8 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:38:50 No.10036621
それは一目惚れであった
「可愛いプス〜 番になりたいプス〜」
若いトプスは一匹のラプトルに恋をした
そのラプトルは少し淡い青色をしており、瞳はどこか深い沼のように陰りを湛えている
そのミステリアスな雰囲気が若いトプスを虜にしたのだった
「好きプス! トプの卵を産んで欲しいプス!」
若いトプスは平均的なトプスと同じ様に、溢れるリビドーを包み隠さず叩きつけた
「無理キュイ ごめんなさいキュイ」
ラプトルは表情一つ変えないまま、トプスの告白を断った
ラプトルに告白を断られたトプスの行動は、主に二つに分けられる
無理やり思いを遂げるか、崖から飛び降りるかである
しかし、このトプスはその二つを選べるほど、複雑にモノが考えられなかった
「分かったプス! 明日も聞きに来るから宜しくプス!」
トプスはそう言い残すと土煙を上げながら走り去っていった

9 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:39:08 No.10036624
翌日、約束通り、トプスはラプトルの前に表れた
口に咥えたninjinがバタバタと暴れている
トプスはninjinの足を前足で踏み折ると、ラプトルの前に差し出した
「トプとしたことが、プレゼントを忘れていたプス」
ラプトルはninjinの先端を口に入れるとゆっくりと咀嚼する
トプスは満足そうにそれを眺めている
「ちょっとムラムラしてきたプス」
とてもゆっくりした食事が終わると、
ラプトルはペコリとお辞儀をした
「美味しかったキュイ ありがとうキュイ」
「でも番には、なれないよー」
ラプトルはまたも表情一つ変えないまま断った
トプスは少し驚いたが、すぐに目を輝かせた
「分かったプス! 明日も会って欲しいプス!」
そう言い残すと、土煙を上げながら走り去っていった

10 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:39:28 No.10036628
翌日、約束通り、トプスはラプトルの前に表れた
全身に痛々しい爪跡が走り、口にはhimawariの花を咥えている
「トプとしたことが、昨日はムードに欠けるプレゼントだったプス」
そう言うと、himawariの花をラプトルの髪に挿してやった
ラプトルは顔の横で揺れるhimawariに触れる
これを手に入れる為に、このトプスはどんな危険を犯したのだろうか ウインドカザミナスレックスの縄張りに潜り込み、彼女が育てているhimawariを摘み取る 自殺の比喩に使われる様な狂気に満ちた行動を目の前のトプスは成し遂げてきたのだ ラプトルの為に
「嬉しいキュイ でも…」
ラプトルは胸が張り裂けそうな感覚に襲われながら言葉を続けた
「やっぱり番にはなれないよー」
ラプトルは右手をトプスの顔にかざした
「わたしは病気だから、次の春は迎えられないキュイ 卵だって産めないキュイ だから…」
トプスはラプトルの言葉を遮った
「そんなの関係ないプス! トプと一緒に暮らすプス!」
トプスはラプトルを背中に載せると、自分の巣穴へと連れて帰った

11 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:39:52 No.10036629
そこから2匹は幸せに暮らした
トプスが捕まえたyasaiを食べ、dangoを丸め、月を眺めた
hosikusaの上で身を寄せ合って眠り、朝日を共に迎えた
そして、雪解け水が川を流れ出す頃、ラプトルは眠りから覚めることがなくなった
その顔は安らかで、満足そうな笑みを浮かべているようにも見えた
トプスは一筋だけ涙を流すと、ラプトルを背中に担ぎ、巣穴から出ていった
背中のラプトルに景色を楽しませる様に、トプスはゆっくりを歩く
その表情は意外にも落ち着き払い、少し散歩に出かけるような気軽さである

12 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:40:08 No.10036632
そうしてしばらく歩いていると、ジュラシックにゃんにゃんがトプスに話しかけてきた
「そこのトプちゃん 今からどこに行くまし?」
「番のラプトルが死んだから、トプは崖から飛び降りるプスー
トプにはもう生きる意味なんて無いプスからねぇ…」
トプスはコンビニに雑誌を買いに行くかのような、軽い口調で答えた
「待ちまし! トプちゃんは奇跡の泉の話を聞いた事あるまし?」
「奇跡の泉?」
「そうまし 死んだジュラシック1日だけ生き返らせてくれる泉まし」
トプスはその話を聞くとフンフンと鼻を鳴らしだした
「あの山の中腹に、一際大きい木が見えまし? あの辺りに泉があると聞いたことがありまし」
トプスは話を聞くやいなや、猛スピードで山へと駆けていった

13 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:40:46 No.10036639
野を駆け、岩を越え、トプスは三日三晩走り続けた
たとえ1日だけでもラプトルと話せるなら… 一緒にdangoが食べられるなら…
吐き出す吐瀉物に赤色が混じり出した頃、ついにトプスは奇跡の泉を見つけた
泉はぼんやりと金色に輝き、荘厳な空気を漂わせている
トプスは背中に背負ったラプトルをゆっくりと泉に沈ませた
しばらく経ってもラプトルは浮かび上って来なかった 泉に浮かぶ自分の顔を見つめながら、
トプスは独りごちた
「ジュラにゃんの言葉なんか信じたトプが馬鹿だったプス」
「崖を見つけて、さっさと飛び降りるプス…」

14 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:41:02 No.10036641
トプスは振り返り、トボトボと歩いた
「プス?」
目印にしていた一際大きい木の洞が、泉と同じくぼんやりと輝いていたのをトプスは見つけた
洞を覗き込むと、そこには淡い体色をしたラプトルが、体を丸めて眠っていた
ラプトルは幸せそうな顔をして、すやすやと寝息を立てている
トプスは感極まって泣き出すと、ラプトルに抱きつき顔を舐めた
驚き起きたラプトルはトプスの目をじっと見つめると、不思議そうに尋ねた
「あなたは誰キュイ?」

15 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:41:24 No.10036645
トプスが幾つか質問をしてみるが、ラプトルは全て「分からないキュイ」としか答えなかった
ラプトルは何も覚えていないようだった
トプスは少しがっかりしたが、自分が愛したラプトルが生き返ったことは、
心底嬉しかった
「ラプトル、トプと一緒にyasaiを取りに行くプス」
「いいよー」
2頭は日が暮れるまでyasaiを狩り、dangoにした
そして、集めたhosikusaの上で月を見ながらdangoを食べた

16 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:41:43 No.10036647
「もう眠いキュイ」
ラプトルが瞼を擦りながらそう言うと、トプスは少し寂しそうにしながら、
「トプと一緒に寝るプス hosikusaも集めたプス」
そう言って、hosikusaのベッドを作ってやった
月の光の下で、トプスはラプトルが眠るまで、頭をなでていた
「ゆっくり眠るプス… ゆっくり…」
そうやってしばらくラプトルの背中の体温を腹で感じていたが、
そのうち、トプスも微睡みに落ちていった
トプスの頬を一筋の涙が伝ってhosikusaの上に落ちた

日が昇ってしばらく経った後、トプスは目を覚ました
抱きしめていた青い身体は、すっかりと冷めきっていた
「1日だけ…、プスか…」

17 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:42:01 No.10036650
トプスは動かなくなったラプトルを身体の上に載せると、ゆっくりと歩き出した
「いい崖はこの辺にあるプスかねぇ…?」
投身するための崖を探すため、トプスは辺りを見渡す
しかし、この近くにはトプスをラプトルの元に送ってくれそうな崖は見当たらなかった
「ふぅ…」
トプスは腰を落とし、一息入れる ふと、昨日と同じく淡く光る奇跡の泉が目に付いた
「もしかして…」
トプスは昨日と同じく、ラプトルをゆっくりと泉に沈めた
暫く経つと、再び、一際大きい木の洞が光りだした
「やっったプス!」
トプスは一目散に駆け出し、洞を覗き込んだ

すると、淡い青色をしたラプトルが、身体を丸めて眠っていた

18 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:42:31 No.10036654
トプスは喜びのあまり、地面を踏み鳴らした
毎日ラプトルを泉に入れれば、ラプトルと離れることはないのだ
トプスが頬を舐めると、ラプトルは目を覚ました
そして、不思議そうな顔をして、尋ねた
「あなたは誰キュイ?」

その日からトプスの不思議なライフサイクルが始まった
朝目覚めると、冷たくなったラプトルを泉に沈め、
洞で眠るラプトルを起こし、自分と番だったことを伝える
そして、日が暮れるまで、ラプトルと共に過ごし、
月を眺めながら共に眠る

19 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:42:47 No.10036658
数日はこの生活に満足していたトプスだったが、段々とラプトルと自分の思いのギャップに悩み始めた
自分は胸がはち切れそうな程ラプトルを想い、沢山の思い出があるというのに、
ラプトルにとっては初めて会ったトプスでしか無いのだ
トプスは自分との思い出を岩に掘ったり、ラプトルが付けた木の傷などを見せて思い出させようとするが、
ラプトルがトプスを思い出すことは無かった

幾つもの季節が巡り、トプスもすっかり壮年の身体になっていた
そして、トプスの精神は、崩壊寸前であった
「思い出すプス! トプの事を! トプを!」
トプスは淡い青色のラプトルの顔面を殴りつける
巨大な質量の拳を受けたラプトルは、飛んでいき頭を岩に叩き助けられた
風化して殆ど見えなくなった愛のことばが綴られた岩を血で濡らし、ラプトルは絶命した

20 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:43:12 No.10036662
「ごめんなさいプス! こんな事をするつもりは…」
トプスは地面に顔を擦り付けながら、謝罪を繰り返す

トプスは自分を覚えていないラプトルを殺害することを繰り返していた
首を締めながら犯し、四肢を踏み折り、岩に頭を叩きつけた
そして、謝罪と自傷を繰り返した
もはや、取り戻したいはずのラプトルとの思い出も、トプス本人が忘れようとしていた

顔の皮が破れるまで、地面に顔を擦り付けていたトプスだったが、
急に顔を上げ、ラプトルを背中に載せた
そして、奇跡の泉まで運んでいった
トプスはラプトルを泉に投げ入れる 水飛沫が上がり、波紋が泉に浮かんだトプスの顔を歪ませた
グチャグチャになった自分の顔を眺めながら、トプスは動かなくなった

21 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:43:29 No.10036664
波紋が収まり、傷だらけのトプスの顔が泉に写る
目は窪み、頬は痩け、幽鬼のような目が、トプスの事を睨みつけていた
「何を……、していたんプスかねぇ…」
トプスは泉に写る瞳に吸い込まれるかのように、泉に飛び込んだ
そして、二度と浮かび上がってこなかった

22 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:43:51 No.10036667
トプスが目を覚ますと、見知らぬ場所にいた
見渡すとどうやら木の洞の中らしいことが分かった
「プス…?」
トプスは自分が何かを抱きしめていることに気付いた それは淡い青色をしたラプトルであった
「起きるプス ここは何処プス?」
「分からないよー」
「とりあえず、ここから出るプス」

木の洞から出た2頭は、質問し合った
「あなたは誰キュイ?」
「覚えてないプス 君は誰プス?」
「覚えてないよー」
トプスは日の下で、ラプトルを改めて見た 全身は少し淡い青色で、
瞳は朝の日差しの様に無垢な輝きを湛えている

23 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:44:21 No.10036670
トプスはすぐに恋に落ちた
「可愛いプス〜 番になりたいプス〜」
そして、間髪入れずに告白した
「好きプス! トプの卵を産んで欲しいプス!」
若いトプスは平均的なトプスと同じ様に、溢れるリビドーを包み隠さず叩きつけた
「いいよー」
ラプトルは呆れるほど呆気なく了承した
「ここはなんか辛気臭いから、別の場所に巣を作るプス」
そう言ってトプスはラプトルを背中に乗せると、土埃を上げて走り出した

いい洞窟を見つけると、2頭はそこを住居に決めた
そして、近場の餌場でyasaiを捕まえる
夕暮れになると、寝床にhosikusaを敷き詰めた
そして捕まえたyasaiを一緒に食べた

24 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:44:40 No.10036673
「ここはいい所プスね…」
「キュイ」
ラプトルは捕まえたkyuuriを齧った yasaiも十分に生息し、
近くのnikuの木は沢山の花を咲かせている
怖いヘカTレックスの気配もなく、天国のような環境だった
「明日はdangoを作ろうプス」
「キュイ」
「nikuの花が綺麗プスね」
「キュイ」
「春になったら、交尾して卵を作ろうプス」
「……」
トプスがラプトルの方を向くと、ラプトルはkyuuriを握ったまま、寝息を立てていた
トプスはしょうがないといった風に鼻で息をすると、
hosikusaをラプトルにかけてやった

25 無題 Name としあき 18/02/03(土)20:44:56 No.10036676
ふと洞窟の外を見ると、満月が2頭を照らしていた
狂おしい程丸い月を見ながら、トプスは未来に思いを馳せていた
「子供は沢山欲しいプス… 明日から沢山dangoを作るプス… ラプトルに綺麗な花や石を一杯あげたいプス…」
そんな事を考えている内に、瞼が重くなってきたので、ラプトルの側に寄ると、身体を丸めた
「とりあえず、明日はdangoを作るプス… 沢山作ってラプトルに褒めてもらうプス…」
微睡みの中で明日を夢見るトプスを祝福するように、満月はトプスを照らし続けるのであった

終わりまし

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