俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。


結局、人の用意した舞台で輝くことなどできなかった。



特徴的なモヒカンの、大柄の黒人男性。
この殺し合いの地に招かれ、今に至るまでただひたすらに拳を振るい続けている。
なにもない、空虚に向けて。
風を切る音だけが耳に響く。
それでも、彼は拳を振るうことをやめない。
ここで起こりうる戦いに備えて、体を動かしておきたいから。
ようやく、全力を出し切れる場所に出会えたのだから。
悔いのない戦いのために、戦いのカンを取り戻すために。

ある、一人の黒人ボクサーがいた。
体格、技能、腕力、どれをとっても世界で有数の腕前を持つ優秀なボクサーだった。
そんな彼はある日、一つの事故を起こしてしまう。
ボクシングの対戦相手を死亡させてしまったのだ。
彼の放ったパンチンググローブ越しの渾身の右ストレートが、相手の右頬に綺麗に突き刺さり、その頭を揺らした。
その結果、不慮の事故とはいえその時の対戦相手は脳震盪で死んでしまったのだ。
その日から誰もが彼との対戦を恐れ、意識的に避けるようになった。
彼を避けるために、ボクサーたちが付けた蔑称。
「ヘビィ級の危険な奴」として、「ヘビィ・D!」と呼ばれ続けたのだ。
対戦相手がいないトレーニングを続けるだけの日々に飽きた彼は、いつしかボクシングの舞台から降りていった。

そんなある日、転機となる一通の手紙が届く。
「ザ・キングオブファイターズ開催のお知らせ」
胸が高鳴った、心の底から沸き上がる喜びを隠しきることができなかった。
また戦える、それだけで十分だった。
長らく休んでいたトレーニングを再開させて技術を磨きあげ、それにふさわしい腕力をつける。
毎日毎日、充実したトレーニングを送り続けていた。
彼の心の中はただ一つ。
戦いの場に戻ることができる、という充実感だけだった。
そして彼は一人の友人と大物のゲストと共に、ザ・キングオブファイターズへと出場した。
周りの目を気にすることなく力を振るうことができる。
そんなすばらしい舞台へ、彼は降り立ったのだ。

だが、そのすばらしい舞台は脆くも崩れ去ることになる。

初戦、女性の身ながら格闘の世界へ身を投じる者たちとの戦い。
相手が女性とはいえ加減は無用、全力で戦うのみ。
この日のために、彼は毎日毎日トレーニングを積み重ねてきたのだから。
武器の使用すら認められている「なんでもあり」の大会。
ついにこの日が、自分の力を遺憾なく発揮できる舞台が用意されたのだ。
最初の手合わせとなったのはムエタイを操るスーツの女性だった。
鋭く流れるような足技の数々にはじめはペースを握られつつも、技の切れ目を見抜き、一発ずつブローを叩き込んでいく。
加減は必要ない、ここは戦いの場所なのだから。
時が進むにつれ勢いをなくしていく足を捌き、確実に攻撃を叩き込んでいく。
ある一発の後、ゆらりと彼女の体が揺れる、その瞬間を見計らってラッシュを叩き込んでいく。
顎の下から突き上げるようなフィニッシュを〆に、はじめの戦いは終わった。
次に出てきたのは忍びの女性だった。
話でしか聞いていなかった「くのいち」とはかなりかけ離れた容姿だったが、その素早さは忍者の噂通りそのものだった。
スピードでは勝てない、そう判断して早々に戦闘スタイルを変える。
素早く動く相手を一撃で沈める、そのために動きを見切る。
防御を重ねるうちに相手の動きがあるパターンになっていることに気がつき、頭の中で情報を整理する。
そして動きがだんだんと予測できるようになり、ギリギリで避けては次の行動引き出せるようになった。
そして、相手に焦りが生まれる。
その瞬間を決して見逃さず、大打撃を叩き込もうとしてきた相手の腹部にカウンターの拳を叩き込む。
一撃。
忍びの女性はそのままうずくまり、起きあがってこなかった。
興奮していた。
これだけハイレベルな戦いができることに。
久々に戦う感覚を、思う存分味わっていた。
そして、三人目。
極限流道場の師範の愛娘。
道場の子供だけあって基本的な動きがしっかりしている。
隙を見せれば自分がやられる可能性だってあった。
だから先の二人と変わらぬように、己の全力を振り絞っていった。
攻めと守りが激しく入れ替わる中、先に大きく仕掛けてきたのは相手の方だった。
そこを大きく、捌く。
一撃を避けられ、大きくよろめいた相手の姿を認識し、ここぞとばかりにラッシュを仕掛けていく。
右、右、左、右、左、左、右、左。
胴から頭にかけて無数のラッシュを浴びせていく。
そして、最後の一撃を叩き込もうとしたときだった。
「おい! やめろD! 殺す気か!?」
間に入ってきたのはラッキーの姿。
その後ろにはまるでボロ雑巾のような姿になり果てていた、対戦相手の姿があった。

ザ・キングオブファイターズで、ほぼ唯一の禁止事項。
「対戦相手の殺害」
かつて、彼がボクシングの舞台を降りることになった要因と同じモノだ。
久々の大会の舞台で舞い上がっていた彼は、全力を出しすぎてしまったのだ。
既に相手をノックアウトしていることすら気がつかず、攻撃の手を加え続けていた。
ラッキーが止めに入らなければ、あの時確実に対戦相手は死んでいただろう。
また、彼は全力で戦うことができなかった。
その試合以降、彼は戦いに参加しなかった。
ザ・キングオブファイターズですら、気兼ねなく戦える場ではなかったからだ。
その後、ラッキーとブライアンの二人で大会自体は参加していたようだが、言う間でもなく途中敗退であったようだ。
以来、両者とは連絡すら取っていない。

そして、今。
ついに彼は手にした。
「相手を殺しそうになっても構わない戦いの場」を。
バトル・ロワイアル、それこそが彼の求めていた戦場だったのかもしれない。
相手を殺しそうになっても、どんな戦いを繰り広げても、この場では止める人間なんていない。
本当の"ルール無用"の試合が、ここにはあるのだから。
「もう、飽きたぜ」
シャドーを止め、今までの戦いに向けて一言を放つ。
本当の戦いが、これから待っているのだから。
彼の胸は、高鳴りを押さえきれずにいた。

【E-3〜F-4/境界の丁度中心点/1日目・朝】
【ヘビィ・D!@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・状況]
基本:思いきり戦いを楽しむ
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ヘビィ・D!
036:ばいばい

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