The Japan Association for Transnational Studies

 国際総合研究学会の第48回(2010年度第3回)研究会は、2010年12月12日(日)午後2時から桜美林大学淵野辺PFCキャンパス第401号教室において開催されました。

歳晩ながら晴れ渡った冬空のもと研究者、実務家、院生などの諸賢計22名のご出席を得て、冒頭平田会長から励ましと洞察に溢れる開会宣言があった後、経営諸問題に関して資源最適化システムの提供、中国、ベトナムにおける会社機関の実態分析と提言等流動的な産業社会が今抱える事案に幅広く切り込んだ研究成果が開示されました。

フロアからは理論、実務両面から計20件もの質問、確認、提言が出され、報告者との丁々発止の談論で「数え日」となった師走の会場は熱気と高揚感でいやがうえにも盛り上がりました。

第一報告は桜美林大学大学院博士後期課程に中国から留学中の廉玉丹氏による「非流通株改革以降の中国上場企業における株式所有構造の変化」と題する報告でした。報告者はこれまで当学会研究会や学会報で積極的に論考を発表されていますが、今回の報告は膨大な文献資料を緻密な統計手法で分析し中国の大株主支配構造の変化と企業パーフォーマンスの相関関係を解明しようとする試みで、研究の今後の進展が大いに期待できるものでした。

第二報告は大学、大学院で数学をご専攻の経歴をお持ちのSAP認定コンサルタントとして産業界でご活躍の堀田康隆氏が「SAP ERP市場の現状および未来」と題して報告されました。経営資源の効率的配分を助長する専用情報システムの普及に業として従事する実務者の立場から業界の生き残り策の要諦を明確に指摘されました。一見専門性が高く馴染みにくいテーマでしたが、需給関係に悩む業種に共通する問題の解決策を考える契機となる報告でした。

第三報告は神奈川大学経営学部教授丹野 勲氏による「アジアのコーポレート・ガバナンスと外資政策―ベトナムを中心としてー」と題する報告でした。報告者は、2010年春『アジアフロンティア地域の制度と国際経営』と題する労作を出版されていますが、この中から日本の経済パートナーとして近年重要度を増しているベトナムの制度、法体系を時間軸を加味して吟味した報告であり、現地調査を重ねた実証的な分析の成果が説得力溢れる発表につながりました。

編集担当注:ご報告の詳細は丹野 勲(2010)『アジアフロンティア地域の制度と国際経営―CLMVT(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ)と中国の制度と経営環境―』を参照されたい。


関連ページ:第47回(2010年度第2回)研究会ニュースレター第51回(2011年度第2回)研究会ニュースレター

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