俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

人と人が武器を取り、殺し合う空間。
常人は考えもしない、非現実的な空間。
だが、彼にとっては日常と大差は無い。

己の力を用い、相手を倒す。
いたってシンプルな話だ。
鬼が出ようと、仏が出ようと関係ない。
両腕、両足、頭の各部位と全身の力を用いて相手をねじ伏せる。
たった、それだけ。

彼の目の前に一人の殺人的な匂いを放つ中年が現れた。
彼もまた、己の拳こそ最強と信じてやまずに日々を過ごしてきた人間だ。
生活の全てを拳に捧げ、己の拳を磨く事を生きがいとしてきた。
この場においても、彼が求めるのはただ一つ。
「最強」という、たった一つの称号だ。

己の拳に絶対の自信を持つ両者が邂逅する。
言葉は、いらない。
互いに感じあう闘気が全てを伝えてくれる。
あとは、己の全てを振るうだけだ。
両者の間合いが少しずつ詰まり、ある一線を越えた時、何かが弾けたかのように動き出した。

先に仕掛けたのは金髪の男、シェンである。
走り出した勢いをそのまま右足へ託し、相手へと叩きつけていく。
高速で飛びかかる斧のような一撃に対して相手の男、鬼瓦寅男は正面からぶつかりあう事を決めた。
その場で大きく足踏みをし、その力を利用して生まれた前進の力を使いながらつま先で蹴る。
最初のすれ違いは互いの足と足。
真っ向から受け止め合う事を選び、その痛みを抱えながら相手へ殴りかかっていく。
零距離で放たれる拳と拳、蹴と蹴。
寅男はその一部を捌くことを選択しようとしたが、守りを捨てて殴りかかって来るシェンの攻撃を捌ききれないと判断し、自分も守りを捨てて殴りかかる事を決めた。
互いの拳が互いの顔、胸、腹に重く突き刺さっていく。
にもかかわらず、両者共に一歩も引き下がらずにただひたすらに殴り合っている。
怯みを見せた方の負けの壮絶な殴り合いを終わらせるため、両者共に力を込めた拳を振り抜き、同時に吹き飛んで行った。
「小僧にしては真っ直ぐ力のこもった拳じゃな」
「オッサンも年の割にはいい腕してんじゃねえか」
土煙を纏いながら、両者共に起き上がる。
その顔に笑みを浮かべながら、互いを讃え合うように言葉を交わす。
大きく一息ついてから、拳を握り直す。
間合いを離したまま、シェンは大きく足踏みをしてから、拳を振りかぶる構えで固まる。
魔王のような唸り声と共に、その身に力を込めて行く。
大地が揺れ、空気が震え、音が鳴り響く。
気という気が集まりきった時、シェンの体が弾けるように飛び出した。
全身全霊を込めた右腕が、寅男へと襲いかかる。
コンマ数秒単位で映る男の姿をしっかりと捉えながら両の足を地につけ。

真っ向から、シェンの拳に向き合った。

瞬間的に全身を硬直させ、全てを受け入れるかのようにどっしりと構える。
鬼瓦寅男という男の我慢の精神と、衣食住より拳の鍛錬を積み上げて来た彼だからこそ出来る"捌きの構え"だ。
シェンの拳が、ゆっくりと胸部に着弾する。
骨が軋み、肉が潰れ、全身が悲鳴を上げているのが分かる。
わかった上で"我慢"する。
我慢の先で、肉体にこの上なく強烈な電気のような物が流れる。
その電気を動力とし、攻撃を受け止める為に硬直しきった体を瞬時に稼働させる。
捌きの構えのまま片手を引き、たっぷりと息を吸いこむ。
瞬時にまっすぐと貫くように抜き手を伸ばす。
刀のように鋭く、竜のごとき勢いで襲いかかるその手を、人は"ドス竜"と呼んだ。

竜の一撃を食らい、シェンは再び後ろに大きく吹き飛んだ。
但し、今度は受け身すらままならない姿勢で。
建物と一体化し、瓦礫を被るように倒れ込んでいた。
その場から素早く抜け出す為に、自身を殴って練る気の代わりに、先ほど受けたダメージから練った気使う。
それを纏うように全身に染み込ませ、一気に爆発させる。
吹き飛んでいく瓦礫の奥にゆっくりと視界が光を取り戻して行った。

そこには、つい先ほどまで拳を交わし合っていた男、空手バカ鬼瓦寅男の額に小さな穴が空く瞬間が映っていた。
辺りに血が飛び散り、寅男の体がゆっくりと大の字に倒れ伏していく。
状況を察知したシェンは素早く他の建物の陰へと飛び移り、次の銃撃をかいくぐって行く。

自分達が戦う前から狙われていたことをそこで把握した。
戦いの結末を安全な場所で見届けた後、片方を銃殺する。
最も効率的で、最も安全なその手段をこの場で取らない理由はない。
しかし、一つだけ襲撃者はミスを犯している。
戦いの結末が訪れる瞬間を見誤った事、つまり自分にその存在を教えてしまった事である。
見えない所から正確に急所を打ち抜く暗殺者に、徒手空拳のみの自分がどう動いて行くのか?
取るべき選択肢は無数にある。
「……楽しませてくれよな」
一歩間違えば死という状況で、彼は血を拭いながら笑う。
殺し合いだとか場の状況どうこうよりも、彼は純粋にケンカが楽しみたいだけだ。
拳を握り締め、ケンカをより楽しくする次の一手を選択していった。



白の女性用スーツに美しい金髪の女、ベティ・ドー。
20世紀最も成功した実業家としても有名な彼女も、この場で取る行動は変わらなかった。
飢えと貧しさから逃れるために、幾多もの人間の命を奪った。
今更数十人殺そうが、彼女にとっては何の支障も無い。
目的はたった一つ、生きる事である。
それを成すためなら、どんな手段だって彼女は取ることができる。

幸運にも、支給されたものの一つには狙撃用の銃が入っていた。
自分が目覚めた場所は建物の最上部、さらに下では殴り合いを繰り広げている男が二人いる。
最後の一人になるための第一歩を踏み込むための舞台は揃っていた。
殺気を消して銃を構え、じっと時を待つ。
胴着の男の抜き手がもう一人の男を吹き飛ばし、カラテの構えを作った所で引き金を引いた。
神懸かり的な狙撃精度が、頭を打ち抜いていく。
これで早速二人の敵が居なくなったはずだった。
信じがたいことに吹き飛ばされた男が、闘気だけで瓦礫を吹き飛ばして起き上がったのだ。
さらに男は自分の存在を察知したようで、狙撃の死角へと逃げ込んで行ってしまった。
そのまま逃げるのならば一向にかまわないのだが、男がもし自分を狙いに来たらという事を考えてしまう。
遠距離戦に自信があっても、近距離戦に持ち込まれてはこちらが不利になる。
存在を悟られた以上、出来るだけ早めに始末しておきたいのは確か。
しかしそのために姿を現すのはあまりにリスキーすぎる。
「焦ってるのかしら……柄でもないわね」
命を握られた上での殺し合い。
それは彼女が生きてきたいつ死ぬか分からない日々に酷似している。
やることなど、決まっているはずなのに。
命を握られていると言う場面に立たされ、一種の焦りを感じずにはいられないのか。
「ハラの探り合いね、上等だわ」
不安とも恐怖とも言いにくい気持ちを抱えながら、彼女も次の一手を仕掛けて行く。

数多の屍の上に鎮座する、女王になるために。

【鬼瓦寅男@堕落天使 死亡】

【F-2/平瀬村居住区/1日目・朝】

【シェン・ウー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:全身にダメージ(大)、爆真
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:ケンカを楽しむ

【ベティ・ドー@アウトフォクシーズ】
[状態]:健康
[装備]:レミントン RSASS@現実(18/20、予備弾10発)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:どんな手段を使ってでも生き残り、最後の一人になる
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シェン・ウー
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ベティ・ドー
鬼瓦寅男
救済

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