俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

最強の破壊兵器・電光戦車。

……たった一人でコンクリートの建物破壊余裕でしたな人間はびこる世界で何が最強やねん、と思うかもしれないが、
それでも詰め込まれた技術と、量産出来るという点において、非常に優れた兵器である。

唯一の難点を上げるとしたら、その動力だ。

電光戦車の動力には、負傷兵が使われている。
戦力にならない者を、動力として、再び戦場へと送り込む――
非情にして、効率的なやり方だ。

しかしながら、人道的な面を除いても、その動力には問題がある。
別に動力の有限性やコストパフォーマンスなどではない。
そんなもの、戦争してればいくらでも手に入る。

問題は、動力である“生命”というものが、ゲゼルシャフトを持ってしても解明しきれないということだ。
特に“心”については、本当に未知である。
兵士達のソレをないがしろにする傾向にあるだけあり、その分野は元々疎いといってもいい。

だから、一度、予期せぬ目にあっている。
自我を得た、電光戦車による反撃。
それ自体は容易く制圧されたが、それでも一時電光戦車の運用は見直された。

あれから幾ばくかの時を経た。
電光戦車は運用を再開し、あの手の不具合はもうない。

それこそが、油断を生む。
油断というより、余裕なのかもしれないが。
とにかく鎮圧できた前例があるため、整備担当もそこまで深くチェックしないようになる。
その手抜きは年を重ねるごとに悪化し、最近では手頃な数台をチェックして、大丈夫ならまあいいだろうと考えるようにすらなっている。

だって電光戦車はただの兵器だから。
戦えるよう整備さえすれば、自我を持ってるかのテストなんてしなくっても、戦場で活躍するから。
どうせ、あんなイレギュラー、もう起こらないのだから。

トップはそう思っていなくとも、現場員はそう思ってしまう。
少しでも楽をしたいから。
それでも上手くやれるのだから。

だから今回も、見逃された。
一台だけ、徹底的に自我がないか確認して。
それで、終わった。
「ほら、やっぱり今日も、自我になんて目覚めてない」
そんな風に、最終確認を切り上げた。
そして、一台目にそうしたように、タイマーをつけて配置した。

「ピピピ……」

事実、一台は完全な兵器であった。
配備され、殺戮兵器として、参加者と戦った。
そして壊れた。
スクラップとして、その機能を停止した。

そして――この機械を、なんと呼べばいいだろうか。彼、というのは些か違和感がある――残された電光戦車も、すでに起動している。
キュラキュラと音を立てて移動し、殺害対象を求めている。

だがしかし、一点だけ。
一点だけ、先程スクラップとなった機体と違う所がある。

「…………」

この戦車は、起動時に、少しだけ、何かが目覚めた。
自我、とまで言うことは出来ない。
ほんの小さな、バグにも満たない薄ぼんやりとした“何か”としか言えない。

それがゲゼルシャフトの意に反する事態をもたらすのかすら、まだ分からない。
何せ、全てが未知なのだ。
久々に電源と一緒に、まどろみ混合した意識がうっすらと表面だけでも滲み出るということ。
殺戮の場でなく、猛者との殺し“合い”の場での起動ということ。
終わりが見えない膨大な殺戮を求められたかつてと違い、人数という“終わり”が用意されていること。
全てが、今までなかったことである。
何もかもが未知であり、自我が目覚める“キー”も含め、分かっていることなんてない。

もし、自我を持つとしたら。一体どうなるのだろうか。
ニンゲンとして生きようと考えるのか。
復讐しようと考えるのか。
はたまた媚びてでも助けてもらおうとするのか。

――それとも、もう死ぬような想いは嫌だと、思うのだろうか。

戦車がどの道を行くにしろ、自我を持ったら、もう死は嫌がるのではないだろうか。
だって中に入った“彼ら”は、皆負傷兵なのだから。
押し込まれたたくさんのエレクトロ・ゾルダートだって、敗北の味を知っているのだから。


戦場の怖さを知り、迫り来る死の絶望感を刻みつけられた、負傷兵。
彼らに共通する“死”というものへの感情は、果たして何か意味を持つのだろうか。

答えの出ない問を尻目に、電光戦車の孤独な行軍が始まる。
“何故”という質問には、「プログラムされているから」としか返せない状況で。
もしかしたら、まどろみの中、己の意思でかもしれないが。

とにもかくにも、電光戦車は、目覚めた。



【???/1日目・朝】

【電光戦車@エヌアイン完全世界】
[状態]:正常? わずかに、自我が芽生えつつある?
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
・参加者の殺害
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023
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021:ハイ・ボルテージ
時系列順
024:理想郷へ飛び立つ荒鷲
022:ジャーマンルーレット・マイライフ
投下順
始動
電光戦車(2)
031:悲しきノンフィクション

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