The Japan Association for Transnational Studies

第2報告


ある置き手紙―異文化交流の足跡と展望

 報告者:長谷川 晃氏(当学会副会長)
 司会者:董 光哲氏(江戸川大学准授)

報告要旨

人類の社会的、経済的、国際的活動は、当然のことながら、その経済活動の主体である民族国家の歴史的、文化的背景を前提として、実施されている。従って、異国、近隣、類似行為を活発に行なう国家相互間でも、「人類経済」という視点から、それが意識され、活動の同質性が確認されてきている。つまり、経済の世界は、一つであるという認識が国際間にある。しかし、一個の国民国家の立場から見れば、異国の実情の捕捉は不可欠であるにも拘らず、ともすれば、偏見や誤解に阻まれて、無駄な努力に悩まされることも多い。

 世界の諸民族が、経済生活などの、人類的な活動を展開する上で、異国、外国をどのように認識してきたかも、その国の当面の活動の根底を知る上では不要なことではないと思う。言い方は、やや大袈裟だが、ここではわが国が、フランスという西ヨーロッパの、一つの非常に特徴的な民族国家と接触し、人間社会のあり方を比較する上で、どのように接触を開始したかを、垣間見た結果を報告したかったのである。

 それは、北方辺地の漁民たちの、一種の魚場争いから発生した、帝政ロシアの、一海軍将校による、一枚の脅迫状から始まったのだった。

 ここでは、一通の国際的な脅迫状の解読に端を発して、わが国が、近代国家としての政体や社会組織、軍事体制の整備に至るまでの影響を受けた、フランス共和国との交渉史にもなる部分の、最初の一ページとでも言う試論を、諸賢に問おうとして謹呈したものである。ご批判、ご助力をお願いするものである。
(長谷川 晃記)


関連ページ:2010年度研究会第4回-12010年度研究会第4回-3

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