エロパロ板「おむつ的妄想」スレッドに投下された作品のまとめwikiです。

今日の空は、どこまでも見渡せそうなぐらいに、くっきりと透き通っている。
学校帰りの電車の窓から外を眺め、僕――能登和希は確信した。
下のほうへ目を向けると、窓の外に広がる畑は、真っ白に染め上げられた一面の銀世界だ。
すっかりと冬化粧した街は、遠くから来るスキーなどのレジャー客のおかげか、いつもと違った賑わいを見せていた。
「……これを見るのもあと少しか」
数人しか乗っていない閑散とした車内で、誰にも聞かれないように呟いた。
その言葉は静かに電車内の温かい空気に溶け、飴玉のように跡形もなくなる。
確認するようにちらと隣を見ると、歓談している友人たちは、入試についての情報を交換していた。
世間は入試シーズン。友人からも感じるピリピリとしたムードに、少しだけ気後れしてしまう。
推薦で進む学校が決まって以来、この手の話は蚊帳の外だ。友達も僕の立場が分かっているのか、無理に話を振ることはなかった。
一人いたたまれなくなって、もう一度景色を眺める。
こうやっていられるのも、いつまでだろうか。
いつもと同じ――そう思っていられるのも。
「なあ、カズ。お前、彼女どうすんだよ」
「や、その、まだ……」
いつの間にか情報収集が終わっていたようで、外を見ていた僕のことを察してか、僕についての話題となった。僕は突然の振りに戸惑い、うまく言葉が出せない。
友人は「彼女」のことを、僕の彼女だと思ってくれているらしい。いや、それはそれで嬉しいけど、「彼女」はちょっと違うような気がする。
なんだろう、気が置けない相手と言うか、幼馴染と言うか、なんとも表しづらい存在だった。
「まだ…ってもしかして伝えてないのか?お前が県を出るの」
「マジで!?お前それ拙くね?だってお前の彼女、年下っしょ?」
友人たちの言葉にしどろもどろになりながら、心の奥底で今決めたことを確認するように刻んだ。
――今日、「彼女」にこのことを話そう……と

夜になると、光源が減って空が星で賑やかになる。
澄んだ空気のおかげか、今日は細かい星々までくっきり見え、絶好の観測日和だ。
自宅の二階からこっそり抜け出して、屋根伝いにわたって裏の梯子を降りる。
雪降ろしのために冬の間は大体、屋根まで梯子が掛けてあるのは、家族全員の周知の事実だ。
そして、僕がこっそりと抜け出してすぐそばの山にある神社で天体観測をしていることは、僕と弟の大人(たいと)、そして妹の柚理(ゆり)だけの秘密だった。
「ふぅ……親にばれたら大目玉だもんなぁ……寒っ」
雪で滑らないように気をつけながら神社へと向かう。
振り返って家を確認してみると、誰もいない一階は真っ暗で、三つ並んだそれぞれの子供部屋は、真ん中の一つ――大人の部屋だけ明かりが点っていた。
――柚理はもう、寝てしまったのか。
僕の部屋とは正反対にある子供部屋。そこにいるはずの妹のことを思う。
体が弱くて家にいることの多い柚理の面倒は、僕と大人、そして小さい頃は祖父母で看ていた。
両親とも学者で家にいないことが多かったから、何かあったら祖父母、そして祖父母がいないときは僕が責任を以て面倒を看ていたのだ。
しかし去年に祖父が、そしてこの前祖母が亡くなってしまった。
葬式も終えて四十九日は一昨日のことだ。
両親とも流石に放っておけないのか、お互いが交互に家にいて、柚理の面倒を看てくれている。だが二人とも忙しいから、肝心な時は僕任せになっていた。
だからこそ早めに推薦で学校を決めて、僕が学校に行かなくてもいいような状況にしたのだ。そしてこの冬を最後に、僕と柚理は新天地へと旅立つことになる。

「……久しぶりだし、いるかな?」
歩いて二十分ほどの先にある山に、その神社はあった。
この周辺の土地神様を祀る神社で、名前は豊郷神社。
本殿があるのは山頂で、中腹に拝殿があり、そこまで急な階段が参道として続いている。
参道は木によって常に日陰になるせいか、雪が凍りついており、いささか危ない感じだ
地元に親しまれているおかげか、僕以外の参拝客はそれなりにいるようで、いくつかの足跡が階段に刻まれている。
けど今は誰もいないことを表すかのように、しんとした音一つない静寂が辺りを支配していた。
「二十二時四十五分…いい時間帯だな」
コートのポケットに手を突っ込み、冷たい金属のものを探り当て、目の前に持ってきて開く。
さんが僕にくれた分厚い懐中時計。
銀色に輝くそれはかなり値のするものらしく、十年に一回のメンテナンスだけで、遅れることなどほとんどなかった。
信頼できる、天体観測をするときの必需品。
そして僕と「彼女」を引き合わせてくれた、魔法のアイテム。
ざくっざくっという雪の軋む音をBGMに階段を上り切ると、そこは開けた境内の入口だ。
月明かりに照らされてぽわっとした雰囲気の幻想的な境内の中、拝殿のお賽銭箱の後ろに体育座りで蹲る少女がいる。
眠っているのだろうか。
泣いているのだろうか。
遠くからは窺えないがその子は僕の知っている子で、ゆっくりと近づきながら彼女の姿を確認する。
髪の毛はこの白銀の世界に映えるような漆黒。長さは腰を超えお尻に届くほどまであり、俯いていると黒いボールのように見えるほどだった。
さらりとした質感で、背中を撫でるように覆っている。
「待った?」
僕の声に、少女は顔を上げた。
驚いているような、嬉しそうな、それでいて怒っているような、そんな雰囲気を漂わせて僕のことを見つめている。
紅の大きな双眸。
ぱちりとした濃いその色は、鬼灯の色に似ていた。その瞳が眦を落とし柔らかく微笑む。
ふっくらとした肌の白さが、雪の白さに同化してしまうのではと見紛うほどだ。
幼い顔立ちだがそれは美しいと形容でき、そして可愛いとも言いかえることができるものだった。
「うん。最近、ご無沙汰だったから」
素直な応答は、「彼女」のいつもの調子だ。僕が微笑みかけると、寒いせいか朱に染まった「彼女」の頬がより一段と紅に染まる。
なんだろう、変な笑いだったのかな。
そんな不安を覚えて戸惑う僕の横に、「彼女」はふわりと賽銭箱を飛び超え、軽やかな調子で着地した。
ぎしっと言う雪を踏みしめる音が響く。
少しばかりバランスを崩す「彼女」を支えながら、その華奢さを改めて感じる。
身長は僕より二周りぐらい小さい。厚手のコートに身を包み、その姿はまるで小動物のようだ。
「危ないよ。そんなことしたら」
「いいの。だってかずきが受け止めてくれるって思ったから」
心をくすぐるような小悪魔的な言い方。それだけで僕は彼女のことを怒ることもできなくなっていた。
小さくて細い指を僕の手に絡ませて、二人で街を見下ろせる高台へと向かう。
こんな日々も、あともう少し。
そう思うと、なんだか切なくて。
高台へと向かう途中、噛みしめるように僕は「彼女」のことを、昔のことを思い返していた。

彼女との出会いは、数年前に遡る。
当時の僕は両親に甘えたいという心の弱さと、家族のみんなを守るのは僕なんだという使命感に板挟みになり、疲弊していた――と思う。
無理をしてでも手伝いをし、自分の遊ぶ時間を惜しんで生きてきていた。
勿論、友達もいなかった。
誰もが僕を避けていたように感じていた。
だからか余計に焦って、お手伝いに没頭していたんだろう。
そんな僕の唯一の息抜きが、天体観測だった。
両親が学者だったせいか、誕生日プレゼントはあの時計を除いて、みんな学問に関連するものばかりだった。
天体観測用の望遠鏡も、その一つだった。
僕はそれに熱中した。家を離れることがあまりできなかった僕にとって、家で見ることのできる天体観測は、最高の娯楽となった。
そして子供特有の好奇心と、後先考えない思考が先走った。
こっそりと家を抜け出して、普段から目をつけていたこの神社まで重い観測用具を持ってやって来たのだ。
それも何日かかけて、拝殿の中に観測用具を隠しながら。
きっと僕は、飢えていたんだと思う。
誰とも遊べない現実に晒されて、怒られることを承知で、いけないことをするというスリルと、好奇心に。
何よりこの星たちが、あの時の僕の唯一の友達だったから。
その友達と近くにいたい――そう思ったんだと思う。
いよいよ高台での、初めての観測決行日。
その日は皆既月食と言うこともあって、日本中が騒いでいた。僕も浮かれていて、大事な時計を持ってここで観測を始めた。
まだかなと逸る気持ちを抑えようとして、あの懐中時計を見たときだった。
「彼女」が、僕の前に現れたのは。
――珍しい、時計だね。
――……え、誰?
――ああっ、ごめんね。私の名前は……

「もう、準備できてるよ」
「彼女」の言葉によって、僕は現実へと引き戻される。
高台の一番先っぽ。そこにはもう、天体観測の一式が用意してあった。
あの日以来ここの拝殿の中は、僕と「彼女」の秘密基地となっていた。
そこに観測機器一式を隠してあり、僕が来る前に「彼女」がセットするのが「決まり」――それが日常だった。
「うん。……いつもありがと」
「どうしたの?改まっちゃって。へんなかずき」
僕の言葉に「彼女」は軽やかに微笑んで、はにかむように返した。その微笑みは天使のようで、僕の心に強く突き刺さる。
「かずき。見てっ」
「彼女」は興奮した様子で望遠鏡をのぞいていた。今日は久しぶりの皆既月食の日。
もう始まりかけているのか、ぼんやりとした月は少しばかり欠けていた。
「うん。なんか、こうやってまじまじ見るのも久しぶりだ」
僕も「彼女」に呼ばれるがまま、望遠鏡を覗く。肉眼で見るよりも鮮明になった月が、欠けている様子をまじまじと観測する。
――ああ、懐かしいな。あの時も、こうやって二人で見たんだな。
あの時は僕がすごく興奮していて、「彼女」はそんな僕のことを優しく見つめていた。
今とは全く逆の構図だ。
そしてもうこの構図は、二度と来なくなるかもしれない。
そのことをこれから「彼女」にどうやって伝えようか。
一度望遠鏡から目を離し、隣にいる「彼女」を確認する。
彼女は寒そうに体を震わせ、僕に寄り添ってくる。ちょっとだけ恥ずかしそうに頬を染めながら、「彼女」は頭を僕に預け、上目遣いで見つめる。
心臓が、ドキリと高鳴った。
可愛いな、もう。
仕草も、表情も。雰囲気も。何もかも。
愛おしむように「彼女」のことを見つめる僕と、僕のことを見る彼女の視線が重なった
にらめっこみたいな構図。
数秒の沈黙。
「ぷぅ」
「ぷっ、ハハハハッ…」
お互いが笑いだすのは同時だった。腹を抱えて笑う僕と、恥ずかしそうに、でも隠さないで笑う「彼女」。
しかし、その「彼女」の動きが、ピタッと制止した。
両の手を股にあて、押さえつけるように体を屈ませる。
顔が耳まで真っ赤に染まり、小柄な体が小刻みに震えていた。
顔を紅くしながら力む姿は、本当の幼子のようだ。
微かに聞こえる水音は、「彼女」から発しているようだった。
それなのに、どこにも水痕は存在しない。
震えが収まり大きく白い息を吐くと、「彼女」は無言で僕の服の袖をギュッと握った。
まるで幼い子供が離れることが怖くて親にすがるように、その華奢な腕から想像できないほど強く握り、顔を俯かせている。
それは恥ずかしさからきているのだと、僕は知っていた。
「じゃ、一回下に行こうか」
拝殿の方へと歩くとさっきまでの快活さが嘘のようで、借りてきた猫のように大人しく、僕の後ろについてくる。
ぎしっぎしっという雪の音に混じり、何かが掠れるようなかさかさといた音が耳に届いた。

拝殿横には使われなくなった社務所がある。
使われなくなったと言っても定期的に整備されていて、畳はまだ青みが残る新品だった。
そこの奥、押し入れの中にある布団を取り出し、さらに吸水マットレスやタオルなどを取り出す。
全てここの神社が持っているもので、同時に「彼女」の所有物だ。
月に数回ほどここで賽銭泥棒などを監視するために宮司さんが泊まるらしい。
火も電気も通っていて、僕はすぐさま暖房と給湯器に火を入れて、お湯を洗面台の中に汲んだ。
「かずき……あの……」
「彼女」は自分の居場所なのに、所在なさげに立ち尽くしていた。
コートは脱いであり傍に置かれている。
ブラウン地の厚手のセーターと、リボンがついたオレンジのプリーツスカート。
黒いニーハイソックスを穿いた姿は、どこにでもいそうな美少女の姿。
しかし、「彼女」の秘密はその奥の、花園の先にある。
「用意できたよ。――おいで」
僕に言われるがまま、「彼女」は布団とマットレスが敷かれた場所の上に、腰を下ろして寝転がる。
汚れないようにスカートを外すと、「彼女」はそこで観念したのか、両の腕を体の横においた。
その仕草はこれからやろうとする事にぴったりで、僕は内心で笑みを浮かべてしまった。
「あぅ……あんまりみないで」
「大丈夫、すごく、可愛いよ」
必死な懇願は当然だった。「彼女」の体、大事なところを覆うそれは、彼女の歳とは不釣り合いのものだったからだ。
ぷっくりと膨らんだフォルムは、言いようには可愛く、そして不恰好にも見える。
その中心は黄色く染められ、その膨らみをさらに増させていた。
白地に描かれたイラストは、どことなく幼稚なもの。
それもそのはず。これは本当だったら、もっと幼い――幼児が履いているに相応しいものだったから。
それは一般的に市販されている、紙おむつと呼ばれているものだった。

「彼女」がどうして紙おむつを穿いているのか。それは、「彼女」の正体にも通じている。
「彼女」の名前は天豊郷女命。つまりここに祀られている神様が、「彼女」だった
そして「彼女」の体は、柚理の身体と「共存」している。正確に言うと「共存在」らしい。
「彼女」が言うには神様というのは本来、曖昧な存在らしい。
単体ではこちら側にいることすらままならないとか。
だからかこちら側に働きかけるときに、「巫女」と呼ばれる存在を仲介するのが一般的……なんだそうな。
「彼女」もまたそうで、「巫女」の体を一時的に借りて、今までこちら側にやってきていたらしい。
そして数年に一回の祭のとき、「彼女」の「巫女」として柚理が選ばれた。
ちょうどそれは、僕が「彼女」と出会う数日前のことだったと思う。
その時、「彼女」と柚理は波長が近かったからか、お互いを意識してしまったそうだ。
それが、いけなかったそうだ。
普段なら体を借りるだけだったのに、柚理の存在があったせいで、「彼女」は別のものとして、この世界に「誕生」した。
それも妹に共鳴してその生命力を分かち合う、いわば僕のもう一人の「妹」となって。

「だから『さとみ』は、おむつなんだよね」
僕の言葉に、「彼女」――さとみは顔を赤くした。妹が病弱なのは、さとみと命を共有しているから。
そしてさとみもまた、命の共有により柚理の影響が出ている。そう、柚理もおむつの世話になっているのだ。
「や、恥ずかしいこと、言わないでよ……」
尻すぼみに勢いを無くし、声は冷たい空気の中で霧散した。
マジックテープの乾いた音が響く。
テンポの良い音に合わせて、さとみの白い肌が全体的に紅に変化する。
それを見ただけで慣れている作業のはずなのに、体の硬直と緊張の度合いが増した気がした。
心臓がバクついている。今にもこの胸から飛び出しそうなくらい、激しく動き回っている。
「前、開くよ…」
「うん」
短い確認を言うにも、声が震えてしまいそうだった。
ゆっくりと前あてを開く。
おしっこを出したばっかりのおむつは、ほんのりと湯気を出していた。
甘酸っぱい匂いが、冷めた空気に色を付ける。
おむつの内側は黄色く染まっているものの、外に漏れ出ているという様子はない。
普段はさらさらとしたポリマーが、今は吸い込んで膨らんでいる。
その上にある幼いままの秘所は、僕にとっては見慣れたものだ。
まだ湿り気を残している割れ目は、黄桃のように瑞々しく見えた。
そこから醸し出す色気に、頭がクラクラになりそうになる。頭が熱っぽく感じる。
――風邪でも引いたかな?
「あ、あんまり、じっと、見ないでよ……」
彼女の言葉にはっとして、僕は邪念を吹き飛ばしながらおむつを交換することに集中する。
汚れたおむつを取り去り、秘所周りを拭く。
妹相手にも、そしてさとみ相手にも慣れたものだ。
そう思って温タオルが彼女に触れた瞬間、彼女の微かな声が耳に届く。
「あひゅ……」
その声に合わせて、彼女の体が強張った。
艶やかな声に、また頭が揺さぶられた。
――可愛い。それでいて、なんかこう……いや、集中集中!
できることなら頭を振って、邪念を振り払いたい気分だ。
何とか理性で抑え込んで、タオルが触れるときに一声かけるべきだったと後悔しながら、彼女の身体を念入りに拭いていく。
つるんとした割れ目も。その上の毛が生えてもいない丘も。弾力のあるお尻も。何もかも。
弾けるような肌は、肉付きがよくない割に柔らかい。
ずっと触っていたいと思えるほど、触り心地のいいものだった。
――かぶれたりしないと、いいけどな。
本来ならこの後かぶれ防止のためにパウダーを塗したりするのだが、そんな上等なものはここにはなかった。

「……んっ、くぅん――」
突然の喘ぎ声で動きを止める。
秘所周りを入念に拭いていたが、なんかさとみの様子が変だ。
体を固くし、ぎゅっとおまたを閉じようとしている感じ。
注意深く見てみると、秘所の一部分、割れ目の奥にある、おしっこが出る所がひくついているのが分かった。
「もしかして、まだ出そう?」
彼女に聞くと、ビクッと体を震わせたが、首は縦に動いていた。
「いいよ、出しちゃっても」
僕はすかさず、新しいおむつを彼女の下に敷いた。
彼女はお尻の下に敷かれたおむつの感触に身を震わせたが、今度は首を横に振って、緊張したように震えた。
「で、でも……できない、よぉ……」
「我慢するのも体に悪いし、出せるときには出しちゃった方がいいよ。
それにずっと、僕はさとみのおもらしも、おしっこも、見てきてるんだよ?
今更言ったってしょうがないよ。それに……僕は見たいな。さとみがおしっこする所」
「なっ……ばか、えっち」
逡巡するさとみに少しばかり意地悪で、卑猥なことを返してみる。
するとさとみはそっぽを向き、不満そうに口を尖らせた。
ちょっとばっかしデリカシーに欠けたかなと不安になるが、彼女は今一度首を縦に振り、柔らかく微笑んだ。
「……うん。じゃ、おしっこ、出すね…」
さとみの体が震える。緊張を解いているのか、全体的に見て脱力している感じだ。おしっこの穴がひくひくと動いた。
今にも出そうで、なかなか出ない。
そんなもどかしさを感じながら、その一部始終を追っていた。
「あぅ……あと、ちょっとなのに……う、まく、いかない……の」
さとみはなかなか出ないことに焦りながら、緊張と弛緩を繰り返す。それでも、肝心のものはなかなか出てこない。
うまくいかなくて戸惑っているのか、顔は少しばかり苦悶していた。
「手伝ってあげる」
「ふぇ……?ひゃっぁ!?」
見かねた僕が彼女の割れ目の周りを優しく、念入りに撫でた。
吸い付くような触り心地に、自然と胸が高鳴る。
彼女は上ずった声を上げ、反射的に仰け反った。
「やぁ……かずき、そこ、らめ……」
「ここがいいの?こう?」
「や、やめてよぉ……あたま、変になる……」
「でそう?」
「バカ……そんなんじゃ、あっ」
その時、ぷしゃと、割れ目から最初の一搾りが飛び出した。
それはおむつに飛び散って微かな染みを描き、白を黄色へと変えた。
「あ、ああっ、出ちゃうよ!おしっこ、きちゃうのっ!」
一度開いた門は、もう閉まらなかった。勢いのあるおしっこが、放物線を描きながらおむつに注がれる。
弾け飛んだ飛沫は外のマットに染みを作り、おむつは見る見るうちに鮮やかな黄色に染まっていった。
「出てるっ、熱いの、いっぱいぃ…」
瞳を閉じながらも、口で実況を止めない彼女の言葉に乗るように、おしっこはなかなか勢いが収まらなかった。
「かずき、かずきっ、見てるの?あたしの、その、全部、見てるのっ?」
変に興奮した言い方で、さとみは問いかける。僕もその姿に小さな興奮を覚えながら、優しい声色で返した。
「ああ、見てるよ。だから、全部出しちゃっていいよ」
「うんっ。かずきっ、あたし、全部、ぜーんぶだしちゃうよっ……!」
「いいよ。ほら、さとみ……見てあげるから、全部、見てるからね」
さとみのおもらしは、そのあと三十秒ほど続いた。
最後はおむつに一つの線を作り、おしっこは湯気を残しながらすべておむつへと吸収されていく。
出したばかりのおしっこの新しい香りが、部屋中に広がった。
それをいっぱい吸い込んで、さとみの全てを味わっていく。
もう後悔はないように。
さとみの全てを、心に刻み込む。
肩で大きく息を吐いて、彼女はこちらを見た。
その表情は安堵したような、満足したような、そんな表情だ。
「お疲れ、よくがんばったね。――ありがとう」
「うん、あたし、がんばった。――ありがとうだなんて、へんなかずき」
お互いクスクスと笑いあいながら、汚れたおむつをどけて、もう一度タオルで彼女の秘所を拭き始める。
その中に、おしっことは違う色の染みを見つけて、僕はちょっとだけ顔を赤くした。

新しいおむつを穿かせて、もう一度高台へと向かう。
月明かりは一気になくなり、薄暗闇だけが辺りを支配していた。妙に怖くなってしまい、お互いが寄り添うようにして上へと向かう。
「あのね、かずき」
さとみの声が、下の方から聞こえる。
「何?」
「あたし、知ってるよ?かずきがもう、ここに来れなくなるって」
「――――」
「だってあたしは、あたしたちは、繋がっているから」
それは、一緒に行く柚理のことだろう。
「だからね、知ってるの。知ってるんだ。もう、会えなくなるって」
「……そんなこと」
ない、とは言えなかった。ギュッと握る彼女の手が、とても強くて、儚かったから。
「――大丈夫だよ、あたしは。かずきの方が、心配」
「僕も、大丈夫さ」
彼女の声に、涙が混じる。僕も同じように、強がった。
「なら、あたしと今日で、お別れ?」
「うん。……そういうことになると思う」
彼女の悪戯な質問に、僕はまるで他人事のように言った。
数秒の沈黙。
重い空気が、二人を包む。
彼女の様子を窺う勇気は、僕にはなかった。
「時計、見せて、かずきとあたしの、時計」
無邪気な声に促され、僕はポケットの中の時計を取り出した。彼女に見やすいように掌に広げて開く。文字盤は、もうすぐで零時を指すところだった。
「ありがと、かずき。――本当に、ありがとう。……バイバイ」
後ろにいたはずの彼女の気配が、忽然と消える。
「……!?さとみ?どこにいったの?さとみ!?」
慌てて振り返るも、そこにはもう、誰もいなかった。温もりも消え、寒い世界の中に、僕だけが取り残される。
かちり。
文字盤は、零時ちょうどを、指していた。

雪はまだ残っているが、うららかな陽気は春の到来を予感させる。
風も冷たいものから暖かいものへと、だんだんと変わりつつあった。
卒業式を終えた僕と、終業式を終えて転校手続きを済ませた柚理は、電車の中で向かい合って腰かけていた。
重たい荷物は先に送り、僕らは電車でそれを追い掛ける手はずになっている。
「柚理ちゃん、私のこと忘れないでねっ」
「向こうについてもお手紙よろしくね、柚理」
対岸に座る柚理は寄せ書きに書かれた文字を呟きながら、優しい笑みを浮かべている。
僕はこの前友人と合格祈念パーティをして、別れをしたばっかりだ。見送りはいなくても、その気持ちは確かに心に届いている。
「さとみ……」
遠くの、雪の残る山を見ながら僕は呟く。あの山の中腹辺りに、豊郷神社がある。
あの日以来、さとみには会っていない。神社に行っても、さとみと出会うようなことはなかった。
秘密基地にしていた拝殿の中にも誰もいない。
社務所の中にも誰もいない。
誰も、誰も、誰も――
その事実に寂しさを覚えて、色んな道具を回収して、すべて新しい住まいへと送った。
もうあの神社に僕と彼女が一緒にいた証拠となるものは、残っていなかった。
「おにぃちゃん?」
乳白色の肌をした妹が、心配して話しかけてくる。
最近は体調もいいようで、学校に行く回数も増えていた。
そのことが、さとみが消えたことに関係するのかは、僕にはわからない。
「あのね、おにぃちゃん。私ね……」
何か言いにくそうに、柚理がまごつく。僕はその少女っぽい、可愛らしい仕草を見つめながら、やんわりと微笑んだ。妹の顔が、ひゅんと赤くなる。
「隣、空いてる?」
通路側からの声に、僕は無意識のうちに頷き、ハッとした。
声の主は僕の横に腰かけると、すっと僕の腕に自分の腕を絡ました。
さらりと揺れる黒髪が視界に入り込み、端の方で喜んだ柚理の顔が映る。
しかし、視界のほとんどは、彼女の顔に注がれている。
僕の知っているその顔は、悪戯そうに微笑むと柔らかい唇で、僕の名を呼んだ。
「かずき、ただいま」
「さとみ、どうして……」
目の前にいる少女は、僕が愛していた、あの神様だった。
「わ、私が、頼んだのっ」
横から、もじもじと動く柚理が割り込む。僕とさとみの視点が彼女へと集まり、ビクッと小動物のように震えた。
怯えたように瞳を震わすが、こくんと頷き、畳みかけるように説明を始める。
「だっておにぃちゃん、いつも大変そうだったから。私、迷惑かけたくないし、それでね、あのね、おにぃちゃんが学校行ってる間に、豊郷神社にお参りしたの。
おにぃちゃんを、守ってって。そしたらね」
「いいよ。……ありがと、柚理」

妹の臙脂色の髪を撫でながら、感謝の言葉を告げる。柚理は安心したように微笑み、瞳を閉じていった。
数分も経たないうちに、彼女は眠りの世界へと落ちる。
すぅすぅという寝息が、とても愛らしい。

「と、いうわけだよ。かずき」
彼女の小悪魔っぽい表情で言われたら、僕は納得するしかない。トンネルに入り、轟音が車内に響く。
「そ――ね……あたし、かず――こと、――だから」
彼女の言葉がトンネルの轟音に遮られ、うまく聞こえない。
けど口の動きで、僕は彼女の言葉を理解できた。
「うん。僕もだ」
その返事に彼女は、喜び、そして体を寄せてくる。
柔らかい体が、僕の体に触れる。
紛れもない実感覚で、彼女はそこにいる。
その時、カーブで大きく電車が揺れた。
「ひゃっ!?」
彼女と僕の顔が、数センチの所まで近づいた。お互いの息がかかる。近すぎて思考は正常に戻らない。それどころか、彼女が自らこちらに近づき……
その唇を、僕のものへと重ねた。
想像以上に柔らかいそれは、僕の心を洗っていく。
恋人同士の優しいキス。
僕にその体を預け、彼女は触れることが愛しいようにキスを続けた。
電車がトンネルを抜けると同時に、お互いが体を離し、恥ずかしそうに縮こまった。
思い出すように唇を撫でる僕と、顔を紅に染めて俯いてしまうさとみ。
愛も変わらず可愛い彼女に、ちょっとばっかりの意地悪をする。
さっき体が重なった時に気づいたことを、そっと耳打ちした。
「いゃあっ!」
驚いたのか大きく仰け反り、こちらに体を向けた。
今日は暖色系のカーディガンにチュールスカートという落ち着いた出で立ちだ。
そんな彼女は頬を染めながら、周りには見えないようにスカートを僕の方へ捲る。
そこには、少しばかり膨らんで下の方が黄色く染まった、紙おむつがあった。
「おもらし、しちゃったから、また、換えてくれる?」
「もちろん、だよ。僕も、さとみのおむつを換えたいから」
「このバカ。でも、すごく、うれしいよ。これからも、迷惑かけちゃうけど、いい?」
「大丈夫。今更一人増えたって変わらないしね」
「もう、あとで柚理に言いつけてやるんだから」
甘えた彼女の声に、満面の笑みで応えた。拗ねたような口調も、その中には喜びの感情が混ざってる。
それは、僕も同じだ。
外の世界は雪化粧から抜け出して、春のうららかな田園風景が広がっている。
ポケットに入った思い出の懐中時計を、彼女と一緒に見る。
かちり。
時刻は、十二時を刻み、そして、過ぎていった。
これからの僕たちのように、時計の針は止まることはなかった。

おしまい

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