118無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:24:38No.16093102そうだねx11

そのラプトル清蘭は洞窟に住んでいた。物心つく頃には親もなく、長い時間を独りで生きてきた。洞窟は広く複雑で、大型のジュラシックが通れないような狭い道も多くあった。洞窟内の道を熟知したラプトル清蘭にとっては庭のようなもので、稀に迷い込む肉食ジュラシックがいても容易にまくことができた。水は地下水脈があるし、地上の光が差し込む空間には少量ながらyasai も生える。コウモリや地底湖に住む洞窟生の魚など餌にも困ることはなかった。ゆえにそのラプトル清蘭はほとんど洞窟から出ることなく暮らしていた。独りでいることが当たり前のラプトル清蘭は孤独を感じることもなかった。

119無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:25:04No.16093103そうだねx11

ある時、洞窟に一頭の鈴瑚トプスが迷い込んできた。外敵に襲われたのか、仲間同士で争ったのか、あちこちに傷があり疲れ果てていた。ラプトル清蘭はいつも通り洞窟の奥に隠れ、やり過ごそうとした。鈴瑚トプスは動かず、座り込んだままじっとしている。他の肉食ジュラシックのようにこちらを探したり追いかけるそぶりはない。その姿に危険はないと察したラプトル清蘭はだんだんと興味が湧いてきた。始めは遠くから、少しずつ少しずつ近づいていく。途中で鈴瑚トプスも気づいたらようだが、一度目を向けたきりでまたうずくまってしまった。

120無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:25:35No.16093104そうだねx11

ついに触れるほどまでラプトル清蘭は近づいた。もちろん、何かあればすぐに逃げられる態勢ではあった。しかし鈴瑚トプスはただ目を向けるだけだった。どこか疲れ果てたような穏やかな顔にラプトルは警戒を解いた。一度洞窟の奥に戻ると、貯蔵しているyasai を水に戻して持ってきた。それを鈴瑚トプスの前に置くと鈴瑚トプスはにおいを嗅ぎ、ラプトル清蘭の方を見た。ラプトル清蘭が何も言わず見返していると鈴瑚トプスはゆっくりとyasai を食べ始めた。それを見てラプトル清蘭はなんだか嬉しくなってきた。再び洞窟の奥へ走るとさっきより多くのyasai を持って戻ってきた。与えられた食事を鈴瑚トプスはゆっくり、味わうように食べた。

121無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:26:44No.16093106そうだねx11

そうして二日ほど経った。鈴瑚トプスはすっかり元気になり、洞窟内を歩き回るようになった。ラプトル清蘭は一緒について周り、洞窟の中を案内してまわった。教わったことの一つ一つに鈴瑚トプスは驚き、喜び、不思議がり、様々な反応を返す。ラプトル清蘭はそれが嬉しくて、少しこそばゆくて、自分の知っているあれこれを教えてまわった。
完全に傷が癒えてからも鈴瑚トプスは洞窟に残り続けた。お互いに気を許した2匹は一緒になって眠り、生活を共にした。ラプトル清蘭はとうに忘れていた、他の誰かと分かち合う生活を噛み締めた。

122無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:27:20No.16093107そうだねx11

ある日、ラプトル清蘭が目を覚ますと鈴瑚トプスは居なくなっていた。これまでも四六時中一緒だったわけではなく、トイレや水を飲みに行ったりで離れることはあった。しかしこの日はどれだけ待っても帰ってこない。痺れを切らして水場やトイレを見て回るも一向に鈴瑚トプスは見つからなかった。途端にラプトル清蘭は怖くなってきた。これまで感じたことのないような寂しさと心細さが湧き上がる。ずっと平気だったはずの孤独がこんなにも恐ろしいものだなんて、知りもしなかった。とうとうラプトル清蘭は鈴瑚トプスを探して走り出した。臭いを辿り、洞窟を飛び出す。何度も何度も、大声で鈴瑚トプスを呼んだ。それがどれだけ危険なことかなど構っていられない。ただ鈴瑚トプスに会いたい一心でラプトル清蘭は走り続けた。

123無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:28:00No.16093109そうだねx11

不意に目の前の茂みが揺れ、巨大な影が飛び出してきた。獲物を探していたジュラシック娘々だ。最後の瞬間までラプトル清蘭は鈴瑚トプスを探し続けていた。

124無題Nameとしあき 23/02/26(日)01:28:29No.16093110そうだねx11

洞窟に向かって一頭の鈴瑚トプスが歩いている。背には藁束と外で採れるyasai が乗っている。あの洞窟を棲家にすると決めて巣材を集めに行ってきたのだ。一頭分だけでなく、ラプトル清蘭の分もある。ラプトル清蘭は気に入っててくれるだろうか。ダメなら一緒に探しに行こうと鈴瑚トプスは考えていた。
洞窟に帰りついてもラプトル清蘭の姿はなかった。水でも飲みに行っているのか。鈴瑚トプスは藁を敷き、その上に寝転がってラプトル清蘭の帰りを待つことにした。お腹は空いているがyasai には手をつけない。一緒に食べた方がきっと美味しいに違いないから。そうして鈴瑚トプスはラプトル清蘭を待ち続けた。ずっと、ずっと。いつまでもずっと。

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