人型じゃなくて原型で想像してくだしあ
5-548様

もぞり もぞりと、肩の辺りで変な感触
目を覚ますと、枕元に毛むくじゃら

「・・・なにしてるの?」
『求愛行動』

もぞり もぞりと、布団に入ろうとしている

「いつもみたく、びょんびょんするのじゃなくて?」
『え、と』

「布団入りたいなら、入っていいよ?」

布団をばさりとめくって促す

『あ』
「どしたの?」

『言い間違えてた』
「何と?」

『生殖行動』

もぞり もぞりと布団に入ってこようとする
ばさりと布団を閉ざして止めた

『だめ?』
「駄目。」

『大丈夫』
「何が?」

『終わっても食べたりしない』
「そういう問題じゃない。」

『じゃあ、なんでだめ?』
「結婚する迄は清い体でって、約束したでしょ?」

『・・・した』
「でしょ。」

「しかもそっちから。」
『・・・でした』

すごすごと布団から離れようとするのを引き止めた

「求愛までならいいよ。夜中だから、静かにね。」
『わかった』

目の前で歩脚をふいふいと振り、とてとてと奇妙なステップを踏む
いつもより勢い控えめに

「なんか微笑ましい。」
『真剣』

「うん、わかってる。」


一頻り踊り終えると、満足そうに腹部を揺らした
事に至らずとも、求愛するだけでもそれなりに満足らしい

『終わった 寝る』
「布団、入ってもいいよ?」

布団をばさりとめくって促す

『入る』
「ん。」

もぞり もぞりと布団に入ってきた
というより、大きすぎて布団全体を持ち上げてしまっている

『ぬくい』
「ん。」

片側四本の歩脚と頭胸部の間に挟まれ、抱え込まれた

「ぬくいね。」
『ん』

獣とは違う、不思議な感触の体毛
抱きついて、頬を擦り寄せる

『求愛?』
「求愛。」

毛むくじゃらな頭胸部と、まるっこくてつやつやとした眼が擦り寄せられた

「求愛?」
『求愛』

もぞもぞとこそばゆい肌触り
忘れていた眠気が戻ってくる

『ん?』
「ん。」

折り曲げた脚と、縮こめた身体を更に縮ませて、しっかりと抱き寄せられた
睡魔を増長させる、桁違いの安堵感

丁度目の前の眼と目が合った
見つめてから、ゆっくりと目を閉じる

おやすみと言われた気がするし、おやすみと言った気もする
何も言われなかった気がするし、何も言わなかった気もする


幸福という言葉で言い表してしまうには
幸福過ぎる
幸福な

そんな日々


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