◆qqtckwrihのSSのまとめです。完結した作品および、新作告知、Wiki限定連載等を行っております(ハル SS Wiki)

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――――【 夏休み5日目 氷結漁港 】


…ボォォォオッ…!!!!


魔法士「ついたぁぁっ!」

乙女剣士「っていうか、船から降りた途端……」


ビュオオオッ!!!


乙女剣士「さ、さっむ〜いっ!!?」ガタガタッ!

乙女剣士「は、話には聞いてたけど、ココってこんなに寒いの!?」



 
 
 
…ザッ

拳闘家「まーな。ココの名前の由来は、魚も凍っちまう寒さって意味から来てんだぜ」


魔法士「あ、拳闘家さん」

乙女剣士「アンタッ!」


拳闘家「おぉっと、殴るなよ。俺は仕事で荷物運びがあるんだ」

乙女剣士「…ふんっ、ならさっさと運びに行って来ればいいでしょ!」

拳闘家「うわーっはっはっはっ!嫌われたもんだ!」

乙女剣士「当たり前でしょ!」



 
 
拳闘家「お前ら、更に北に向かうんだろ?」

拳闘家「俺は何度か行ったことあるが、これより北は更に温度が低くなるぞ」


魔法士「そ、そうなんですか!?」


拳闘家「今はまだ息が白い程度で済んでるが、ダイヤモンドダストが起こるくらいの寒さにはなるぜ」


魔法士「ダイヤモンドダスト?」


乙女剣士「…細氷。マイナス10度以下で発生する、水蒸気がキラキラ輝く現象のこと」

拳闘家「おぉ、正解。商品で、チチ揉んでやろーか」ワキワキ

乙女剣士「…結構です!」

拳闘家「あ、揉む程なかったか。こりゃ一本!だーっはっはっはっ!」



 
 
乙女剣士「この…!」クワッ!

…ズリッ!

乙女剣士「きゃっ…!」

……ダキッ

拳闘家「…おいおい、この辺の地面は凍って滑りやすいんだから、気をつけろっての」

乙女剣士「なっ…!」

拳闘家「お姫様だっこ〜」ニヤニヤ

乙女剣士「は、離せばかぁっ!!」ブンブンッ!


魔法士「…」

魔法士「平和だなぁ……」


 
 
 
拳闘家「はぁ、ほらよ……」スッ

乙女剣士「…っ」スタッ


拳闘家「ま、今のお助けはちょっとしたサービスだぜ。」

拳闘家「馬車も勿論走るが、中は寒いし身体の温度だけは奪われないように注意しとけよ」


乙女剣士「アンタに言われなくても!」


拳闘家「へいへい、おーこわ。じゃーな」クルッ


魔法士「色々、ありがとうございましたっ!」


拳闘家「おう、頑張れよ冒険者モドキたち!」

タッタッタッタッ……

………






 
 
 
乙女剣士「…む、むかつくぅぅぅううっ!!」

魔法士「でも、いい人っぽいよ。」

乙女剣士「ど、こ、がっ!!」

魔法士「注意してくれたり、気にかけてくれてる感じがしたし」

乙女剣士「…まぁ、そりゃそうだけど」

魔法士「最後まで"冒険者モドキ"とか"冒険者気取り"だったけど…」アハハ…

乙女剣士「あ〜もう、本当に疲れた…」

魔法士「ま、まぁでも北方大地には足を踏み入れたし!博物館まであと少しだよ!」


乙女剣士「…うん、そうなんだよね。」
 
乙女剣士「うんうんっ!気持ち入れ替えていくっ!!」



 
 
 
魔法士「その意気だよ!それじゃ、次は馬車乗り場を探さないといけないのかな」

乙女剣士「首都行きの馬車なら、すぐ見つかると思うけど…」キョロキョロ

魔法士「とりあえず、この港の町中に入っていこっか」

乙女剣士「うん」

魔法士「えーと、どっちから行こうかなーっと……」


乙女剣士(……)

乙女剣士(今の言葉とか、何気ないけど魔法士が私を引っ張ってくれたよね?)

乙女剣士(気のせいじゃなくて、絶対に魔法士…少しずつ昔に戻ってるみたい)

乙女剣士(なんだかんだで、やっぱりこういうことしたかったんだね)

乙女剣士(えへへ、この調子でどんどん勇気付いてくれればいいなっ……)


…………
……





 
 
 
 
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――――【 氷結漁港 町の通り 】 
 
ビュッ…ビュオオオオッ……!!!


乙女剣士「さ、さっきより寒い〜〜!?」

乙女剣士「な、何これっ!建物に囲まれてるから寒さもマシだと思ったのに!」


魔法士「し、商店街がちょうど吹き抜け状になってるから…!風が入ってくるんだ…!」ガタガタ

乙女剣士「ちょ、ちょっとどこか避難できる場所ないの…!」ブルブル

魔法士「ど、どこのお店も閉まってるよ〜!」

乙女剣士「えぇっ!どこでもいいから、入れるところ……!」キョロキョロ


魔法士「…っ」

魔法士「……あっ、あそこ!看板出てるみたいっ!」ハッ



 
 
 
乙女剣士「も、もうどんなお店でもいいや、入っちゃおう!」

魔法士「だねっ!」

タタタタタタッ……!!

乙女剣士「ら、乱暴ですけど失礼します〜〜!!」

ガチャガチャッ、ギィィイッ!!バタンッ…!!


魔法士「はぁ、はぁ……!」

乙女剣士「さ、寒かったぁぁ……」


???「…あらあら、凄い音がしたと思ったら、お客様?」ヒョコッ


魔法士「あ…。ら、乱暴に入っちゃって失礼しました…」

乙女剣士「ご、ごめんなさいっ!あまりにも寒くて……」



 
 
 
美人店員「…いえいえ、構いませんよ。外は寒かったでしょう」


魔法士「わっ、きれいな人…!」

美人店員「えっ?」

魔法士「あっ…!な、何でもないです!」

美人店員「…」クスッ


乙女剣士「ばか…」


美人店員「…その恰好、冒険者か何かかしら?」

乙女剣士「えっと、まぁ…そんな感じです」



 
 
 
美人店員「こんな日に氷結漁港に訪れるなんて、タイミングが悪かったですねぇ…」

魔法士「タイミングですか?」

美人店員「今日は、月に数回の山下りの日なの…」

魔法士「山下り…?」


美人店員「…そこの窓から、この通りの先にある山が見えるでしょう?」

美人店員「あの向こう側に大雪国があるんですけど…、」

美人店員「山を下るようにして、猛烈な冷風が吹いてくるから、この辺じゃ山下りって呼ばれてるの」
 
 
乙女剣士「…」

乙女剣士「……ま、待って下さい。それって色々と影響したりしますか?」



 
 
 
美人店員「まだ弱いほうだけど、これから視界が遮られるくらいの猛吹雪になるし……」

美人店員「ココ以外のお店は全部閉じちゃってるでしょう?」

美人店員「それと、馬車も動かなければ町の機能が全部停止しちゃうって言った方が早いかな…」


乙女剣士「う、うそですよね…」

美人店員「全部のお店が、山下りの間はお休みになっちゃうかな」

乙女剣士「ち、ちょっと待って下さい!この山下り、いつまで続きますか?」

美人店員「少なくとも、3日は…」

乙女剣士「」


魔法士「…ツキが、ないね」


美人店員「…?」


…………
……

 
 


 
 
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…コトッ

美人店員「ホットミルクだけど、温まると思うからどうぞっ。」

美人店員「もちろんサービスで♪」ニコッ


乙女剣士「ありがとうございます」

魔法士「ありがとうございます」ペコッ


美人店員「うちは小さなカフェだけど、この時期は実はかきいれどき」エヘヘ

美人店員「普段は流行ってないお店が、ココだけ開くとお客さんがこうしてきてくれるからねっ」




 
 
 
乙女剣士「…」クピッ

乙女剣士「あっ…美味しい……!」


美人店員「北方大地の恵みで育てられた、美味しいミルクだから、味わってね」


魔法士「はいっ!」

魔法士「…」

魔法士「……落ち着いたところで、どうしようか乙女剣士」チラッ


乙女剣士「うん…。まさか、こんな場所で足止めされるなんて……」

魔法士「…」


美人店員「どこかに行きたかったの?」



 
 
 
乙女剣士「はい。実は、大雪国にある博物館を目指してまして……」


美人店員「あ〜…」


乙女剣士「私たち、王都の冒険学園の生徒なんです」

乙女剣士「夏休みになったので、それを利用してきてみれば…ってお話です」


美人店員「なるほどね、王都からかぁ……。」

美人店員「それに夏休み、か。私にとっては疎い言葉だなぁ」


乙女剣士「ここは年中冬なんですよね」


美人店員「雪を見ない日はほとんどないからね〜…」


乙女剣士「す、凄い場所ですね…」 



 
 
 
魔法士「…う〜ん、足止めされるのは仕方ないけど、泊まる場所どうしよう」

乙女剣士「あ…」

魔法士「馬車の中で泊まりながら進むつもりだったし、宿とか考えてなかった…」

乙女剣士「宿とか今は空いてるのかな…?」


美人店員「さすがに宿は年中無休だけど、予約でいっぱいだと思うなぁ」

美人店員「足止めされるのを知ってる人は、既に宿に入ってるし……」


魔法士「…」

魔法士「まさか、野宿…?」



 
 
 
乙女剣士「…冗談でしょ」タラッ

魔法士「でも、宿がいっぱいって……」

乙女剣士「…」

魔法士「この防寒具で過ごせるかなぁ…」

乙女剣士「無理、無理無理無理っ。絶対に無理っ!!」

魔法士「じゃあ、どうしよう…」

乙女剣士「…」


美人店員「…」

美人店員「……お困りの様子ってところだね。それじゃあ、私から提案がー……」


…コンコンッ…



 
  
美人店員「…あら?」

魔法士「お客さん…?」

乙女剣士「吹雪の中を……」
 

…ガチャッ!!…


美人店員「いらっしゃいませ……って」


拳闘家「…ようっ!」ビシッ!


乙女剣士「」


魔法士「あっ、拳闘家さんっ!?」ガタッ!



 
 
 
拳闘家「おやっ、お前たち…」


乙女剣士「…な、なななっ、なんでココにいるのよっ!!」

拳闘家「なんでって言われてもな」

美人店員「あらあら、もしかして拳闘家と知り合いなの?」

魔法士「えっ、名前を知ってるってことは…お姉さんも知り合いなんですか?」


拳闘家「…」

拳闘家「……一応、そこにいるの俺の姉貴だぜ」



 
 
 
乙女剣士「えっ、えぇぇぇっ!?」

拳闘家「うっせ」キーン

乙女剣士「に、似てないでしょっ!どう考えても、こんな可愛らしい人とアンタが!」

拳闘家「いいだろ別に」

乙女剣士「…こ、こんなに真面目に働いている人が、アンタみたいな盗人のお姉さんのはずが!」

拳闘家「ば、バカッ!それを今いうな…!」


美人店員「…拳闘家?」ボソッ


拳闘家「ひえっ!」ビクッ!

美人店員「今は、真面目に働いてるって言ってたわよね……?」ゴゴゴ

拳闘家「ち、違うって!コイツの言ってることは冗談だから!」


 

 
乙女剣士「…冗談なわけないでしょ、北港村で魔法士のチケット盗んだくせに」

拳闘家「ば、バカッ!」

乙女剣士「それに、私の身体で弄んで……」

拳闘家「そんなことしてねーだろっ!!マジで姉ちゃん怖いんだからそういうことは…!」


美人店員「…拳闘家、ちょっと来なさい」

…グイッ!

拳闘家「ま、待て姉ちゃん!!話せば分かる、違うんだ!!違うから!!」

美人店員「いいから、裏に来て」

ズリズリズリッ……

拳闘家「うっ、うおおおおっ……!」


…………
……
… 



 
 
 
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――――【 数分後 】
 
拳闘家「申し訳ありませんでした」

美人店員「ゴメンなさいね、うちのバカが…」


乙女剣士(どうやって謝らせたんだろう…)

魔法士(お姉さん、美人なのに怖いんだなぁ…)


美人店員「…うちのバカはね、元々王都の冒険学園出身の冒険者なのよ」

乙女剣士「えっ!」

魔法士「僕らと一緒!?」

拳闘家「おい、今それは言わなくても…」

美人店員「…黙ってて」ギロッ

拳闘家「はい」



 
 
 
美人店員「それで、冒険者としてしばらく活躍してたんだけど、ある日突然戻ってきて…。」

美人店員「俺は普通に働くって言って、乗船員やら港やらで食いつないでるみたいでね」

美人店員「だけど、冒険者を諦められないのか、若い冒険者を見ると悪いことばっかりして……」ハァ


拳闘家「…うっせぇな。引退した俺に盗まれる現役が悪いんだよ」


美人店員「若い冒険者に嫉妬してるくせに、世界を巡る船の乗船員で働くって…」

美人店員「冒険者の未練…タラタラじゃないの?」


拳闘家「…」

美人店員「それに、手癖は悪いけど本当は優しい子なんだから…もっときちんとしなさい」

拳闘家「誰が優しい子だっつーの!」


乙女剣士「…優しい子、ですか」ピクピク


美人店員「こう見えても、この山下りが起こる時は私を心配して見に来てくれるのよ」クスッ



 
 
 
拳闘家「…別にそんなんじゃねーっつーの!」

美人店員「はいはい、山下りの日の仕事がたまたま氷結漁港への仕事なんだもんね」フフッ

拳闘家「その通りだ」フンッ


乙女剣士「…」

魔法士「ほら、やっぱりいい人なんだよ」

乙女剣士「…無理、そうは思えない」

魔法士「はは…」


美人店員「…っと、忘れてた」

美人店員「二人とも、泊まる場所がなかったんだっけ?」




魔法士「あ、はい……」

乙女剣士「外もこう猛吹雪じゃ、いくらなんでも野宿は……」


美人店員「うん、さっき言いかけてて忘れたんだけど…」

美人店員「うちで良かったら、泊めてあげようかって」ニコッ


魔法士「!」

乙女剣士「えっ!い、いいんですか!?」


美人店員「さすがに、こんな状況で見過ごせる状況じゃないからね…。」

乙女剣士「お言葉に甘えますが…本当にいいんですか?」

美人店員「そんなに謙遜するこじゃないよっ♪」

乙女剣士「本当に助かります…。それじゃ、宿賃とかは……」

美人店員「…うちの弟が迷惑かけたし、そこはもちろんタダかなっ」

 
 
 
拳闘家「おいおい、こいつらの有り金全部もら…」

美人店員「…」ギロッ

拳闘家「…うくらいなら、俺が支払うぜ。任せとけ!」

美人店員「…」ニコッ


魔法士「お姉さん、凄い気迫……」

乙女剣士「さすが、拳闘家のお姉さん……」

拳闘家「…とんでもないところに帰ってきちまったよ」ハァ


美人店員「お客さんになったと決まれば、さっそく部屋の掃除!」

美人店員「拳闘家、二階の空き部屋…掃除してきなさいっ!」


 
 
 
拳闘家「…へい」

美人店員「返事はきちんと…?」

拳闘家「…わかってますよ!はいはいっ!」

美人店員「うんっ、じゃあやってきてねっ!」

拳闘家「姉ちゃんには敵わねえよ…」

タッタッタッタッ……


乙女剣士「おぉ……」

魔法士「凄い…」

美人店員「これくらいはねっ!」


…………
……



 
 
 

……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 少しして 二階の居間 】


乙女剣士「お店の空き部屋とかじゃなくて、二階そのものが家だったんですね」

美人店員「うん。うちは、お店と家を両立してるからね」


ヒュウオオオオッ…ゴォォォッ……!!


魔法士「か、風が強いなぁ…」

拳闘家「ずっと耐えてきた我が家だ。そうそう崩れないから心配しなくていーで」

魔法士「そ、そうですけど…」

拳闘家「風如きで怖がってちゃ、冒険者として世話ねーぞ?」

魔法士「うぅっ…」

 
拳闘家「…この間も話聞いたが、王都から博物館へ槍を見に来ただけなんだろ?」

魔法士「はい…」


拳闘家「確かに学生にとっちゃ冒険かもしれんが、ただの観光者と一緒だ」

拳闘家「お前、この程度の風にビビってたら…本当の冒険者になった時に死んじまうぞ」


魔法士「あうっ…」シュンッ


美人店員「…ていっ」

…ビシッ!!

拳闘家「あいだっ!」

美人店員「魔法士クンをイジめないの」

 
拳闘家「い、イジめるとかじゃなくて本当のことだろうが!」

拳闘家「この程度にヒィヒィ言ってたら、冒険家の夢のダンジョン攻略なんて夢のまた夢だぜってことだ」


美人店員「…何よ、ダンジョン攻略って」


拳闘家「遺跡とかに魔物が住み着いて、人が立ち入れなくなった所を"ダンジョン"っつーんだ」

拳闘家「一般の立ち入りは勿論、冒険者でも実力がなければ突破出来ない場所だってあるワケ」


美人店員「ふーん…」


拳闘家「強い魔物から得られる素材は高値で売れるしになるし…、」

拳闘家「古代遺跡にも、魔族がいることで盗賊に荒らされず、発掘されていない宝だってあるわけだ」

拳闘家「それを狙って、一攫千金してこその冒険者だろ!」

 
乙女剣士「そこまで言う拳闘家は、ダンジョン攻略に挑んたことがあるの?」
 
拳闘家「そんな難しくない場所で、鍛錬がてらに行ってただけだ。宝とかはなかったな」

乙女剣士「へぇ…」

拳闘家「まぁもう1つ言うと、厳密には少し役職分けもあるんだが……」

乙女剣士「どーいうこと?」


拳闘家「あぁ、それはだな……」

拳闘家「…」

拳闘家「…説明、面倒くせぇ」ペッ


美人店員「拳闘家…」ボソッ

拳闘家「っ!」ゾワッ

美人店員「…可愛い後輩だって分かったんだから、教えてあげてネ」ニコッ

拳闘家「…ひゃい」
 
 
乙女剣士「…」

魔法士「…」


拳闘家「…しゃあねぇな」ゴホンッ

拳闘家「いいか、お前らは今はまだ"冒険者"に位置しているのは分かるな?」


乙女剣士「まぁ、冒険学園だし……」


拳闘家「冒険者は、遺跡の宝物と魔族を討伐し得られるモノや、依頼を受けて生活するわけだがー…」

拳闘家「実は、冒険者にもいくつか分けることができるんだ」


乙女剣士「分けることが…」

魔法士「出来る、ですか?」


 
拳闘家「ダンジョン内の宝物のみを狙い、極力戦いを避けるトレジャーハンター。」

拳闘家「逆に宝物には目もくれず、魔物討伐をメインとするモンスターハンターがいる」


乙女剣士「…聞いた事ないんだけど、本当に?」

拳闘家「姉ちゃんの手前、嘘つかねーよ…」

乙女剣士「それなら信用する」


拳闘家「…」

拳闘家「まぁいい。これは学校じゃなく、実践を通して知ることだからな」

拳闘家「ハンターと名のつく他、未開の地やその総合的な活動をするのを"冒険家"というんだ」


魔法士「ふえぇ〜…。冒険者にも種類があるんですねぇ……」

 
拳闘家「種類っつーか、分類。」

拳闘家「冒険家は総合、トレジャーハンターは宝を、モンスターハンターは魔物素材を狙うとだけ覚えとけ」

拳闘家「有名な冒険家になれば、そんな分類いらねーんだけどな」


乙女剣士「…魔法士と私は、世界を旅して、魔物を倒して生活したり…色々見てみたいと思ってる」

乙女剣士「それは、冒険家の類でいいのかな?」


拳闘家「新米冒険者は、そんな称号はつかねえよ。」

拳闘家「戦い続け、自分に合ったスタイルを見つけ、そして自分の立ち位置を知る。」

拳闘家「そこに行くまでは、そういうことは考えなくていいんじゃねーの」


乙女剣士「…」

乙女剣士「拳闘家のくせに、生意気に真面目なこといってる」
 
 
拳闘家「あのな…」


美人店員「…」クスッ


拳闘家「…冒険者同士の交流の場だってあるっちゃあるんだぜ」

拳闘家「いずれ、卒業したらそういう場所へ行ってみるといいんじゃねーの」


乙女剣士「あっ、ギルドのこと?」

拳闘家「そうそう。」


魔法士「…ギルドって何?」


乙女剣士「」

拳闘家「」


 
乙女剣士「冒険者同士がパーティを組んだり、情報を交換したり、討伐の依頼を受けたりできる場所のこと!」

乙女剣士「私たちの王立都市にもあるし、世界中どこでもあるの!」


魔法士「ああっ、思い出した!」

乙女剣士「ただ、交流広場っていうかチームって感じだから、ギルド同士で喧嘩が起きることは珍しくないとか」

魔法士「えぇ、怖い……」

乙女剣士「…」


拳闘家「…まぁ、勉強もこの辺でいいじゃねえか」

拳闘家「今日は客がいるし、姉ちゃんも美味い料理出してくれんぞ?」


美人店員「もちろんっ♪」

美人店員「今日は拳闘家が帰ってくるってわかってたし、お肉とか仕込んでたからすぐに出来るからネ」



魔法士「…い、色々と本当にありがとうございます」

美人店員「3日はうちに泊まることになるんだし、そんなかしこまらなくても大丈夫よ」フフ

魔法士「そんなに…」

美人店員「自然の猛威には抗えないからね…」

魔法士「…」


拳闘家「…」

拳闘家「……あぁそうだ、魔法士」


魔法士「はい?」

拳闘家「姉ちゃんが晩飯準備してくれる間、お前もちょっと手伝え」クイッ

魔法士「へ?」

拳闘家「お前の鍛錬にもなるだろうし、悪いことじゃないぜ」


 
 
魔法士「…ど、どういうことですか?」

拳闘家「んじゃ姉ちゃん、行ってくる。こいつに、上着貸してやるからな」

魔法士「え、え?」


美人店員「でも、魔法士くんにそんな"危ない"こと……」

乙女剣士「えっ、魔法士に何をさせるつもりなの!?」


拳闘家「これは男として、ここに住む男の仕事なんだよ。」

拳闘家「3日もいるなら尚更だ。やらせねーでどうするっつーのよ」


魔法士「な、何するん…ですか……?」


…………
……





 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 家(お店)の裏 】

ビュッ、ビュオオオォォォオオッ!!!!!


魔法士「ひ、ひぃぃぃいえええぇぇえっ!!」ガタガタ!


拳闘家「この時期に備えて、資源の木々が裏の倉庫にしまってあるからな!それを家に運ぶんだよ!」


魔法士「ななな、なんでこんな!!さむいぃぃ!!」ブルブル


拳闘家「本来、こういったことが来る前に準備しとくんだが……」

拳闘家「姉ちゃんじゃこういうのは運べないし、かといって他の家に手伝ってもらおうとしても、」

拳闘家「他の家はそれぞれの自宅で、準備に追われちまうからな……」

拳闘家「丁度戻ってきては、こうやって手伝ってるんだよ」


魔法士「き、きこえませーーーん!!」

魔法士「風が強すぎて、耳も痛くて、ひえぇ……!!」



 
拳闘家「…」

拳闘家「……お前、魔術師なんだろ!?」


魔法士「そ、そうですが!」

拳闘家「なら、抵抗魔法かなんかで寒さに対策できねーのか!」

魔法士「……あっ」

拳闘家「あのな、お前はあの女とパーティなんだろ?自分の出来ることをもっと考えて、行動しねぇか!」

魔法士「そ、そっか……」


拳闘家「ほんっとに冒険者モドキだなお前らは。事前の情報は調べねぇ、自身の出来ることはしねぇ、考えねぇ。」

拳闘家「いいか!あの王国冒険学園の生徒ならな、あそこの勉強は意外と外でも通用す……」

拳闘家「……って!」

拳闘家「何、俺は指南をしてんだっつーの!クソッ!!」



 
魔法士「…て、抵抗魔法っ!」パァッ!

…ポウッ…

拳闘家「お…」パァァ

魔法士「…こ、これでお互いこの寒さの中で、少しだけですが行動しやすくなりますね」

拳闘家「…俺が教える前に、自分で気づかねーか」

魔法士「お、教えていただきありがとうございます」ペコッ

拳闘家「……ふん」

魔法士「拳闘家さんというか、色々教えてくれますし、拳闘家先輩ですね…」エヘヘ…


拳闘家「…!」

拳闘家「……う、うっせ、早く運ぶぞ!」

拳闘家「運び終わった頃には、姉ちゃんが飯を作ってくれてるはずだからな!」

 
 
魔法士「は、はいっ!頑張ります!」


拳闘家「…ほれ、でっかいのは俺が持つから小さいのから持ってけ」


魔法士「はいっ!」


拳闘家「…」


…………
……



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