2ch.netオカルト板で2016年8月20日と8月27日に行われた百物語のまとめです。

【第六十三話】『古戦場』 50(ななほし) ◆YJf7AjT32aOX


228 :50(ななほし) ◆YJf7AjT32aOX @無断転載は禁止:2016/08/27(土) 21:31:32.66 ID:W3Qnqdi40
【第六十三話】『古戦場』


霊感持ちの友人Aと出かけた時の話。
以前、Aと関ヶ原まで出かけたことがあった。

合戦関係のイベント最終日のことだった。
出かけるのが遅くなってしまい、到着したのはイベントが終わる直前の夕方。
とりあえず古戦場を一通り周り、最後に行き着いたのは石田三成の陣跡、笹尾山だった。
ここには、小高い山の上にまで登ると古戦場一体を俯瞰できる展望台がある。
夕暮れでだんだん足元の見えにくくなる中、Aと僕は展望台のある場所まで登りきり、夕闇の中に消えて行こうとする古戦場を見下ろしてしばらく沈黙した。
お互い、かつてそこで繰り広げられたのであろう戦に思いを馳せていたのだが、いつになってもAが話す気配はない。
何気なしに隣のAを見てギョッとした。
Aは泣いていた。
どうしたのかと聞いても、首を振るだけ。
理由はわからず、ただただ悲しいのだという。
僕は泣きじゃくるAを引っ張って山を降り、そのまま帰路についた。

後日、その時のことについて尋ねたが、本当にいきなり何かが襲ってきたように悲しくなり、無性になきたくなったのだという。
Aはその日のそのあとのことをあまり覚えていなかった。

古戦場に残る数多の感情たちが、Aに何かを伝えたかったのかもしれない。

【了】



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