BBSPINKの「甘えんぼうな女の子のエロパロ」スレまとめ@wikiの更新が6スレ目で止まっているので、それ以降のSSをまとめています。

 初詣でさえ友達同士のイベントにしてしまうから、女の子ってすごい。
 テレビはどこも正月の特番で、複数を気にしだすとリモコン操作に忙しくなる。
「あら、にいさん一人ですか」
 そんな菅野宗一のもとへ、妹の水奈が声をかけてきた。友人たちと出かけていて、丁
度いま帰ってきたのだろう。
「二人とも出かけたよ。仕事仲間の付き合いで」
 この家は父母も留守にしていた。宗一ひとりで映像を見る他になく、少女が加わって
やっと二人だ。
 着ていた黒いコートを近くのハンガーにかけ、水奈もソファに腰掛ける。この寒い季
節に膝上のスカートで、見ている方が冷えを感じるほど。
「何か飲む?」
「お気持ちだけ。外は寒かったですから」
 それはそうだろうなと思う宗一。この――今日は一歩も外に出ていないが、家の中で
も冷える――寒い中を歩いてきて、帰宅してすぐに冷えた飲み物を口にすれば間違いな
く腹を下す。妹の返事はもっともだった。
 だが、母が作った雑煮を食べるかと訊くと、
「お昼は外で食べてきました。お気持ちだけいただきます」
 そんな風に返ってきた。
 正午をまわっていたが宗一は食事にしていなかったので、自分の分だけを椀に移して
食べることにした。
 季節の行事だからといって特別なものではない。母が拵えるのは『豪華な味噌汁』と
表現できる代物で、正月気分の中に普段から口にしている味が残っている。乾燥した海
老が特に好みだった。
 しかし、宗一は不思議なものを見た気がした。
「にいさんが食べているのを見たら、私もお腹が空いてきたんですよ」
 理由を聞く前に弁明する少女。
 気持ちだけいただくと言っていた妹が席を立ったと思えば、同じように雑煮を食べて
いたのだ。
 いまいち理解できずに汁を飲み干すと、それから宗一は彼女が食べきるまでテレビを
観ながら待機となった。
「コーヒーでも?」
 ことん、と食器が置かれた音を合図に問いかける。
「すぐには飲めませんから、お気持ちだけ」
 首を横に振って、それだけ。
 年が明けて早々、水奈からは冷たい言葉を投げつけられていたが……これはこれでダ
メージがある。
 宗一は自分の食器だけ台所へ持っていき、そのついでに湯を沸かしてコーヒーを淹れ
る準備をした。
「……水奈」戸棚からドリップバッグを取り出す状態のまま、背後に現れた気配にむか
って話す。「『お気持ちだけ』って言うのが楽しくなってるだろ」
「……ばれました?」
 振り向けば、お椀を手にした妹の姿があって。
 大方、初詣に行った場所で『気持ち』を置いていくときに使われたフレーズが気に入
ったとか、そんな所だろう。兄の立場からすると何となく分かった。
 外出のために整えられた黒髪を撫でると、少女の俯き具合が元通りに戻っていく。
「好きだ」
 いきなり言われて明らかに困惑した表情を見せる水奈が可愛らしかったが、
「……はい、私もです」
 肯定されたので驚いたのは宗一の方だった。
「そこは『お気持ちだけ』じゃないのか」
「す、好き合っているのにそんなこと言えませんっ」
 顔を真っ赤にして反論する黒髪の少女。……根は正直だった。
「それで、コーヒーは飲む?」
 再び訊くと、妹は体を動かして確認する。
「お気持ちだけ……と言いたいところですが、私のカップが出ていますから拒否権はあ
りませんね」
 既に宗一の手には二人分のインスタントコーヒーが掴まれていた。断られればそれで
もよかったのだが、この娘はやっぱり素直だ。
 
 水奈が頷いたのを確認して、それぞれのマグカップにバッグを取り付けていく。
「そうだ、水奈」
 呼ぶ間にも宗一の体は動いている。
 隣でシンクに食器を置いた少女が振り向いた瞬間、その唇を奪った。
「とりあえず、さっきのお返し」
「とりあえずでキスする兄がいますか!?」
 いきなり何を――という問題を飛ばしても通じるあたり、さすがは兄妹なのだと思う
宗一。僅かな間の出来事に対して理解の追い付かない水奈を相手に、裡ではしてやった
りと静かに拳を握る。
「ほら、好き合ってるって」
「それは事実だからいいんです! ……でも、私、今のが初めてなんですよ?」
 次第に消えそうになる妹の声を聞くうち、兄も恥ずかしさのあまり体温の上昇を認め
た。家の中とはいえ白昼堂々『好き合っている』などと言えたものではない。
「もう一回、ちゃんとした形でしてください」
 ……が、どうやら水奈の中では論点が違うようだった。不意打ちが新年はじめてのキ
スであることを認めたくないらしい。
 反応に困って頭を掻いた宗一だったが、やがて少女を手招きして抱きとめた。羞恥が
生んだ熱はほんのり温かく、このまま密着していると柔らかい異性の身体が離れること
を考えられなくしてしまいそうだ。
「ん、んー……」
 無意識のうちに出ているであろう、水奈の吐息が心拍数を上昇させる。
 さらさらの髪を生やす後頭部をひとしきり撫でてから、宗一は彼女と向き合った。
「……にいさん」
 頬を真っ赤にしている妹だが、声は落ち着いていた。
 おそらく同じことを考えている宗一と水奈は、揃って首を動かした。
 中に蓄えた湯が沸騰したことで、台所中に笛の音が響き渡っている。これでは(ちゃ
んとした)口付けの時間どころではない。
「コーヒー飲んでからでも遅くない気がする」
「こんな気分になったのは、にいさんのせいですよ……」
 仕切り直しを要求され、宗一はやむなく応じることになった。

 だが、年頃の男女がふたりきり、口付け一回で済むわけがなくて――。

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