最終更新:ID:y34kABu69A 2011年06月12日(日) 17:22:59履歴
「中尉。起きてください中尉」
大河は咲島を起こそうとしていた。咲島は兵舎では無く陸軍の隼との空戦で傷つき不時着したB25爆撃機で寝ていた。B25は燃える事は無かったが不地着で翼と機体が折れていた。こうして風通しの良くなったB25の機内を咲島は寝床にしていた。
「まだ早いじゃないか」
不機嫌そうに咲島は起きる。まだ昼間であるからだ。
「敵艦隊を発見したそうです。塚作少佐が指揮所へ来るようにと」
「まさか今から出ろと言うんじゃないでしょうね」
咲島は塚作に認めさせた昼間の出撃はさせないと言うのを反故にされるのではと訝った。
「索敵機が敵艦隊を見つけた。報告によれば空母が1隻だ」
指揮所で塚作は説明を始めた。野中と森永の一〇〇式司偵が発見した敵艦隊についてだ。位置・速力・進行方向が塚作から知らされる。
「出撃はいつでしょうか?」
敵艦隊についての説明が終わるったところで咲島は尋ねた。
「今からと言いたいが君の進言通りに薄暮での攻撃をして貰おう」
一番の心配が無くなり咲島と大河は安堵した。
そして数時間後。咲島と大河の出撃する時間となった。
たった1機の攻撃隊であるが塚作や畑山に飛行場の将兵ほとんどが帽振れで見送った。
「全てはお前達にかかっている!奮戦努力せよ!」
塚作の訓示を受けてから九七式艦攻1機が太平洋へ向けて出撃する。
南太平洋に夜のとばりが下りる。
暗闇の幕が空の多くを占めていたがまるで隙間が僅かに開いている様に水平線に沿って茜色の帯が見える。これが薄暮の時だ。
咲島の操る九七式艦攻は燃料の続く限り敵機動部隊と接触を続けていた野沢と森永の一〇〇式司偵からの続報を元に敵機動部隊の位置を予測して向かっていた。
高度5000で飛行しつつ夕方前から飛行しているが未だに見つからない。
だが咲島も大河も闘志は衰えていない。もうすぐこの先に敵が居ると信じているからだ。
茜色の帯が薄い線のようにまでなり夜へと変わろうとしていた。
その時だった。
「何か見える…」
咲島が呟く。
「敵艦隊ですか?」
大河が尋ねるが咲島は黙っている。よく目を凝らし闇へ擬態しようとする何かを見極めようとしていた。
「高度を下げるぞ」
咲島は5000から1000へ高度を下げた。すると暗い海面から閃光が幾つも瞬き曳光弾の雨が昇って来る。
「当たりだ!行くぞ!」
「はい!」
咲島は船らしい影を見つけていた。だが暗過ぎて敵味方の区別はおろか本当にそこへ艦船があるのか確認出来なかった。だから高度を下げてみて敵ならレーダーでこちらの動きを掴んで撃ってくるだろうと危険であるが確実な判断方法だった。
咲島は高度を更に下げて海面スレスレに降りると射撃の光源へ機首を向けた。
大河は無線の電鍵を叩き突撃を意味するト連送を打ち続ける。
ガンガン何度も機銃弾や炸裂した砲弾の破片に叩かれながら外周の駆逐艦を越え。
また駆逐艦を越え巡洋艦を越える為に少し高度を上げる。この時に防風のガラスが割れ咲島と大河に細かいガラス片が顔にかかる。だがそれに少し顔をしかめただけで気にはならない。ガラスよりも危険な物が四方八方から飛んで来るのだから。
「空母だ!」
巡洋艦を飛び越えると咲島が叫んだ。
艦の各所にある砲や機銃の閃光が幾つも重なり艦影が浮かび上がった。それで咲島は空母だと分かったのだ。
九七式艦攻はまた海面スレスレに高度を下げて空母を狙う構えに出た。
大河は咲島の肩越しに敵空母の影を見た。どうやら大型空母。僅かに見えるシルエットはよく知るヨークタウン級や最近現れた新型のエセックス級とは違うように思えた。艦橋が先の二空母とは違い小さいように思えた。
「よーい!」
雷撃しようと咲島が号令をかける。
主翼に機体が敵弾で揺らされながらも針路そのままで敵空母の右舷へ迫る。
「撃て!」
九一式魚雷が投下された。850kg近い荷物が一気に落ちると九七式艦攻はその反動で浮き上がる。その僅かな動きを利用して咲島は機を少し上昇させた。
空母の飛行甲板をスレスレ飛び越えその低い高度のまま敵艦隊の中を突破しようとしてた。
大河は真後ろを向き戦果の確認をしようとしていた。飛び交う対空射撃の火線に射撃の煌きと浮かび上がる艦影だけしかまだ見えない。
まさか外したかと思った時。
暗闇の中で高い水柱が上がるのを大河は見た。
「中尉!命中です!命中!」
「やったか!」
二人とも緊張が一瞬だけ解ける。ここまで夜間飛行を何日も続けて来た成果が出来たのだから。
「右舷後部での浸水は応急作業でもうすぐ止まります。ですが速力は22ノットに落ちました」
咲島の九七式艦攻が雷撃した空母「レンジャー」では慌しく復旧作業が行われた。
「レンジャー」は右舷後部に魚雷が命中しその衝撃や水柱の水圧で12センチ砲の砲座がえぐられ砲弾も飛ばされた事から爆発と火災が起きたが
艦自体の大きな損害は魚雷の命中で生じた破口から浸入した海水によって右舷が5度下がって機関が損傷して22ノットに落ちた事だろう。
「やはり対空砲の射程に入った所で射撃を始めるべきだったな」
機動部隊の司令官は「レンジャー」の艦長から被害報告を受けてから後悔をした。
咲島と大河の乗る九七式艦攻を単機であるから偵察機だと判断して夜の闇に紛れた今ならそうそう見つかるまいと思い自ら発見されないように射撃を控えていた。
だがそれが仇となり「レンジャー」は魚雷で大きなダメージを受けてしまった。
「任務の順調さで敵を見くびってしまったなこれは」
司令官は「レンジャー」の損害は自分の慢心だと結論を出した。
「レンジャー」を中心とした機動部隊は攻撃の主力となる機動部隊のラバウル空襲を援護すべくニューギニアやラバウルへ向かう日本軍機を阻止する任務に就いていた。
「レンジャー」は本来なら訓練用空母として使われる予定だったのを無理矢理また前線に立たせて任務に当たらせていた。
「この損害だと任務続行は危ういな。ハワイへ帰還しよう」
こうして咲島と大河によってニューギニア沖から敵空母の排除に成功したのであった。
飛行場へ帰還すると総出での歓迎を咲島と大河は受けた。
二人が艦攻から降りると塚作がまず飛び出した。
「よくやった!本当によくやった!連合艦隊司令部から感状が出るぞ!」
満面の笑みで塚作は二人を讃える。
塚作から離れると畑山が近づく。
「ご苦労だ。あるものだけだが戦勝祝いの席を用意した」
飛行場の士官用食堂となっている小屋へ案内された。そこにはいつもより豪勢な食事が用意されていた。
現地人から医薬品や煙草と交換した豚と兵が銃で仕留めたワニの肉を焼いたものと言うメニューであるがいつも白米に漬物。または現地で採った果物と言う寂しい内容であるから
ここまで魚と肉が食えるのは豪華なメニューと言える。
その食事に華を添えるのは畑山が持ち込んでいた新潟産の日本酒だった。
「咲島中尉と大河一飛曹の勇戦敢闘に乾杯!」
塚作の音頭で乾杯を士官達がすると咲島と大河は目の前のご馳走を食う。久しぶりの肉は勝利の美酒となった日本酒の心地よさもあり爽快な美味さがあった。
兵や下士官も肉が振舞われ酒はさすがに主計が用意したどぶろくであったが酒の解禁され宴は賑やかになった。戦争前の流行歌が歌われ真似で落語をする芸達者が場を盛り上げる。
戦友を亡くし敵を追い求め戦う殺伐とした日々を忘れるような時間だった。
宴が終わると咲島と大河は兵舎へ向かう。畑山の酒で久しぶりに酔った2人は心地良かった。
「一飛曹。ちょっと付き合って」
兵舎に入ろうとする大河を咲島が呼んだ。
大河は咲島の後に続いて行くと咲島専用の寝床と化したB25の残骸に着いた。
「さあ、上がって」
まるで自分の家みたいに咲島は大河を中へ入れる。
B25の機内は後ろ半分が歪むように折れて隙間が開きコクピットも窓ガラスがほとんど割れていた。これで風通しの良い空間が出来ていた。
「一飛曹。こんな事を命令するのは気が引けるけど。私を抱いてくれないか」
咲島は少し慎重に大河へ言った。
大河はその言葉を聞いて内心では大声で「やった!」と叫んだ。
「勿論抱きますよ!命令で無くても抱きたっかたです!」
大河は思わぬ事に酒の酔いもあって興奮が一気に高まった。
「嬉しい事言うじゃないか。さあ、来て」
咲島は大河の首と背中へ手を回し自分へ引き寄せながらゆっくり倒れる。
大河がのしかかるような格好になった。そして鎖を外した猛獣みたいに大河は咲島へ挑む。
まずは咲島の唇を奪い。首筋に舌を這わせ左手は飛行服の上から胸を揉み。右手は同じく飛行服のズボンの上から股間をさするように刺激する。
「ふう…はあ…」
咲島は首筋と胸・股間同時の愛撫にたちまち切ない声を上げる。
大河は咲島の上着のボタンを焦りながら外しシャツを捲り上げて胸を出させる。
(これがあの水兵が堪能した乳か)
あの覗いた時の光景を浮かべながら大河は咲島の胸を直に両手で揉みながら乳首を吸い上げる。大きくも無く小さい訳でも無い美乳は柔らかく久しぶりの感触に大河の雄な性が猛る。
盛りに任せて今度は咲島のズボンを引き抜き次いでズロースも引っ張り出される。
露になった咲島の秘部へ大河は顔を突っ込み水を飲む犬みたいに舌を忙しく動かして咲島を貪る。
咲島の息が荒い。はあはあと熱でうなされたようになっている。
吐息をしながら咲島は上半身を起こすと大河の頭を股から離させる。
そして今度は咲島が大河を倒す。
「久しぶりに凄く燃えてきた」
興奮が高いのを示すように咲島の頬が真っ赤であり瞳は細く柔らかく情欲に染まっていた。
咲島はお返しとばかりに大河と同じく唇を奪い上着を開かせて胸から腹の肌触りを楽しむように舌でなぞる。ズボンは大河よりは落ち着いていたが素早く引き抜き褌から固い肉棒を探り出す。
「立派なモノじゃないの」
咲島は右手で握りながら肉棒の感触を楽しむ。大河のモノは出来立ての鉄の様に固く熱くなっていた。
「んふふふ」
鼻歌みたいな笑いをしながら咲島は肉棒を舐める。裏筋から初め亀頭や袋をゆっくりと。
大河はそんなベテランな性技にさっきの咲島と同じく息を荒げるばかりではなく快感に背を何度も弓なりに逸らした。
「凄い。これはあの水兵が悶えるのも分かる」
大河はついあの覗いた時の事を言ってしまった。驚いた咲島の舌が止まる。
「見ていたの風呂場での事を」
「すいません」
気まずいなと大河は後悔した。こんな事になるなら覗かず我慢すれば良かったと嫌悪感が湧いた。
「謝る事は無いよ。あんな場所だから覗かれても仕方ないとは思っていたさ」
咲島はあっけらかんとしていた。
「で、一飛曹もあの水兵みたいに私の胸をやたら吸い付いていたんだね?」
咲島の問いに大河は恥ずかしそうに「そうです。あれが羨ましくて」と正直に答えた。
「正直でよろしい。じゃあ、おっぱいを堪能させてあげる」
こう言うと咲島は大河の腰へ跨る。肉棒を右手で掴み濡れた秘部へと定めてから咲島は腰を落とす。
「んんんん……うはああ」
ゆっくりと肉棒を飲み込む咲島の身体。大河はそのきつく締める感触に目を瞑るほど気持ちが良さを感じた。
「ほれ。おっぱいだよ」
咲島は大河の右手を自分の胸へ運び揉ませる。大河は左手も伸ばして胸を揉む。
「じゃあ私も楽しむとしようか」
咲島はゆっくりとだが段々とスピードを増しながら上下に動く。
「あん!ああん!良いわあ!」
大河の上で咲島は乱れる。上下に動きながらも身をよじらせ身体の中での肉体のぶつかり合いを喜ぶ。大河は興奮で胸を弄る手の動きが乱暴になる。その刺激も彼女をますます快感にさせた。
「さあ、吸って!」
上半身を倒した咲島は大河へ覆いかぶさる。大河の顔に咲島の胸が押し付けられた。
大河は咲島に求められたのと欲望のままに咲島の胸を吸う。
「うっ…くうううう!いい!」
乳首からの刺激に咲島が呻く。
大河に胸を強く吸われながら咲島は腰を動かす。腰だけがぐいぐいと動いていた。
「はあはあ…あん。ああん!」
夢中で腰を動かし胸を吸われて咲島は快楽へどっぷり浸かっていた。口からは喘ぎ声を気にせず漏らし続け大河の頭を抱きしめていた。
「中尉。そろそろ出てしまう」
胸の隙間から口を出した大河が限界を報せた。
「いいわ。出しなさい!」
妊娠の危険が一瞬大河の頭をよぎるが下半身は今にも決壊しそうだった。しかも今の態勢は咲島が上で大河が寸前で引き抜くと言うのが出来ない。ましてや咲島がラストスパートとばかりに激しい動きをしているのだから。
咲島は身体を起こしてからラストスパートに入った。
両手を大河の胸へ置いてから上から下へ自分の腰をぶつける。溢れていた愛液がぬちゃぬちゃと言う音も混じり2人の興奮は最高潮になる。
「でっ出る!くうう」
大河は咲島の尻を両手で掴みながら中へ放出する。
「来るわ!んううう…ああああああああん!」
中へ出されながらも腰を激しく動かす咲島も絶頂へ達した。
呆けた咲島は力が抜けてまた大河の上へ覆い被さる。萎えた肉棒がぬるっと抜け出ると咲島の秘部からは濃い精液がトロトロと流れ出た。
「良かったよ一飛曹。すごく満足した」
大河の胸を枕にしながら咲島が満たされた声で褒めた。
「中尉も凄く気持ちよかったですよ。今までで一番だ」
大河は上官である事を忘れて咲島の背中に両手を添えて軽く抱きながら褒め返す。
これはお世辞では無く本当の思いだった。抑制される戦場の日々ではなかなか得られない快感と言うのもあるが相性が良かったのだ。
「本当に今日は凄く気分が良い…」
咲島はこう言いながら大河の上で眠り落ちた。
上官が自分の身体を布団に寝ると言う事に驚いた大河であったが目の前の寝顔の可愛さにすぐ見入った。天井からの月明かりで見る咲島の顔は穏やかで傷があっても綺麗だった。
「戦争がなければ顔に傷がつく事は無かっただろうに」と大河は思わずにいられなかった。
「ラバウルやトラックからの索敵と潜水艦の情報を総合してみると貴官らが撃破した敵空母は東へ向かっている。おそらく修理の為にハワイか米本土へ向かっているのだろう」
二日後。指揮所で塚作は咲島達陸海軍合わせて4人の搭乗員を前に「レンジャー」の動向について説明をした。
「つまり我々の作戦は成功したのだ」
得意満面で塚作は作戦の結果を述べた。自分で計画し実行した作戦なのだから尚更だ。
作戦終了により咲島や大河らは原隊へ帰る事になった。
陸軍の野沢と整備員に道具や部品を一〇〇式司偵と九七式艦攻で陸軍飛行場へ運び終えてから咲島・大河・森永の帰還が行われた。
丁度3人であるから九七式艦攻で一緒にニューギニアを離れた。
トラックを経てサイパン島。次いで硫黄島から千葉県木更津へ到着した。
木更津の飛行場で大河と森永は降りた。咲島は大分県の宇佐へと向かう。
「中尉。色々とお世話になりました」
宇佐への出発を前に大河は咲島へ礼を述べる。
咲島は給油待ちで飛行場の待機所で茶を飲みながら休憩をしていた。
「こっちも色々と世話になったよ一飛曹」
意味ありげに咲島は笑った。その意味を理解して大河は照れ笑いをする。
「中尉。給油完了しました」
そこへ整備兵が報告に来た。
「さて行くかな」
咲島は飛行帽を被りながら立ち上がる。
「一飛曹。いや大河さん。また縁があったらどこかで」
「はい中尉。またどこかで会いましょう」
再会の約束を交わしてから咲島は愛機へと向かった。
西の空へと飛ぶ九七式艦攻を大河は親しげに愛おしく見つめ続けていた。
(終)
大河は咲島を起こそうとしていた。咲島は兵舎では無く陸軍の隼との空戦で傷つき不時着したB25爆撃機で寝ていた。B25は燃える事は無かったが不地着で翼と機体が折れていた。こうして風通しの良くなったB25の機内を咲島は寝床にしていた。
「まだ早いじゃないか」
不機嫌そうに咲島は起きる。まだ昼間であるからだ。
「敵艦隊を発見したそうです。塚作少佐が指揮所へ来るようにと」
「まさか今から出ろと言うんじゃないでしょうね」
咲島は塚作に認めさせた昼間の出撃はさせないと言うのを反故にされるのではと訝った。
「索敵機が敵艦隊を見つけた。報告によれば空母が1隻だ」
指揮所で塚作は説明を始めた。野中と森永の一〇〇式司偵が発見した敵艦隊についてだ。位置・速力・進行方向が塚作から知らされる。
「出撃はいつでしょうか?」
敵艦隊についての説明が終わるったところで咲島は尋ねた。
「今からと言いたいが君の進言通りに薄暮での攻撃をして貰おう」
一番の心配が無くなり咲島と大河は安堵した。
そして数時間後。咲島と大河の出撃する時間となった。
たった1機の攻撃隊であるが塚作や畑山に飛行場の将兵ほとんどが帽振れで見送った。
「全てはお前達にかかっている!奮戦努力せよ!」
塚作の訓示を受けてから九七式艦攻1機が太平洋へ向けて出撃する。
南太平洋に夜のとばりが下りる。
暗闇の幕が空の多くを占めていたがまるで隙間が僅かに開いている様に水平線に沿って茜色の帯が見える。これが薄暮の時だ。
咲島の操る九七式艦攻は燃料の続く限り敵機動部隊と接触を続けていた野沢と森永の一〇〇式司偵からの続報を元に敵機動部隊の位置を予測して向かっていた。
高度5000で飛行しつつ夕方前から飛行しているが未だに見つからない。
だが咲島も大河も闘志は衰えていない。もうすぐこの先に敵が居ると信じているからだ。
茜色の帯が薄い線のようにまでなり夜へと変わろうとしていた。
その時だった。
「何か見える…」
咲島が呟く。
「敵艦隊ですか?」
大河が尋ねるが咲島は黙っている。よく目を凝らし闇へ擬態しようとする何かを見極めようとしていた。
「高度を下げるぞ」
咲島は5000から1000へ高度を下げた。すると暗い海面から閃光が幾つも瞬き曳光弾の雨が昇って来る。
「当たりだ!行くぞ!」
「はい!」
咲島は船らしい影を見つけていた。だが暗過ぎて敵味方の区別はおろか本当にそこへ艦船があるのか確認出来なかった。だから高度を下げてみて敵ならレーダーでこちらの動きを掴んで撃ってくるだろうと危険であるが確実な判断方法だった。
咲島は高度を更に下げて海面スレスレに降りると射撃の光源へ機首を向けた。
大河は無線の電鍵を叩き突撃を意味するト連送を打ち続ける。
ガンガン何度も機銃弾や炸裂した砲弾の破片に叩かれながら外周の駆逐艦を越え。
また駆逐艦を越え巡洋艦を越える為に少し高度を上げる。この時に防風のガラスが割れ咲島と大河に細かいガラス片が顔にかかる。だがそれに少し顔をしかめただけで気にはならない。ガラスよりも危険な物が四方八方から飛んで来るのだから。
「空母だ!」
巡洋艦を飛び越えると咲島が叫んだ。
艦の各所にある砲や機銃の閃光が幾つも重なり艦影が浮かび上がった。それで咲島は空母だと分かったのだ。
九七式艦攻はまた海面スレスレに高度を下げて空母を狙う構えに出た。
大河は咲島の肩越しに敵空母の影を見た。どうやら大型空母。僅かに見えるシルエットはよく知るヨークタウン級や最近現れた新型のエセックス級とは違うように思えた。艦橋が先の二空母とは違い小さいように思えた。
「よーい!」
雷撃しようと咲島が号令をかける。
主翼に機体が敵弾で揺らされながらも針路そのままで敵空母の右舷へ迫る。
「撃て!」
九一式魚雷が投下された。850kg近い荷物が一気に落ちると九七式艦攻はその反動で浮き上がる。その僅かな動きを利用して咲島は機を少し上昇させた。
空母の飛行甲板をスレスレ飛び越えその低い高度のまま敵艦隊の中を突破しようとしてた。
大河は真後ろを向き戦果の確認をしようとしていた。飛び交う対空射撃の火線に射撃の煌きと浮かび上がる艦影だけしかまだ見えない。
まさか外したかと思った時。
暗闇の中で高い水柱が上がるのを大河は見た。
「中尉!命中です!命中!」
「やったか!」
二人とも緊張が一瞬だけ解ける。ここまで夜間飛行を何日も続けて来た成果が出来たのだから。
「右舷後部での浸水は応急作業でもうすぐ止まります。ですが速力は22ノットに落ちました」
咲島の九七式艦攻が雷撃した空母「レンジャー」では慌しく復旧作業が行われた。
「レンジャー」は右舷後部に魚雷が命中しその衝撃や水柱の水圧で12センチ砲の砲座がえぐられ砲弾も飛ばされた事から爆発と火災が起きたが
艦自体の大きな損害は魚雷の命中で生じた破口から浸入した海水によって右舷が5度下がって機関が損傷して22ノットに落ちた事だろう。
「やはり対空砲の射程に入った所で射撃を始めるべきだったな」
機動部隊の司令官は「レンジャー」の艦長から被害報告を受けてから後悔をした。
咲島と大河の乗る九七式艦攻を単機であるから偵察機だと判断して夜の闇に紛れた今ならそうそう見つかるまいと思い自ら発見されないように射撃を控えていた。
だがそれが仇となり「レンジャー」は魚雷で大きなダメージを受けてしまった。
「任務の順調さで敵を見くびってしまったなこれは」
司令官は「レンジャー」の損害は自分の慢心だと結論を出した。
「レンジャー」を中心とした機動部隊は攻撃の主力となる機動部隊のラバウル空襲を援護すべくニューギニアやラバウルへ向かう日本軍機を阻止する任務に就いていた。
「レンジャー」は本来なら訓練用空母として使われる予定だったのを無理矢理また前線に立たせて任務に当たらせていた。
「この損害だと任務続行は危ういな。ハワイへ帰還しよう」
こうして咲島と大河によってニューギニア沖から敵空母の排除に成功したのであった。
飛行場へ帰還すると総出での歓迎を咲島と大河は受けた。
二人が艦攻から降りると塚作がまず飛び出した。
「よくやった!本当によくやった!連合艦隊司令部から感状が出るぞ!」
満面の笑みで塚作は二人を讃える。
塚作から離れると畑山が近づく。
「ご苦労だ。あるものだけだが戦勝祝いの席を用意した」
飛行場の士官用食堂となっている小屋へ案内された。そこにはいつもより豪勢な食事が用意されていた。
現地人から医薬品や煙草と交換した豚と兵が銃で仕留めたワニの肉を焼いたものと言うメニューであるがいつも白米に漬物。または現地で採った果物と言う寂しい内容であるから
ここまで魚と肉が食えるのは豪華なメニューと言える。
その食事に華を添えるのは畑山が持ち込んでいた新潟産の日本酒だった。
「咲島中尉と大河一飛曹の勇戦敢闘に乾杯!」
塚作の音頭で乾杯を士官達がすると咲島と大河は目の前のご馳走を食う。久しぶりの肉は勝利の美酒となった日本酒の心地よさもあり爽快な美味さがあった。
兵や下士官も肉が振舞われ酒はさすがに主計が用意したどぶろくであったが酒の解禁され宴は賑やかになった。戦争前の流行歌が歌われ真似で落語をする芸達者が場を盛り上げる。
戦友を亡くし敵を追い求め戦う殺伐とした日々を忘れるような時間だった。
宴が終わると咲島と大河は兵舎へ向かう。畑山の酒で久しぶりに酔った2人は心地良かった。
「一飛曹。ちょっと付き合って」
兵舎に入ろうとする大河を咲島が呼んだ。
大河は咲島の後に続いて行くと咲島専用の寝床と化したB25の残骸に着いた。
「さあ、上がって」
まるで自分の家みたいに咲島は大河を中へ入れる。
B25の機内は後ろ半分が歪むように折れて隙間が開きコクピットも窓ガラスがほとんど割れていた。これで風通しの良い空間が出来ていた。
「一飛曹。こんな事を命令するのは気が引けるけど。私を抱いてくれないか」
咲島は少し慎重に大河へ言った。
大河はその言葉を聞いて内心では大声で「やった!」と叫んだ。
「勿論抱きますよ!命令で無くても抱きたっかたです!」
大河は思わぬ事に酒の酔いもあって興奮が一気に高まった。
「嬉しい事言うじゃないか。さあ、来て」
咲島は大河の首と背中へ手を回し自分へ引き寄せながらゆっくり倒れる。
大河がのしかかるような格好になった。そして鎖を外した猛獣みたいに大河は咲島へ挑む。
まずは咲島の唇を奪い。首筋に舌を這わせ左手は飛行服の上から胸を揉み。右手は同じく飛行服のズボンの上から股間をさするように刺激する。
「ふう…はあ…」
咲島は首筋と胸・股間同時の愛撫にたちまち切ない声を上げる。
大河は咲島の上着のボタンを焦りながら外しシャツを捲り上げて胸を出させる。
(これがあの水兵が堪能した乳か)
あの覗いた時の光景を浮かべながら大河は咲島の胸を直に両手で揉みながら乳首を吸い上げる。大きくも無く小さい訳でも無い美乳は柔らかく久しぶりの感触に大河の雄な性が猛る。
盛りに任せて今度は咲島のズボンを引き抜き次いでズロースも引っ張り出される。
露になった咲島の秘部へ大河は顔を突っ込み水を飲む犬みたいに舌を忙しく動かして咲島を貪る。
咲島の息が荒い。はあはあと熱でうなされたようになっている。
吐息をしながら咲島は上半身を起こすと大河の頭を股から離させる。
そして今度は咲島が大河を倒す。
「久しぶりに凄く燃えてきた」
興奮が高いのを示すように咲島の頬が真っ赤であり瞳は細く柔らかく情欲に染まっていた。
咲島はお返しとばかりに大河と同じく唇を奪い上着を開かせて胸から腹の肌触りを楽しむように舌でなぞる。ズボンは大河よりは落ち着いていたが素早く引き抜き褌から固い肉棒を探り出す。
「立派なモノじゃないの」
咲島は右手で握りながら肉棒の感触を楽しむ。大河のモノは出来立ての鉄の様に固く熱くなっていた。
「んふふふ」
鼻歌みたいな笑いをしながら咲島は肉棒を舐める。裏筋から初め亀頭や袋をゆっくりと。
大河はそんなベテランな性技にさっきの咲島と同じく息を荒げるばかりではなく快感に背を何度も弓なりに逸らした。
「凄い。これはあの水兵が悶えるのも分かる」
大河はついあの覗いた時の事を言ってしまった。驚いた咲島の舌が止まる。
「見ていたの風呂場での事を」
「すいません」
気まずいなと大河は後悔した。こんな事になるなら覗かず我慢すれば良かったと嫌悪感が湧いた。
「謝る事は無いよ。あんな場所だから覗かれても仕方ないとは思っていたさ」
咲島はあっけらかんとしていた。
「で、一飛曹もあの水兵みたいに私の胸をやたら吸い付いていたんだね?」
咲島の問いに大河は恥ずかしそうに「そうです。あれが羨ましくて」と正直に答えた。
「正直でよろしい。じゃあ、おっぱいを堪能させてあげる」
こう言うと咲島は大河の腰へ跨る。肉棒を右手で掴み濡れた秘部へと定めてから咲島は腰を落とす。
「んんんん……うはああ」
ゆっくりと肉棒を飲み込む咲島の身体。大河はそのきつく締める感触に目を瞑るほど気持ちが良さを感じた。
「ほれ。おっぱいだよ」
咲島は大河の右手を自分の胸へ運び揉ませる。大河は左手も伸ばして胸を揉む。
「じゃあ私も楽しむとしようか」
咲島はゆっくりとだが段々とスピードを増しながら上下に動く。
「あん!ああん!良いわあ!」
大河の上で咲島は乱れる。上下に動きながらも身をよじらせ身体の中での肉体のぶつかり合いを喜ぶ。大河は興奮で胸を弄る手の動きが乱暴になる。その刺激も彼女をますます快感にさせた。
「さあ、吸って!」
上半身を倒した咲島は大河へ覆いかぶさる。大河の顔に咲島の胸が押し付けられた。
大河は咲島に求められたのと欲望のままに咲島の胸を吸う。
「うっ…くうううう!いい!」
乳首からの刺激に咲島が呻く。
大河に胸を強く吸われながら咲島は腰を動かす。腰だけがぐいぐいと動いていた。
「はあはあ…あん。ああん!」
夢中で腰を動かし胸を吸われて咲島は快楽へどっぷり浸かっていた。口からは喘ぎ声を気にせず漏らし続け大河の頭を抱きしめていた。
「中尉。そろそろ出てしまう」
胸の隙間から口を出した大河が限界を報せた。
「いいわ。出しなさい!」
妊娠の危険が一瞬大河の頭をよぎるが下半身は今にも決壊しそうだった。しかも今の態勢は咲島が上で大河が寸前で引き抜くと言うのが出来ない。ましてや咲島がラストスパートとばかりに激しい動きをしているのだから。
咲島は身体を起こしてからラストスパートに入った。
両手を大河の胸へ置いてから上から下へ自分の腰をぶつける。溢れていた愛液がぬちゃぬちゃと言う音も混じり2人の興奮は最高潮になる。
「でっ出る!くうう」
大河は咲島の尻を両手で掴みながら中へ放出する。
「来るわ!んううう…ああああああああん!」
中へ出されながらも腰を激しく動かす咲島も絶頂へ達した。
呆けた咲島は力が抜けてまた大河の上へ覆い被さる。萎えた肉棒がぬるっと抜け出ると咲島の秘部からは濃い精液がトロトロと流れ出た。
「良かったよ一飛曹。すごく満足した」
大河の胸を枕にしながら咲島が満たされた声で褒めた。
「中尉も凄く気持ちよかったですよ。今までで一番だ」
大河は上官である事を忘れて咲島の背中に両手を添えて軽く抱きながら褒め返す。
これはお世辞では無く本当の思いだった。抑制される戦場の日々ではなかなか得られない快感と言うのもあるが相性が良かったのだ。
「本当に今日は凄く気分が良い…」
咲島はこう言いながら大河の上で眠り落ちた。
上官が自分の身体を布団に寝ると言う事に驚いた大河であったが目の前の寝顔の可愛さにすぐ見入った。天井からの月明かりで見る咲島の顔は穏やかで傷があっても綺麗だった。
「戦争がなければ顔に傷がつく事は無かっただろうに」と大河は思わずにいられなかった。
「ラバウルやトラックからの索敵と潜水艦の情報を総合してみると貴官らが撃破した敵空母は東へ向かっている。おそらく修理の為にハワイか米本土へ向かっているのだろう」
二日後。指揮所で塚作は咲島達陸海軍合わせて4人の搭乗員を前に「レンジャー」の動向について説明をした。
「つまり我々の作戦は成功したのだ」
得意満面で塚作は作戦の結果を述べた。自分で計画し実行した作戦なのだから尚更だ。
作戦終了により咲島や大河らは原隊へ帰る事になった。
陸軍の野沢と整備員に道具や部品を一〇〇式司偵と九七式艦攻で陸軍飛行場へ運び終えてから咲島・大河・森永の帰還が行われた。
丁度3人であるから九七式艦攻で一緒にニューギニアを離れた。
トラックを経てサイパン島。次いで硫黄島から千葉県木更津へ到着した。
木更津の飛行場で大河と森永は降りた。咲島は大分県の宇佐へと向かう。
「中尉。色々とお世話になりました」
宇佐への出発を前に大河は咲島へ礼を述べる。
咲島は給油待ちで飛行場の待機所で茶を飲みながら休憩をしていた。
「こっちも色々と世話になったよ一飛曹」
意味ありげに咲島は笑った。その意味を理解して大河は照れ笑いをする。
「中尉。給油完了しました」
そこへ整備兵が報告に来た。
「さて行くかな」
咲島は飛行帽を被りながら立ち上がる。
「一飛曹。いや大河さん。また縁があったらどこかで」
「はい中尉。またどこかで会いましょう」
再会の約束を交わしてから咲島は愛機へと向かった。
西の空へと飛ぶ九七式艦攻を大河は親しげに愛おしく見つめ続けていた。
(終)
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