6-680様

薄桃色の小さな唇をきゅっと結び、少女は緊張した面持ちで、冷たい小岩に腰掛けていた。暖かな陽の光のあたる森の小道から少し逸れた草むらの隅で、少女はずっと、下を向いたまま動かない。
握った手を膝の上に揃えて乗せ、何かに耐えるように、か細い腕をぴんと伸ばして突っ張っている。

自分はいったい何をしているのだろう?

そう自問しようとしたが、神経が高ぶっているのか、
雑念がどっと頭の中に流れ込んできて、思いが上手くまとまらない。
無方向に渦巻く意識に嘲笑われるように、少女の可憐な心は、なすすべもなく翻弄されていた。
空気が冷たい。
ふわりと風が揺れるだけで肌に寒さを感じ、見開いていた瞳をぎゅっと閉じて耐える。
少女は、秋口の気候には不釣合いなほどの薄着だった。
袖の短い、ピンク色のワンピース姿。
異常、の一歩手前ほどの違和感を漂わせている。

ゆったりとしたサイズの服を選んだにもかかわらず、
腰から腿へのラインはわずかに煽情的な曲線を描いていて、
大人に差し掛かった、少女なりの性徴を主張している。
膝が半分顔を出すほどの裾丈は、神父様が見たら「はしたない」と咎めるにちがいない。
健康的に伸びた剥き出しの脚、染み一つない美しいくるぶし、きゅっとすぼまった小さな踵。

少女は素足の状態だった。
そのつま先に力が入って、小さく丸まっている。
いつもは下ろしているブロンドの長髪を、今朝は初めて結ってきた。
すらりとしたうなじを抜ける風に、少女は心細さを感じずにいられない。
憂いを帯びた睫毛が小さく震え、形のよい鼻先は、少し赤味がさしている。

そっと飲み込んだはずの唾液が、「んっ」となまめかしい音を立てた。
少女の肩がびくりと動き、ますます緊張が高まってしまう。

自分はいったい、何をしているのだろう?

ぐるぐると回る頭の中で、異常な行動を続ける自分に、少女は何度となく問いかける。
だがその度に、焦りに似た感情が心を掻き乱す。
少女はそれらを追い払うように、強くかぶりを振った。

いつもならば、少女はそろそろ街に到着している頃だ。
小さな噴水がある、石畳の広場の隅で、優しい笑顔を湛えて立っているのが日常だった。

花売りを生業とする少女のバスケットに、しかし、今日は一輪の花も咲いていない。
中に入っているのは――下着と、着替えのための服だった。
数日前、街へと通じるこの道で、少女は淫魔に襲われた。
泣き叫ぶことも叶わぬままに草むらへと引きずりこまれ、
誰も見ていない森の中で、幾本もの触手に、大切な処女を奪われた。
強姦だった――少なくとも最初のうちは。

おぞましい触手がうねうねと蠢き、少女は恐怖で身体が固まってしまい、身動きがとれない。
声帯まで麻痺したのか、喉が震えて声もうまく出せない。
そこへ、思いもかけぬ淫魔の巧みな性戯が、無防備な少女に容赦なく浴びせられた。

おわん型のなだらかな膨らみをもった少女の乳房が、触手によって執拗に愛撫された。
撫でる様なしぐさから始まって、両胸をよせ、揉みしだくように、
徐々に強く、ねっとりと絡みつく。
その頂にあるピンク色の小さな乳首は、唇にも似た繊細な感触で、優しく吸い上げられた。
触手から分泌された粘液が潤滑油となり、乳首全体に微妙な刺激が与えられる。
触手に全身を拘束されながら、少女は身体の隅々まで愛撫され続けた。

靴を脱ぎ取られ、素足から長く伸びた脚の付け根、太ももの内側へと巻き付かれる。
服を絡め取られ、へそから横腹、剥き出しにされた白い腋へと順に吸い付かれる。
なめらかな素肌に覆われた肩から鎖骨、ほっそりとした首筋まで、這うように撫で上げられる。

まるで少女の身体を知り尽くしているかのように、
触手が馴れた動きで全身を撫でさする。
少女の性感を幾重にも封印していた理性という名の薄絹が、
触手によって、一枚ずつ、丁寧に剥ぎ取られていく。
性の合意を伴ってもいないのに、全身から泉のように快感が湧き出し、
少女の頭は激しく混乱した。
そして少女の白いパンティがするりと引き抜かれ、
誰にも見せたことのない乙女の性器が露わになる。
隠されていた少女の幼い花びらとめしべに、
突起を持った触手が密着して絡みつき、間断なく擦り上げる。
粘液を伴って花びらの内側にはりつき、前後に動く。
触手の先端がめしべに巻きついて、吸い上げるように締めつける。

美しい眉をきゅっと寄せて、押し寄せる快感と闘ってきた少女の最後の理性は、
腰から熱く湧き上がる感覚に、あっけなく白旗をあげた。
性器に与えられる甘い快感に少女の膣はそっと蜜を出し、
小陰唇をうねらせ、腰を寄せてついに触手を中へと導き入れた。

初めてのセックス。初めての交尾。

少女の頬は羞恥と快感で朱に染まり、ふと力の抜けた口元から、熱をもった吐息が漏れる。
触手は呆れるほど自在に形を変え、まるで処女膜など存在しないかのように、するりと潜り込む。
そして、少女の子宮口を目指してまっすぐ侵入する。
挿入から抽送は驚くほどスムーズに進み、触手と絡み合うひだとの摩擦による快感が、
少女の身体の隅々を駆け巡った。
膣の内壁が触手の複雑な動きに反応し、意図せずして少女の膣が収縮をはじめる。
破瓜の痛みよりも先に、初めてのオーガズムが近づいていた。
少女は両脚を広げ、つま先を突っ張らせた。
その快感を逃すまいと、本能がそれを追い求める。
ついには腰を大きく反らし、うっと声を詰まらせながら、少女は激しく絶頂した。
びくっ、びくっと腰を震わせながら、生まれて初めての快感を、むさぼるように味わう。
少女の体内では膣がリズミカルに収縮と弛緩を繰り返し、中で蠢く触手もたまらず射精する。
温かな液体が触手の痙攣とともに体内で射出され、じんわりと子宮に広がっていくのを少女は感じた。
そしてまた、少女の腰が跳ねて膣が締まった。

充足感で満たされていく身体を互いに確かめ合うように、
少女の膣がきゅっと圧迫して、触手に2度、3度と射精を促す。
触手がそれに答えるように、収縮に合わせて射精を繰り返す。
初めての性交にもかかわらず、少女は淫魔の触手と、深く結ばれた。
感じてはいけない幸福感が、少女の身体を支配していく。

やがて最初の触手が果てると、他の触手たちが待ちきれないように、少女の花びらに群がった。
そして、膣口を奪い合うようにして、2回目の挿入が始まる。
少女は、抵抗しなかった。
狂おしいほどに甘く続いた交合の後に、淫魔があっさりと自分を解放した理由が、
少女には未だに理解できなかった。
覚えているのは、草むらに寝かされ、ご丁寧に裸体の上に服まで掛けられた状態で、
快感による失神から目覚めてからだ。

頭がぼうっとしてけだるく、少女は何が起こったのか、しばらく判然としなかった。
草むらに寝かされたまま、全身から感じられる甘い痺れのような余韻にしばらく浸る。
数刻の後、よろよろと少女は起き上がると、ようやく事の重大さに気づき始めた。
淫魔に対する恐怖と、それにもかかわらず性に溺れてしまった羞恥に顔を真っ赤にしながら、
少女は慌てて着衣を身にまとった。
そして、力が抜けてままならない下半身に困惑しながら、這うようにして村へと帰った。
野道で淫魔と性器を交え、初めての絶頂を迎えましたなどと、誰に打ち明けることができようか。
ふらふらになりながら家に辿り着いた後は、育ての親の神父様への挨拶もそこそこに床に就き、
秘所でうずく快感の残り火を、少女自ら、秘かに慰めた。


だが悲しいかな、少女一人では、いくらクリトリスに指を絡めて擦り上げても、
熱く溢れ出るあの快感は再現できない。
淫魔の触手がもたらした繊細かつ力強い感触は、
自慰の経験に乏しい少女には、再現困難なものであった。
そればかりか、迫り来る絶頂の恐怖にすら少女は耐えられない。
たどたどしい指先の動きが、やっと性の快感をとらえ始めたという所で、
少女自身が身を固くして指を止めてしまう。
その切なさともどかしさに気が狂いそうになり、
彼女は夜毎ベッドの上で自慰に耽っては、
ひとりベッドの中ですすり泣いた。

結局、自分ではない他の誰かに性器を擦られる事でしか、
あの快感は得られないのだと彼女は察した。
自分ではない、他の誰か――。
普段、清楚で大人しい振る舞いを見せていても、少女は少女だ。
秘かに想いを寄せる少年ぐらいなら存在する。
だが、いくら好きとはいっても、幼い頃からふざけあってきた同じ村の少年である。
いきなり森の中へと誘い込んで少女の性器を晒し、擦りあげて欲しいとお願いするなど、
内気な彼女には死んでも無理な話だ。

だからといって、この疼きが神父様への懺悔ぐらいで消えてなくなる類のものじゃない。
そんな事ぐらいは、私にだって分かる。
でも他の男、あまつさえ見ず知らずの男には、自分の身体を差し出せない。私は売春婦じゃない――。
少女は思い余って、飼い犬のペロに、自らの性器をそっと差し向けてみた。
家の裏側で、無邪気に尾を振る犬の前で、スカートの裾をまくってパンティを脱いだ。
少女はためらいながら大陰唇を広げ、その下に隠された花びらとめしべを晒し、ペロの口元に近づける。
だが悲しいかな、犬には言葉が通じない。
クンクンと鼻を近づけて匂いを嗅ぐ程度で、かえってもどかしさが募る。
ペロが大好きな蜂蜜を少し塗って、半ば強引にクリトリスを舐めさせたが、力は弱かった。
淫魔の性戯に溺れてしまった少女には、とても満足できるものではない。
そればかりか、途中で神父様に見つかりそうになって、少女は驚きのあまり失禁しかかった。
慌ててパンティを穿いてごまかしたが、もう二度とこんな危ない橋は渡れない。

少女は追い詰められた。

誰も見ていないところで、誰にも知られないように、どうしてももう一度、あの快感を味わいたい。
そのためには…。

同じ相手に、もう一度抱かれること。
単純な答えが、そこにあった。
あまりに淫らな発想に、最初少女は激しく自己嫌悪した。
自分はどうかなってしまったのだと、その性欲を強く追い払おうとしたが、
結局、あの甘い性の喜びから、少女は逃れることができなかった。
強い屈辱を感じながらも、少女は周到に準備を重ねた。

そして今、少女は小岩に腰掛けている。
森に入ってから、ずっと緊張のし通しだ。
身に付けたワンピースが、時折秋風にはためく。
その袖口から少女の小ぶりな乳房と、その頂にあるピンクの蕾が見え隠れする。
下着もつけずに、少女は一人、身を固くしてその時を待っていた。

ずっ、ずっ、ずっ。

静かな森に、草の上を這いずる音が、少女の耳にかすかに届いてくる。
まだ2回目なのに、少女は瞬時に、その音が意味するものを理解した。
人ならざる異形の気配。
触手をくねらせ、淫魔が近づいているのだ。
少女が放つ甘酸っぱい匂いを求めて、淫魔が少女に近づいているのだ。
頭の中で必死に思い描いたのに、少女は結局、
この瞬間から先の事は何も考えられなかった。
人には言えない淫靡な企みごとを山ほど積み重ねたのに、
いざその欲望が叶うとなると、思考がぴたりと止まってしまう。

――あの時と同じように、淫魔に身を委ねよう。

それが少女の出した、性に対してあまりにも真っ直ぐで、幼い答えであった。
セックスを理解するには少々早かったはずの少女の花びらは、
彼女の両脚の付け根にひっそりと息づき、
これから始まる淫魔との甘い肉の交わりを予感して、
今まさに、甘く匂い立っていた。

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