俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

どさり。

鬼瓦寅男の体が、額に穴をあけて倒れる。

ぱりん。

軽い音を立てて鬼瓦寅男のデイパックの何かが割れる。

ずるり。

なにかが、染み込んでいく。

ばしゃん。

雷が、落ちた。



「よォ」
最悪の出会いだった。
鬼瓦寅男を射殺する際に仕留め損ねた男と、出会ってしまうなんて。
初めの場所であのままじっとしていても、男に出会うのは分かっていた。
だから先手を打って移動を開始していた。
が、運悪くも"一番会いたくない相手"にばったりと出会ってしまった。
手にはライフル、どうあがいてもいいわけができない状況。
だが、ベティは動じない。
どんなに絶望的な状況でも、冷静に分析して動くことを知っているから。
コキコキと首と手を鳴らしている男の足下に滑り込むように、一本の筒を投げ込む。
「あん?」
不審に思う間もなく、筒はすごい勢いで煙を吐いていく。
男の視界を瞬時に塞ぎ、方角を失わせていく。
これでいい、この隙に自分は逃げるだけだ。
ベティは恐れることなく背を向け、ひたすらに男のいた場所から走って逃げていく。



「――――ッドラアアアッッ!」
真横を通り抜けるのは爆音の咆哮。
圧縮された空気が破裂し、ベティの体を押し退けていく。
不運は一つ、出くわした場所から逃げる方向が一つしかなかったこと。
筒が投げ込まれた方向をしっかりと記憶していた男、シェンもまたあわてることなく気を練っていた。
あとは筒の投げ込まれた方角へと、突き抜けるだけ。
「チッ、外したか……」
とはいえ、大体の方向しか分からない状況では、目視で向かうのとはやはり雲泥の差がある。
拳が空を切ったのを確認したシェンは、足が震えながらも自分を睨みつける女を睨む。
ベティは震える足を押さえながら考える。
背には煙の世界、目の前には近接戦闘の鬼。
考える、考える、考える。
「そこまでよ」
響きわたる、第三者の声。
ぴしゃりと言い放った声の正体は、制服に身を包んだ女軍人、鼎。
その手に構える銃の向かう先は、シェンの頭。
「あァ?」
「民間人を襲うというのなら、暴徒と見なすわ」
凄みを利かせながらも睨み返すシェンに動じることなく、鼎は淡々としゃべり続ける。
「ハッ、軍人様はいつの世も難物ばっかってか」
溜まった虫酸を吐き捨てるように、シェンは言葉と唾を吐き捨てる。
「まァ、楽しめりゃあなんでもいいか」
だが、不快感を露わにした顔は、瞬時に笑顔へと変わる。
自分に正面から銃を向けるような奴は、しばらく出会っていなかったから。
高鳴りを押さえることなく、シェンは瞬時に風になる。
「早く逃げなさい」
襲いかかるシェンを視界から逃さないようにとらえながら、鼎はベティに告げる。
暴徒鎮圧に時間はかからないとはいえ、危険には変わりない。
早々にここから立ち去るように促し、ベティも言われるがままにその場を立ち去っていく。
それを確認してから、鼎は正面へと意識を集中する。
もう、眼前まで迫っている拳に対して。
彼女は、表情を崩さない。



「九死に一生、ってとこかしらね」
絶体絶命の状況から、見事逃げ仰せることに成功したベティは、かなり離れた場所で一人つぶやく。
ああいう正義感気取りの人間は、利用しやすい。
貧民街からのし上がるときだって、正義面した連中を手玉にとって。
自分が危なくなると分かれば手のひらを返すが、そのときにはもう遅い。
まあ、そんな連中を存分に養分にすることで、ベティ・ドーという一人の人間が成り立っているといっても、過言ではない。
「次は、失敗しないようにしなくちゃ」
ライフルを携えながら、彼女は不適に笑う。
この場所でも生き残るのは、自分だ。
後の正義面した連中は、みんな自分の養分なのだから。



世界が、浮いた。
それはもう、軽く、ふわりと浮いた。
伸ばしたはずの拳は違う方向へと向き、気の流れに乗るように吹き飛ばされる。
腕に引かれるように体も舞い、空中へと旅立っていく。
シェンが突き出していたのが拳だったならばそうなっていただろう。
鼎は拳か足刀しか来ないと、初めから決め打っていた。
結果としてはそれが悪手になる。
なぜなら、シェンは。
「うン……ォラッ!!」
全体重と物理学の法則を全て乗せ、その全てを頭に注いで振り下ろした。
予想外の攻撃に、鼎は体内の気を大きく乱される。
通常以上のダメージを負うことになり、大きく距離を離すことになる。
もちろん、休む時間など無い。
立て続けに襲いかかってくる拳をやりすごし、足刀を受け止める。
一度崩した体勢というのはなかなか元に戻らないもので、鼎は劣勢のまま立ち回ることを余儀なくされる。
「ぐっ……ぁ」
連撃を捌ききれず、ついに重いのを一発受け取ってしまう。
腹部にずしりと衝撃が走り、ふわりと体が浮く。
「オオオオオオオオォッッ!!」
怯んだ隙に、シェンはここぞとばかりに気を貯めていく。
このまま当て身の構えも取ることなく、鼎は一撃をもらってしまっていただろう。
帝国陸軍に伝わる、あの構えさえなければ。
「はっ!!」
体を介して相手の力を受け流し、気の流れを変える空気投げとは違う、もう一つの反撃の力。
体内に宿る気を障壁として張り巡らせ、相手の攻撃を無力化して弾きとばす、陸軍伝統の構え。
空気投げほどの力は持たぬものの、どんな"剛"ですらも捌ききるこの構えは、今はこの上なく心強かった。
「チッ……攻勢防禦、か」
吹き飛ばされたことを認識し、口についた血を拭ってシェンは吐き捨てる。
いつぞや黒手会の勧誘を受けたときも、そんな構えを操る女が居た。
細かい仕組みはちがえど、やっていることは同じだ。
「こりゃ、楽しくなりそうだな……!!」
だが、シェンは笑う。
戦いが楽しくなるのならば、何でもいい。
思う存分拳をふるう場所があれば、それでいい。
意気揚々と再び地面を蹴り、鼎へと向かっていく。



その瞬間。
両者のちょうど真横の民家が、大きな音を立てて崩れさる。
舞い上がる煙と共に現れたのは。

「ぐるるるぅうぉおおああぁ……」

先ほど、脳に穴をあけて死んだはずの鬼瓦寅男だった。



ある場所にカバンが落ちている。
その中の一つの瓶が割れている。
夢物語の"ゾンビ"を実現させた瓶が。

割れている。

【G-2/北部/1日目・午前】
【シェン・ウー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:全身にダメージ(大)、爆真(地味に継続中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:ケンカを楽しむ

【鼎@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康
[装備]:ストレイヤーヴォイト インフィニティ エクステンデット(18+1)
[道具]:基本支給品、小型無線機、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:現状把握、被害を最低限にして事件解決。

【鬼瓦寅男@堕落天使】
[状態]:ゾンビ@メタルスラッグ
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本:

【ベティ・ドー@アウトフォクシーズ】
[状態]:健康
[装備]:レミントン RSASS@現実(18/20、予備弾10発)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:どんな手段を使ってでも生き残り、最後の一人になる
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045
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044:状況は開始されている
時系列順
046:赤と黒が舞う
投下順
058:Knuckle Talking Revenge
救済拒否
鬼瓦寅男
005:Knuckle Talking
シェン・ウー
ベティ・ドー
061:明日を笑う奴を殴れ

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