最終更新:ID:uXk3c0p8kw 2012年05月12日(土) 14:39:02履歴
今朝起きてくると、ずいぶんと寝癖が個性的だったらしい。
姉貴の西安(しあん)がイスに座ってウトウトしてる俺の後に回り込んで。
で、髪の跳ねたところを弄ったり押し潰したりして遊んできた。
「朝飯できたぞ」
エプロンした兄貴の北斗(ほくと)が台所から呼ぶと、はーいと一転して配膳を手伝い始める。
「おはー……おや、はるくん」
最後に部屋から出てきた末っ子で妹の阿南(あなみ)が、俺に注目する。
「ぷぷぷ、面ッ白い頭だこと」
「んだよ」
「よほど寝相が悪いンだねェ」
阿南は横から俺の顔を覗くようにして、にやにや笑ってる。
「まだ枕とか抱いてるの? 一人部屋が寂しいならまた一緒に寝てあげようか?」
「……んん」
眠くて適当に唸ったら、
「おや、割と素直だね。善き哉、善き哉」
「阿南も、ごはんだから座りなさい」
「うん」
年の離れた兄貴のことはきちんと敬ってる阿南は、聞き分け良く傍から離れる。
「何で髪が跳ねるかなー、んー?」
食後しばらくして、また姉貴がオモチャにしようとしてくる。
いい歳して兄貴にはずいぶん甘え調子なのに、俺にはこれだ。
「直そうとしても、ほらぁ」
楽しくて仕方なさそうに指が動く。
俺はまだ寝不足感があってあまり機嫌は良くない。
「西安、東都で遊ぶんじゃない。嫌がってるだろ」
そこに兄貴が助け舟を出してくれた。
スーツのネクタイを締めながら、さすがに凛々しい社会人。
「でも、可愛いんだもん」
「仕事はどうした。置いてくぞ」
「あーん、やだー」
この二人は仕事先が近いせいか、いつも途中まで一緒に行く。
やっと解放してもらえたので、やれやれと洗面所に逃げて、顔を洗いつつ寝癖直しを考える。
「東都」
クールで無骨というか、そんな兄貴は、何考えてるのか俺の所に来る。
「ちょっと、見せてみろ」
とか言って、おもむろに俺の寝癖を触る。
そして爽やかな、保護者のような微笑。
ああ、妙にこの人、思わせぶりというかドキッとさせるんだよな。
「俺のヘアスプレー、使って良いぞ。寝癖はしっかり直してから行け」
「分かった。サンキュー」
すると安心したように、あっさり兄貴は出て行った。
あれだけ言いに来たんだろうか……何だろうこの胸のざわめき。
「北斗さんもはるくんのことが気になるンだよ」
「!?」
いきなり背後から声がして、必要以上に吃驚した。
誰もいないと思った風呂場から、引き戸が開いた。
「阿南か、脅かすなっての」
明かり付けないのは趣味だとか前に言ってたが、シャワー音も立てず、何してんだか。
「何かやましいことでも? アア、実の兄との禁断の恋愛感情か」
「爆睡中の姉貴も一発で叩き起こしそうなこと言うな――って、お前裸かよ!」
「当たり前だ、バスタオルは外にあるンだから。ほれ、パス」
「自分で取れよ」
恥じらいってものがないのか、全く呆れるぜ。
水も滴る良い女かどうか、俺はそうは思わない。
実際、出ようとした時に洗面所に来たので、息を潜めて観察しようと思ったと告白しやがる。
「で、何で俺に構うんだ」
「天然素材のはるくんからかうの面白いンだもの」
姉貴みたいなこと言ってくれる。
「あと、寝癖が色ッぽいし。そんなので学校行かれたら、モテちゃうやん」
「モテて悪いかよ」
「はるくんがモテるとか、ありえん(笑)。そらもう地球が二つに割れて猫が腰ダンスよ」
ド失礼な奴だ。
「ほっとけ」
と、突然喋るのをやめて両手を見つめる阿南。
「……そうだ。では、私が直々にはるくんの寝癖直すわ」
何かもう、完全に見下されてるよなこれ。
阿南が濡れた裸を目の前に、中腰になった俺の髪を整えるように撫でる。
「兄貴のヘアスプレー使おうと思ってたのに」
「はるくんにゃ勿体無いね。でも、アア…北斗さんてほんと優しいンだなァ」
姉にも妹にも、ついでに世間一般の女性にも、兄貴はモテる。
俺は比べるまでもなく、ただの弄られ役である。
「てか、体は拭けよ。風邪引いても同情しないぞ」
「冷める前にもう一度浴びるよ。しッかしはるくんの髪は、強情だな」
ああ、相変わらず一部浮いてる感はある。
「髪の毛はいくら宥めても立とうとするのに、下の子はまるで大人しいし」
「は?」
「年頃の異性にムラゝするような色気も無いンじゃァ、そらモテんわ」
血迷うたか、って奴だ。
「当たり前だろ、兄妹なんだから。それにお前の体じゃな」
「あ、言ったな?」
濡れた体のまま、阿南は俺の体を押すように接してきた。
こっちまで濡れると抗議したかったが、その前に上半身が自然と逃げて、正座みたいな格好になった。
尚も失礼な妹は人の膝に乗りかかるようにして、顔と顔を近づけてくる。
「阿南、一体何だよ?」
「さァ何でしょう」
俺の手を捕まえて、自分の元に引きながら答えた。
「……」
当ててきたのは、胸だった。
「……ん?」
足音だ。
兄貴と姉貴がこっちに来る。
「!!」
俺は慌てて、お皿を割った子ども並に逃げに動いた。
「ん? はると、お風呂ー?」
廊下から遠めの声が聞こえてくる。
「あーそう!」
ここでようやく少し開いていた引き戸まで閉じきる。
「明かりも付けずにぃ?」
「…で、電球の調子が悪いみたいでさ!」
「ふーん。私はもう出かけるからぁ。行って来まーす!」
声が遠のいた。
「――ふはっ! い、いきなり何するンだ!」
掌で口を塞いでいた、うるさい奴が代わりに復帰だ。
「そりゃそもそもこっちの台詞」
「…ははァ、見られたらまずいという自覚はあるンだね」
「当たり前だ。あんなとこ見られたら姉貴が何て言うと思うんだよ」
「”私も混ぜて(性的な意味で)”」
はぁ、溜息が出た。
「で、どこ触れてンの、はるくん?」
どこ触ってようが、お前が全裸ってだけで如何わしい状況だろうよこれは。
「え? はるく…ひゃ!」
「さっき自分で胸を触らせただろ」
無くはないが大きくはなく、小さめな妹の胸。
「きょ、兄妹では…なかったの?」
「お前の態度は最近目に余るから、ここでちょっと立場を分からせてやる」
「やッ…」
ぐにぐにと揉みまくる。
自分から誘ってくるだけあって、感じてるようだ。
「うんッ……はる、くん」
「何?」
物足りなそうな阿南の表情が目に入る。
「キス、してくれなきゃ、嫌だなァ…」
「するかよ。そんな上から目線で」
「キスしてくだ、さい」
「誰に頼んでんだ」
「はるくんに」
「……ちゃんと”東都さん”か”お兄ちゃん”と呼べたらな」
「キスしてください、お兄ちゃん」
さんづけはやんわりスルーか。
「分かったよ」
唇寄せて触れ合わせながら、ふと何やってんだろうと頭に疑問が過ぎったが、放棄する。
胸を揉みながら何度かキスをして、そのくらいじゃまだ足りないのか、舌を差し込もうとしてくるくらい積極的だ。
「ン…ふあ…」
阿南の手は俺の肩を捕まえるようにしていたが、段々下に降りていき、手を捕まえた。
片方がまた、誘導するように引いてくる。
下腹部に沿って、今度は股間だ。
元々シャワーを浴びて濡れていただろうが、少し他の肌の部分とは感じが違う。
「…最初は、悪戯のつもり…でも、イキたい、から」
そこは敏感になってるようで、少し指が動いただけで体がビクつく。
「スケベな奴だな」
割れ目に少し食い込むようにさすると、それだけで間から水じゃないものが染み出してくる。
中でも一番感じるっぽいのは、小さな突起の所だろう。
摘むように弄ってみていたら、
「あッ!」
支える体が一際強く、ビクリと震えた。
力が抜けたか、俺の腕からゆっくりと体を崩し、風呂の床に尻餅を突いた阿南。
「外だけで…気持ち良かった…」
「はぁぁぁ……」
「…? どうした、はるくん」
「朝から精神的に疲れる。やるんじゃなかった」
「何を言ってるンだい。今度ははるくんの番じゃないか」
「いや、俺は良いよ。こういうこと、苦手だし」
自慢じゃないが昔からメンタル弱い。
だがこっち見上げた妹の顔には、快感と一緒に不敵な笑みが浮かんでいた。
「それに、学校、行かないと」
「ここまでして、それで終われると思うかい? それに私は、お前の体では欲情しないみたいに言われたことが気に食わン!」
逃げようと思ったが、また手を捕まえられていた。
「それとも、私にしたことを、北斗さんと西安さんにバラそうか」
「……ちぇ」
別にどの道、いつかはバレるだけのことだろう。
でも、面倒臭いし、つい手を出してしまった、俺も俺かなぁ。
「でもお前、一体何がしたいんだよ」
「さァね。ただ、はるくんは…寝癖が似合う間は私だけのものにしたいと、思うンだ」
おしまい
コメントをかく