俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「エヌアインにより完全者、及びヴァルキュリアが倒された」
数ヶ月前、世に流れた情報である。
新聖堂騎士団を統括する完全者ミュカレ、そして女神ヴァルキュリア。
その二人は、神の現実態による反逆より人知れず倒された。
事実上、その日で新聖堂騎士団は崩壊した。
その日を境に旧人類狩りは止まり、世間一般の表向きには平和が訪れたように見えていた。

しかし、現実としては新聖堂騎士団は崩壊していなかったのだ。
倒されるちょうど前日、完全者ミュカレは全部隊に「撤退命令」を出した。
自分が統括する二番隊を含め、全部隊への完全撤退命令。
このまま進めば旧人類を狩り尽くす事ができるという場面での撤退命令。
仕方なく命令に従い撤退したものの、正直に言えば不可解な点が多すぎた。
だがその真意を探る前に、完全者ミュカレはこの世から姿を消してしまった。

クローンの命は持って数年とされる。
ただでさえ短い寿命を電光機関で削るのだから、長くは生きれないだろうと言われていた。
だから、数々の場で旧人類狩りを率先して行っていた自分が、騎士団崩壊後しばらく生きながらえる事が出来たのは、正直意外だった。
だが、戦うために作られた自分から戦いを取り除かれたとき、そこに残るものはほとんどなかった。
出動しようにも出動できず、ただただ日々をじっと過ごす意味のない生を紡ぎ続けていた。

何日過ぎたか数えるのが馬鹿らしくなったある日。

「ヤツらと殺しあえ」
突然現れるや否や、自分を含めた数名の兵士を呼びだしてミュカレはそう告げた。
モニターには50弱といったところの人間が映し出されていた。
いったい何故? と問う前に、麻酔針による眠りへと誘われた。

そして、目が覚めた。

正直、何がなんだか理解することは出来なかった。
完全者の意図も、何もかも、断片すら掴むことは出来なかった。
いや、掴む必要など元々なかったのかもしれない。

自分は、旧人類を殺しきるための造られた命である。
他の誰がどう思っていようと、関係はない。
考えを捨て、疑問を捨て、上へ従い、旧人類を倒す。
それが、自分たち電光兵士に課せられた命なのだから。

何も考える必要など、ない。
殺しあえという明確な指示を下されている以上、それをこなすだけである。
そう、それだけでいい。

まるで言い聞かせるように、兵士は目の前の女へと襲いかかった。



はいはい、どーも。
現役女子高生のトレジャーハンター(自称)ラピスちゃんです!
と、いってもラピスっていうのはいわば通り名的な物なんだけどね。
ま、それはそれとして。
現在私は殺し合いのイカれた現場に巻き込まれていまーす!!
はぁ……なんでうら若き乙女をそんな悪趣味なことに巻き込むのよ。
私には父さんの残した謎のメモの解明と、"大いなる遺産"を捜し当てる重要な任務があるって言うのに、まったく。
まあ、冒険にトラブルは付き物よねってことで仕方がなく現状を受け入れることにしたわけ。
し、仕方なくよ?! 誰も好き好んで殺し合いなんてしたかないわよ!

で、私はこんなくだらないところからさっさとおさらばしたいと思ってる。
キチガイに襲われて命か純潔のどっちかを奪われたらたまったもんじゃないわ。
でも、逃げだそうにもこの首輪がネックなのよね。
スマホの説明を見る限り、無理矢理はずそうとするとあっと言う間もなくあの世行き。
しかもこれがあのよく分かんないロリっ子の意のままに爆破出来るって言うんだから、どうしようもないわよね。
この孤島からの脱出をはかれば、そこで爆破されて終わり。

だから、私が生きてこの場から抜け出してお宝探索の続きをするには、三つ必要よね。
一つ、このクソダサくて忌々しい首輪とオサラバする。
二つ、この島からオサラバする。
三つ、あのロリっ子にちょーっとキツい灸を据えておく。
命の安全の確保、という点では一が最優先。
このための知識、材料、技術とかの情報を仕入れるのが当面の行動方針ね。
そうと決まれば早速行動! お得意の鞭を握りしめて決意の足を進めていくわ!



まさか、のっけからああなるなんて思いもしなかったけどね。



鋭いソバットが、眼前に飛んでくる。
ギリギリのところでそれを避け、敵襲に身を構える。
「ほう、少しはやるようだな」
金色の整った髪、白い制服、無機物のような表情。
新聖堂騎士団の、エレクトロ・ゾルダートがそこに立っていた。
「だが、旧人類は抹殺する。それが俺の任務だ」
何人もの人間が彼らに葬られた理由。
それは彼らが操る特殊な装置、電光機関から発せられる雷の力であった。
戦車の装甲すら溶かすその威力に、何人もの人間が飲み込まれていった。
バリバリと音を立て、ゾルダートの周りに雷が起きる。
「アーイ!」
機関の力を解放し、大きな雷球を作り上げる。
ゆっくりと確実に獲物へと迫っていく雷球を盾に、ゾルダートは更に攻撃を仕掛ける。
常人なら、この雷球を避けるかなにかリアクションを起こす。
その時に生まれる隙を、空中から突く。
旧人類狩りと全く変わらない手法で、ゾルダートは早速一人の旧人類を仕留めた。



そう、襲いかかった彼女が「人間」だったなら。



「やっぱり、電光機関なんて大したことないわねぇ」
ゾルダートが空に飛び上がった瞬間、溜息とともに女性は呟いた。
そして女性を中心に、電光機関で作られた雷よりも何倍も大きい、紫の雷注が落ちた。
「うーん、まだ調子が悪いわね。やっぱりそううまくは使いこなせない、か。」
電光機関による雷球が一瞬で消え去ったことに、ゾルダートは驚きを隠せない。
「あなた達は雷を使うようだけど、それじゃ三流もいいところね。よく見ておきなさい」
女性はゆっくりと手を引き、気を込める。
電光機関の何倍もの雷がその手に集まり、大きな球体を作っていく。
手を振りかぶって一気に突きだし、雷球がゾルダートを飲み込んでいく。
「荒れ狂う稲光、その身に刻んで眠りなさい……永遠にね」
消し炭と化したゾルダートを見て、女性は笑っていた。

「オ、オロチ……」
それを側で見ていたラピスは、思わず声を漏らす。
当然、その声は雷を操る女性の耳へと届いてしまう。
女性が声に反応して振り向いたとき、相手の前髪で隠れているはずの瞳と目があったような感覚に飲み込まれた。
殺される、直感でそう感じていても体が全く動かない。
女性が一歩ずつこっちに向かって歩いてくるのを、ただ黙って見ていることしか出来ずにいた。
「あなた、オロチを知ってるの?」
目前に迫った女性が、ラピスへと問いかけをした。
その瞬間、女性の全身を迸るように一本の稲妻が流れた。
言葉すらでなくなったラピスは、涙を浮かべつつひたすら頷き続けた。
そのラピスの顎に、やさしく手が当てられる。
今にも破裂してしまいそうな緊張感の中、女性の口が動き始める。
「アハッ、大丈夫よ。取って食べたりなんてしないわ。
 そもそも、殺し合いをするつもりなんて全く無いわよ。
 ただ、あなたがオロチを知っているというのならば少し話しておきたいことがあるだけよ」
口から飛び出たのは、意外な一言であった。
ラピスが過去に調べた文献や情報が確かなら、オロチ一族は人類を憎んでいるはずだ。
しかし、今目の前にいるオロチの血を受け継ぐ女性は「殺すつもりはない」と言っている。
真偽のほどは確かではないが、ここで喋るのを渋ればどうなるかは傍の焼死体を見れば分かる。
ラピスはゆっくりと過去に調べた情報、知識を洗いざらい語り始めた。

「へぇ……個人の力でよくそこまで調べたわね」
すらっとした長い栗色の束ねた髪、誰もが一度は視線を運んでしまうほどの豊満な体の女性、シェルミー。
またの名は、オロチ八傑集の一人、荒れ狂う稲光のシェルミー。
彼女はラピスがしゃべり尽くしたオロチについての情報量に、正直な感想を述べていた。
「そこまで知ってるなら話が早いわね。
 少し前のザ・キング・オブ・ファイターズで、草薙京達の手によってオロチが封印されたことは知ってるわね?」
シェルミーの問いかけに、ラピスは黙って頷く。
「でもね、一部のオロチに関して知っている人間全員の知識はそこで止まっているの。
 これは誰も知らないけど、実は少しだけオロチ一族に関してはまだ続いているのよ」
シェルミーの口調が、少し重い物になる。
オロチに関しては文献、ハッキング、その他口に出せないような諸々でそこらの軍人よりかは詳しいデータを握っているはずだ。
しかしオロチの関係者本人が「続きがある」と言っているのだから、おそらくデータや情報にはない「何か」があるのだろう。
自分のデータが不完全だったことより、知らないことへの興味が勝り、ラピスは黙ってシェルミーの話を聞き続けた。
「"遙けし彼の地より出ずる者"がオロチを復活させようと、その封印を解いた。
 そして復活に失敗しては時をさかのぼり、過去から別の試行を試み、それがだめならもう一度繰り返す。
 彼の地の人間はそれを繰り返していたわ。
 そして、何度目かの試行で三種の神器の力を奪い去り、完全に蘇らせようした。
 結果、それも失敗したんだけどね。どういうわけかの時点から"歴史の逆行"が行われていないのよ。
 ま、なぜ歴史の逆行が止まったのかは私には分からないけれどね。
 ともかく、何度も何度も歴史が逆行したせいで、オロチの封印が施される少し前から、それが解けるあたりの時間軸がハチャメチャになってしまったわけ。
 その所為なのか、ある日突然私は肉体と意識を取り戻したの。
 オロチの力を中途半端に宿した、まるでイレギュラーのような存在としてね」
時間の逆行を繰り返し、歴史を改竄していく集団。
その存在が明かされたことが、ラピスにとって大きな衝撃を与えた。
シェルミーの話が、落ち着いた口調のままで続いていく。
「時間軸の捻れ? っていうのが原因らしいわね。
 本来存在し得ない者が、本来有り得ない記憶を持ってこの世に存在している。
 そう、死んでいるはずの私が、無かったことになったはずの歴史の記憶を持って、ね
 なぜ私が蘇ったのか、なぜ蘇るときに"消えたはずの歴史"の記憶を植え付けられたのか、なぜ私じゃないといけなかったのか。謎はたくさんあるわ……。
 まっ、長々話したけど別にそんなことはどうでもいいんだけどねっ。
 せっかく蘇ったんだから、もう一度人生を謳歌したいな〜って思ってたらこんなのに巻き込まれちゃって、もうサイテーよね!
 完全者だか何だか知らないけれど、きっつ〜いお仕置きをしてあげないとね。フフッ♪」
よくできた話、と捉えることもできる。
だが、目の前の女性が紫の呪われた雷を操っていたのは事実であるし、そもそも嘘だとしてもそれを語るメリットが見あたらない。
何より軽い喋りの裏に時たま見える、凍り付くような殺意は、とても冗談で出せるものではなかった。
神妙な表情でシェルミーを見つめるラピスに対し、シェルミーは依然として軽い口調で話しかけてくる。
「アハッ! そんな怯えた顔しないで。
 少なくとも、今の私は貴方の敵じゃないわ。むしろ、味方と言っていいくらいね。
 よかったら一緒にあの完全者とか言うのを、ちょ〜っとお仕置きしに行かない?」
ともかく、今はこの一連の発言を信じる他無い。
当面の志が同じならば、ある意味ではこの上なく心強い味方として考えられる。
ラピスは、ゆっくりと口を開いた。
「私も、それを考えていたところ」
「ウフッ、気が合うわね。私はシェルミー。
 かつてのオロチ八傑集の一人で、今はちょっと雷が使えるただのお姉さんよ」
人を消し炭にしておいてよく言うわよ、という一言を飲み込み、差し出された手を取って挨拶を返す。
「ラピス、世界一のトレジャーハンターよ」
こうして滅んだはずのオロチの末裔、生きている間には出会えないと思っていた存在と共に、ラピスは殺し合いを駆け抜けることになった。
現役女子高生兼トレジャーハンターラピス、18歳のある日の出来事の、幕が開けていった。

【エレクトロ・ゾルダート(二番部隊隊長)@エヌアイン完全世界 死亡】
※デイパックごと消し炭になりました。

【G-9/中央部/1日目・朝】

【ラピス@堕落天使】
[状態]:うわすっげー、それマジ?
[装備]:一本鞭
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:首輪解除から完全者をシメる、そんでこの場から脱出。
1:シェルミーととりあえず行動。改竄された歴史に興味。

【シェルミー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:生を謳歌するため生き残る、襲われれば容赦はしない。完全者にお仕置きをする。
1:ラピスととりあえず行動。
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005:Knuckle Talking
時系列順
008:ミッドナイト・シャッフル
投下順
007:それでも僕等空っぽだから(Sisyphean labor)
始動
ラピス
046:赤と黒が舞う
シェルミー
エレクトロ・ゾルダート(二番部隊隊長)
救済

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