俺ロワ・トキワ荘にて行われている二次創作リレー小説企画の一つ。Perfect World Battle RoyaleのまとめWikiです。

「……草薙の炎。模倣とはいえ、目覚めて間もない龍を屠るには十分だったか……」
すぐそばで立ち上る炎の柱を眺め、完全者は一人言葉をこぼす。
三種の神器の模造品、とはいえ切れ味は一級品ということだろう。
その力に感嘆の息をこぼした時、ふわりと音もなく一人の女が現れる。
「どうした」
「いえ、そろそろかと思いましたので」
何てことはない、ただの事務的なやりとり。
何かを待ちわびているのか、ゲーニッツの表情は明るい。
しかし、完全者は玉座に座したまま、無表情で告げる。
「まだ、少し足りぬ」
ふと、ゲーニッツの表情が険しくなる。
たったそれだけのやりとりで、全てを察しあっている。
何を考えているのか、二人にしか分からない。
「では、私が行きましょうか」
「……そうだな、想像以上に早くなったが、ここは任せるとしよう」
殺し合いは佳境、その時期になって動き出すと言うこと。
それがどう言うことなのかは、おおよそ予想はつく。
しかし、何のため? それがわからない。
「貴様も酔狂な奴だな……」
「貴方ほどではありませんよ」
皮肉にも似た言葉に対し、屈託のない満面の笑みで返してから、ゲーニッツは風となり消える。
それを見送った後、フンと鼻を鳴らし、小さく笑った。



かつて、二度失敗したこと。
それも、同じ人間に二度も阻害されたこと。
圧倒的な力による人類の支配、そして抗う人間による自分の撃破。
人は、誰しもが黙って支配を受け入れるわけではない。
それは二度の失敗で分かっている。
ならば、それを上回るほど圧倒的な力を手にすれば、誰も彼もを支配できるのではないか。
その答えも、きっとノーだろう。
自分の命を握られているというのに、果敢にも刃向かい続ける人間たちがこれだけ居るのだから。
どれだけ力があっても、どれだけ圧倒的でも、抗う人間というのは現れるものなのだろう。
「……だが」
諦められない、諦められるわけがない。
誰しもが反抗する力を失い、誰しもが身も心も服従し、誰しもが怯えながら暮らす。
そんな、絶対的な支配を。
いつか完全者が世界に向けて敷いた支配より、もっと圧倒的な支配を。
そのヒントと手がかりは、間違いなくここにある。
それを手にするためにも、まずは完全者を撃破しなくてはいけない。
抗う立場になって分かったことも多々ある。
人が、どのようにして支配を嫌うのかもこの目で見届けた。
だから、次は――――
「おや、あれは」
その時、ルガールの視界に一人の男の姿が映る。
黒と白のツートンカラーの頭が特徴的な、全身を黒に染めた男。
その姿は焼け焦げた痕を初めとし、傷だらけであった。
「ぁ……」
男もルガールの姿に気がついたのか、小さく声を漏らす。
だが、それは言葉になることはなく。
掠れるような音として絞り出され、そのまま空に溶けていった。



「……やれやれ、流石に参ったな」
二人に増えた気絶した人間を横目に、ルガールは苦笑いを浮かべる。
方や神の現実態と呼ばれた一人の少年。
そして、新たに増えたもう一人の気絶した少年。
その体に宿された力が、かつて自分を焼き払った力であることを感じ取る。
しかし、驚いたのはその先だ。
少年の中には、それ以外の力が存在する。
一つはかつて自分が取り込もうとし、不完全なままに終わってしまった力。
そしてもう一つは、かつて自分を焼き払った力によく似ていて、けれど少し違う力。
その三つは互いが互いを殺すことなく、けれど個々を潰すこともなく混じり合っている。
奇跡の力、といっても差し支えはないだろう。
「……興味深いな」
純粋な興味、混じり気のないそれに突き動かされるように、ルガールはゆっくりと腕を伸ばす。

「動かないで」

その手を止める一つの冷徹な声。
顔を動かせば、その視線の先には見覚えのある顔があった。
「特A級国家犯罪者、ルガール・バーンシュタイン。
 この場でその身柄を確保します」
「これはこれは、正規軍のフィオ=ジェルミ上級曹長殿ではないか……ッ!?」
いつものように少しおどけてからかおうとしたルガールの表情が、共学に包まれる。
無理もない、現れた彼女たちには"あるべきモノがなかった"のだから。
「……君たち、どうやって首輪を」
「貴方に質問の権利はありません」
声の調子を変えて低い声で問いかけるも、問いかけははねのけられる。
ロケットランチャーを構えたまま、フィオはじっと動かない。
「まあ、落ち着いて聞いてくれ。この場において私は君たちの味方だ。
 完全者を討伐するという同じ志を持った、な」
「油断を誘うつもりですか?」
両手を広げ、無抵抗をアピールしても聞く耳を持たない。
まるで初めのあのときと同じだ、とルガールは内心で舌打ちする。
「……これだから軍人は嫌いだよ」
「生憎、悪党と口を利くつもりはありませんので」
漏れ出してしまったルガールの言葉にきっちりと応答するフィオ。
重苦しい空気が、しばらく流れる。



「ルガールがボクたちの味方なのは、本当だよ」
その沈黙を破るように起きあがったのは一人の少年だ。
「あなたは……」
その姿に、フィオは言葉を失う。
「おや、お目覚めかね」
「最悪の目覚めだけどね」
頭を掻きながら、なんとも気だるそうにルガールに応対する。
目覚たすぐ側では険悪な空気、そして少し遠くには先ほどまで一緒にいたはずの少女の死体があり、戦車の姿はない。
現状の理解を進めたいところだが、そのためにはまずこの状況を解決しなければいけない。
「……ともかくさ、彼が"今は"無害って事はボクが証明するから、その物騒なものを下げてくれないかな?」
肩をすくめ、精一杯"無抵抗"を表現する。
ルガールとは違い、端から見れば自分は名の知れていない少年だ。
自分のことを知っているらしき素振りを見せたフィオはともかく、隣の少女にとってはそう映るだろう。
「それと、こいつの外し方教えてよ」
トントン、と首輪をたたきながら取って付けたように言葉を付け加える。
首輪の解除、それは今の自分にとっては喉から手がでるほど欲しい情報だ。
それを失うのは、あまりにも惜しい。
だから、打てる手を全て打っていく。
「……まあ、いいんじゃない?」
「ですが……」
渋るフィオに、少女はにっこりと笑いながら、半目でルガールを見つめて言葉を続ける。
「圧倒的な強者故の余裕、って奴だよね。
 油断作ってあたしたちをサクっとやるほど、あのオッサンは落ちぶれてないよ」
「ほう、そちらのお嬢さんはなかなか話が分かる」
「そりゃどーも」
ルガールの言葉に、少女はわざとらしい一礼で返す。
そのやりとりも一理あると踏んだのか、暫く考え込んでから、フィオはゆっくりとランチャーの照準を下ろした。
「……わかりました、今回はそこの少年とラピスさんに免じて引き下がりましょう」
その一言に、三者の思わずため息が漏れる。
それぞれがそれぞれで、きっと緊迫した思いを抱えていたのだろう。
ひとまずの協定を結んだ四者は、眠る青年を横手に、持てる情報の交換を始めた。



何よりも真っ先に行われたのは、首輪の情報交換だ。
設計書に基づいたラピス達の首輪の情報は、確かに信憑性に足る内容だった。
しかし、用心に用心を重ねて、ということで、申し訳ないが寝ている青年で一度実験をしようと言う話になった。
自分の情報に確実性を持っていたラピスは、自分を一度殺しかけた男の首輪を外すことに大反対した。
が、目覚めたときに襲われた場合はエヌアイン達が守るという首輪の情報の対価を出されたことで、渋々了承した。
まあ、結果からすればエヌアインの力で驚くほど簡単に外れたわけだが。

その解除作業の最中、エヌアインはルガールから自分が気絶していた間の事の顛末を聞いていた。
自分との戦いの後、一筋の焔となった男が一直線に走っていったこと。
その炎にルガールの同行者が少女――――フィオの仲間を突き飛ばし、消し炭に変えたこと。
その行為を何らかの手段で読みとった戦車が激昂し、ルガールの同行者を焼き殺したこと。
その戦車にカティが優しい言葉をかけると同時に、蒼い靄がカティの首を掻ききっていったこと。
その靄を追って戦車が町を飛び出していったこと。
全てを、余すことなく聞かされた。
「じゃあ、あの戦車は……」
その話に乗るようにラピスが口を開き、しまったという顔をする。
初めから半狂乱に陥っていた戦車と対話を試み、なんとか情報と理性引き出した男。
その男を葬り去ったと言っても過言ではない行為を、している人間がそこにいたからだ。
「私が、武器を向けなければ……?」
「はいやめ」
全てを察したフィオが後悔の言葉を漏らしかけたのを、ラピスは急いで遮る。
「それより、今はやることあるでしょ」
「……はい」
やさしく微笑むラピスに、涙を拭いながらフィオは答える。
そう、今は立ち止まっている場合ではない。
やることがまだあるのだから、止まってはいられないのだ。



「う……く……」
その時、倒れていた男が弱々しい声と共に体を起こし始めた。
ふらふらとした頭を"赤"の左手で押さえながら、あたりを見渡していく
「ここ、は」
「目ぇ、醒めた?」
まず、認識したのは無機質に淡々と問いかけをする金髪の少年の姿。
次いで赤いスーツの男、メガネをかけた軍人、そして。
「お前は」
つい先ほど、そう遠くはない過去に。
対峙し、殺すつもりで襲いかかったニット帽の少女が立っていた。
自分を見るその目は、想像以上に厳しい。
「……すまなかった」
思わず言葉が漏れ出る。
止められない、止められるはずがない言葉を吐き出していく。
「だが許してくれとは言わないし、許して貰うつもりもない」
心を入れ替えましたもうしません許してください。
そんな事が通るわけもないし、通すつもりもない。
自分がやってきたことの内容くらいは、理解している。
ただ、今まではそんなことより大事だと思っていたことがあっただけで。
その事実から、目をそらしていただけ。
「俺は、こいつの分も生きなきゃいけなくなった……いや、生きたいんだ」
だから、彼は言う。
己のしてきたこと、その重大さをしっかりと踏まえた上で。
他に"もっとやるべきこと"ができたから。
「完全者を倒すのならば、俺も連れて行ってくれ」
「……そーね」
黙り通していた少女が、口を開く。
その表情は、諦めたような、悟ったような、そんな微妙な顔。
けれど、安心できる。
"嫌悪"されている訳ではないから。
「ま、何があったかは知らないけど、もうアタシたちを襲わないならそれでいいわよ」
「……ありがとう」
男は最後にもう一度、心から漏れ出した言葉を伝える。
「大変です!! みなさん!」
その時である。
メガネの軍人が大声を張り上げて全員の注目を集める。
「端末が……」
手に持った端末を掲げ、慌てふためく声を出す。
あの女の言っていた、自動更新の時間が来たのだろう。
とはいえ、そんなにも慌てる内容が書かれているのだろうか。
ネームレスも、自身が持つ端末を手に取り、書かれた文字を読みとり始めた。



その時だ。
「意外と、早く進みましたね」
優しい声、けれどこの上なく怖い声。
「でも、足りないんです、まだ……」
巻き起こる一陣の風と共に、女が現れる。
「ですから皆さん、私と――――」
それは、この惨劇の終わりを告げる合図であり。



「殺し合いましょうか」



惨劇の先にある絶望の、始まりだった。




【H-07/南西部/夜】
【エヌアイン@エヌアイン完全世界】
[状態]:ダメージ(小)、首輪解除
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本:カティと行動。『正す』以外の方法を知りたい
  1:信じてみる

【ルガール・バーンシュタイン@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:首輪解除
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本:世界支配のために完全者の撃破、そのための仲間を集める。抵抗する人間には容赦しない。

【ネームレス@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:全身火傷、ダメージ(小)、オロチの力により徐々に治癒中、首輪解除
[装備]:カスタムグローブ"イゾルデ"、K'の制御グローブ"クーラ"(勝手に名づけた)
[道具]:基本支給品×2、不明支給品1〜5(不律、K'、ターマ分含む)、ビーフジャーキー一袋
[思考・状況]
基本:生きる
[備考]
K'が一度とりこんだオロチの血がinしたため、炎の色が白黒のマーブルになりました
左手にK'の制御グローブをつけ、血の記憶から知った「クーラ」の名をつけました
クーラ本人がこの場にいることはまだ知りません
左手が暴走し、K9999の技「力が…勝手に…ぅわあああ!!」が暴発する可能性があります
オロチの血による身体の活性化のため、現在のダメージは時間で回復していきます

【ラピス@堕落天使】
[状態]:腹部裂傷、オロチと契約、首輪解除
[装備]:一本鞭、ライター
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本:完全者をシメる
1:改竄された歴史に興味。
[備考]
※オロチと契約し、雷が使えるようになりました。

【フィオ=ジェルミ@メタルスラッグ】
[状態]:ダメージ(小)、首輪解除
[装備]:ランチョンマット、紅茶セット、ロケットランチャー@メタルスラッグ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:正規軍として殺し合いを止める。
1:前を向く

【ゲーニッツ@THE KING OF FIGHTERS】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺しあう















「  Dー4にて待つ  」
機能を失った端末に書かれていたのは、それだけ。

※全端末にメッセージが表示されています。
※名簿アプリが更新されました
※禁止エリアはありません
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079
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078:脱走開始
時系列順
080:序幕 -選別-
投下順
067:アンリミテッド モノクローム
ネームレス
071:友達から始めよう
エヌアイン
ルガール・バーンシュタイン
073:人間は不器用だから
ラピス
フィオ=ジェルミ

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