2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第十三話】『入院患者』 わらび餅 ◆jlKPI7rooQ


44 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:31:34.10 ID:3Scplele0
【第十三話】わらび餅 ◆jlKPI7rooQ
『入院患者』

私が大学生の頃に体験した不思議な話です。

不真面目な大学生というものは暇なもので、講義のない日に家にいると母親の足として車を出さなければならないことがよくあった。
特に多かったのが、入院中の祖父のお見舞いに病院まで母親を送っていくことでした。
最初は母親を送っていくだけだったのだが、そのうち自分ひとりでもお見舞いに行くようになっていた。

その日は確か、今みたいな夏の暑い日だったと思う。
バイト以外に予定のない私は今日も祖父のお見舞いに病院に来ていました。
祖父は癌の手術をした後で殆ど全く声が出せない状態でした。
確か下咽頭がんという病気だったと思うのですが、手術の際に声帯を切り取ってしまっていたから自力で声を出すことはできなくなっていたのです。
従って基本的にお見舞いに来た私が一方的に話しかけることになるのだが、そうそう話すことがあるわけでもなく、半分お見舞い品を食べに来ているだけのこともありました。

45 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ @無断転載は禁止:2016/08/20(土) 20:32:23.08 ID:3Scplele0
祖父から何か伝えたいことがあるときはジェスチャーや、大体は小さなホワイトボードに書いてもらうことが普通でした。
そして、いつも通りアイスなんかを食べながら一緒にテレビを見ていると、祖父に肩を叩かれホワイトボードを渡されたのです。

『俺の前の子と遊んでやれ』

その日初めて気づいたのですが、祖父の前には小学3〜4年生ぐらいの男の子が入院していました。
我が家では祖父の言うことは絶対だったので、少し気恥ずかしさもありながら少年にあれこれ話しかけたりしていました。
少年はあまりしゃべらない子でしたが、バイトの話や高校での部活の話、大学での話などをすると興味深そうに聞いていたのを覚えています。

それから2〜3日後、祖父の容態が急変しそのまま意識が戻らず亡くなりました。
葬式に通夜にと忙しい日が終わった後、母親と祖父の物を病院に取りに行ったときにその異変に気づきました。
祖父に言われて話をしていた少年が、病室からいなくなっていたのです。

最初は退院したのかな? と思いなんとなく同室だった人に聞いてみたのですが、6人部屋にいた誰もその子のことを覚えていませんでした。
看護師さんに聞いてもそんな子供がいたということを知らない……ということを聞いてようやくそのおかしさが実感できました。
そもそも祖父が入院していた病室は周りも老人だらけ、今考えると小学生の男の子が一人だけその部屋にいるというのもおかしな話でした。

死の間際だった祖父と……そして何故か私にだけ言葉の交わすことのできた、不思議な少年の話です。

【了】



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