73 無題 Name としあき 22/09/01(木)22:35:00 No.15689956 そうだねx11
「「「「「「「「「「キュイ―!」」」」」」」」」」
平原をラプトルが埋め尽くしている。今日はラプトルの日。キュイと鳴くラプトルたちは居ても立ってもいられない。
彼女たちはは雄たけびを上げる。圧倒的な数の暴力に捕食種も遠巻きに見ていることしかできない。
ラプトルの日という名の通り今日に限ってはラプトルが謎平原を支配していると言っても過言ではないだろう。
しかしながら問題がひとつあった。
9月1日は二百十日と重なることが多い。今年も案の定二百十日に台風がやってきていた。
しかし今年のラプトルたちは抗った。身を寄せ合い雨で体を冷やすこともなければ風で吹き飛ぶこともなかった。
だが雷だけはダメだった。ラプトルの集団の近くに雷が落ちる。近くにいたラプトルが何匹か吹き飛ぶ。
直接落ちたわけではないので息はあるものの重症だった。

74 無題 Name としあき 22/09/01(木)22:35:16 No.15689959 そうだねx8
勝てないのか。ラプトルの日でも雷には勝てないのか。どうして同じ日にやって来るのか。
ラプトルたちは歯噛みしながら天を睨んだ。
ゴロゴロ…ガラガラ…遠雷の音は今なお空を駆け巡っている。
ガラガラガラ…ゴロゴロ…ドンドコドコドコドコ…ドンガドンガ…
雷の音にまじり何か別の音が聞こえる。ラプトルたちは訝しみその音の源を探した。
その刹那、雷光が天を走る。その閃きの中にラプトルたちは一つの影を認めた。
ズゴァン!と先ほどとは比べ物にならないほどの大きさの雷鳴がとどろき渡るや稲妻はすべてその影に吸い込まれていく。
代わりに響き渡るのは太鼓の音だ。雷が打ち鳴らされる太鼓のリズムに乗って踊っている。
その響きは力強く雷に負けないほどのエネルギーを持っていた。
ラプトルたちは皆思わず跪きその影に向かって手を合わせた。

75 無題 Name としあき 22/09/01(木)22:35:31 No.15689962 そうだねx10
スティライコサウルスにとって二百十日は待ちに待った日だった。
雷鳴に加え嵐というもの自体が血を滾らせるような高揚感をもたらす。
温厚なスティライコサウルスもこの日ばかりは武者震いが全身を走る。
両前脚と尻尾でバチを握りしめ準備は万端だ。スティライコは大きく息を吐いた。
視界の端に雷が落ちるのが見えた。スティライコは考えるより早く駆けだした。
もう自分の中にあるビートを押さえることなどできない。走りながらもスティライコは感じるままに太鼓を叩きまくった。
現場に着いた瞬間雷光が空を包む。タイミングが良かった、というだけではない。
スティライコ自身が雷をおびき寄せたのである。
後はもう叩くしかない。自分が誰かとか、何をしたいとかそんなことを考えてる暇などない。
雷鳴はそのままビートになる。稲光はそのままド派手な照明だ。
スティライコは一心不乱に太鼓を叩き続けた。

76 無題 Name としあき 22/09/01(木)22:35:47 No.15689965 そうだねx10
我に返ったスティライコはすさまじい量のラプトルの一群に崇められているのに困惑した。
ラプトルたちの目は完全に超常的な存在に向けられるそれであった。
スティライコはとりあえず大量に焼きあがった太鼓せんべいを振舞う。
聴衆にはそれなりの感謝を示さねばならない。
ラプトルたちは更に沸き立った。神だ。ラプトルの守護神が降臨したのだ!あまりの感動に泣き出すものさえいた。
「「「キュイ…」」」数匹のラプトルがスティライコの前に進み出た。
先の落雷で負傷したラプトルを背負っている。神様、どうか助けて。とそう目が告げていた。
スティライコは困ってしまった。私には太鼓叩くしか能がない、治してやることなどできるはずもない。
でも助けてあげたい。助けてあげられる人は…
そこまで考えたところでスティライコは負傷ラプトルを皆一気に背負うとラプトル達に大丈夫、と目で告げて駆け出して行った。

77 無題 Name としあき 22/09/01(木)22:36:31 No.15689968 そうだねx13
スティライコは恐ろしい速さだった。なんせ雷エネルギーは充分だ。こんなに速く走ったことなど経験がない。
後からはどうにかこうにかラプトル軍団が付いてきている。もともと俊敏なラプトルだが神の行くところへはどこへでもついて行く、そういう思いがラプトル達を動かしていた。
スティライコは妖怪の山の方へ駆けて行った。玄武の沢でも天狗のすみかでも神社でもなく何の変哲もない山の一角をめがけて走った。
そしてそこにある一軒家にたどり着くとバタン!と乱暴なほどに勢いよく戸を開けた。
「あれーーー!?ライポンじゃーん!?どしたのー!?」
「おいおいこんな嵐の日に勘弁してくれよ折角戸板打ち付けといたのに…ってどうしたのそのラプトル!!」
これ以降ラプトルたちの間でラプトルの日に雷からの守護と食べ物とケガ人を治す神ライポンが祀られるようになったというのは現在では広く知られている通りである。
 おしまい

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