概要

クメール人の持つ伝統的な宗教であり、クメール共和国で国民の多くに信仰されている。しかし、インドからの仏教やヒンドゥー教の影響を強く受けている。
この宗教はバルカン半島やコーカサスほどではないにしろ、民族が入り乱れる東南アジアで広大な領土を保有するクメールを一つに纏めあげる為の手段として歴代の政府が認識し、保護を行ったことから広く受容され、一つのクメール人の意識を形成する大きな鍵となっている。
コンポトムとはこの宗教の発祥地であるコンポトム地域より命名された。長らく教義は統一されていなかったがアンコール朝の時に統一され、明確な教義を持つようになった。

教義

「水とは永遠の循環の象徴である。即ち、形を変えつつも常にこの世界に存在するのである。また、人を含めたあらゆる生命もまた循環しこの世界を形作るのである。」

創世記

この世界が始まった時にはただ時間の神(ペルバー)のみが存在していた。彼はまず霊的な世界と物質的な世界を作り上げた。そして聖なる犠牲を持って新たな創造を行い天空、大地、水、火、動物、植物などの創造物とそれに対応する神々を創造した。そしてペルバーは休息の時に入り、創造された新しい神々が犠牲の捧げ創造を行い神々や数多の生命を生み出した。
この創造により霊的な世界は神聖にして神々の住まう世界に、物質的な世界は生命の輝きが溢れる世界へと変化した。
そして創造が完了した時に神々はが眠る最も神聖な土地に築かれた祭壇の前に清浄な状態に保たれた創造物を犠牲として捧げペルバーを眠りから解放した。
これにより季節は廻り始め今もなお、そしてこれからも永遠に循環する世界が生み出されたのである。

2つの世界の関係

最も最初にペルバーによって創造された2つのカンビヒャン界(ខាងវិញ្ញាណ=霊的な)とサンピエレ界(សម្ភារៈ=物質的な)は互いにささえあっている。そう、どちらか片方の世界が存在しなければもう片方の世界も存在しないのである。
そして双方の世界は永遠に循環する強大な法則によって支配されているのである。それは時間を司り世界の創造主であるペルバーも従うもので決して消滅することのない法則なのである。
カンビヒャン界(ខាងវិញ្ញាណ)
霊的なそして神聖にして神々の住まう世界。優しい光に包まれており非常に幻想的な風景が広がっている。限りなく広い大地には慈悲あふれる神々が至る所に存在して二つの世界を成り立たせる法則が絶えず流れいるのである。
この世界は二層から成り立っており、それは神々や死した善人の住まう第一層と悪人の落ちる第二層である。
第一層は雄大な山脈が横渡り清き水が大河となって流れている。死した善人は肉体から解放され精神的な「楽」を得て喜びに包まれた世界で生きるのである。
この第一層に関する教えには仏教の極楽浄土の概念が流入した痕跡が見受けられる。
第二層は全てを浄化する神聖な炎が燃えている。第二層に落ちた悪人は永遠に燃え続ける神聖な炎によってその魂が浄化され再び新たな創造のための犠牲となるのである。
カンビヒャン界で創造は行われ、サンピエレ界では更に生命の息吹は強くなる。そして曇りなきカンビヒャン界の光は益々輝くのである。
サンピエレ界(សម្ភារៈ)
物質的な生命の息吹が溢れる世界。人々が生きるこの世界である。人々がその一生を燃やし尽くし力の限り生きたときにこの世界に生きた証が刻まれるのである。今、私たちが生きているのもそのような痕跡の積み重ねの上であり、私たちもまた力の限り生きなければならないのである。
また神々は時折、自らの化身を持ってこのサンピエレ界に降臨し私たちを見ている。そのために私たちは無闇に生命を奪ってはいけないのだ。

死と死後の世界

死んだ人間の魂はサンピエレ界からカンビヒャン界へ旅立つ。この旅立ちの時までの3日間は魂はサンピエレ界に留まるとされた。魂はカンビヒャン界にたどり着くまでは自力で悪から身を守ることはできず、遺族による儀式によって初めてその力を得るとされた。
サンピエレ界とカンビヒャン界の間には暗い大河が流れており危険に満ちた場所であって、その大河を渡りきった先にカンビヒャン界の第一層があるが罪の大きい悪人は渡りきらずに第二層に落ちるとされた。
そして、渡りきった人々もミトフォクトにより審判を受け第一層で暮らすか第二層に落ちるが決定する。
第一層にたどり着いた人々はその楽園で復活した肉体と同化し疲れを癒す。そして疲れを癒した後に再びサンピエレ界で新たな人生を歩むのである。だがしかし、この時に非常に徳が高い善人は不死者となってカンビヒャン界で神々の補佐となれるのである。
一方、第二層では悪人の魂は復活した肉体と共にプルングによって浄化され新たな創造の元になる。この浄化の過程は悪人には耐え難い苦痛を伴うのである。

時間

コンポトム教において時間とは永遠に循環する世界における最も重要なものとされた。時間の流れ無くして循環は発生しないためである。ただ、時間の流れこそが全ての問題を解決しそこに人の意思は介入せずに時間を司るペルバー、更に言えば時間という法則によって決定されるとする運命論的な教えが説かれている。

神々

ペルバーを除いた神々の多くがヒンドゥー教の神々である。元々クメール人が信奉していた神々がより強大なヒンドゥー教の神々と同一視された結果である。
ペルバー(ពេលវេ)
この世界の原初から存在し時間を司る神。カンビヒャン界とサンピエレ界を創造しこの世界を生み出した。コンポトム教の最高神に相当する。
プルング(ភ្លើង)
イラン・インド神話でのアグニ。火を司る神である。カンビヒャン界の第二層で悪人を浄化し、信奉者を害から守る守護神でもある。
ヴァールン(វ៉ារុន)
イラン・インド神話でのヴァルナ。水を司る神である。豊作や恵みを与えるとして信奉された。
エァイ(អ៊ី)
ヒンドゥー教でのディアウス。天空を司る神である
ミトフォクト(មិត្តភក្តិ)
イラン神話ではミスラ、インド神話ではミトラと呼ばれる神。契約や法則を司りペルバーに次ぐ神格として崇拝される。自らも含めた全ての神や2つの世界に生きる全ての物が従う法則を管理しており、このミトフォクトを最高神とする宗派も存在する。また、死した人間を裁く神と位置付けられている。

水と火

半永久的に流れ続ける水と燃え続ける火は共に永遠を象徴する聖なる創造物として崇められてきた。稲作にとって水は必要不可欠で恵みを与える存在だったし、火は米を炊くときに必要でまた多湿な環境では火を点火することが難しく常に絶やさずに燃やし続けることが賢明だった。
火は悪を燃やしつくし浄化を行う他にも悪から人々を守護する役割を担った。水もまた悪を洗い流し浄化を行うとされた。水によって区切られ聖火が設置された土地が最も清浄な土地とされた。その為水によって区切られたアンコール・ワットとアンコール・トムは聖なる土地とされ打ち捨てられた他のヒンドゥー教寺院とは異なり保護されているのである。
水によって囲われた三段の階段状の祭壇の頂上に聖火は安置され、信者はその祭壇の前に捧げ物をした上で火と水を通して神々に祈るのである。

歴史

他宗教との関係

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