俺ロワ・トキワ荘にて行われているリレー小説企画の一つ、古生物バトルロワイヤルのまとめWikiです。

彼女は高いもみの木の上で一羽、吹き抜ける風を全身に感じながら思案に沈んでいた。

あの女性は他の生きものを全員殺してでも生き残れと言った。だが無力な小鳥に過ぎない自分にそんなことができるはずがないことはわかっていた。
そもそも、こうして自由の身になれた今、そんなことはもはやどうでもいいことにも思えた。

死は怖くなかった。というよりも、早くそれが自分に訪れることを彼女は動物園の檻の中で祈っていた。
かつて彼女の種、リョコウバトは、五十億羽もの大群でアメリカ大陸の空を飛び交っていた。
鳥類の歴史上もっとも個体数が多い種だったとも言われる。
食糧不足に苦しむ開拓者たちがリョコウバトに目を向けたのはごく当然であったし、彼女もそのこと自体を責めようとは思わなかった。

だがいつしか飢えを満たすためのものだったはずの狩りは金儲けの手段となり、スポーツとなった。
彼女がこの世に生まれてきた時には、リョコウバトにはもう種を維持できるだけの個体数は残っていなかった。
そして彼女は一度も大空を自由に飛ぶことすらないまま、動物園の折の中で生涯を送ることとなった。

思いがけず手にした自由の身。死が訪れるまで、このまま風のままに飛び続けるのも悪くは無いかもしれない。
しかし、と彼女は思うのだった。
ならば一体自分は何のために生まれてきたのだろう、と。

彼女の脳裏を先刻からよぎるのは。ついさっき最初に見た光景。
さっき集められた生き物たちの中には、何人もの人間たちがいた。
人間の姿など金網越しに飽きるほど見てきたから、今までは特段の感情を抱いたことは無かった。
しかし、今こうして生まれて始めての高みから景色を見下ろしていると、新しい思いが胸の底から這い上がってきた。

彼らは彼女から仲間たちを奪い、自由を奪い、そしてこの景色を奪ってきたのだ。
横暴ではないか。冷酷ではないか。
強きものが弱きものを滅ぼすのが生きものの定めではあっても、一つの種族の命運をいとも簡単に弄び、握りつぶすような真似など許されるのだろうか。

何より、自分の生涯は、一体何のためにあったというのだろうか。

いつしか、彼女の気持ちは定まっていた。
恨みもない他の生き物のことはどうでもいい。
だが、人間たちだけは許さない。どんな手を使ってでも、ここにいる人間だけでも皆殺しにしてやる、と。


【一日目・黎明】
【ヨーロッパ・イギリスの森林】

【リョコウバト】
【状態】健康
【思考】人間は皆殺し
【備考】メス・アメリカ出身 リョコウバト最後の一羽である「マーサ」
Back←
002
→Next
001:オーウェン博士恐竜に会う
時系列順
003:王者の長き眠り
投下順
本編開始
リョコウバト
000:[[]]

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Menu


資料、小ネタ等

ガイド

リンク

【メニュー編集】

どなたでも編集できます