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 朝が来た。
 ベッドにシュライグの温もりはなかった。フェリジットは体を起こす。昨晩の体だけを重ね合わせただけなのに、心まで満たされている。
(駄目な女なんだろうな。自分の体のせいにして好きなシュライグの気持ちも考えないなんて)
 フェリジットの発情期は少しだけ重かった。誰でもいいから男を欲してしまう。そんな発情期を自室で耐えている時にシュライグが来たのだ。
 その日、フェリジットは彼を押し倒した。正気に戻った朝に一つの約束を結んだ。
「起きたか?」
シュライグはフェリジットに声をかける。
「朝食は作った。味の保証はしない」
「着替えたら行くね。待ってて」
 フェリジットは脱ぎ散らかしたままの服を片付ける。昨晩使ったタオルはもうなかった。捨ててしまったのだろう。ようやく服を着た彼女はシュライグの元へ向かった。

「美味しいじゃない。この味保証するわよ」
「そうか」
「それで今日はどうするの? まだ、時間があるはずよね」
フェリジットは唇を布で拭った。
「街の視察をしたい。付き合ってくれるか?」
「いいわよ。そういう約束だもんね」
 二人の関係はあの日の約束で繋がっていた。
 フェリジットの欲求を解消する。その次の日はシュライグに付き合う。すごく淡白な関係。
『だがキスをするのは違うだろう。俺たちは恋人同士ではないんだから。この関係には線引きが必要だ』
『変な線引きね。シュライグらしい』
『ああ。そうかもな。だがそれがいい』

「デートだったら完璧じゃないかしら」
「気のせいだろう」
 思わずフェリジットの尻尾が揺れる。今日はなぜかいつものクソボケを発症しなかった。
 この街で有名な演劇を見て、その後なぜか予約してあったレストランに入った。美味しい食事を食べながら、さっきの劇の感想を話す。
 定番といえば定番だが、貧民街やら物の流通やら調べることを覚悟していたフェリジットのハードルを軽々飛び越えるものである。
「ハンカチを捨てるシーン良かったわね。もう後には引けないぞって感じがして」
「『これより先は偽りの関係に終止符を打つ。友を一人失い、敵を一人作る』だったか」
「そうそう。最後の剣戟も良かったし、なんだか満足したわ」
「そうだな」
 フェリジットは自分のことを割り切っていた。発情期がある面倒くさい女など誰とも恋をしない方がいい。こんな自分を理解してくれるほど、世界は優しくないし平和でもないことは分かっていた。
 ただ目の前にいる友人と恋人ごっこをしているだけで楽しい。
「俺はフェリジットのことが好きかもしれない」
「ふふっ、私もシュライグのこと好きよ」
シュライグはナプキンを襟元から取った。
「そういう体質だからといって俺なんかで申し訳ないと思っていた。いつかフェリジットはいい人を見つけるからその繋ぎで良かった」
「そんなことない。私はシュライグが……」
「何度もそれでいいと思おうとした。だけど、俺はフェリジットへの想いを諦められなかった。好きだ、フェリジット」
 フェリジットは突然のことで頭が動かなかった。ただ、目から涙がこぼれ落ちた。諦めたはずのものがすぐ側にある気がした。
「すまん。迷惑だったな。忘れてくれ」
 フェリジットはシュライグに口付けした。

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