あにまん掲示板の各種スレッドに掲載されているR-18小説を保管するためのwikiです。




山奥にひっそりと存在する、小さな村。
そこでは此度、婚姻の儀が行われる。
この村に住む女と、外から来た男。
女は、男に嫁ぎいずれ村を出る。
本来であれば祝福されるべき2人の門出。
だが2人を包むのは静寂であった。
何故ならそれは、当人達の感情を無視した婚姻───
所謂『政略結婚』と称される物。

フゥリは言う。「二二ちゃん、あの男に声掛けられる時に声が上擦ることがあるの。気丈に振舞っているけれど、本当は恐怖で震えているんだわ…」

ハレは言う。「私見た…あの男の家の家主が二二のお父さんを後ろから脅してたとこ…」

そして2人は言う。「それでも二二ちゃん…「構いません、これも家のためですから」だって…」「私達に出来ること、何かあったのかなぁ…」

婚姻の儀は粛々と行われ、男女は襖の奥へと去っていく。
襖の奥で、男女はまぐわう。子を成す為に。
───果たしてこの結婚、本当に家の都合に縛られた哀しき結びなのか。
女は家系により、望まぬ縁を紡ぐのか。
襖の奥のは、愛無き行為なのか。
二人に愛は、無いのか。

結論から述べよう。

「やっと…2人きりになれましたね♡」

ダ ー リ ン ♡

嘘 で あ る 。

二二は男に好意を抱いていた。それもとびきり大きな。

───

二二と男の出会いは幼い頃まで遡る。冒険少年であった当時の男は、せっかくの夏休みというのに父親に連れ回される事に退屈を覚え脱走。たまたま迷い込んだ山奥で、泣いている幼い女の子を見つけたのだ。少年は「楽しいことをすれば、なみだなんてすぐ引っこむよな!」と早合点、挨拶も自己紹介もなく女の子の手を握ると、川や森へと引きずり回した。
その「楽しいこと」も少年基準であるため、一般的な幼い女児が喜ぶものとはややズレていてもおかしくはなかったが、その女の子…もとい二二は御巫となるべく修行中の身。自然と遊ぶ事も多く、難なく少年の後を着いて行けたのだ。
つまり少年を撒くなり、少年から逃げたりすることも容易だったのだが…

(はじめての…おとこのこ…おにーさん…しかもふたりっきり…これってまさか…)

で ー と … っ て こ と ! ?

二二の心は既に乙女回路全開だった。閉ざされた村に流れてくる僅かな娯楽が、村に住む御巫見習いの皆を潤していたが、その娯楽がまさか往年の少女漫画の切れ端とは思うまい。
そんな事も露知らず、少年が「ここにくるまでにでっけー木をみたんだぜー!」と聞いてもいないのに案内した場所は、村に伝わる御神木だった。
だが少女漫画脳全開の彼女たちは「ここでむすばれたふたりはずーっといっしょなのよー!きゃっきゃ!」と胸を高鳴らせていた。ここまで来るとギャルゲー脳と言っても差し支えないかもしれない。
なお当然だが、きゃっきゃ乙女に二二も含まれている。

【Q.】そんな二二が、年上の男の子と2人きりで御神木の前に着いたらどうなってしまうのか。

(はい…わかりましたオオヒメさま…二二…このかたと…)

そ い と げ ま す … ♡

【A.】完全に堕ちる。

吊り橋効果という物は存在するが、伝説の木の下効果は果たして存在するのだろうか。データが二二1人なため真偽は不明だ。御神木に詳しい(であろう)オオヒメ様を専門家に招き、いずれは解説を伺いたい所である。
ともかく僅か1日にも満たないこの逢瀬で、二二は運命と巡り会った。
以降の二二は別れるその時まで少年に熱視線を送り続けた。
そして「おひさま暗くなってきたなー、おれそろそろ帰るわー」と別れを告げる少年の裾を小さくつまみ…

「あ、あの…わたし…二二って…いい…ます…♡」
「んー分かったー!」
「はい…わたしのなまえは…二二…です…♡」
「わかったわかったー!」
「だから、えっと…二、二二とのおうせ…おぼえててくれますか…♡」
「おーせ?わかんないけど今日のことは忘れないよ!楽しかったもん!」
「っ〜〜〜♡二二もわすれません…♡ぜったいに…♡」
「じゃあもう時間だから!ばいばーい!」
「あっ…?まって…せめておなまえを…」

二二の言葉は最後まで届く事無く、2人は別れた。

(なまえもおしえてくれないなんて…ずるいひと…♡でもまっててください…♡なもしらぬうんめいのひと…♡二二はかならず、あなたにふさわしいおんなになって…もういちどあいにいきます…♡)

次に2人が出会うのは、政略結婚の為の顔合わせであった。


───


男の家は土地を扱う大企業であった。男は父を素直に凄い人物だと思うものの、特に尊敬する訳でもなく、父の会社を継ぐつもりは無かった。ところがなんの前触れもなく政略結婚の話が告げられた。「お前が子を成し、家と会社を継げ」と言葉なく言われたようで男は不快感を覚えた。
そんな男の感情を尻目に、顔合わせは行われる。そこで出会ったのは──

「き、君は…?」
「あ、貴方…様…は…♡」

あの夏の、少年と二二だった。
だからこそ、男は許せなかった。政略結婚などという当人の心を鑑みない強引なやり口に男は怒りを露わにした。思い出を踏み躙られたようで我慢ならなかったのだ。当然二二へも「このような不当な結婚に君を巻き込むつもりはない、君は君の好きな方と結ばれるべき」だと言ってのけた。
では、そんな男の台詞を聞いた二二はどうだったのだろうか。

「ふぁい………♡」

蕩 け 顔 を 晒 し て い た 。

その凛々しい(二二基準)顔に完全ノックアウトだったのだ。
それでいいのか淑女よ。
だが惚けた頭の片隅で、二二はこうも思っていた。

(こんなに強く否定されるということは…私は…ダーリンの目に魅力的に写っていないのでは…!?)

二二の孤独な戦いが幕を開けた。(余談だが二二が男のことを「ダーリン」と呼び始めたのはこの顔合わせ以降である。男は初めてダーリンと呼ばれた時、宇宙と接続した猫のような顔をしたと後の二二は語る。)
顔合わせ以降、二二は男に熱烈なアプローチを仕掛けた。男の母親に師事を仰ぎ秘伝のレシピを完全マスターしたり、裸エプロンに挑戦したり、エロ自撮りを送り付けたり、男の入浴中に背中を流す名目で浴室に入ってきたり、男が寝ている時に寝室に裸で潜り耳元で「すき…♡ダーリン…♡愛してます…♡」と囁いたりetc…
なおアプローチの方法から分かるように、二二は早々に男から強引に襲ってもらい既成事実を立てるルートに切り替えた。容疑者は「ダーリンがあまりにもかっこよ過ぎて抑えが効かずに…」などと供述している。




では二二へ婚約破棄を促していた男は、なぜ自分から断ることをしなかったのか?
こんな年端の行かぬ乙女の顔に泥に塗るような事をしたくなかった、確かにその感情もあっただろう。だが本音は違う。
もういいぶっちゃけよう。
男 も 二 二 に 惚 れ て い た 。
手離したくない独占欲が僅かながら存在していたのだ。
隙あらば自分に好意を浴びせ、熱烈に自分を求めてくる眉目秀麗な女性を嫌う男性はどれほどいるのだろうか。少なくとも男はそれが琴線に響いた。
だが自分から強引に求めて万が一にも二二に嫌われたらどうしよう…といういじらしさがこれ以上の独占欲の発露を邪魔した。それに既成事実ではなく本当に愛を伝えてから夫婦になりたいという男の慎ましさも相まって、二二の誘惑を耐え続けた鋼の精神力獲得に繋がった。男よ気付け二二の狙いはお前に強引に求めてもらい既成事実を成す事だぞ。
そうして水面下の攻防(…?)が行われながら、二二は男を獣にすることは出来ず、男は二二を拒み切れないまま、とうとう婚姻の日と相成った。

───

ちなみに冒頭の御巫達の言葉に対してだが…
まず「二二ちゃん、あの男に声掛けられる時に声が上擦ることがあるの。気丈に振舞っているけれど、本当は恐怖で震えているんだわ…」という発言の真偽…

嘘である。

恋する乙女が意中の男に名を呼ばれたらどんな心境に陥るのか、読者諸君であれば推し量るのは容易であろう。

次に「私見た…あの男の家の家主が二二のお父さんを後ろから脅してたとこ…」という発言の真偽…

嘘である。

両家の家主2人は竹馬の友であった。今でも背中を叩かれたら後ろ蹴りで返す程の仲である。先日二二の父はぎっくり腰をキメて後ろ蹴りを放てるコンディションではなかったため、そのまま受け入れただけだ。ちなみに男の父はこの話を聞いて2分程その場で笑い転げた。
彼らは共に伝承に造詣が深かった。それ故に御巫の存在が伝えられるこの村の存在を知ったのだ。この野郎共が御巫の村に訪れた時、二二の父と二二の母は両者一目惚れした。二二の家は親の代から即堕ちだったのだ。そして二二の父は村に留まる。
一方、男の父は伝承残る地や古くからの風習が残る集落を主とする土地取引の企業を立ち上げた結果、「伝承や風習は守りたいが外界とのパイプが欲しい」という顧客層に非常に刺さり、今に至る。
そのため御巫の伝承を知る両家主(つまり野郎共)合意のもと、御巫の地を法的または経済的側面から保護するために本縁談が組まれた。
という名目だが実際は…

「ウチの娘がさぁ〜「おとーさま、わたしうんめいのかたにであいました♡」ってずーっと言ってんだよぉ〜、よっぽどその男の子が好きなんだぁって思うんだけど、そんな少年知らねぇよぉ二二〜」
「ガハハ、二二ちゃんも恋するお年頃って訳だな!それで?その男の子とはどこで会ったんだい?」
「それがさ〜御神木の前って言うんだよ〜あそこは田舎の少年が迷い込むような場所ないって言ってんのに二二は聞かなくてよぉ〜」
「えっ、それっていつ頃よ?」
「んーっと、この前の夏の日だよ」
「夏?そういやバカ息子連れてこっち来た時にアイツ1人で裏山に出てって…ん?」
「「…あっ」」

以降はトントン拍子で話が進んでご覧の有様である。なにが政略だ子供へのサプライズ企画に企業や村を巻き込むんじゃない。というか相手が違ってたらどうするつもりだったんだ馬鹿野郎共。

そして最後の「それでも二二ちゃん…「構いません、これも家のためですから」だって…」「私達に出来ること、何かあったのかなぁ…」
大丈夫、二二は家の事も頭にはあったが明らかに男の事しか考えてなかったし、君達が何かしてもしなくても多分こうなってたから。



そして改めて伝えよう。

婚姻の儀は粛々と行われ、男女は襖の奥へと去っていく。
襖の奥で、男女はまぐわう。子を成す為に。
つまり…





………こいつらエッチするんだ!

※続きは鏡の御巫は貴方と男女舞(パ・ド・ドゥ)を踊りたいにて

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu

小説一覧

どなたでも編集できます