The Japan Association for Transnational Studies

第1報告

中国の自動車企業とFTA ―海外進出動向とFTA効果分析―
 報告者:金 永洙氏(桜美林大学大学院博士 後期課程)
 司会者:岩井 清治氏(桜美林大学)

報告要旨

中国は2006年において自動車販売は世界2位、生産は世界3位になり、過去の高関税で保護される危機感から一転して自動車産業の海外進出を議論するようになった。まだ、輸出量は少ないものの2005年からは輸出台数が輸入台数を超過し、政府は今後国内生産の10%を輸出する目標を掲げている。            
自動車輸出の主役は民族系中堅自動車企業の奇瑞汽車、吉利汽車などである。
海外進出に熱心である原因としては、

増値税の17%が還付できること、海外での販売価格を国内より高く設定して利益率を高めること、国内市場で大手自動車企業との競争を避け、生き残りを海外で求めること、などがある。しかし、現段階は輸出量が微量にあり、輸送コストも通常より高い。また、低価格で商品差別化を図る段階にある。                    

一方、中国政府はFTA政策を積極的に推進しているが、現段階において自動車企業への効果は限定的である。
例えば、中国はACFTAでASEAN諸国と共に自動車関連品目の自由化猶予期間を長く設定している。
その結果、ACFTAは自動車企業の海外展開に充分貢献できてない。

特に、民族系中堅自動車企業には、輸出市場の確保が将来の存続問題に繋がる状況の下で、自動車関税撤廃の前倒しも視野に入れるべきである。
中国が締結国でないAFTAの場合は、中国自動車企業が完成車輸出とCKD輸出をしているため現地調達率40%の
クリアができない。今後は進出先でのサプライヤーシステムの構築も必要であろう。
(金 永洙記)


関連ページ:2008年度研究会第1回-2

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