29. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:25:31 No.10233772
一匹、ラプトルが辺りを見回す
見えるのは入り組んだ廃墟ばかりで何時も共にいた家族の姿はない、逸れてしまったのだ
混乱しつつもその姿が近くにあるのではないかと探し求めるが、一向にその姿は見つからない
気が付けば破裂したパイプやゆがんだ鉄筋に視界を阻まれ、引き返す事すらも困難な場所へ迷い込んでしまっていた。

気を落とし、当て所無くトボトボと薄暗い道を歩く
少し視界が開けた場所に出てみると、夜が近づいているのが見えた
やがて腹の減ったラプトルは迷わずにトプフライを数匹捕まえ、衣を引き剥がして貪る
夜は長い、腹を満たしておかねば飢え死んでしまう。

腹を満たすとラプトルは幾分か落ち着いた
よく考えれば生き残っていれば、また家族と会えるかもしれない、きっと会えるに違いない
そんなわずかな希望を胸にしてラプトルは近場の穴に籠ると、蓋をして瞼を閉じた
夢の中、映るのは家族との日々、また会えるのだろうか?

31. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:26:25 No.10233775
「キュイ?」
黄色い光に目が覚める、夜はもう去った後のようだ
寝ぼけまなこを擦ってそれを見つめれば、そこに精霊さまが見えた

家族から教わった、ずっとずっと前の前のその前からこの土地に住まう、光る生き物、それが精霊さまだ
不思議なそれは、私を見つめる

「コンニチハ、ラプトル、トプニ、ツイテキテプス」

精霊さまが、優しいまるで家族のような声で何かを言っている、意味は分からないが、きっと何か重要なことに違いない!
そうだ!精霊さまがわざわざ自分に近づいてきたのだ!
家族に案内してくれるのだろう!

32. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:27:25 No.10233785

……
………
ラプトルはそう思い込み、精霊を、そう呼ばれた立体ホログラムAIを追いかけた

それから、ラプトルはムゲツァールの飛ぶ山を越え、
ルーミアキスの群れが棲む廃屋を通り、イクチオサウルスの犇めく海を泳ぎ、
発光するナズマイアと協力して暗い洞窟のような地下トンネルを越えた

本来貧弱なラプトルであっても家族を思えば、何処までも力が出た

幾度かの夜を越え、物静かな光のさす廃墟の折り目が如き場所へ到達すると、そこでホログラムは動きを止めた
………
……


33. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:28:10 No.10233790
「アト、モウチョットプス、ガンバッタプスネ、ラプトル」

「キュー!」
精霊さまが何か言っている
意味はわからないままだが、きっと自分を労っているのだろう、何か、わかるのだ
さぁ、もうひと踏ん張り!…の前に、少し眠ろう…

34. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:28:39 No.10233794
その夜、こわい、こわい夢を見た

家族が、なにも言わずに薄く、薄くなってそのまま消えてしまう夢
夢なのに、とても現実味があった

「オハヨウ、キョウモススモウプス、ソロソロルナノトコロにツクプス」

精霊さまの声が耳に届く、悪夢に怯えた自分を慰めているのだろうか?違う気がするが、今はそう思っておこう
そうでないと何か、嫌なことに気が付いてしまいまそうだから。

35. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:31:33 No.10233805
今まで通り導かれるまま精霊さまについて行くと、広場のような場所へ出た

「ココダヨ、ルナノオハナシヲキイテプス」

何か一言喋った後、精霊さまは体をかがめじっと動かなくなった
其処には青い髪をした、自分の知るどの生き物とも似つかないが、とても美しい生き物が佇む
きっとこの方は精霊さまの主…もしかすれば神さまなのかもしれない

「やっとお話の出来る子が現れたのね!私は清蘭、識別名はルナよ!よろしくね!」

嬉しそうな声だ!私を歓迎してくれているのかな?

「あれ…?あ、あなたお話が通じるんじゃないの…?まめトプの記録だと通じてるみたいだったけど…」

どうしたのかな…難しそうな顔…神さまに私何か失礼なことしちゃったのかな…?

36. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:33:24 No.10233813
「うーん…どうしたらいいのかな…まめトプ、ちょっと来てちょうだい」

「オオセノママニ、ナニヲスレバヨロシイプス?」

神さまは、精霊さまと話し始めてしまった
…少し待って居よう、真剣な様子なのだ、迂闊なことをすれば神さまはきっと怒ってしまう

「まめトプはこの子とおしゃべり出来るのよね?記録映像だとそうなってたけど…」

「ヨビカケニオウジテ、ツイテキテクレタプスケド、ツウジテイルカハアヤシイプス」

「えぇ…まぁでも導く通りに生きてここまで来てくれた初の例よ、なんとかしてコミュニケーションをとらないと…」

38. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:38:59 No.10233845
「ズヲツカウノハドウプス?ハナセナクテモ、ツウジルトオモウプス」

「それよ!図でBLUE RINGOを回収するように伝えるのよ!」
「リョウカイプス」

話し終えたようだ、神さまは精霊さまに指を指すと、精霊さまは光り始めた
精霊さまの体に何か…風景のようなものが浮かぶ、それは少しずつ動いて…

どうもこれは神さまが青い果実を無くし、何か困っているという事を伝えているらしい
私に記憶を見せているのだろうか?神さまの力はすごいなぁ
39. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:39:37 No.10233852
さらにそれは続く、失われた果実を、どこかから私が取り戻す姿だろうか
…なるほど、神さまは私に果実を取り戻して貰いたいのだろう
そうだわかったぞ!そしてそれが叶った時、私を家族のもとへ案内してくれるということだ!

「キュイ!」
「うん、わかったみたいね…危険だと思うけど…よろしく頼むわ」

神様が微笑む!きっとこれであっているのだ!

「コッチダヨ、ツイテキテプス」

精霊さまが動き出す、これまで通りということなのだろう、
私は小走りで、その後を追った

40. 無題 Name としあき 2018/03/31 00:44:06 No.10233868

……
………
それからのラプトルの旅路はこれまでと比べても一層過酷だった
体を千切られかけながら凶暴なジュンコサウルスの猛攻から逃れ、ラプトルーミアの追跡を振り切り、吸血オパビニアキュウに吸いつかれつつ沼地を這い、たどり着いた場所は地上とは思えない、重力のない場所だった

その中枢に近づくにつれ、何か不穏な気配があふれる。

だが、全ては家族に会う為と思えばラプトルは臆さない、怯えない、迷わない
空を泳ぎ、ついにその最深部へと辿り着く
………
……

つづくよー

■ SEARCH

■ JURASSICS BIRTHDAY

■ SHELTER

■ OMAKE ver.2024

どなたでも編集できます