でもＰ−４７の８門の１２.７ｍｍ機銃の弾幕射撃を浴びて撃墜されたものの、燃えずに白くガソリンだけを引いて墜落していく１００式戦の姿が確認されている。
無線機等
１００式戦は９６式艦戦と同様に電信、無線電話を標準装備していた。しかし、日本の電子工業技術の立ち遅れから必ずしも能力は高いとはいえず、大戦初期には取り外して軽量化を図るパイロットが多数だった。しかし、�況唇聞澆北祇�の搭載方法を改めてからはその性能は大幅に改善されており、無線機そのものに問題があるのではなく機体設計時のミス（電子機器の専門家が設計チームにいなかった）であることが明らかになっている。
また、海軍からの要求により無線帰投方位測定器が装備されている。これはアメリカのフェアチャイルド社が開発したものを輸入･国産化したもので、輸入品はアメリカでの呼称そのままにクルシー式（ク式）と呼ばれている。しかし、空軍型の１００式戦でこれを装備した機体は少ない。これは地上を飛行するシベリア戦役においては地上に幾らでも航法上の目標になる地形があり、航法が容易であるためである。
その他特徴
１００式戦は日本で初めて引き込み脚を装備した戦闘機だった（９６式艦戦は固定脚）。これは輸入したチャンスボート社のＶ１４３の方式を模倣したものである。
また、日本の戦闘機で初めて光像式照準器を装備している（９６式艦戦は望遠鏡式）。ただし、この光像式照準器はハインケルＨｅ１００に付いていたＲｅｖｉ２ｂ光像式照準機をコピーしたものである。ちなみにパテント料金は支払っていない。
可変プロペラピッチの機構は米国ハミルトン社製油圧方式を住友金属工業社がライセンス生産したものである。
発展改良、派生型
１００式戦はおおむね�儀拭奮し械隠鰻拭法↓況拭奮し械横卸拭法↓祁拭複械卸拭砲吠未譟�海軍のみが３３型（試作�厳拭砲鮑陵僂靴討い襦�
�況燭魯�ャノピー開閉をヒンジ式から前後スライド式に改め、翼端を丸型から切り落とした角型に変更している。無線機の搭載方法を改めたのも�況燭�らである。また、防弾鋼板を改良型に換装していた。エンジンは栄２１型に換装しており、同時に推力排気管が採用されて速力が３０ｋｍ／ｈほど向上し、中島の当初案に近い時速５６７ｋｍをマークしている。武装も２０ｍｍ機関砲がドラム式からベルト式に変更されて１００発から２００発と倍増している。
続く�祁燭亘貧灰織鵐�を新型に換装し、自動消化装置を搭載した。また、生産簡略化と軽量化のため、一撃離脱戦法の一般化のために空戦フラップが利用されることが殆どなくなっていたことや１００式戦の速い離着陸速度に多くのパイロットが慣れて、離着陸速度が大きな問題ではないことが判明していたことから単純なスプリット式フラップに改められている。
海軍のみが採用した３３型（試作�厳拭砲廊祁燭竜‖里鳳稗械鰻拭複隠械娃闇藁蓮砲鯏觝椶靴燭發里悩嚢眤�力６０１ｋｍ／ｈをマークし、Ｆ６Ｆに対抗できる有力な艦上戦闘機だった。
派生形として、�儀燭裡横娃蹌躓ヾ慄い鯏欝遒掘�空きスペースに偵察用カメラを搭載した戦術偵察型や９６式艦戦からの操縦転換を早めるための複座練習機型が存在する。また、その複座型をベースに作られた艦上高速偵察機（零偵）が存在する。
戦歴
１００式戦の最初の実戦は１９４１年７月に日本軍の奇襲攻撃で始まったシベリア戦役だった。
ドイツ軍の対ソ侵攻作戦に呼応する形で行われた攻撃は完全な奇襲攻撃となり、極東ソ連軍のもつ航空戦力の８０％が開戦から７２時間以内に失われた。
これは大日本帝国の中枢にもぐりこんだ（と思わされていた）ソ連スパイから日本軍の中立と不介入の情報を得たスターリンの判断ミスによるものである。スターリンは日本軍の戦争準備は日ソ貿易を有利にするためのブラフだと考えていたためである。
実際には日本政府はソ連スパイの動きを逐一監視しており、スパイが掴んだ特ダネは日本の意図を隠す欺瞞情報に過ぎなかった。
スパイの報告を受けてスターリンは安心してシベリアから激戦の続く東部戦線に兵力の引き抜きを行ったが、日本軍はソ連軍が防御陣地から引き抜かれ無防備になるまさにその瞬間に殴りかかってきたのである。
１００式戦の配備数はこの時点で２００機あまりと数的な主力はいまだに９６式艦戦の空軍型だったが、９６式艦戦が進出できない奥地まで爆撃機を護衛して飛べる１００式戦はシベリア鉄道を猛爆する重爆部隊にとってなくてはならない存在となっていた。
また、迎撃に出てくるソ連機の大半が技量未熟なパイロットが殆どで、その動きは全く統制が取れておらず旧式なＩ−１６やＩ−１５は殆ど一方的に１００式戦に駆逐されている。
開戦から３ヶ月程度が帝国空軍の最初の黄金時代であり、この間に空軍の戦闘機パイロット達は争うようにスコアを伸ばし、５０機以上の敵機を撃墜するスーパーエースが多数誕生した。
シベリア戦役も２年目に突入するとソ連空軍の新鋭戦闘機、Ｍｉｇ−３やＬａ−５等の新鋭戦闘機が多数前線に投入されるようになり、１００式戦の性能面の優位は小さくなっていたが実際の空戦はほぼ常勝に近いものだった。
これはパイロットの練度の差も大きいが、１００式戦の長大な航続能力によるところが大きい。
広大なシベリアの前線飛行場に分散配置されるのはどちらも同じだったが、長大な航続能力をもつ１００式戦は常に戦力を１点に集中することができるのに対して、足の短いソ連空軍機は分散したまま各個撃破されることが多かった。
また、１００式戦は常に敵戦闘機の行動半径の外に発進基地を置くことが可能だったのに対して、ソ連空軍機は１００式戦の行動半径の中に基地をおかなければならないので、しばしば地上に駐機しているところを襲われて大損害を蒙っている。
大戦後半になるとさすがに旧式化は否めず、後継機の配備にしたがって第１線から退いていったが、練習機に改造される等して多数の中古機が停戦まで使用されている。
なお、海軍型の零戦は後継機の開発失敗により空軍が試作のみで手放した�厳燭鵬�造を施して艦上戦闘機として採用している。�厳燭留蛭�動機は栄シリーズの最終生産型で１３００馬力を発揮し、機体の空力学的洗練により高度５０００ｍで時速６００ｋｍを超える高速を発揮した。上昇能力と加速でＦ６Ｆを凌ぐ性能を誇る。ただし、格闘戦は良好な旋回性能と余剰馬力の大きなＦ６Ｆには及ばず、Ｆ６Ｆとの格闘戦は禁止された。
１００式戦「隼」とは１９４１年７月から始まったシベリア戦役初期からソ連崩壊までの帝国空軍（ＩＪＡＦ）の主力戦闘機である。
大日本帝国の制式兵器は採用年次の皇紀の下２桁を名称に冠する規定があるため、採用が皇紀２６００年（昭和１５年：１９４０年）であったことから、下２桁をとり１００式戦闘機として命名された。
ちなみに、海軍航空隊では空軍との混同を避けるために下２桁が００であることから、零式艦上戦闘機として一部改修した上で採用している。
隼という愛称は正式なものではなく、戦意高揚のためのプロパガンダ映画等で１００式戦が公開された際に制式名称が報道機関に公表されなかったために映画会社等が苦肉の策として「隼型戦闘機」とつけた仮称が一般化、逆輸入されてパイロット達が隼と呼び始めたのがそのルーツとされている。
開発経緯
昭和１２年に陸軍航空隊と海軍航空隊の基地航空部隊を統合して発足した帝国空軍は当座の主力戦闘機として前年に制式採用された海軍の９６式艦上戦闘機を改良して使用することが決まっていた。しかし、それはあくまで暫定的な処置にすぎず、空軍発足当初から次期主力戦闘機の開発が進められていた。
帝国空軍は元来、陸海軍に分かれて非効率的に行われていた航空行政を統一し、効率化を図ることを最大の目的としており、次期主力戦闘機は空軍のみならず海軍でも採用されることが最初から決まっていた。
そのためにその要求仕様には艦上戦闘機として必須の離着艦能力、低速飛行性能の確保が求められていた。また、空母のエレベータに納まるサイズに機体を収めることが必須とされた。さらに海軍は長時間の艦隊上空直援を行うために過大すぎる滞空時間を要求していた。
また、第１線で戦う戦闘機パイロット達（陸海軍問わず）は９６式艦上戦闘機並の格闘戦性能を次期主力戦闘機にも具備することが求めていた。
さらに、高速化する敵戦闘機、攻撃機を捕捉するために必要な速力、加速性能、上昇性能を高い次元で一致させることが求められた。特に空軍の佐官クラスはスペイン内戦におけるＢｆ１０９やソ連製のＩ−１６の活躍から高速の重戦闘機こそが次期主力戦闘機の理想であると理論提唱し、次期主力戦闘機は重戦闘機でなければならないとしていた。
こうした相反する要求を全て詰め込んだ要求仕様は、現実問題として全く達成不可能だと考えられたが、建軍から間もない寄り合い所帯だった空軍当局は要求仕様をまとめきることができなかった。せめて要求に優先順位を付けるべきだったが、それさえも出来ていなかった。
そうした論争に終止符が打たれるのは空軍がソ連空軍と正面衝突したノモンハン事件の航空戦における９６式戦闘機（９６式艦戦の空軍版）の苦戦であり、もはや９６式艦戦のような格闘戦重視の軽戦闘機では戦えないことが明らかになったのである。
設計
１００式戦の設計は当初中島飛行機と三菱の２社で進められていたが、三菱は主任設計者が迷走する過大な要求仕様にノイローゼで倒れたことで開発を断念したために途中でリタイアした。中島飛行機は当初は要求仕様の混乱から開発を辞退していたが、三菱のリタイアとノモンハン事件の航空戦の結果から要求仕様の混乱が収まったことから開発を再開し、試作機製造にまでこぎつけた。
三菱が機体の徹底的な軽量化によって要求仕様を達成しようとしたのと同様に中島飛行機も機体の徹底的な軽量化によってこれを達成しようした。
ただし、三菱というよりはＨ設計主任が考えていた軽量化（ビスや構造材の一つ一つを肉抜きして軽量化）とは全く異なるアプローチを中島飛行機は採用していた。
それは機体の徹底した小型化だった。発動機の直後から胴体を絞り込み、主翼も摩擦抵抗の排除を狙って小型の前進角が付けられた可能な限り薄い翼型を採用した。決して大直径とは言えない自社製の栄発動機を採用したにもかかわらず１００式戦が頭でっかちに見えるのはこのためだった。
機体の小型化によって減るのは重量だけではなく、表面積も大幅に削減されている。これによって減るのは摩擦抵抗である。小型の主翼は2本桁のボックス構造で、内側を波板で補強されている。それにより急降下時の制限速度は時速８８０ｋｍ以上で、事実上の制限速度は存在しないも同然だった。最大１２Ｇの高Ｇ旋回にも耐えられる機体は小さいながらも重戦闘機にふさわしい堂々たるものである。
９６式艦戦の操縦索にはピアノ線が用いられていたが、１００式艦戦ではあらゆる速度域で同じ操縦感覚を実現するために鋼管ロッドによる操作を採用している。これまでの航空機は速度域によって操縦桿の重さが異なり、操縦を行う際に速度域によって微妙な手加減が必要になっていたが、鋼管ロッドを用いることで低速から高速域まで同一の感覚で機体制御が可能になっていた。頑丈な鋼管ロッドを用いることで各舵の効きは時速７００ｋｍを超えても良好で、時速８６０ｋｍの急降下でも機体のコントロールが可能だった。
試作機を使った飛行試験では高度５０００ｍで時速５６０ｋｍを発揮し、関係者を狂喜させたが、全く問題がないわけではなかった。
その一つは離着陸速度を速さだった。前縁スラットと蝶型ファウラーフラップを用いることで離着陸速度を最小限までに押さえ込んでいたが、９６式艦戦に慣れた現役パイロット（特に海軍航空隊）は全面改修を要求していた。空軍のパイロットからも離着陸速度について苦情はあったものの、空母の飛行甲板よりも圧倒的に広い陸上の滑走路では問題になるほどではないとされた。
同時に、改修の要求がなされたのは前方視界の悪さだった。飛行時の前方視界は胴体を絞り込んだ設計が功を奏し、理想的とさえ言われるほどの評価を獲得していたが、地上滑走時の前方視界、着陸時の前方視界は壊滅的だった。
離着陸速度については、フラップの面積を増やし、主翼の一部にしか採用されていなかった前縁スラットを主翼の全てに適用することで一応の解決の目処が立ったものの前方視界問題の根は深かった。
また、他に武装と航続能力にも問題が発生していた。
要求仕様において武装は７.７ｍｍ機銃又は１３ｍｍ機銃、２０ｍｍ機関砲各２門という強武装が要求されていた。もっとも、これは１３ｍｍ機銃で必要十分とする空軍と２０ｍｍ機関砲を必須と要求する海軍の要求をまとめ切れなかっただけである。
海軍は空軍に泣く泣く譲り渡した９６式陸上攻撃機のような高速双発中型雷撃機を米海軍が量産するのではないかという悪夢を振り払うためにも、中型爆撃機に一撃必殺をかけられる２０ｍｍ以上の大口径機関砲が絶対必要だと考えていた。艦隊防空戦闘は迎撃戦であり、早期警戒網のない当時は迎撃戦で戦闘機が独力で敵機を捜索、補足しなければならない。そのために攻撃するチャンスは多くても２回が限度だと考えられていた。そうした少ない攻撃チャンスを最大限に生かすためにも一発の威力の大きい大口径機関砲が必要だった。また、艦隊防空戦を戦うには長時間の空中警戒を行う必要があり、ＣＡＰを長時間行うには長大な航続能力（滞空時間）の確保が必須とされた。
しかし、中島飛行機の試作機は高速発揮のために小さな薄翼を採用しており、翼内には主脚格納スペースを確保するだけで精一杯だった。
そのために大型の２０ｍｍ機関砲は翼内ではなく、ガンポッド式で翼下にぶら下げることになったが、２０ｍｍ機関砲のガンポッドを吊り下げた場合、空気抵抗の増大で速力が４０ｋｍ近く低下した。
時速５６０ｋｍの高速はこのガンポッドがない場合の数値であり、ガンポッドを搭載した場合は５２０ｋｍ／ｈを超えることはできなかった。
また薄翼のために翼内燃料タンクが採用できなかったために燃料タンクは操縦席前部とエンジンの間の大型単一タンクで全てまかなうことになっていた。
胴体内の大型単一タンクは燃料配分の切り替えなど細かい修正を行わなくてよいでのパイロットにとっては負担軽減になるし、十分な防弾、防漏装備を施すことができるので防御上有利だった。しかし、機体を小型化したことが影響して要求仕様を満たすだけの燃料タンクのスペースが確保できなかった。
中島飛行機は足りない部分については落下タンクで補えると主張したが、落下タンクを使用した場合、ガンポッドと併用となり、速力はさらに低下する。
海軍は前方視界の改善と武装強化、航続能力の充実を主張して主翼と胴体の全面的な再設計を要求したが、ここで空軍が待ったをかけた。
なぜならば、空軍は海軍の指摘する問題点について、全て中島の要求を呑む用意が出来ていたからだ。前方視界の問題は長大な滑走路を用意できる空軍にとってはさして重大な問題ではなかったし、ガンポッド式の２０ｍｍ機関砲など空軍は最初から求めていなかった。航続能力についても大陸での対ソ戦を想定するならば、既に十分に確保されている。
結局、空軍と海軍が喧嘩腰の激論を経て、航続能力については中島の提案を受け入れることが決まった。しかし、武装と前方視界だけは絶対に譲らなかった。
これを受けて中島飛行機も機体改修の最終案をまとめた。
まず、前方視界については胴体設計が崩れることを承知して操縦席の大幅なかさ上げをおこなった。そして、機首の１３ｍｍ機銃を撤去して、操縦席とカウリングとの間を斜めに切り落とす形に整形して、前方視界を確保した。
撤去した１３ｍｍ機銃は主翼と胴体の間に本来なら不必要な大型のフィレットを装着し、その中に１３ｍｍ機銃を収納することでこの問題をクリアした。
２０ｍｍ機関砲の収納については、操縦席のかさ上げによって大きく空いていた操縦席下のスペースを使用することで解決された。具体的にはカヴァーをつけた機関砲の銃身を胴体下面に埋め込み、弾倉と機関部を操縦席後部下のスペースに収納するというウルトラＥだった。
この改修の結果、大型フィレットの装着と２０ｍｍ機関砲の胴体下面装備によって速力は５３２ｋｍにまで低下し、上昇力と加速も全て当初案に比べて大きく低下していた。しかし、９６式艦戦に比べて大きな性能向上が果たされたことは間違いなく、海軍は火力増強の代償として中島の最終案を受けいれた。
空軍には海軍のわがままに付き合って、せっかくの高性能が台無しにされたという反発（特に旧陸軍航空隊の出身者）があったものの、建軍から間もなく政治力のない空軍は当面は海軍の顔を立てておく必要があった。
試作機はその後順調にテストを重ね、昭和１５年７月に海軍、空軍に制式採用された。
なお、空軍に採用された１００式戦は中島の提示した当初案に近く、大型フィレット（簡単に取り外し可能）と１３ｍｍ機銃を撤去し、武装は胴体下面の２０ｍｍ機関砲２門のみとしている。完全な当初案を採用するのは海軍との関係悪化や生産の混乱が予想されたので諦めなければならなかった。それでも海軍型に比べて速力では２０ｋｍ/ｈほど向上し、加速や上昇性能も向上していた。
攻撃力（武装）
１００式戦の武装は前述の空軍型と海軍型に分かれる。
初の制式タイプである。Ｉ型（海軍型：１１型）では２０ｍｍ機関砲２門である。空軍型は以後、最終生産型の�祁燭砲い燭襪泙覗瓦藤横娃蹌躓ヾ慄ぃ果腓任△襦�
兵站や生産の効率化のため、空軍発足当初から海軍と空軍、及び陸軍は可能なかぎり弾薬の共通化を図る協定を取り交わしていたので２０ｍｍ機関砲の弾薬は空軍型と海軍型には互換性がある。
１００式戦の９９式２０ｍｍ機関砲の場合、弾薬は陸軍の９８式高射機関砲と共通だった。というよりも銃そのものが９８式高射機関砲を改造したものである。
元が高射機関砲だっただけあって、高初速９５０ｍ／ｓを誇るが発射速度は４００発／分と他の列強のそれに比べてかなり劣る。プロペラ同調発射装置を介するので実際の発射速度はそれよりもさらに遅い。
しかし、胴体中心線という最も命中精度の高まる装備位置を得ていることから命中率は非常に高く、遠距離から命中弾が得られる。また、弾丸重量も重いので貫通力も高い。初速だけなら米海軍のＭ２重機関銃よりも１００ｍ／ｓ以上も速い（しかし、発射速度はその半分程度である）。
弾倉は当初はドラム弾倉式で１００発だったが、途中からベルト式２００発に改められている。
海軍型に装備された１３ｍｍ機銃は９９式２０ｍｍ機関砲と同様に海軍が対空機銃として採用していた９３式１３ｍｍ機銃を改造したものである。しかし、改造の参考に米国のＭ２重機関銃を使用しているために外見はＭ２重機関銃に近いものとなっている。給弾はベルト式で２５０発がフェアリング内の弾薬箱に収納される。
１３ｍｍ機銃、２０ｍｍ機関砲問わず、生産合理化の一環として既存の火砲と弾薬をそのまま流用しており、生産設備や弾薬の備蓄をそのまま使用できるという利点があった。
しかし、その反面としてホチキス式の空冷ガス圧作動機構の銃は高度変化による気温変化に弱く高高度ではしばしば機関部が凍結し、低高度では過熱に悩まされることになった。また、元が対空機銃だったことから重量が諸外国の同じ口径の銃よりも重い。
それでも整備と生産が容易なホチキス式の主力としたのは工業力で劣る日本にとってはやむ得ない選択だったといえるだろう。
防御
１００式戦は採用当初からパイロット保護のために防弾鋼板を搭載している。しかしそれは破片防御の主眼としたものであり、１３ｍｍクラスの機銃には無効だったため、取り外してしまうパイロットが多かった。
また、胴体内の大型タンクは当初から自動防漏機構を採用しており、９６式艦戦に比べて非常に燃えにくい戦闘機といえた。
その後も順次防御力の改善は行われており、�況燭任亘秒胴殀弔錬隠械蹌躓―討寮儀發紡僂┐蕕譴襪發里亡港�され、３型では防漏機構を改め、２重に使い捨て式の自動消化装置を装備して、さらに燃えにくい戦闘機となっている。
こうした防御力の改善は敵味方のパイロットから高く評価されている。残っているガンカメラの映像でもＰ−４７の８門の１２.７ｍｍ機銃の弾幕射撃を浴びて撃墜されたものの、燃えずに白くガソリンだけを引いて墜落していく１００式戦の姿が確認されている。
無線機等
１００式戦は９６式艦戦と同様に電信、無線電話を標準装備していた。しかし、日本の電子工業技術の立ち遅れから必ずしも能力は高いとはいえず、大戦初期には取り外して軽量化を図るパイロットが多数だった。しかし、�況唇聞澆北祇�の搭載方法を改めてからはその性能は大幅に改善されており、無線機そのものに問題があるのではなく機体設計時のミス（電子機器の専門家が設計チームにいなかった）であることが明らかになっている。
また、海軍からの要求により無線帰投方位測定器が装備されている。これはアメリカのフェアチャイルド社が開発したものを輸入･国産化したもので、輸入品はアメリカでの呼称そのままにクルシー式（ク式）と呼ばれている。しかし、空軍型の１００式戦でこれを装備した機体は少ない。これは地上を飛行するシベリア戦役においては地上に幾らでも航法上の目標になる地形があり、航法が容易であるためである。
その他特徴
１００式戦は日本で初めて引き込み脚を装備した戦闘機だった（９６式艦戦は固定脚）。これは輸入したチャンスボート社のＶ１４３の方式を模倣したものである。
また、日本の戦闘機で初めて光像式照準器を装備している（９６式艦戦は望遠鏡式）。ただし、この光像式照準器はハインケルＨｅ１００に付いていたＲｅｖｉ２ｂ光像式照準機をコピーしたものである。ちなみにパテント料金は支払っていない。
可変プロペラピッチの機構は米国ハミルトン社製油圧方式を住友金属工業社がライセンス生産したものである。
発展改良、派生型
１００式戦はおおむね�儀拭奮し械隠鰻拭法↓況拭奮し械横卸拭法↓祁拭複械卸拭砲吠未譟�海軍のみが３３型（試作�厳拭砲鮑陵僂靴討い襦�
�況燭魯�ャノピー開閉をヒンジ式から前後スライド式に改め、翼端を丸型から切り落とした角型に変更している。無線機の搭載方法を改めたのも�況燭�らである。また、防弾鋼板を改良型に換装していた。エンジンは栄２１型に換装しており、同時に推力排気管が採用されて速力が３０ｋｍ／ｈほど向上し、中島の当初案に近い時速５６７ｋｍをマークしている。武装も２０ｍｍ機関砲がドラム式からベルト式に変更されて１００発から２００発と倍増している。
続く�祁燭亘貧灰織鵐�を新型に換装し、自動消化装置を搭載した。また、生産簡略化と軽量化のため、一撃離脱戦法の一般化のために空戦フラップが利用されることが殆どなくなっていたことや１００式戦の速い離着陸速度に多くのパイロットが慣れて、離着陸速度が大きな問題ではないことが判明していたことから単純なスプリット式フラップに改められている。
海軍のみが採用した３３型（試作�厳拭砲廊祁燭竜‖里鳳稗械鰻拭複隠械娃闇藁蓮砲鯏觝椶靴燭發里悩嚢眤�力６０１ｋｍ／ｈをマークし、Ｆ６Ｆに対抗できる有力な艦上戦闘機だった。
派生形として、�儀燭裡横娃蹌躓ヾ慄い鯏欝遒掘�空きスペースに偵察用カメラを搭載した戦術偵察型や９６式艦戦からの操縦転換を早めるための複座練習機型が存在する。また、その複座型をベースに作られた艦上高速偵察機（零偵）が存在する。
戦歴
１００式戦の最初の実戦は１９４１年７月に日本軍の奇襲攻撃で始まったシベリア戦役だった。
ドイツ軍の対ソ侵攻作戦に呼応する形で行われた攻撃は完全な奇襲攻撃となり、極東ソ連軍のもつ航空戦力の８０％が開戦から７２時間以内に失われた。
これは大日本帝国の中枢にもぐりこんだ（と思わされていた）ソ連スパイから日本軍の中立と不介入の情報を得たスターリンの判断ミスによるものである。スターリンは日本軍の戦争準備は日ソ貿易を有利にするためのブラフだと考えていたためである。
実際には日本政府はソ連スパイの動きを逐一監視しており、スパイが掴んだ特ダネは日本の意図を隠す欺瞞情報に過ぎなかった。
スパイの報告を受けてスターリンは安心してシベリアから激戦の続く東部戦線に兵力の引き抜きを行ったが、日本軍はソ連軍が防御陣地から引き抜かれ無防備になるまさにその瞬間に殴りかかってきたのである。
１００式戦の配備数はこの時点で２００機あまりと数的な主力はいまだに９６式艦戦の空軍型だったが、９６式艦戦が進出できない奥地まで爆撃機を護衛して飛べる１００式戦はシベリア鉄道を猛爆する重爆部隊にとってなくてはならない存在となっていた。
また、迎撃に出てくるソ連機の大半が技量未熟なパイロットが殆どで、その動きは全く統制が取れておらず旧式なＩ−１６やＩ−１５は殆ど一方的に１００式戦に駆逐されている。
開戦から３ヶ月程度が帝国空軍の最初の黄金時代であり、この間に空軍の戦闘機パイロット達は争うようにスコアを伸ばし、５０機以上の敵機を撃墜するスーパーエースが多数誕生した。
シベリア戦役も２年目に突入するとソ連空軍の新鋭戦闘機、Ｍｉｇ−３やＬａ−５等の新鋭戦闘機が多数前線に投入されるようになり、１００式戦の性能面の優位は小さくなっていたが実際の空戦はほぼ常勝に近いものだった。
これはパイロットの練度の差も大きいが、１００式戦の長大な航続能力によるところが大きい。
広大なシベリアの前線飛行場に分散配置されるのはどちらも同じだったが、長大な航続能力をもつ１００式戦は常に戦力を１点に集中することができるのに対して、足の短いソ連空軍機は分散したまま各個撃破されることが多かった。
また、１００式戦は常に敵戦闘機の行動半径の外に発進基地を置くことが可能だったのに対して、ソ連空軍機は１００式戦の行動半径の中に基地をおかなければならないので、しばしば地上に駐機しているところを襲われて大損害を蒙っている。
大戦後半になるとさすがに旧式化は否めず、後継機の配備にしたがって第１線から退いていったが、練習機に改造される等して多数の中古機が停戦まで使用されている。
なお、海軍型の零戦は後継機の開発失敗により空軍が試作のみで手放した�厳燭鵬�造を施して艦上戦闘機として採用している。�厳燭留蛭�動機は栄シリーズの最終生産型で１３００馬力を発揮し、機体の空力学的洗練により高度５０００ｍで時速６００ｋｍを超える高速を発揮した。上昇能力と加速でＦ６Ｆを凌ぐ性能を誇る。ただし、格闘戦は良好な旋回性能と余剰馬力の大きなＦ６Ｆには及ばず、Ｆ６Ｆとの格闘戦は禁止された。
2007年10月22日(月) 20:20:34 Modified by suzukitomio2001