俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

麦の香りと新鮮な野菜の食感がたまらないサンドイッチ。
それに上品な香り漂う紅茶と、燦々と輝く太陽と来れば、ピクニックとしては最高の環境だ。
だが、そんなピクニックの環境を台無しにする"殺し合い"という舞台。
そんな中で"ピクニック"をしようとするのは、彼女なりの反抗なのだろうか。
そんなことを考えながらも、ジョンはサンドイッチを口へと放り込んでいく。
食事が美味い、というのはどんな状況下でも幸せな出来事で。
自然と頬は綻ぶし、気持ちにも余裕が生まれてくる。
「……おっ」
そんな中、微かに聞こえてきたのは優しい歌声。
まるで喫茶店の一室のように、お洒落な曲が流れている。
「こんな殺し合いで歌うような奴なんて、どんな歌姫なんだか、会いに行ってみたいねえ」
そう、歌うという行為はこの上なく目立つ。
しかもここまで聞こえてくると言うことは、間違いなく増幅された歌声。
これを聞いているのは、自分たちだけではないと言うことだ。
「ダメですよ、ジョンさん。
 不特定多人数が集まる可能性が高く、乱戦になるのが目に見えてます。
 危険に首を突っ込みたいなら、話は別ですけど」
冗談半分にケラケラと笑うジョンを、フィオはサンドイッチをほおばりながら静かに窘める。
ただの日和見軍人かと思いきや、そうではないらしい。
ピクニックシートを広げてくつろいでいた先ほどとは、全く違う気迫で自分に話しかけている。
嫌と言うほど落ち着いている、落ち着いているからこそ食事なんて取れたのだろうか。
「けど、歌につられて間違いなく誰か来る。
 仲間を募るにゃあうってつけの場所じゃねえのかい?」
「集まるということは、一つの的になると言うことです。
 自殺行為にも等しいですよ」
「……なるほどな」
なんとなく続けてみた二の句にも、完璧に対応してみせる。
どうやら、雇い主に対して少し認識を改めなくてはいけないようだ。
考えも……先ほどよりかは少し読めなくなってきた。
そんなふうにジョンがひとりでに感心しているのをよそに、フィオ手際よく口を拭き、紅茶セットを片づけていく。
「あの歌声から外れるように向かいましょう、比較的安全に行動できるはずです」
至って冷静な声で、至って冷静な判断を下す。
ともかく、雇われている以上は彼女がクライアントだ。
「了解」
短く返事をし、クライアントの後ろをついていく。



がつ、がつがつ、がつがつがつ。
豪快な音を立てて食事は続く。
いや、食事をしているのは一人だけなのだが。
アカツキは無心で巨大なベーコンブロックにかぶりついていく。
本来生で食べるものではない筈なのだが、彼にとってはそんなことはどうでもいいのか。
"武器"として支給されていた肉の塊が、こんな形で役に立つとは、彼女自身思っていなかった。
携帯食料は出来れば今後のために取っておきたい、というヴァネッサの願いも叶え、アカツキの腹も満たす、最高の選択。
なんだかんだでビールのプルタブを空けてしまったので、流れで一缶ほど空けたが……。
正直、食べっぷりが気になりすぎて、酔っている場合ではない。
軽く見積もってもkgはあったであろうブロック肉が、瞬く間に消えていくのだから。
「ふう……」
アカツキは赤い袖で豪快に口を拭い、油分を落としていく。
「満足いただけたかしら」
「かたじけない」
表情こそはマジメなものだったが、雰囲気は少し柔らかくなっていた。
続けて、アカツキはぺこりと頭を下げた。
「世話になった、失礼する」
「ちょっと待って、折角会えたって言うのに離れることないじゃない」
服の埃を素早く払い、足早にどこかに立ち去ろうとするアカツキの足を、ヴァネッサは引き留める。
アカツキは振り向かずに、ヴァネッサへと告げる。
「これは特秘の任務だ、民間人を巻き込むわけにはいかぬ」
任務とは、先ほどアドラー言っていた事か。
電光機関の破壊、それはどれほどまでに彼を縛り付け、動かしているのか。
この"殺し合い"よりも、遙かに重要なことなのか?
「……それより、先にやることあるんじゃない?」
振り向いてもらえるように、わざと含みのある言い回しをする。
予想通り、アカツキがちらとこちらをみる。
その目に映るように、ヴァネッサはトントンと首に付けられた物を叩く。
「目的が有るのはわかったけど、それを成し遂げるために道を見失っちゃ、出来る事も出来っこないわよ?」
ヴァネッサの言葉に導かれるように、アカツキも首に手を当てる。
ひんやりと冷たい金属、それは自分の命を握っている。
あの女がその気になれば、自分などいつでも殺すことができるのだ。
「それでも自分は、課せられた責務を果たさねば」
現実を噛みしめた上で、アカツキは再びヴァネッサに言い放つ。
枷を付けられようと、身が滅びようとも、自分には成すべき事がある。
真剣な眼差しに再び変わったことを見て、ヴァネッサはため息を一つつく。
「ふぅ、酔っぱらいより状況見えてないなんて、呆れちゃうわね」
皮肉めいた言葉を受けながらも、アカツキは立ち去ろうとする。
「この場所にいたら、終わらないわよ」
その足を、まるで釘を打ち込むかのように引き留めていく。
「電光機関は世界中に点在する、それを破壊するためにはまず、疑似的に閉じこめられているこの状況を打破しなくちゃいけない。違う?」
アカツキの責務は全ての電光機関の破壊。
それが世界中に点在する以上、ここに閉じこもっている時間などはない。
正しく、鋭く、そして一般人には知り得ない事に、アカツキは冷静に返答をする。
「なぜ、電光機関のことを……」
「職業柄、そういうことには詳しいのよ。まぁ、話しか聞いて事はないけどね」
アカツキが気になっていたことを、ヴァネッサは上手にはぐらかしていく。
が、アカツキにも"特秘"を掴んでいる存在には心当たりがある。
おそらく、彼女もその類だと、一人で結論づける。
つっこまれないことにホッとしたのか、ヴァネッサは言葉を続ける。
「とにかくまずはこの殺し合いの打破、これが先決よ。
 お互いの目的を果たすためにも、いつまでも首輪につながれたワンちゃんじゃダメですもの。
 もし、その道中に電光機関があるなら、思う存分壊せばいいわ。
 私は、その部分には関わらないから」
すっかりこちらへ向き直り、真剣な面持ちで話を聞くアカツキに、なぜだか思わず笑いがこぼれてしまう。
疑問を抱き彼が首を傾げる前に、ヴァネッサは話を続ける。
「じゃあ、改めてお願いするけど。
 この殺し合いを"ブッ壊す"、それに協力してくれないかしら?」
「……承知した」
「物わかりが良くて助かるわ」
ねばり強い説得の甲斐あってか、アカツキはすんなりと交渉に応じた。
一缶とはいえ、アルコールを入れたせいか、不思議といつもより上機嫌である。
だが、心地よい感覚に包まれている暇はない。
具体的な行動案や、これからのプランを立てなければいけない。
まずは、どうするか。



「――――ッ!」
それを、考え始めたときである。
アカツキとほぼ同時に反応し、振り向いていく。
感じ取った二つの気配に向けて、同時にファイティングポーズを取る。
「あ、待ってください。私たちに戦闘の意志はありません」
聞こえたのは冷静ながらも、おっとりとした耳に馴染みのある声。
いつだったかの任務はハイデルンを通して彼女と共にこなしたこともある。
「お久しぶりです、ヴァネッサさん」
手を挙げながら陰から現れた眼鏡の少女が、自分の名前を告げる。
「なぁんだ、フィオちゃんじゃな――――」
安堵した表情を浮かべ、アカツキに合図を送りながらヴァネッサも柔和に返そうとした。
そのときだった。
フィオの後ろから、ひょっこりと一人の男の姿が現れる。
「ゲッ!?」
「はぁっ!?」
ヴァネッサと男の声が同時に鳴り響き、その表情が共学に満ちたものとなる。
互いの額に無数の脂汗が滲み始め、酸素の足りない魚のように口をパクパクとさせていく。
「へ? え?」
「……ヴァネッサ?」
「バッ――――」
状況を理解できないフィオは頭にクエスチョンマークを浮かべ、アカツキは正直に"ヴァネッサ"へと問う。
その名前を告げられてはいけないのだが、一歩遅かった。
フィオの後ろに立っていた男は、アカツキの呟いた名前で全てを理解し。
口をパクパクと高速で開閉させながら、そのまま後ろに卒倒してしまった。
「最ッ悪……」
凍り付く空気、飲み込めない現状に誰しもが固まる。
ただ一人、ヴァネッサを除いて。
「えっ、ええええっ!?」
ようやく状況を飲み込んだフィオが、あわてて卒倒した男へと駆け寄っていく。
「……妖術の類か?」
「そんなの使えたら苦労しないわよ」
両手で頭を抱え、うずくまるヴァネッサにアカツキは問いかけを続けていく。
確かに、状況を理解できないアカツキにとっては"出会い頭に突然男が卒倒した"という事しか分からないのだから。
そういった類の力だと思うのも、仕方がない。
「あそこでぶっ倒れてる男はね」
やんわりと否定した後、蹲ったままヴァネッサは言葉を続ける。
その言葉は微妙に震えていて、ここから逃げ出したいと言わんばかりの声で。

「私の夫よ」

アカツキが、初めて聞く声だった。

【E-8/東崎トンネル出口/昼】
【フィオ=ジェルミ@メタルスラッグ】
[状態]:ファッ!?
[装備]:ランチョンマット、紅茶セット
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:正規軍として殺し合いを止める。
1:えっ

【ジョン・スミス@アウトフォクシーズ】
[状態]:卒倒
[装備]:缶コーヒー(いっぱい)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:報酬のため、クライアントの依頼を達成する。
1:ファーーーーーーーーーーーッwwwwwwwww(予想外の遭遇に未来を託しながら倒れる)

【ヴァネッサ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:あたまいたい
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜2(把握済み)、YEBISUビール×1
[思考・状況]
基本:状況を整理し、行動
1:とか言ってる場合じゃなくなってきた

【アカツキ@エヌアイン完全世界】
[状態]:健康
[装備]:電光機関
[道具]:基本支給品(食料は完食)、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本:殺し合いの打破、及び電光機関の破壊
1:うむ?
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048:開戦
046:赤と黒が舞う
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015:Picnic
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