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作者:名無し
前のエピソード:レイ編



 あれからしばらくの月日が流れたが、何かが大きく変わることはもうなかった。

 ロゼもレイも列強内にある高官の別邸に幽閉され、彼ら親子を甘やかすことを強要され続けている。

「……っっ、ちゃんとちゅぱちゅぱできてえらいですよ♡ よしよし♡」

 高官の息子はベッドに押し倒したロゼに覆い被さると、いつものようにおっぱいをちゅぱちゅぱと吸い始める。

 ロゼは優しい笑顔を浮かべながら彼の頭を撫でて褒めた。

 男は歓喜したように鼻息を荒く吐き、ロゼの乳首を味わうように舐り続ける。

(やっぱり……、よく分かりません)

 ロゼは自分自身に女性的な魅力があるとは微塵も思っていない。

 だから、自分より遥かに魅力に溢れるレイがこの屋敷にやってきた日、いよいよお役御免になって処分されるのではとさえ考えたのだ。

 しかし、現実は真逆だった。

 レイがやってきても、彼ら高官親子は変わらずロゼに甘やかされることを求めていた。

 むしろ親子揃ってロゼときどきレイのような間隔なので、ロゼの中での疑問は増すばかりだった。

「おち×ちんがおっきくなってますね♡ ママがシコシコ扱いてあげます♡」

 抱いている疑問をおくびにも出さず、ロゼは微笑んだまま男の勃起した肉棒に手を伸ばす。

 だが、その手は空を切った。

 彼が不意に身体を起こし、ロゼの細い足首を握って彼女の頭部の方に持ち上げたのだ。
 秘裂が男の眼前に曝け出される体勢になって、さすがのロゼの顔も真っ赤に染まる。

「……えっ、っっ……えっ」

 まったく予想もしなかった展開にロゼから驚いた素の声が零れる。
 甘やかしには慣れた彼女もこんなにも恥ずかしい体勢は初めてだった。

 だが、男はサプライズを成功させて有頂天のようでロゼの動揺には気づいていない。

 その勢いのまま肉棒を挿入し、鍛え上げられた厚い身体で華奢な彼女にのしかかって全体重をかける。

「かひゅ……っっ、あっ♡ んんっ……っ、あぁ……あっ♡ っあ、んんっ……ああんっ♡」

 猛烈な圧迫感と肉棒が膣内のいつもよりも更に奥深くを抉り、ロゼの意識が一瞬飛ぶ。

 男は求めるようにママぁママぁと連呼しながら激しく腰を打ちつける。

「あぁ……んんっ、いい子っ、いい子だからママのおっぱいをちゅぱちゅぱして落ち着いて………ね?♡」

 ロゼが必死に求めれば男は彼女のささやかな膨らみに顔を寄せるが、腰の動きは止まらない。

 むしろおっぱいを吸う力も先ほどまでよりずっと力強く、彼が己の性欲を満たすことしか頭にないのは明らかだった。

(……結局は、これなんですね)
 
 高官親子はロゼやレイをママと言って甘やかすことを求めるが、結局彼らの気分次第でしかないのだ。
 でも、それに媚びなければロゼもレイも文字通りに終わりを迎えてしまう。

 閃刀システムを使えない小娘二人を潰すことなんて列強には造作もないことなのだから。

(いっそのこと……、っっ)

 最悪の想像さえ込み上げるのを感じながら、ロゼは吐きそうなほどの嫌悪にただただ堪え続ける。
 そして、彼女の膣内で肉棒が限界まで膨らんで精が激しい勢いで注ぎ込まれた。

 男は射精を終えると脱力したようにロゼの隣に倒れ込む。

 彼女は起き上がると彼の頭を優しく撫で、その背中をトントンと叩き始める。

「よしよし、いっぱいぱんぱんできてえらかったですよ♡ ママもとっても気持ちよかったです♡」

 欠片も思ってもないことがロゼの口をスラスラと衝いて出る。

 思いとは裏腹に媚び方が上手くなる自分がロゼは嫌いだったが、それ以上に挿入される肉棒に異物感を覚えなくなりつつあるのも死ぬほど嫌だった。



 浴室にシャワーが流れる音が満ち、湯気がロゼの身体を覆い隠す。

 彼女は魂が抜けたかのような表情を浮かべながら、曇った鏡に映る自分自身をボンヤリと見つめていた。

(……これが、ロゼ?)

 小柄で華奢、細く薄い身体つきには変わりがない。
 そして胸元の膨らみも大きさこそささやかなままだったが、その様子は以前とは様変わりしていた。

 ロゼの乳首はすっかりと黒ずみ、デコボコに歪んでいた。
 元々彼女は肌は儚いくらいに白いので、その黒さは異様に際立って見える。
 ほかにも微かな膨らみには真っ赤な吸い跡や噛み跡が幾つも残っていた。

 それなのに身体の貧相さには一切変わりがないので、見ていられないくらいにアンバランスで……醜悪だった。

「……っっ!!」

 ロゼは細い腕を勢いよく上げると鏡をバンと大きく叩いた。

 その音は一瞬で消え、後に残るのは流れ続けるシャワーの音ばかりだ。

 鏡に映るのは濡れた前髪に表情を隠したロゼ自身、そしてシャワーから出る水流は無慈悲に彼女の上部から流れ続ける。

 それを止める気力はどうしても湧かなくて、ロゼはしばらくそのまま項垂れていた。



「……レイ、身体は大丈夫ですか?」

 甘やかしの汗を流したロゼはレイが休んでいる部屋を訪れていた。

 ロッキングチェアに座っているレイは待ち侘びた来訪者に顔を綻ばせる。

「ロゼ、来てくれたのね」

 彼女はゆったりとした服を着ていて、その腹部は大きく膨らんでいる。
 少女らしさを残していた身体つきは丸みを帯びてはるかに女性らしくなり、形が整っていた美乳も一回りは大きく成長していた。

(……レイはロゼと違って薬を飲まされてないから)

 実はロゼは身体つきが大きく変化したりすることがないよう、渡される薬をいつも飲むように言われていた。

 しかし、レイにはそれが一切なかった。

 それで高官親子から毎日のように膣内に射精されていたのだから、彼女が妊娠してしまうのも当然の結果だった。

「ごめんなさい、ロゼ。赤ちゃんたちのことをずっと任せきりにしてしまって」

「……いいんですよ、レイ。そもそもレイが来てくれる前はロゼが一人でやっていたんですから」

「でも、安心して」

 レイは両手をパンと合わせると、嬉しそうに口元を緩める。

「お腹の子を出産したら、私もきっと母乳が出るようになるから。そしたら、きっと赤ちゃんたちのことをもっともっと甘やかしてあげられるはずよ♡」

 大きく膨らんだお腹を愛おしそうに撫でながら、彼女は声を弾ませる。

 その姿は確かにロゼの憧れたレイであるはずなのに、どこかを致命的に違えてしまっていた。

「……ロゼ?」

 もう、何度も何度も分からされたことだ。
 それでも、その事実を突きつけられる度にロゼは崩れ落ちずにはいられない。

 だって、レイに誰よりも憧れていたから。
 だから分かってしまうのだ、レイは心を壊してしまったのだと。

(……ロゼも、ロゼもレイと同じように狂うことができたら……っっ)

 それも何度願ったか、もう数えきれない。

 でも、自我が薄いロゼではどうしても壊れてしまうことはできなかった。

 もしレイと親交を深められていて自我がもっと育っていたのなら、違っていたのだろうか。

 分からない、ロゼには分からなかった。

「ロゼ。泣かないで、ロゼ。いい子だから、ね?」

 レイが心配そうに覗き込もうとしているのに気づき、ロゼは慌てて目元を拭いて立ち上がる。

「……心配症ですね、レイは。ロゼは泣いてなんていないですよ」

「そうよね、ロゼは強い子だもんね」
 
 レイは深く聞かずに柔らかく微笑んだ。

 全然強くなんてありません、とロゼは言ってしまいたくなって……それをグッと飲み込む。

 そのとき、少し離れた方から物音が聞こえたのに二人は気がつく。
 高官の息子はまだ寝ているはずなので、高官が軍務を終えてやってきたに違いなかった。

 名残惜しいが、穏やかな時間はこれで終わりだ。

「レイ、ロゼはそろそろ行きますね」

「来てくれてありがとう。嬉しかったよ、ロゼ」

 ロゼはそのまま退室しようと思ったが、ドアの前でふと立ち止まった。

「……ロゼ?」

 背後から怪訝そうなレイの声が聞こえる。
 ロゼはレイの方に振り返ると、一度大きく息を吐いてから訊いた。

「――レイ。レイはいま幸せですか?」

「こうやって子宝に恵まれて、二人も甘やかしたい赤ちゃんがいて、それに何よりロゼが一緒にいてくれるんだもん。幸せじゃないわけないよ」

 レイは口元を緩めて幸福そうに微笑む。
 その微笑があまりにも美しくて、ロゼは気づけば見惚れてしまっていた。

 しばらくして唐突にハッと我に返って、彼女は慌ててレイに背を向ける。
 自分の顔が熱を帯びているのを何故だか見られたくなかったのだ。

「……ありがとう、レイ。ロゼも同じ気持ちです」

 代わりに素直な気持ちを伝え、ロゼはレイの休む部屋を後にした。

「……はぁ」

 ドアを後ろ手に閉めると、ロゼはそれに後頭部をコツンと寄せて息を吐く。
 脳裏に閃刀姫として戦場でレイと刃を交えた記憶が幾つも蘇る。

 ロゼに世界を、その彩りを教えてくれたのはレイだった。

 そんな彼女が現在を幸せだと言っていた。

(だったら、だったら……ロゼは――)

 ロゼとレイの世界は最早この屋敷内で完結してしまっていて、それはどうしようもないくらいに歪んで爛れてしまっているのだろう。

 でも……それでも、あんなにも綺麗なレイの笑顔まで間違っているはずがない。

 だって、それを守るためなら独りでも頑張れるって思えたから。

 だから、どんなに苦しくたって挫けていられない。

「……っ!!」

 ロゼは目元をゴシゴシと拭くと勢いよく顔を上げ、前をしっかりと捉えて見る。
 その横顔からは抱いていた愁いは薄れていて、彼女は一歩を力強く踏み出した。

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