2chの「軍人や傭兵でエロ」のまとめwikiです

第一部『ノモンハンに潮風吹く』

プロローグ 『ハルハ河1939』
1939年8月 満州国 ハルハ河近郊、そこでソ連軍と日本軍の絶望的な戦いが繰り広げられていた
ウラーと叫びながら突撃してくる数え切れない程のソ連兵、それに対し粗末な陣地に篭りありったけの火力を投入し阻止しようとする日本軍
戦場はまさに地獄となっていた

「くそっ、敵の数が多過ぎてタマが足りん…阿波武、タマ持って来い」
日本陸軍第7師団小隊長「鏡序雲(かがみ・じょうん)中尉」はそう毒付きながら空になった九三式小銃(注1)の弾倉を交換した
「駄目です、彼は阿波武さんは…先刻行われたソ連の砲撃で…消えました」
そう言うのは鏡小隊の第一分隊(ただし第一と第二は半分以上死傷し分隊長もいなくなったのでたので鏡が指揮を執っている)の
名女狙撃手「谷得流釈孫(たにえる・しゃくそん)二等兵」、彼女も九四式狙撃銃(注2)に玉篭めしていた
「くそっ、奴は…童貞だったんだぞ、今度良い店連れてってやると言ってやったばかりなのに」
言いながらも九三式小銃を単発(弾の消費控える為に連射やめた)で撃ち次々とソ連兵を葬る鏡中尉
「はい、優しい人だったのに…ああもう、この狙撃銃やっぱり玉篭め難い」
「仕方無いだろ、陸軍か軍需省(注3)のバカが『九四式と重機関銃のタマは絶対統一しなければ』ならないって言いやがったらしい」
「それ、耳タコですよ」

「じゃあ文句言わず三八式狙撃銃使っておけば良かっただろうが…いや、諸悪の根源は海軍だなそのタマ篭めしにくいタマ持ち込んで来た所らしい」
「それも耳タコです…装填完了、撃ちます」
そして釈孫二等兵は九四式で次々と一撃でソ連兵を葬っていく
「弾は篭め難いですが…やっぱり6.5より7.7の方が遠くに当たりますね」
「ああ、ああどうせ同じタマ使うなら重機関銃が欲しいな」
しかし小隊の重機関銃は一昨日、ソ連軍の攻撃により破壊され軽機関銃も一丁のみとなっていた
「でも中尉殿、こんな戦い…何時まで続ければ良いんですか」
釈孫二等兵の問いに鏡中尉は
「…敵がいなくなるまでだ」
「でも中尉殿!!」
「五月蝿い、こっちだって分かってる…でも中隊本部からの無線じゃあ俺達は…
 何時来るかも分からない増援が来るまで敵の砲撃と突撃受けながら持久するしか無いんだよ」
そう吐き捨てる鏡中尉、彼らの小隊が所属する第7師団の歩兵の殆どは現在ハルハ河東岸近郊の…
『敵ソ連軍がハルハ河西岸に展開した敵野砲射程内』に簡易陣地を構築(砲兵や司令部だけは射程外に構築)し持久していたのである
何故そのような危険な場所に配置したのか…その理由は陸軍の「面子」であった
『今回の戦いは国境線の制定を巡る物でありこれ以上退いたら負けだ』と言う馬鹿な命令で陸軍の兵士達は次々と命を散らしていったのである
「増援って何時来るんだよ、敵の砲撃は乱戦に持ち込んでるから今は殆ど無いが何時味方ごと撃ちだすか分からないんだぞ
 それなのに昨日も今日も戦闘機は来てくれるが爆撃は殆ど無し…継続的にやらなければ焼け石に水だろうが」
それでも彼らにとって一昨日までは航空爆撃が行われ敵の砲撃は夜間を除けば散発的な物だった
ソ連兵の突撃も昨日までは味方の砲兵が砲撃してくれたお陰で効果的な物で無かった
ついでに言えば敵の爆撃も4日前から殆ど阻止されていた
いや、この規模の攻勢も5日前までは無かった

7月にハルハ河近郊で行われた会戦で侵攻して来たソ連及びモンゴル軍は敗北しハルハ河近郊から一度撤退していたのである
その結果モンゴル(ソ連の傀儡だが)が正式に国境線制定の為の交渉を開始したいとの旨を
満州国(今の所は日本政府の言いなり)に送りそれを停戦の為の交渉だと日本政府は思い交渉が開始された
交渉が開始された為日本軍は大活躍するも損耗した戦車部隊などを再編成の為後方に送っていたのだがそれがいけなかった
8中旬まさかと思われるタイミングで大規模な爆撃が行われ東岸に展開していた日本軍は混乱
そこへ大量の戦車(500両以上)など装甲車両を装備したソ連軍の大軍が強行渡河
日本軍も必死の爆撃、砲撃でかなりの数の機甲、砲兵戦力を撃破したが元々の数が多過ぎた
そして日本軍は現在の…最悪の場所に粗末な陣地を構築し必死の防戦を続けているのである
「で、でもこちらの爆撃や砲撃が止まっているのが増援が来る前触れかもしれませんよ、弾薬を集積する為とか」
「それは何時だよ、明日か?明後日か?それとも一週間後か?…もうタマが無いんだ、もうすぐオシマイなんだよ」

そして鏡小隊は奮闘により何とか敵を一時的に撃退する事に成功した、しかしその代償は大きく小隊の火器は殆どが破損か弾切れとなってしまった
その為中尉は再び後退許可を得る為再度無線機を使い(通信兵である阿波武が置いていった)中隊本部と連絡を取る事に…だが
「こちら鏡小隊、撤退許可を…兵の半分以上が死傷し弾薬もありません、後退して補給の許可を」
「こちら中隊本部…撤退は許可出来ない」
「む、無理です、既に対装甲火力は全くありません、敵の戦車部隊が来たらもう」
「繰り返す許可出来ない…もう少しだ、もう少し待てば…」
だが中隊からの通信を全て聞く前にアレは来てしまった

戦場に響くヒュルヒュルと言う音…それは
「砲撃だ、全員伏せろー!!」
その言葉を聴くか聞かない内に小隊は簡易陣地に全員伏せた
そして次々と落ちて来て破裂する敵の砲弾、ソ連軍のお家芸である大規模砲撃である
「畜生〜!!、もう駄目だ〜!!」
「中尉殿〜!!、そんな事言わないで下さい〜!!」
「こんな陣地で数日生き残れた事が奇跡なんだ〜!!、それに砲撃が収まったらまた奴等は戦車先頭にして襲って来るぞ〜!!」
「確かに〜!!、もう迫撃砲も擲弾筒も手榴弾や火炎瓶すら無いですからね〜!!」
「俺〜!!、今度故郷に帰ったら許婚とやっと結婚する予定だったのに〜!!」
「中尉殿〜!!、それ〜、言った人殆どその後すぐ死んでますよ〜!!」
「知るか〜!!俺は空挺と上陸戦と虎と『皆軍人』の兄弟が大嫌いなんだ〜!!」
「訳分からないです〜!!、中尉殿〜!!」
ちなみに彼らの語尾が変なのはふざけている訳ではない、砲撃が五月蝿い為怒鳴っているのである
そして砲撃は次第に散発的となり終わりが見えて来た、その為鏡中尉は小隊の被害を確認…決断を下す事にした
「今回は戦死者無し、負傷者はいるが軽傷…あれだけの砲撃を受けて、正に奇跡だな」
「昨日から命中率が格段に落ちてますからね、多分一昨日までの戦いで熟練兵を使い潰して新兵ばかりが撃ってるんでしょう」
そう言う釈孫二等兵の言葉に中尉は俯きながら言葉を返した
「だが阿波武の無線機が砲弾の破片で戦死してしまった…生きて帰れたら形見にしようと思っていたのに」
「しかしこれからどうすれば多分もう敵は迫って来ているのでは」
「分かっているさ…これより鏡小隊は撤退する!!」
「で、ですが小隊長殿、今ここを退くと言う事それは…」
中尉の決断に騒然となる小隊の中で真っ先に異議を示したのは軍曹の『米蹴屡穂葉須(まいける・ほばす)』であった
「分かっているさ軍曹…だが無線機が破壊された、通信の混乱と言う事で誤魔化せる筈だ、それに責は私が全て受ける」
「小隊長殿…」
「中尉殿、敵です!!…数は、本格攻撃!!戦車多数含んでいます」
しかし敵は待ってくれなかった、弾のなくなった狙撃銃のスコープを使い見張りを行っていた釈孫二等兵の叫びが響きわたる

恐る恐る双眼鏡を覗き、きゅらきゅらと嫌な音が響く方を調べる鏡中尉
「本当に多いな…見えるだけでも戦車は最低二桁いや多分三桁だな、くそっ、数が多過ぎて撤退はもう間に合わん…皆すまんな」
「いえ、反抗してすみませんでした」
「戦陣訓では『虜囚ノ辱メヲ受ケルトモミダリニ自決セズ生キテ後方撹乱ナドヲ行イ戦イ抜クベシ』とありますが…ソ連の捕虜じゃ扱いは酷そうですね
 でも、戦い抜いて見せますたとえ『銜えさせられたって』、『噛み千切って』やります」
「はは、降伏受け入れてくれると良いんだがな…取りあえず総員着剣はしておけ」
そして迫りつつある機甲部隊、最初は散発的に撃って来たが小隊の陣地が撃って来ない為逃げたと思ったのか撃たなくなった
「はあ…強がり言って童貞のまま戦場に来るんじゃなかったな」
中尉が諦めたその時だった

「中尉殿!!、航空機です…それも凄い音」
「分かってるさ…タマ切れしちまったが奥の砲兵陣地にトドメを刺す気なんだろう…いや、この方角は、迂回じゃないとすればまさか!!」
そう言って空を見る鏡中尉、そこには
「中尉殿…援軍です、爆撃隊です」
そこには空を埋め尽くすかと思った程の翼に日の丸の大編隊がいた
そして編隊の一部、単発エンジンの機体の何機かが迫りつつあった機甲部隊に攻撃を加え始めたのだ
さらに双発爆撃機と思われる機体は川に掛かる橋や対岸の砲兵陣地を叩いて行く…だが
「駄目だ、砲兵や橋を叩いてもまだ敵は…多過ぎるんだぞ!!」
機甲部隊に攻撃を加えている機体は見渡す限りそれ程多くなく、殆どの機体は対岸や川を叩いていた、憤慨する中尉、そこへ
「いえ、これから叩くんですよ…我々が、無線聞いてなかったんですか?私は集積所で聞きましたが」
「何だって…無線は敵の砲撃でやられたから聞いてないが…どうやってだ?、既に我々は火力を殆ど喪失している」
「じゃんじゃん砲兵が撃ちますよ、これまで撃たなかったのは弾薬を集積する為です…ほら」
そして落ちて来る砲弾達…だが、砲弾は小隊の陣地の後方から飛来し次々と敵を吹き飛ばしていく
「すげぇ、この量…二日目を思い出す」
その量は正に雨のようであり数え切れなかった敵が次々と吹き飛ばされていった
「…昼夜問わずの補給作業で既に3日分、今も続々送り込まれています」
「なら総反撃か…しかし、兵力が」
「増援も来てます、補充に行っていた我が(第7)師団及び第3師団の戦車連隊や海軍陸戦隊…独立第一旅団まで」
「機甲部隊か!!…なら勝てるぞ!!…だが」
「…だが?」
「もう我が小隊はタマが…ってあれ皆?何で口を金魚みたいにさせているんだ?」
中尉の周りの者が皆中尉の後ろを見て呆然としているので中尉も後ろを見る事にした…そこには
「ぎゃー、阿波武だー!!」
そこには数時間前消えた筈の『阿波武(あばむ)二等兵』がいたのだ
「はい中尉殿、阿波武二等兵であります、弾薬受領任務から帰還いたしました」
「い、生きていたのか…って弾薬受領?」
「はい、中尉殿が『阿波〜武、タマ持って来〜い』と仰られていましたので弾薬集積所まで行って参りました…ほら」
そう言った阿波武の後ろにはリヤカーとそれに積まれていた大量の弾薬箱…さらに
「凄いぞ阿波武二等兵、重機関銃もある…でも九五式(注4)じゃなくて九一式(注5)なんだな」
そう言いながら軍曹はさっそく重機関銃の点検を始めていた
「すいません、軍曹殿、それしか余っていなかったので」
「いや、それでも十分だ、…だが砲弾が降り注ぐ中、一人で歩き回るのは今後控えろよ」
「了解であります、中尉殿」

そして弾薬補給を済ませた鏡小隊は
「よし突撃するぞ、他の小隊はもう始めてる、遅れを取るな、敵の将軍ぐらい捕虜にしてやれ」
「狙撃銃準備完了であります」
そう言いながら九四式狙撃銃を構える釈孫二等兵
「重機関銃準備完了」
「装填手も準備…完了であります」
そう言いながら重そうに九一式重機関銃を抱える米蹴屡軍曹(銃手)と阿波武二等兵(無線が無いので装填要員)
他の隊員も準備を完了していた
「よし、鏡小隊…とーつげきー!!」
「「「おおーーーー!!」」」
これまでの戦いで溜まった鬱憤を晴らそうとするかのように鬨の声を突撃していく鏡小隊…ノモンハン戦役の終わりは近い
                  プロローグ了

注1 九三式小銃
三八式小銃の後継として作られた新型主力小銃、実は自動小銃(10連発マガジン)である
第一次世界大戦の戦訓において連射式銃の需要が増し、開発が行われていた
反対意見も少なくなかったが銃砲弾生産能力が向上している事と第一次大戦において欧州戦線での戦闘経験を持つ者達が強力に推した為採用された
弾は三八式と同じ(6.5mm)である

注2 九四式狙撃銃
陸軍の新型狙撃銃
第一次大戦の戦訓により陸軍では狙撃銃の開発を行っておりその結果
三八式の中で特に精度の高かった物を一部改造(スコープ追加など)を行った三八式狙撃銃を開発した
しかし三八式狙撃銃は「狙撃に適するようになった」だけで結局三八式小銃と基本的に変わっておらず
長射程が求められる狙撃銃としては不完全だった
その為九四式が開発開始されたのだが風雲急を告げつつあった時勢であったので開発は早期に終了しなければならなかった
兵器廠陸軍部(軍需省出向に伴い名称が陸軍兵器廠から変更された)はその問題に答える為当時開発中止が決まっていた7.7mm小銃(史実99式に相当)
を基に九一式重機関銃の弾を使用しさらにオプションとして二脚を装備出来る狙撃銃を開発したのである
本銃は確かに射程は増し威力は向上したのだが重機関銃用の弾を使用しているので装填数を多く出来ず反動が大きく、2脚を接地させないと命中率が低くなっていた
その為、ベテラン狙撃手は旧来の三八式狙撃銃(ただし補給し易くする為後期生産型の部品の規格統一が行われている物)を好む者も多かった

注3 軍需省(その1)
大日本帝国にある行政機関の一つ、一九二七年に設置
第一次大戦の戦訓により総力戦体制となった際の戦時生産の管理は専用の省庁が必要であると言う事により構想され
その後の混乱(正確な説明は今後)を経て『平時には雪達磨式に膨らむ軍事予算を効率的に運用する事で増加を防ぐ為』常設の行政機関として設置された
陸海軍の生産だけでなく開発も(陸海と共同だが)管理しており艦政本部、空技廠などの陸海軍の各開発機関も『出向』と言う形で傘下に収めている
また、戦時に備え統一規格令(注6)などを行ったり、工作機械や重機の国産化などを推し進めている

当初この組織は『陸海軍の権利を侵害する』と批判を受けたが『大臣か次官を陸海軍から確実に交代で一人出す(残りは民間)』と言う条件で合意され
陸軍は設置後鋼材の割り当てを増やして貰い、海軍は艦隊整備計画の進捗度が上がった為批判は完全に払拭される事となった(この件も詳細は今後)

注4 九一式重機関銃
史実九二式重機関銃とほぼ同一(7.7mm)、違いは弾薬が陸海軍で共通化(海軍のリムド薬莢タイプに)されている事
当初は部品も共通規格型に変更する予定だったが現場の重機関銃需要が高かった為、果たされずに生産が開始された
その為同時期開発の統一化が行われた他の九〇番台兵器とは異質な物になってしまいすぐに後継である九五式と交代する事となった
ただ満州方面では勿体無いと言う事で現役でありノモンハン戦役では活躍する事となる

注5 九五式重機関銃
九一式重機関銃は優秀だったが部品が統一規格でなく重量も重く構造も複雑なので生産性が悪いと言う意見が多かった為開発中の時点から開発開始された新型重機関銃
基本的な性能は殆ど変わって(変えて)いないが設計をより簡素に各部品を統一規格型に変更し一部部品を(ドイツ技術による)プレス加工にした事で生産性向上と軽量化を果たしている
さらに給弾方式をベルト式に変更し、より継続的な射撃が行えるようになっている

注6 帝国統一規格令
第一次大戦と大陸での紛争の経験において整備性、生産性をより重視すべきであると言う意見が高まった事で軍需省において発案され
一九三〇年に議会通過した、これにより大日本帝国の機械及び兵器部品の規格が統一され、生産及び整備性が大きく向上する事となった
しかしその為に九〇番以前と以後の番号を持つ兵器とは互換性が低くなっている
(一応一部九〇番以前の火砲の三〇年以後製作である通称『後期生産型』は持っている物は多いが)

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