いわゆる慰安婦(日本軍性奴隷)について知り、考えるためのFAQです。

否定派の主張

慰安婦が悲惨な立場を強いられ、人権を蹂躙されたのは事実だ。しかし「国家の意思」としてそれを行ったのではない。

反論

「国ぐるみ」で慰安婦制度は作られ、「活用」された

橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)は5月26日、「私の認識と見解」と題する声明の中で次のように述べています(太字による強調は引用者)。

もし、日本だけが非難される理由が、戦時中、国家の意思として女性を拉致した、国家の意思として女性を売買したということにあるのであれば、これは事実と異なります
http://mainichi.jp/select/news/20130526mog00m01001...

「国家の意思ではない」というのはやや抽象的な表現ですが、要するに一部の者が勝手に暴走しただけで「国家」としての責任はない、ということでしょうか。

しかし、慰安婦制度が軍によって立案され、制度化され、それに各省庁や警察が密接に協力して実施されたのは明らかです。


また橋下氏は別の部分でこうも述べています。
私の理念に照らせば、第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙(じゅうりん)する、決して許されないものであることはいうまでもありません。
かつて日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません。

あたかも個々の「日本兵」が悪いのであって、国や軍隊には責任はないとでも言いたげだ…というのは「下司の勘繰り」でしょうか。


確かに慰安所を「活用」した日本兵もその責任は問われなければならないでしょう。しかし繰り返しになりますが、その慰安所を誰が作ったのかと言えば、それは軍、ひいては「国家」 に他ならない、ということになります。


あるいは橋下氏は「確かに慰安婦制度を作ったのは日本軍であり日本という国家であると言えるかもしれない。しかし 、軍として、国として『嫌がる女性を無理矢理でも騙してでも集めろ』と命令した事実も証拠もない」と言いたいのでしょうか。

もちろん今のところそうした証拠はないし、おそらくそのような具体的な命令の事実はないでしょう。ならば軍や国の責任は免責されるでしょうか。


しかし、女性の自由意思を尊重し、実際の「仕事」の内容をきちんと知らせ、納得させた上で「必要」な数だけの女性を戦地に送り込むということが可能だったでしょうか 。それが「無茶」であるのは常識的に考えれば明らかで 、その「無茶」を無理に通そうとすればどうなるか、どういう手段をとらなくてはならないかは当然わかるはず、考えなくてはならないはずで、もし「そこまで考えていなかった」というなら、それは「無責任」という他はありません(※注1)

こうした「無茶」を無理に通そうとしたのが当時の日本の戦時体制でした。これは何も慰安婦問題に限ったことではなく、たとえば軍隊にとっては生命線とも言える補給を軽視したため、戦地では「現地徴発」という名の略奪に頼らざるを得なくなり、現地に多くの被害をもたらしましたし、またそれさえできなかった戦地では多くの餓死を招くことにもなりました (軍隊経験者で歴史学者の藤原彰氏は著書『餓死した英霊たち』で日本兵の死因の約六割が広い意味での餓死であったとしています)。


橋下氏が言うように、慰安婦制度が「女性の尊厳の蹂躙」であったのは言い逃れのできない事実です。その事実を直視するのが必要なのはもちろんですが、それ以上にそうした悲劇が起きたのはなぜか、同じような悲劇を起こさせないためには何をすべきか(※注2)、 というところまで踏み込んで考えていかなければ、いくら口先で「反省」や 「お詫び」を口にしたところで説得力を持ち得ないでしょう。



(※注1)たとえば現在問題になっている、いわゆるブラック企業で、労基法に違反するような長時間労働やサービス残業などを直接的・具体的に命令しているところはおそらく少ないと思われます。ただ、無茶な( 通常の合法的な勤務時間では到底無理な)ノルマを課すことで、実質的には長時間労働を「強制」しているのが実情です。こうした例において、「直接的・具体的に命令したのではないのだから強制ではない」という弁解に納得する人はそう多くはないでしょう。


(※注2)これもまた現在問題になっている外国人研修生制度では、立場の弱い女性研修生に対するセクハラやレイプ(しかも泣き寝入りするケースがほとんど)が数多く発生していることが、ジャーナリストの安田浩一氏の著書『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』で取り上げられています。こうした例からも分かるように、慰安婦問題は単なる「過去に起こった悲劇」ではなく、現在の問題に取り組むためにもきちんと向き合わなければならない、きわめて「現代的」な問題でもあるのです。



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