本サイトは、SW2.5シナリオ準拠の本格冒険活劇ファンタジー「レーヴェス探訪記ーA Tale of Rehvesー」の公式攻略Wikiです。

「もう帰る」

そう言って女は乱暴に扉を開け、店を後にした。
店に残されたのは、室内にも関わらず雨に濡れた後のような男のみ。広い店内は静まり返っている。テーブルやカウンターには、飲み食いし終わった食器が片付かないままだ。
しばらくすると、カウンターの奥から人影がやってくる。小柄な女性で、小麦色のたおやかな髪は頭の高い位置で結ばれていた。
「あら...」
彼女は目の前の男に対して少し目を見開く。
「うちの店、雨漏りでもしたのかしら」
「...意地悪だなあ、レイカさん」
男は大きなため息をつき、自分の衣服で濡れた顔や髪を拭った。
「お酒は人にかけるためのものじゃないわよ」
「そうっすよねえ」
レイカと呼ばれた女性は、ホールに出て皿やビンを次々重ねていく。さながら大道芸のように絶妙なバランスを保ち、カウンターへと帰ってきた。
「って...俺がかけたんじゃないんすけどね」
先程店を出ていった女性と何があったか思い出す。どうやら彼女は、自分を自宅に招こうとしていたみたいだが、その気はなかったので断った。しばらく押し問答を続けていたが、まさか去り際に怒りだけでなく酒もぶつけられるとは。「最低」というのは、おそらく自分に向けられている言葉なのだろう。
「どうかなあ。誰彼構わず女の子にちょっかいかけてるのはどこの誰ですか? ジュンさん」
呆れたように笑うレイカは、そのまま奥の洗い場に消えていった。その様子を見ていたジュンは、何も言わずにカウンターに突っ伏した。
自分としては、ただ皆と楽しくしていたいだけで、誰かが特別ということもない。男たちとバカやったり、女の子を褒めるのは、皆がそれで嬉しそうにしてくれるから。それだけのつもりなのに、上手く行かないこともある。

次の瞬間、視界が白で覆われた。
「...!?」
触るとタオルだということが分かる。
「それで髪ふいて、早く帰ったほうがいいよ。明日も早いんでしょ?」
「レイカさん、あざす。やっぱやさしーなあ」
「はい、はい」
ジュンが乱暴に髪をふきつつ顔を上げる。レイカは呆れつつも、いつものように愛らしい笑顔を浮かべていた。
ふと、レイカがなにかに気づき、カウンターを出てジュンの元へやってくる。ふわっ、と微かにキンモクセイの香りがした気がした。
「頭の後ろ、ここも濡れてるよ」
そう言ってレイカは、色素の薄い黄金色の髪から、丁寧に水気を取る。そして、何も言わず身を任せるジュンに話しかけた。
「ジュンさん、いつか痛い目みるかもよ?」
「えぇ...なんすかそれ。怖いっす」

発言の真意は最後までわからなかった。
この時も今も、かすかなキンモクセイの香りだけは、ジュンの中に色濃く残っている。

〜〜〜〜

ジュンが所属するヤーコブス商会がツェーベに来て、もう3か月が経つ。
小さな町ではあるが、港町ということもあり、酒場や飲み食いできる場所は多い。
海鮮をふんだんに使った料理が自慢の「トラットリア・ツェーベ」。1000種類ものお酒を置いている「大衆酒場・大樽」。この街一古い飲み食い処「海の声」。3か月間でこの街をほぼ歩き回ったが、まだ入ったことのない店もある。
とりわけよく訪れるのは「潮騒のさざめき亭」だった。
大した理由はないが、船から一番近い場所にあり、一緒にいる仲間とよく訪れるからだろう。
豪快な店主のクアレンスと酒を飲むのも楽しいし、小さなコボルドシェフであるテオの料理は美味しい。なにより、皆口を揃えてウェイターのレイカを絶賛する。
肩甲骨まである髪は、やわらかくツヤがあり、パッチリとした瞳とうすい唇が女性らしさを表している。いつも笑顔を絶やさず、どんな客にも優しく接するその姿に、街の男たちは皆虜だった。

「おまけに男の噂がまーーーったく立たないってんだから、皆好きになっちゃうよなあ」
「よく言い寄られてるのは見るけど」
「いやあ、成功した奴はいないって話だよ」
「ああ、それはたぶん、レイカちゃん、俺のことが好きで言い出せないんだなあ」
「それだけはねーべ!」
わははは、と十二分に出来上がった漁師たちの笑い声が店内中に響いた。
レイカは聞こえない振りをしつつ、いつもの笑顔で料理を手にしてテーブルの間を縫う。
「お待たせしました!」
「お、あざーっす! 待ちくたびれたっすよ」
運ばれてきた料理を前に、へへ、と無邪気に笑う、黄金色の髪のリカント。最近よく店に来る一人だ。彼の大きなの尻尾が元気よく揺れる。
「ジュンさん最近よくこれ食べるわね」
「そーなんすよ。お気に入りっす! 仕入れの関係で来週から食べられなくなるとか、勘弁っすよ〜」
コロコロと変わる表情は、まっすぐレイカを見てくる。いつも通りの笑顔でごゆっくりどうぞ、と立ち去ろうとすると、ジュンに引き留められた。
「レイカさんも、ちょっと食べない?」
彼は一口大に切り分けたひとつを、こちらに差し出してきた。満面の笑顔でこちらを見ている。
迂闊だった。ちょっと話しかけただけだったのだけど...。彼の眼差しにあてられて一瞬戸惑うが、大丈夫。笑顔を張り付ける。
「今仕事中だから、遠慮しておくわ。ありがとう」
踵を返してその場を立ち去る。
言い方はきつくなかっただろうか、笑顔はいつも通りに見えていただろうか。
頭の隅で考えたもやもやを打ち消すように、お客が私を呼ぶ声がした。

彼のことは嫌いではないが、どちらかというと苦手の部類になるかもしれない。純粋で素直な、心の底からの言動。自由で奔放な振る舞い。それでいて憎めない所がある。
わたしにはできない、取り繕うことしか。
いつまで自分の外面と、この土地に、縛られているのだろうか。

〜〜〜〜

「かんぱーーーーい!!!!!」
今日のさざめき亭は、いつにも増してにぎやかな夜を迎えていた。ヤーコブス商会の面々と、街の漁師たち、女たちも皆、喜びに酔っていた。
なんでも、ヤーコブス商会がこの地を拠点に活動しはじめた時から、交渉を重ねていた大型案件が契約締結となったそうだ。
各所から、あの日の苦労や達成した喜び、笑い声が聞こえる。歌い出す者、泣き出す者。この店一杯に喜びが溢れていた。
レイカは忙しそうに、嬉しそうに、テーブルを回って料理や飲み物を出しては、行く先々で談笑していた。
一際騒がしいテーブルでは、ジュンが賑わいの中心で叫んでは飲み、叫んでは飲んでいた。
「あ〜れーいかさーーーん」
真っ赤になった顔に、とろんとした目。完全に酔っているみたいだ。こちらに向けて手を振っているのだろうけど、要領を得なくて手首がかくかく動くだけである。
「もー、ほどほどに楽しんで」
はいはい、とあしらって、空きのグラスが足りなくなったので、急いで厨房に戻った。
「あれー...」
俺、レイカさんに嫌われるようなことしたかな。
「れいかさんいっちゃあたー」
「なーに、ジュン。レイカ狙ってんの?」
「え〜ジュンは、あたし狙いじゃないの〜」
「おれは、みんなとなかよくしたいんれすよー」
「おめえもモテるからって懲りねえ男だなあ」
居合わせた男に、髪をぐしゃぐしゃとかき回される。酒の入った脳みそがぐわんぐわん揺れる。
「やめれーーおれは、あんたのことも、みーんなのことも、すきっすよー」
そう言うと、耐えられなくなってテーブルに頭を預けた。縁に当たった痛みとみんなの笑い声がごちゃ混ぜになって、意識は遠くに消えていった。

「...!」
がばっと上半身を起こす。そこはダウンライトが薄明かりをもたらすさざめき亭だった。
「寝てた...」
回りを見渡しても誰もいない。皆帰ったのだろうか。誰か起こしてくれればいいのに。
不揃いに並んだ椅子とテーブル。そこかしこに残された酒瓶。ひとまとめになった食後の皿。風の音もしない室内が、宴はとうに終わったことを冷静に告げていた。
自分が誰にも求められていないかのように思える。
いや、そんなのただの思い過ごしだ。大方自分が起きなかっただけの話だろう。誰かが毛布も掛けてくれている。
「...」
毛布をつかみ、立ち上がる。
目線が高くなると、カウンターに突っ伏して眠る影が見えた。薄明かりでよく見えないが、おそらく、レイカのような気がする。
「...おーい」
レイカさん。と控えめに名前を呼ぶが、気づく気配はない。店も閉めないといけないだろうし、毛布も返さないといけないので、起こそうとカウンターに近づいた。
声をかけようとして、レイカの手元に目が行った。白い紙に整った黒い文字。どうやら手紙のようだ。
本当はこういうのは良くないが、単純な興味が勝ってしまった。目だけで追う。
『お元気ですか。
 こちらはもうすぐ冬...
 相変わらずさざめき亭はに...
 そちらは寒くないですか?...
 わたしはユヴェイラに行っ...
 らないことの方が多いけれど...
 れるとうれしいです。...』
レイカの下敷きになっているので見えない部分もあるが、ここにはいない誰かに向けられた言葉だった。普段のレイカとはまた違った、やさしさと愛情が文面からでも分かる。
お父さん、お母さん? 友人、恩師...あるいは、想い人。飾らない言葉がそこには散りばめられていた。
「ん...」
そうこうしているとレイカがみじろいだ。
「あれ...ジュンさ...ん」
ぼんやりとした頭が徐々に状況を認識していく。まずい、手紙、出しっぱなしだった。散らばった紙とペンを適当に端に追いやって、椅子から降りてジュンの前に立った。
「えっ...と」
お互い何も言えずに立ち尽くす時間が流れる。何分にも何時間にもなった気がする。
「ごめん、その...ちょっと読んじゃった」
最初に切り出したのはジュンだった。嘘の言えない、バカ正直な彼らしい、反応。
怒りとかでなく、焦りというか恥ずかしさで頭が一杯になった。
ごめん、と再び。
こんな時でも彼の瞳は、私をまっすぐとらえて離さない。
隠していたわけでもないけど、何かが暴かれたような気持ちになる。何を言われるのだろうか、失望されただろうか。一体何に? 謝られると何だか気まずいし、でも寝ていた私が悪いわけで、だから、だから
「レイカ?」
はっ、と我に帰る。水を浴びたように、彼の声は私の意識に入り込んだ。
「あ、ジュンさん...ごめんなさい」
「あのさ」
彼の反応を知りたくなくて、私は目をそらした。
「もう、"ジュン"でよくないすか?」
「え?」
そこ?
拍子抜けして、視界が開けた気がした。そうしたら、何だか全部どうでもよくなってきてしまった。意味もわからず笑いが込み上げてきた。
「...あはははっ」
ジュンは一瞬呆気にとられたが、こんな顔で笑うレイカを目の前にして、何だか自分もほころんだ。
何を言えば良いかわからなくて、ただ思いついたことが口に出てしまっただけだったけど。
「ジュン、ね」
「レ、イ、カ」
お互いの響きをただ口に出す。その声は誰もいないさざめき亭に、やさしく広がっていた。
「まあ隠すようなことでもないの」
「いや、無理しなくていいっすよ、俺、口固いんで」
「ふふっ。どうかなあ...」
とりあえず、とレイカはホールに一歩足を踏み出す。そして、くるりと顔だけジュンに向けた。
「片付けるの手伝って?」
さっきの笑顔をも、今の表情も、今まで見たことがなかったレイカだった。嬉しいとか喜ばしいというより、じんわりと胸に響いて、脈打った。

〜〜〜〜

「いわゆるラブレターってやつなんだと思う」
洗い終わった皿を1枚1枚拭きながら、レイカが口を開いた。
「え...?」
一瞬なんのことか分からなかったが、すぐに気づいた。あの手紙のことだ。その割には歯切れが悪かった。
「ラブレター、すか? そうじゃないんすか?」
「んー。どうなんだろうね。もはや執着なのか、義務なのか...あるいは呪いかもしれない」
ラブレターと言うにはなんだか不穏な言葉ばかりが並ぶ。レイカの瞳は、遠いどこかを見つめていた。
「知り合いが、ユヴェイラの最前線にいるの。その人に向けての、手紙」
「...その人ってのは、恋人?」
ジュンは自分で口にしながら、もどかしさを感じた。
レイカは問いかけに対して小さく首を横に振る。
「わたしの片想い、かな」
皿を拭く手は止めないまま、レイカは話し出した。
「その人は街の外れでいつもたった一人だった。迷子のわたしを助けてくれて、それからよく遊びにいくようになったの。でも彼はいつも、わたしを優しく拒んだ。ここにいてはいけないよ、自分と一緒にいてはいけないって」
「いてはいけない?」
レイカは頷いて、ジュンの方にちらりと視線を送った。
「彼がナイトメアだったから。
でもわたしには関係ない。どうしてもその人に会いたくて、毎日優しく突き放されてた」
「そこまで、好きなんすね、その人のこと」
もどかしさは拭えなかった。
「...」
わからない、とレイカは苦しそうに微笑んだ。
「あの人の瞳も、優しい声も、つないだ手のぬくもりも、なぜだか忘れられなかった。今でも」
レイカは先ほど書いた手紙を手に取った。その表情は、手紙の奥の見えない誰かに焦がれている。
「どうしてこんな気持ちになるのかわからない。でも帰ってきてくれたらわかるような気がして、だからこうして、手紙を書いているの」
でも、というレイカの声は、少し震えているようにも聞こえる。
「これは、もはやただの執着、なんじゃないかって。自分でもよくわからなくなってしまった。
でも止めてしまったら、あの人とは2度と会えなくなる」
あはは、と乾いた笑いが響いた。
「なんでこんなことしてるんだろう」
長い間押し込めてきた感情が、雪崩を起こすのは速く、口に出すごとに、次から次へと溢れて止まらなかった。
束の間、二人の間に沈黙が訪れる。
「俺は」
ジュンは迷いながらも口を開いた。
「すごいと思う。そうやって、誰かに一途になれるの」
「一途...」
レイカには、自分のこれが、一途なんてそんな高尚なものだとは思えなかった。ふと自由になりたい、なんて思うこともあるから。だがこの手紙は手放すことはできなかった。
「俺には、できないから」
「わたしはジュンの方が羨ましい」
他人に自由奔放に振る舞える彼が、誰とでも一緒にいられる才能のある彼が。
「ジュンと一緒だったら、つらいことから自由になれるのかな」
レイカは今にも泣きそうな笑顔でジュンに向き合った。散り始めそうな花を前にして、ジュンはかける言葉もなく、ただ彼女を見つめていた。
誰一人愛することのできなかった自分に、彼女を救うことなんてできない。形容できない怒りと、歯痒さだけが残った。
そんなジュンの様子を知ってか知らずか、レイカの口からは諦めにも似た言葉が紡がれた。
「わたしは、みんなのうちの一人じゃないのね」
「え...?」
「"みんな大好き"の一人じゃないから、なにもしてくれないんでしょう?」
レイカは自分でもおかしなことを言っているのは分かっていた。彼を困らせることも。
「わたしもその一人だったら、慰めてもらえたのかな」
慰めなんて要らない。
そんなもの気休めにならないことくらい、二人とも分かりきっていた。だからこれはただの悪足掻き。
「いいよ...レイカが望むなら」
ジュンの頭は、怒りと虚しさと歯がゆい感情で埋め尽くされていた。後から考えれば、そんなこと無意味だと分かっているのに。
ジュンはゆっくりとレイカの手を取り、彼女を自分の方に引き寄せた。
少し驚いたレイカをよそに、ジュンは彼女の細い体を抱きしめる。壊れないよう、そっと。
「...ジュ、ン」
少し抵抗したレイカに腕を緩めると、二人の視線はお互いを捉えていた。
「わたしは、"みんな"、じゃないんだ...?」
「...わからない。でもなにかが違う」
それだけは確か。
そう言い終わると、二人はゆっくりと唇を重ねた。
解放されるのかもしれない期待とこんな方法が救いになるはずはないと思う自己嫌悪。
そんな胸のうちをひた隠すように、薄暗いカウンターで静かに口づけを交わした。
閉じた目蓋の裏で、互いの瞳の奥に映る自分の顔が、ひどい顔をしていたのだけは覚えている。
でももう、これでいい。
ただ今は、痺れるような心地よさに身を任せることしかできなかった。

〜〜〜〜

あの夜から、もう1ヵ月程が経つ。
ジュンは今、揺れる列車の窓枠に頬杖をついて、後ろに流れていく景色を見ていた。
ここは隣街へ向かう列車の中。商会の新たな仕事を任され、目的地に向かっている。
レイカにはなにも言わずに出てきた。
夜が明けると魔法が溶けたかのように、各々の生活に戻っていった。2人とも今まで感じたことのない類の感情に、どう向き合えばいいか分からないでいる。
ただ、2人で話す機会は減った気がする。大人数でいれば、今まで通りの距離感は保つが、なんと声をかけていたか忘れてしまっていた。
そのくらいにはどうすればいいか分からず、動き出せずにいた。
もしかしたらこれでよかったかもしれない。あれはほんの気の迷いだった。
そんなことを考えながらぼーっとしていたら、意識が徐々に睡魔に飲み込まれそうになる。日も明るく、規則的な列車の揺れが眠気を誘う。
その時ふと、懐かしい香りがした。
沈みかけた意識に割り込むようなキンモクセイの香りに、ジュンは思わず立ち上がり、周りを見渡した。
「...レイカ?」
呟きに反応するものはいない。
後ろの席の女性客が、目的地が近いのか、荷物を下ろそうとしている。ちょうどキンモクセイの鉢植えに手を伸ばしていたが、うまく手が届かないでいた。
「あ、俺取りますよ」
「あらありがとうねぇ」
ジュンは鉢植えを落とさないよう、女性に手渡した。そのまま花から視線を離さないジュンに気づいたのか、女性はさらに話を続けた。
「キンモクセイよ。知ってる?」
「...ええ。よく知ってます」
「あら。男性でも花に造詣のある方もいるのね。
じゃあ花言葉はご存知?」
「ハナコトバ?」
ジュンには聞きなれない言葉だった。
「花に込められた意味のことよ。キンモクセイは"気高い人"、そして"初恋"という意味があるの」
気高い。初恋。
「ステキっすね」
「そうね」
女性が笑顔でうなずくと、ちょうど駅についた。礼を言うと、荷物を持って扉の方へ歩いていった。
残されたジュンは、キンモクセイの香りと花言葉を頭の中で反芻していた。
なんて素敵なんだろう。
どうしてもレイカの泣きそうな笑顔が離れなかった。
「...あはは。ホントに、その通りになるのかも」
今になって彼女が頭から離れなくなるなんて、「痛い目」というのはこのことかもしれない。これが今まで八方美人として生きてきた報いなのか、幸運な運命の糸で引き寄せられたのか。
何もかもが初めてで、ジュンは意味もなく口元がゆるんだ。
列車は進み、暖かな太陽の光が車内を包んでいた。吹き込む風が、背中を押すようだった。

fin




このページへのコメント

いとありがたしです。
文才の塊ですね。えっちすぎたし刺さりすぎました。次の作品も期待してます。

1
Posted by リリアナの影 2020年06月29日(月) 18:09:03 返信

今日の更新も最高でした。次も楽しみにしてます!

1
Posted by 痺れる心地よさ 2020年06月08日(月) 20:28:29 返信

つかず〜はなれず〜、意味深な〜てがみ〜誰に向けて送ったのか〜

1
Posted by  akndo akndo 2020年06月01日(月) 07:53:40 返信

ただただ神。次の更新が待ち遠しいです

1
Posted by  hineritai hineritai 2020年05月31日(日) 21:33:09 返信

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