俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

ヒュウウ、と冷たい突風が吹き。
バサバサ、と黒いマントが靡き。
ジュボッ、と二つの炎が宿った。

二人が出会うことは、ほとんど決まっていたようなことだった。
K'は半島に向けて南へ、ネームレスは半島から北へ。
道は一本、避けられる道などあるわけもない。
出会い頭にK'は、白く光るグローブについた赤い血を見て確信する。
先ほどの男を殺したのは、こいつだと。
同時にネームレスは歓喜する。
写真上のデータでしか知り得なかった宿敵が、今目の前にいるのだから。
今日はお日柄もよく、晴れ晴れとした殺し合い日和ですね、なんて言葉を交わすこともなく。
K'は右手に炎を宿し、ネームレスはイゾルデを構え、戦いへと向かっていく。
交錯する赤と黒の炎。
一瞬にして周囲は焦土と化し、炎が轟々と燃えている。
「さすが裏切り者、それなりの力はあるか」
「ケッ……テメぇ、組織の人間か」
ネームレスの言葉に、K'は眉を顰めながら反応する。
裏切り者、と彼のことを呼ぶのはあの組織の人間だけ。
ならば、容赦をする必要はない。
K'は弱めていた炎を強め、振りかざしていく。
ネームレスもK'の様子を見て、もう一度イゾルデを構え直す。
もうこれ以上、言葉は必要ない。
あとはどちらが最後に立つか、それだけ。

巨大な火の輪を発生させ、回し蹴りでその炎を飛ばしていく。
もちろん、ゆったりと進む炎はネームレスを包み込むことはない。
横に避けることをせず、宙を舞うことで一気に距離を詰めていく。
K'もバカではない、むしろ飛んでくることを狙っていた。
再び火輪を起こし、今度は宙に向かい蹴り上げる。
殻に閉じこもるかのようにそびえ立つ炎の壁を、ネームレスは体勢をよじることで無理矢理回避していく。
その隙を、K'は逃さない。
三度目の火輪から、今度は自身の足にそれを纏い、自ら突撃していく。
無理矢理着地したネームレスは体勢を整える間もなく、炎を纏った蹴りを浴びてしまう。
「どうしたってんだよ、オラッ!」
地面を無様にも転がるネームレスに、K'は威勢良く食いかかっていく。
同時に黒くうっすらとK'の姿が消える。
そして黒の世界から、素早くネームレスの背後を取っていく。
ノータイムで手を振りかざそうとした、その時だ。
「……この程度か」
「あぁ?」
ぼそりと呟かれた声とともに、ネームレスが"抜刀"し、黒い炎の渦が地面に巻き起こる。
不意をつくつもりが、不意をつかれてしまったK'はその黒炎をもろに浴びてしまう。
「この俺には、貴様と草薙京の血が流れていると聞く」
飛び退いて炎をもみ消すK'を、ネームレスは冷ややかな目で見つめる。
更にK'に聞こえるように大きくため息をつき、言葉を続ける。
「"始祖"(ルーツ)の一人がこんな火力だと知って、少し幻滅しているだけだ」
「てっ……めェッ!!」
明らかな挑発、そしてK'はそれに怒りを露わにしてしまう。
安っぽい挑発だとは分かっていても、乗らずにはいられない。
飄々とした顔で人を殺している、目の前の奴にだけは。
ナメられる訳には、いかなかったから。
ギリリ、と歯を鳴らしながら、K'は四度目の火輪を起こす。
「散れ」
それを見ていたネームレスが、右腕を素早く横に薙ぐ。
同時にK'の眼前で爆発が発生し、火輪ごと吹き飛ばされてしまう。
今度はK'が無様に転がることとなった。
浅黒い肌には真新しい焦げが増え、所々からは赤い血が流れている。
ネームレスはそれを見逃さず、今度は地面から素早く寄っていく。
イゾルデをドリル状に変化させ、K'の肉体を抉り取ろうと延ばしていく。
「ケッ、それがテメぇの気味悪ぃ力か!」
「……ッ!!」
睨み付けながら吐いたK'の言葉に、珍しくネームレスが反応した。
生まれた好機を無駄にしないよう、地面を擦るように炎を起こし、続けてアッパーから肘打ちに繋げるように空へと舞っていく。
だがネームレスもそれをただ黙って食らうだけではない。
変形した右手をまっすぐと伸ばし、K'の目を抉らんと延ばす。
互いの攻撃が互いにすれ違い、傷を与える。
K'は傷を押さえながら着地し、ネームレスも火傷を押さえ、K'を睨む。
「……この名を侮辱することだけは、許さん」
二人が出会ってから初めて見せる、怒りの気。
どう控えめにみても怒っていると分かるそれを前に、K'はふてぶてしく笑った。
「ケッ、"無機物愛者"が……」
「彼女は生きているっ!!」
吐き捨てたK'の台詞に、ネームレスはより強く反応する。
右手のグローブを貶されるということ、それは"イゾルデ"を貶されるということ。
彼にとって等号で結ばれる苦痛を、K'は平然と投げつける。
「もういい、朽ち果てろ"裏切り者"!!」
押さえきれない怒りを爆発させるように、ネームレスは駆けだしていく。
それに対しK'は、ふぅ、と煙草の煙を吐くように一息つく。
次の瞬間、ネームレスの眼前にふんわりとした速さで何かが迫ってきた。
ネームレスは顔色の一つも変えず、それを弾き飛ばしていく。
「前も見えねえか」
小さく、ぼそりと呟くような声が同時に届き。
伸びきった肘が自分の胸をしっかりと捕らえていた。
「しまっ……」
「行くぜオラァッ!!」
振りかざされる右手から迸る炎とともに、K'は連撃を加えていく。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」
右、左、右、左。
下、上、下、上。
足、手、足、手。
体全身を使った流れるような攻撃を、ネームレスはただ受けることしかできない。
「どうしたッ」
戦いを終わりへと導く拳を叩き込むため、ネームレスの腹部にブローを突き刺していく。
「あぁ――――」
「図に乗るな」
そして最後の一撃を決めようとした時、光を放ちながら解き放たれる"何か"が見えた。



「……くっ、思った以上に消費したか」
わき腹を押さえ、動きだそうとするネームレス。
遠くには倒れたK'の姿がある。
K'に制御グローブがあるように、ネームレスにとっての制御グローブはこの"イゾルデ"だ。
それを解き放つことで、K'同様に止めどなく燃え盛る炎を出すことができる。
自身の消耗と引き替えに、だが。
組織を壊滅させた男には、やはりその程度の消耗は必須だったという事か。
ネームレスは無傷で勝てると思いこんでいた自分の甘さを、心の中で反省する。
「待て、オ、ラ」
そこから立ち去ろうとした彼の足を、引き止める一つの声。
傷だらけの体に鞭を打ちながら、K'はゆっくりと起きあがる。
「ほう、まだ動くか」
だが、ろくに戦える状況ではない。
立ち上がる足は生まれたての子鹿のように震えているし、息も大きく上がっている。
宿敵とはいえ、一人の人間……いや、クローンか。
苦しまずに葬ってやるのが、せめてもの礼儀だろう。
「喜べ、俺がトドメを刺してやる」
ネームレスはイゾルデを再びドリル状に変化させ、K'へと走り寄っていく。
そしてまっすぐ、まっすぐに。
K'の胸元をめがけて、ドリルを伸ばした。



「はぁ〜〜〜〜い、ストッ……プ♪」
突如割って入る雷球。
ネームレスの目の前で弾けるそれを、素早く後ろに飛び退くことで避けていく。
即座に反撃しようと声の方へイゾルデを抜き、爆発を引き起こす。
「んもぅ、せっかちさんは早死にするわよ」
爆発を間一髪のところで避け、女性は怪しく笑う。
ようやく追いついたニット帽の少女が状況を理解する前に、かばうように前に立つ。
「悪いけど」
そして――――かつての仲間の少年のように、手を口に当て。
「彼は渡せないわ」
不敵に、笑った。

【I-9/北東部/1日目・午前】
【ネームレス@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:ダメージ(中)
[装備]:カスタムグローブ"イゾルデ"
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜5)
[思考・状況]
基本:一刻も早い任務への復帰のために皆殺し

【K'@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:全身に火傷
[装備]:制御用グローブ
[道具]:基本支給品、ビーフジャーキー一袋、不明支給品(ターマの支給品を含む。1〜3)
[思考・状況]
基本:借りを返すため、完全者と戦う
1:目の前で死んだヤツ(ターマ)の仇を取る

【ラピス@堕落天使】
[状態]:え、ちょ
[装備]:一本鞭
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:首輪解除から完全者をシメる、そんでこの場から脱出。
1:ちょ
2:シェルミーととりあえず行動。改竄された歴史に興味。

【シェルミー@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:生を謳歌するため生き残る、襲われれば容赦はしない。完全者にお仕置きをする。
1:K'を保護、目的は――――
2:ラピスととりあえず行動。
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046
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045:白い悪魔が笑う
時系列順
030:君が世界に謝罪する時(We have not yet begun to fight!)
投下順
047:そんなん考慮しとらんよ
006:さよなら、真実。こんにちは、真実。
ラピス
053:中間試験 科目:自我
シェルミー
027:彼は誰かに、詩唄う。
ネームレス
K'

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